長い長い冬の時間が終わり、少しずつひなたの場所が増えて、
そこに落ちるぬくもりに、新しい季節の兆しを感じるころ。
外はまだまだ寒くて、自転車を漕げば耳や鼻が赤くなるし、
手はかじかんで、毛糸の手袋は手放せない。
でも、確実に春が近づいているんだなぁ、と感じる、
そんなわずかなひだまりのような景色。
大げさなものではなく、小品ばかりですが
そんな春先の、近所の公園さんぽで出会った風景です。
これを見上げると、あぁもうすぐ春が来ると感じますね。
春の息吹。
桜の枝に、わずかな膨らみが見られると、
寒い中でじっとしていた命が、ほんの少しの気温の上昇に目を覚まし
花弁を開くその日を夢見て、成長を始める…
動き出し、始まり。春はそんな季節ですね。
影模様。
まだ葉が出ていない木の幹はゆらゆらと影を落とし、
地面に不思議な、川のような模様を描く。
その上を何も気に留めずにとつとつと歩く鳩。
こんなに何も気にしないで歩いて行けたらなぁ。
その道のりの先には何があるのでしょうか。
こんな地面の模様ひとつとっても、興味深いです。
幾何学。
幾何学に引っ掛かった"異物"、これだけでも何となく
感じ入るものがあります。
意味を考えても答えはないけど、だからこそ面白いというか。
この金網の先では休日のおじさんたちが元気に草野球を
やっていて、楽しそうで真剣な声がまだひやりとする空気を
震わせてよく通っていました。
グラウンドの裏手には、夏場は賑わうだろうあの場所が。
この季節に見るそれは、とても静かに、佇んでいます。
樹木と同じです。次の時を待っているんですね。
待つもの。
懐かしい。公園のプール。
すごく浅くて、枯れ葉や枝が遠慮もなく入ってきて、
それをかき分けるように進む。
水の中にいるというだけで、違う世界です。
夏になったら、ここにたくさんの子供が集って、
思い出を作って帰るのでしょう。
けれど今は、静かに静かに、夢に閉じ込めて待っています。
トイカメラっぽく少しぼやかした感じで撮りたかったのですが
普通に失敗した写真みたいになっちゃいました(笑)
公園の逆側の入口には小さな円型の花壇があって、
注意深く見なければ素通りしてしまいそうな花たちが
先に春の訪れを告げるように、懸命に咲いていました。
動き出す。
とても小さい花で、地面からほんの数センチのところに咲いています。
それでもその紫はとても心に残る。
春がすぐそこまで来ているという知らせをくれました。
さらに奥には、遊具が一通りそろっている場所があります。
砂場、ジャングルジム、うんてい、懐かしい。
ちょうど来たときは、女の子とそのお母さんが
自販機で飲み物を買っているのみで、あとは無人。
塗料がはがれて、ところどころ金属がむき出しになった柵。
そこに日の光が当たると、鈍くすぅと光ります。
昔はこの遊具が一番好きだった。
整列。
空に向かって漕ぐと、飛んでるみたいじゃないですか?
立ち乗りより座って高くまで漕ぐのが好きでした。
足が真上に向けるくらい漕ぐと、視界いっぱいに空が広がって、
思わず飛べるんじゃないかと手を放してみたくなるけど、
危ないからしない(笑)チキンです。
日が暮れて、夕焼けチャイムが鳴るまで
ずっと漕いでいたことを思い出します。
昔から空が好きだったんだなぁ。
見上げればこの日は真昼の月。
冬場でなお発色の良い緑色をした、不思議な形の木の合間に
消えそうに白い月がぽっかり浮かんでいて。
昼の月ってとても不思議ですね。薄く消えそうなくらいなのが
逆に魅力的。探したくなるから。
昼の中月。
広さはそれほどでもなく、
本当に近所に馴染んだ昔ながらの公園、という感じです。
だから、旅に出ているときほどの心の動きはないかもしれない。
けれどその分、ほんの小さな、ささいなことに
ぴくりと反応する瞬間が確かにあります。
何でもないような、忙しいと絶対に見落としてしまうようなことに
カメラを通して向き合うことができるようになるのかなと。
それって自分の中ではとても幸せなことと思います。
小さなことにも幸せを見つけられるような人間になりたいですね。
小品ですが、お読みいただきありがとうございました。
たまにはこんな感じで。(いつもかも)
次はもっと春めかしい風景を描けるかなと思います。