言葉以外で。
週イチ非常勤の私立高校。
新年度初めての授業。
今年は、どんな生徒たちと？
まずは、私の自己紹介。
続いて、授業方針の説明。
初回もＮＨＫ『プロフェッショナル』。
観て感じたこと、教えてね。
テキトーに当てるから。
みんな、露骨にイヤそうな顔。
そうそう、イヤだよね～。
なぜ、イヤなのわかってて当てるのか？
自分に問いかけてほしいから。
当てられたら、いちおう、考えるでしょ？
うーん、どうかなって。
その
「うーん」
が欲しいの。
だから、何も言えなくて、ＯＫ。
「わかりません。」
「特にありません。」
「パス」
単に首を振ってくれても大丈夫。
ただ、その前に。
「うーん」を３秒やってもらえる？
この「うーん」の先に。
（・・・いま私は、〇〇と感じた。）
があります。
それを「話す」ことで表現してもいいし、
「書く」ことでも。
「描く」ことでも。
人によっては、「奏でる」「踊る」「魅せる」など。
いろいろあるよね。
人前で話せないからといってね。
何も気にすることはないよ。
他の手段で表現すればいいから。
ただ、何で表現するにしてもね。
表現したい元ネタがなければ。
表現しようがないでしょ？
その元ネタをつかんでほしいから。
「うーん３秒」
チャレンジしてね。
あなたが自分の意見を言えないのは、
人見知りだからでも、
コミュ障だからでもありません。
何を伝えたいか？
自分でわかっていないだけ。
「ない」のではなく、「ある」。
最初から「ない」前提をつくらないでね。
さて、観てもらったね。
『プロフェッショナル』。
あなたは、何を観じましたか？
・・・じゃあ、Ｋくん。
「はい」
お願いします。
「うーん」
「えーと」
「うーん」
おお、頑張ってるね～。
そろそろ降参かな。
みんなの視線を浴びて。
ちょっと苦しそう。
ん？
けど、あきらめないな。
まだ、粘ってる。
「・・・〇〇が□□なところが」
ところが？
「スゴいと思いました。」
はーい、ＯＫ。
よく言えたね。
途中で何度もあきらめるかと。
けど、Ｋくん、あきらめなかったね。
「だるい」
「めんどくさい」
で逃げずに。
何とか自分の感覚を言葉にしようと。
慣れてないのに。
チャレンジし続けた。
みんなの視線に耐えながら。
私から観れば。
Ｋくんは、これと決めたコト、
簡単にはあきらめないね。
不器用だけど、
粘り強く、
自分のペースで続けられる。
そんな印象を受けました。
３年生は、就職、進学で面接があるよね。
面接では、
「自分が何を言うか？」
を意識しちゃうけどね。
面接官は、言われたコト、
そのまんま受け取ることはないよ。
そのコトバが出る前のココロを観る。
そもそも、ココロとつながったコトバか？
ほら、Ｋくんは何もアピールしてないのに。
チャレンジ精神旺盛で、粘り強い人だと。
私が勝手に観じたでしょ。
言葉だけでなく。
すべてを観じてね。
「あなた」を知ろうとしています。
だから、「素」であればＯＫ。
よそいきの自分をつくっちゃうほど。
「あなた」という人が伝わらない。
面接で不合格になるのはね。
「才能がない」
のではなく、
「わからない」
から。
あなたという人が伝わらないから。
その大学、企業に「合う」「合わない」が判断できない。
その前段階で落とされてるの。
思ってもいないキレイごと。
ペラペラ話すよりもね。
どもって、沈黙が続いても。
私なら、Ｋくんを採用します。
ああ、これが本音、本心だな。
そう相手が観じてくれたら、伝わってます。
そのうえで、ご縁があるかどうか？
面接官にゆだねるしかない。
あなたがどうこうできません。
けど、もったいないでしょ。
「私」が伝わらず、落とされるのは。
たしかに、言葉は大事。
より多くの人に受け取ってもらいやすい表現手段。
けど、言葉だけじゃないからね。
「話す」のが苦手なら。
あきらめて、「素」の自分であればいい。
それが一番伝わります。
「伝える」
のではなく、
「伝わる」
のです。
Ｋくん、グッジョブ。
ありがとね。
では、また、来週の授業で。
今日は、ここまで。
また、明日。