ニコ技・日本人Maker深センツアー(その4)深セン部品工場の現実 | 3Dプリンターにバンザイ

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(その2) 香港から深センへはこちら
(その3)メイカー支援最先鋒seeedstudioにGo!はこちら
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seeedの見学後は、seeedの協力工場というプレス・切削加工、基板工場、射出成型の工場に見学にいきました。

最初の工場はこちらの会社


まず始めはプレス加工・切削加工をメインに行っている工場で、深センの中心街からバスで30分ほど郊外に向かったところにありました。seeedさんの案内ということでこちらの工場もあたたかく見学させてくれました。

まず入ってすぐの部屋に小さなバネを作る機械が動いていました。バネを作る機械を見たのは初めてでしたが、微妙に赤錆が入った色合い、針金をバネ上に巻き一定の長さで切り落とすための複雑な機構、そしてその動きはスチームパンク好きの懐古厨の少年心を揺さぶるのに非常に十分でした。


バネの製造機械


隣の部屋では、プレス加工機でモバイルバッテリーっぽい製品の筐体やフレーム、シールドなんかを作っていました。工場らしいガシャンガシャンという大きな音が鳴り響く部屋で、作業者がプレス加工機の前に座って作業をしていました。

プレス加工機と作業者


こういうプレス加工機は手を挟まないように、作動ボタンを両手で押す仕様になっており、このプレス加工機も両手で押すためのボタンが付いていたんですが、作業者の人は足踏みボタンで作動させていました。手を挟むんじゃないかと、ハラハラしちゃいます。


ガシャン! あぶない~


エアーで切り子を飛ばしながら作業するおっちゃん

切削加工で切り子が飛ぶ中で安全メガネ無しで作業したり、ズボンからシャツがはみ出していたり、安全面でとても恐ろしい状態。こちらは製品の品質だけでなく、従業員の安全にかかわるところなので改善してくれるといいのですが。


NCフライスの前で作業中

ちなみにこちらの工場、求人を貼りだしてました。月給1808元(約3万6000円)だそうです。


求人。時給240円、週末300円くらい


次に行ったのは基板工場。基板製造工程を最初から最後まで見せてもらえました。


こちらの会社さん


ちなみに基板の製造工程はP板.comのこちらのページが物凄くわかりやすいです。この製造工程を最初から最後真でほぼ全て、一つ一つ見ていきました。



穴あけ工程



プレスで基板を切り離し


検査用の治具倉庫


導通検査。画面に”PASS”の文字が。


こちらの工場も労働環境としては、非常に悪かったです。特に電解銅メッキ工程(だと思われる)の部屋では、揮発性の化学溶剤の臭いがかなりキツイなか、作業者の人がマスクもせずに作業していました。臭いのキツさで部屋から出た後、軽く頭が痛くなりました。

最後に行ったのが、射出成型の工場でした。到着が遅くなったため操業時間は終了していたのですが、工場長さんがわざわざ待っていてくれました。


数tある金型を持ち上げるためクレーンがありました



射出成型機

まわりに金型製作用の旋盤やフライス盤が設置してありました。樹脂の成型がうまくいかない場合は、すぐに横にある工作機械で金型を直すことができます。日本企業に比べて中国気が要はスピードがあることが大きな強みになっているようです。


フライス盤にセットされた金型


2日目の午後はseeedの協力工場3つを回って終了。製造現場を見させてもらうっていうのは、なかなか迫力もあるし、ものづくりをやる人には参考になる点も多いと思います。今回見せてもらったような、プレス加工や射出成型の現場を見るのは、現実的な設計をするためにもいい勉強になります。

見学させてもらってネガティブなことを書くのもアレなんですが、今回見学させてもらった工場は品質・安全管理にはちょっと難がありそうでした。5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底などは、地味で組織風土など根深い部分の問題だと思います。価格が安く、スピードがある分、品質が犠牲になっているのかもしれませんが、作業者の安全と健康は守っていただきたいものです。

その5へ続く

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