祟り神だから。
今さらながら。
TOHO映画『ゴジラ-1.0』について。
当初、怪獣モノかと。
映画館で観る気にはならず。
『Amazon Prime』で、お手軽に。
・・・いやー、素晴らしい。
まさかゴジラで泣くとは。
映画館で観るべきだった。
怪獣モノというより、ヒューマンドラマだ。
ヒットは、国内にとどまらず。
アメリカでも『子猫物語』を抜いて、
実写邦画興行収入1位に。
製作費20倍の『ミッション:インポッシブル』を抑え、
アカデミー賞受賞の快挙まで。
当初、山崎貴監督は、全米公開に懸念を。
> ドメスティックな内容なので、どうかなあと。
日本人的要素が濃いので。
海外でウケるのか?
結果は、「全米が泣いた」に。
うーん、日本人的だからこそ、
ウケたのかもね。
その理由。
ピピッときたのが、養老孟司さんとの対談。
解剖学者、作家としても有名だけど。
アート・イベント『GODZILLA THE ART』。
そのプロデューサーも務める怪獣好き。
今回の『ゴジラ -1.0』。
ゴジラ70周年記念作。
山崎監督曰く、
> ゴジラは神様とも獣ともつかない、
> 両方を兼ねた存在なんじゃないかなと感じました。
> ただのエンタメだと、
> 70年も残っていないような気がします。
> これだけの時間を乗り越えてきたのは、
> 日本人特有の宗教観とどこかでつながっていて、
> ゴジラ映画をつくる行為は、
> 海から祟り神が出てきちゃったから、
> みんなでお祀(まつ)りして鎮める
> 神事なんじゃないかなと。
おもしろい。
ゴジラは、「神」か。
たしかに。
日本の神社に祀られている神様。
災いをもたらす荒ぶる神が結構いる。
けど、お祀りして鎮まると力強い守護神に。
さすが「土」の国。
神様にも陰陽あり。
両極端な二面性が。
で、陰陽混じり合うと、「曖昧」に。
陰なのか、陽なのか?
陰でもあり、陽でもあり。
「どちらも」な良い加減。
これは、日本人の精神的なOSだね。
そのOSに準拠するアプリとして。
今回の『ゴジラ -1.0』が。
また、海外の映画との違いとして、
> アメリカのシナリオのシステムでいうと、
> 怪獣がなぜ襲ってくるかを
> 説明しないといけないんです。
> アメリカの核実験で焼かれて怪物になった生物が、
> なぜ日本にくるのか。
> それを説明するのがハリウッド的脚本なんですが、
> 日本の怪獣映画は「来てしまいました」と
> 素直に受け入れる。
「来てしまいました」って。
笑っちゃうけど。
妙に納得。
例えば、後輩さんがあなたのもとに来て、
「このたび、結婚します。」
これ、本人の意思。
けど、日本ならではの言い方がもうひとつ。
「このたび、結婚することになりました。」
これ、神の意思。
物事は、すべてコントロールできるものではない。
自分の意思のように見えても、
俯瞰すると、自分以外の大きな力が働いている。
個人の意志を超え、どうにもならない、
なるようになる流れがある。
自然災害抜きには語れない日本の歴史。
地震も災害も。
起きる時には、起きる。
なぜ、起きたのか?
天罰だとか、政治が悪いとか。
理由を求めてもいいけど、疲れるよね。
養老さん曰く、
> 能の幽霊みたいなものだ。
ゴジラも同じ。
怨みだけなら、水爆実験をしたアメリカに。
聴いてほしいメッセージがある。
届けるべき相手がいる。
だから、日本に。
聞き届けられることで、成仏。
「ああ、こっちに来ましたか。」
なぜか納得してしまう。
日本には、そんな精神的素地がある。
「金」気旺盛な欧米社会。
「金」気は、「きゅっ」と律する。
境界がハッキリすることで、
自他の区別が明確。
曖昧さは、好まれず。
論理的な説明が求められる。
養老孟司さんは、
> 現代って物事をボンヤリさせないという
> 悪い癖がある。
「悪い癖」とあるが、
「日本的なOSに準拠していない」
とも言い換えられる。
「本音と建前」が海外から不評なのは、
「土」と「金」の「OS違い」とも。
> なんでもキチンと説明しようとするから、
> 疲れちゃうんです。
> ゴジラは、「ゴジラみたいなもの」という
> 漠然とした説明でいいんじゃないですか。
キチンと説明されれば、ハッキリする。
ハッキリするけど、それ以外の余地がない。
余白がないのだ。
幅を持たせておくのは、
「土」のゆるさでもある。
「~みたいな」
「~なかんじ」
これこそ、「土」の表現。
輪郭が曖昧でしょ。
しかも、「土」に偏り過ぎると、
「説明は結論から」みたいな
「金」な観方が流行る。
自ずと、バランスが取られるのだ。
さらに、養老孟司さんは、
> 「ゴジラをつくり続けているのはなぜ?」
> と聞くとしたら、
> 「なんでお祭りをやってるんですか」
> と質問するようなものです。
> やらなくてもいいんだけれど、
> やっぱりやろうという人が一定数いるし、
> 参加する人もいる。
> だからお祭りをやる。
> お祭りをして、怒る人は
> あんまりいないと思います。
「やらなければいけない」
は、気が滞る。
「やってもやらなくてもいい」
けど、
「やりたいからやる」
時、気がスムーズにめぐる。
最もイイ仕事ができる。
最後に、山崎監督曰く、
> 製作を始めたら、コロナ禍があったり
> ウクライナの戦争が起きたり、
> 祟り神が憑いている感じがしたんですよ。
> 撮影は祟り神を祀って
> 鎮めているような思いもあったんです。
祟り神は、荒ぶる。
けど、鎮めれば、護ってくれる。
『ゴジラ -1.0』の世界的ヒット。
「ゴジラ」というお祭りをやりたいから参加し、
世界の人々の思いに眠る祟りを
お祀りすることで鎮めたからとも。
対談は、こちら。
動画は、こちら↓
前述の内容は、6:47から。
ピピッときたあなた。
ぜひ、観てね。
今日は、ここまで。
また、明日。
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