Ψ(さい)のつづり -57ページ目
春が来て
夏がちょっと早めにやって来て
秋が駆け足で過ぎて行って
冬が来て
また春が来る
梅がかおって
木蓮が開き
桜が咲いて
つつじがあちらにも
こちらにも
強くなってきた陽射しを
くっきりと
色で感じさせてくれる
ひとつひとつのことが
歓びとなり
心に押し寄せてきて
油断していると
すぐに涙目になる
つばめもおかえり
巣の具合はどう
夜明けがはやくなって
空のあおが
別のトーンになり
雲の形がかわってきて
それはそれで
また美しい
季節はめぐりめぐるけれど
同じなようでいて
全然違う
子どものころに
見上げた空は
もうないけれど
年々
輝きを増して
美しさに磨きがかかる
そして
毎年
新しい
エッセンスを
世界に
振りかけて
わたしたちのことも
少しずつ
変えてくれているんだね
ありがとう
世界は
どんどん
良くなっていて
わたしも
追いかけていくよ

あのころの
わたしとせんせいが写った
写真をみつけたよ
あのころの
わたしの世界で
いちばん
かしこいのは
せんせいだったし
わたしは
全身全霊で
せんせいに
憧れていたから
せんせいが
よい大人でよかった
だってせんせいが
すべてだったから
せんせいが
わるい大人だったら
簡単に
ついていっただろうから
わたしは
結局
憧れのせんせいの
道には進まなかったけれど
そして
たくさんの寄り道と
行き当たりばったりを
くりかえしてきたのだけれど
それら
すべてには
意味があったんだと
いまは
おもえるようになったの
だから
いまのわたしが
一番好きだよ
せんせいがいま
どこにいるかわからないし
もう
会うことは
ないだろうけれど
きっと
ようやってるぞ
えらいな
って
笑ってくれるんじゃないかな
わたしも
自分で
なんだかんだ
えらいやんって
おもうけど
ときどき
せんせいみたいな人に
ようやってるって
ほめてもらいたいから
まだまだ
かもね

世界の
はざまで
祈りを
ささげる
陰と陽
陽と陰
おもてとうら
うらとおもてを
くりかえし
かのこ編みの目ように
ぽこぽことした
模様が
浮かび上がる
まだ寝静まっている
早朝に
金星が
まばゆいばかりの
輝きをみせている間
いびつになった
編み目がないか
チェックする
編み間違えはほどいて
作り直す
明るくなってきて
もう間もなく
日が昇る
日が昇れば
すべての
ごまかしは
灰燼に帰するだろう
編み直しなんて
生ぬるいことは
期間限定の
特典だったことに
あとから
気付くのだろうか
誰も見ていないなんて
単なる思い込みだったことにも

あなたは
生きる奇跡
奇跡が歩き
弾き
そして
微笑む
奇跡を目の当たりにして
わたしたちは
驚き
賛美し
そして
希望をもつ
わたしたちの
DNAには
無限の
可能性があるということを
目の前にいる
あなたが
教えてくれるから
視覚でとらえられる
二次元の
音符の世界を
読み解いて
ピアノという
三次元の空間に
落とし込む
そして
四次元以上の世界の
ギフトにする
それが
プロの音楽家なら
あなたは
直接
五次元以上の宇宙と
繋がって
四次元を癒し
三次元の指から
ふたたび
四次元以上の世界へ
音霊を
広げることができる
演奏家
作曲家はきっとそうやって
曲をつくっていて
後の世に伝えるために
ノートを残しているに過ぎない
ということに氣付かされる
だから
あなたのことを
すべての音楽家は
うらやむけれど
ねたみはしない
誰にも
なしえなかったことを
いつでも
よろこびをもって
やってのける
姿を前にして
ただ
ただ
一緒に演奏できることに
感謝するだけ
努力を重ねて
前進し続ける
あなたと
同時代に
同じ国にいる
奇跡に
そして
あなたの演奏会にいけなくても
いつでも
あなたの音に
触れられる
この時代に
ありがとう

五月晴れ
色とりどりの
つつじも
咲き乱れ
野生の藤が
木々に絡まり
気付いたら
一体化していて驚くけれど
代わりに
お化粧をほどこしてくれる
ああ
ほんの
些細な事でもいいから
あたりまえや
いつものことを
ひとつずつ
少しずつ
変えていこう
丁寧な言葉遣いをする
ありがとうをきちんと言う
ごみ捨てに行く途中で
道端のごみを拾って一緒に捨てる
ミュージックアプリを
別のものに変えてみる
慌てず
すばやく
油断せず
どっしりと構える
おせっかいはせず
ジャッジも
コントロールもいらない
自分に
一点集中


