嫌よ嫌よも。
某競技の国体選手、Mさん。
気になることって?
「先輩に困っています。」
ほー、どんな?
「ハグされるんです。」
ハグ?
先輩って、女性だよね?
「ええ、そうなんですが。」
ですが?
「私、ハグされるの、苦手なんです。」
やめてほしいとは?
「毎回、言ってます。」
でも、通じないんだね?
「じゃれ合ってるつもりだと思うんですが。」
困るよね。
「しかも、先輩。」
先輩?
「めちゃ力強いので。」
振りほどけないのね。
「そうなんです。」
「いちおう、先輩だし。」
「これまで国体に一緒に出場した仲間でも。」
体育会系の上下関係は、厳しい。
令和でもね。
チーム競技なら、なおさら。
断るにも一線を越えられない。
「アスリートとしては、尊敬してます。」
だろうね。
国体に選ばれるくらいだから。
真摯に打ち込んで来られた人だろうし。
とはいえ、Mさんは困るよね。
「練習後は、もちろん。」
「飲みに行っても、ラーメン食べても。」
「いつハグされるかと、気が休まらないんです。」
うーん、不器用なのかもね。
「不器用?」
その先輩。
あまり得意じゃなさそうでしょ。
人付き合い?
「ええ、独特なんで。」
「交友範囲は、狭いかと。」
どうしたら、いいか?
わからないんじゃないかな。
相手にこう言われたら、どうするか?
選択肢が少ないのかもね。
「たしかに。」
「そんな気はしますが。」
先輩の前に。
Mさん自身がもたないよね。
「私に何を求めてるのって。」
わからないだけに不安だね。
求められるほど、気が重い。
「どうしたものかと。」
じゃあ、いつもどおり。
Mさん、その先輩に。
ひと言、言ってやるとしたら?
「イヤって言ってるでしょ。」
ふんふん。
「ちゃんと聴いてよ。」
まだまだ。
「ふざけて、ごまかさないで。」
それで終わり?
「私に何を求めてるのよ。」
おー、イイかんじ。
言葉にしっかり気が入ってたね。
心の奥底からの叫び。
Mさん、いま出てきた先輩へのセリフ。
「相手に言いたいコトは、自分に言いたいコト」
だとしたら?
「えっ。」
Mさん、体育会出身でしょ?
「ええ、めちゃ厳しかったです。」
先輩の命令は、絶対?
「絶対です。」
だよね~。
「1年の時は。」
時は?
「4年生に直接口をきけませんでした。」
あら。
「2年生にお願いして。」
それから、3年を経て、4年に?
「そう、そんなかんじです。」
マジで?
直答(じきとう)を禁じられるほど。
4年生は、やんごとなき存在。
上下関係が身に染みてるね。
「考える前に。」
「カラダが反応します。」
そうなるよね。
つまり、自分が何をしたいのかって。
「そんなこと、考えたことないです。」
言える機会がないもんね。
「自分より監督、コーチ、先輩です。」
先読みしないと。
生き残れないよね。
「練習中は、サバイバルです。」
しかも、Mさん。
体育会に入る前から。
結構、我慢するほうじゃない?
「あっ、そうです。」
言いたいこと、言えず。
言葉を呑み込んで。
誰かに強く言われたら。
ついそっちに流されちゃう。
「自分がどうしたいのか。」
「よくわからないので。」
「だったら、ハッキリ意見を言ってる人に従おうって。」
「わからない」ってのが、ポイントかも。
「ない」んじゃなくて、「ある」。
「ある」けど、わからない。
なぜだと?
「そんな習慣がないからですか?」
「自分に問いかけるって。」
「ほとんどしてきませんでした。」
私もそうなの。
人目ばかり気にしてると。
そのうち、わからなくなるよね。
センサーが鈍っちゃって。
スイッチがOFFになってるとも。
「OFFですか。」
ってことは、いつでもONに。
「けど、どうやって?」
まずは、気づくことから。
で、Mさん、いま気づいたよね。
ほら、先輩への本音。
「イヤって言ってるでしょ。」
「ちゃんと聴いてよ。」
「ふざけて、ごまかさないで。」
「私に何を求めてるのよ。」
これ、全部返ってこない?
Mさん自身に。
「刺さりますね。」
刺さるよね~。
私も流れ弾に当たっちゃったよ。
だとしたら。
Mさんは、どうします?
「うーん、いますぐには・・・。」
そうだよね。
じっくり訊いてみて。
スイッチをONにして。
「錆びついてそうなので。」
時間かかるかもね。
けど、きっと喜んでるよ。
気づいてくれただけで。
「だといいんですが。」
で、先輩なんだけど。
私なら・・・。
襟を正して。
マジで話すかな。
先輩の目を見て。
「マジでですか?」
うん、一流のアスリートだよね。
マジで目を見て話されたら。
ちゃんと聴いてくれるよ。
そのうえで、先輩がどうするか?
それは、Mさんの範疇外。
自分の気持ちを自分でキャッチ。
表現できたことで、そこで完了。
相変わらず、ハグされてもね。
きっと感覚が違うと思うよ。
先輩に固定されていた視点。
Mさん自身に向いてるから。
「ちょっと気が楽になりました。」
「出口が見えたというか。」
受け取ってくれて、ありがとね。
もう気づいちゃったから。
ムリに頑張らなくても。
「なるようになる」から。
Mさん自身の変化。
ちょっと観てみてね。
気になる相手。
つい相手のことに意識が。
どうこうしても、どうこうならない。
ならないほど、苦しみが増していく。
相手に言いたいコトは、自分に言いたいコト。
そんな観方もありますよ。
今日は、ここまで。
また、明日。