風が温み、春の便りが届くころ。
休日だったのに午前中だけ仕事で、せっかく外に出たのだから
寄り道していこう!ということで近くにあった新宿御苑へ。
都会の街路で見かける桜はソメイヨシノがほとんどですが、
まだ少し彼らが花を咲かせ始めるには早い時期。
ですが、新宿御苑のなかは、自分が想像するよりも
遥かに「春」が満開でした。
そんな花だより。
大木戸門から園内へ入ると、まずあの良い香りが。
桜より一足お先につぼみをつける、梅たちです。
薫る。
可憐ですね。
桜とまた違い、少し小さくて丸みを帯びている梅の花の形は
好きです。
あと、細くて硬い、真っ直ぐな枝も美しい。
そして何より、ふくよかでほのかに甘い香り。
紅梅も華やかで良いですが、白梅も雪のようで良いです。
この辺りは江戸時代に作られた庭園だそうで、
玉藻池という池が静かに水を湛えています。
春の気配。
池には鴨たちがお昼寝をしたり、
まだ冷たいだろう水面の上をすいーっと通りすぎていったり。
枝の上でひなたぼっこをしているものもいました。
のどかな春です。
こんな和風の庭園があるかと思えば、少し進むと
フランス式の庭園が顔を出します。
プラタナスの並木はまさに異国、という感じです。
立ち並ぶ。
葉の落ちたプラタナスの立ち姿は
おどろおどろしいですね。おもしろい。
それこそ西洋の絵本に出てくる、魔の森みたいなイメージ。
木々の合間にベンチが等間隔で整列しており、
そこに腰かけてひとり本を読んだり、会話しながら空を見上げたり
している人たちの様子を見るのもまた楽しいです。
フランス式庭園を通り過ぎると、再び和風な景色になります。
この辺りから、なかなか日常の道端では見ることのできない
様々な種類の桜に出会うことができます。
光る緋色。
まずは寒緋桜。
寒い中で咲く、一重の濃い緋色が特徴の桜です。
写真は、もう少ししたら花が開くかな?というところ。
こうした温かな色を目にすると、あぁ春が来たなぁと実感。
こちらはまた別の、ハッとする桜。
毎年目にするのに、やはりこの姿形を見ると、
胸がいっぱいになって、春が隣にいることを
感じずにはいらせません。
希望のきざし。
修善寺寒桜という名前だそうです。
寒桜ということで、早春に花を咲かせますが、
見た目はほとんど、ソメイヨシノにそっくり。
5枚の薄い花弁、少し色濃いような、淡いような桃色。
あぁ、春だなぁ。
こんな花も見つけました。
一輪の純白。
見上げるだけではなく、下を向いて歩くことも時には必要。
足もとで健気に咲いている花の真っ白さに心惹かれました。
白は光を浴びると一段と輝きますね。
池を渡る橋のあいだには、黄色いトンネルが。
春黄金。
サンシュユの花です。
別名、「春黄金花(はるこがねばな)」。可愛らしい名前。
"木全体が早春の光を浴びて黄金色に輝く"というのが由来だそう。
なるほど、確かに青空によく映える黄色です。
サンシュユは漢方とかにも使われる植物で、
身体に効能がある花でもあります。
さて、池の橋を渡り切ると、視界が開けて
芝生広場に出ます。
太陽がさんさんと降り注ぐその場所では、たくさんの人たちが
日光浴を楽しんだり、子供は駆け回って遊んでいました。
それを優しく見守る大樹に、特に人だかりが。
見上げれば、青空はいつの間にか無数の桃色に覆われて。
満つる宴。
小彼岸桜が満開でした。
まさか、ソメイヨシノの開花を見る前に
こんなに大きな桜の木が咲き誇って、春を謳歌している姿を
見られるとは思わず…驚きとともに、自分の胸の中にまで
桜の花びらがぶわっと広がって、一気に気温が上がるような
そんな感動を覚えてしまいました。
冬を耐えたからこそ、春が恋しい。
恋しかったからこそ、出会えたときの喜びはひとしお。
とても見事な桜でした。
春のきざしはまだまだ新宿御苑にたくさんあります。
その2に続く。