窓際の前から3番目。
力なく顔を伏せて、身体ごと机の上に
預けるような形で丸くなっていた。
4-2と表示されている教室の中には
数十人の子どもがひしめき合っていた。
私には、子ども達の会話としてではなく、賑やかしい騒音として
耳の奥に詰まるような異物で、脳まで到達するような勢いの圧迫感だった。
思わず両耳を両手で塞ぐ。
数分経った頃、ある人物が教室に入って来た。
色白の丸い顔に四角い黒ぶち眼鏡をかけ、髪の毛は、耳下まで緩くパーマをかけていた。
色白が一層引き立つ白いブラウスに、紺色のタイトスカートを履いた中年の女教師が、腕の脇に教科書と大きな定規を挟んで、訝しげに教室に入って来たのだった。
ガラガラガラ
『おはようございます』
大きな声が教室内に響く中、その賑やかしい騒音の異物が、一瞬にして消えた。
ピリピリと張り詰めた空気が漂う。
まるで、押入れに隠れて息を潜めているかのような、静寂に包まれる。
『出席を取ります』
私が、全身の力を出して、身体を起こし、四角い黒ぶち眼鏡の奥の瞳を凝視することなく、背後の黒板を見据え、何とか、朝礼と言う儀式をやり過ごした。
そして
『授業を始めます』
終始、無表情な仮面を被ったような眉間に皺を寄せた教師が、淡々と進めて行く。
『今日は、〇〇ページから』
と言う頃には
窓から入る朝陽が眩しく、一気に机の上に上半身を委ねた。
『あぁ駄目だ』
『だるい』
『重い』
『しんどい』
私は、暗闇の中へと入って行った。
起き上がれない…。
話が耳に入って来ない…。
私と言う人間が砂のようにサラサラと流れ落ちていく
変わりに、『うつ』と言うしずく💧が私の体内に滴り初めていたのだった。
続く