Ψ(さい)のつづり -56ページ目
マチュピチュに
恋焦がれる
虹のかかる
あの断崖絶壁の
街には
どうやったら
辿り着けるのだろう
コンドルになって
空から行くのが
一番
良さそうだ
ペルー文明の
神々は
崇高で
パワフルなのに
お高くとまったりはしない
その明るさは
これからの
世界に
必要な
軽やかさ
生贄の
儀式も
その前の
決闘からして
エンターテインメント
命がけで
戦った
敗者は
喜んで
聖なる
命を捧げる
そうやって
神様の
近くに行けるのなら
負けるが勝ちなのだろう
地球のほぼ裏側なのに
この親近感
まるで
もともと
知っているかのよう

夜中に
星々が奏でる音は
日中は
太陽の光に隠れて
きこえにくい
天動説
いまでは
誤りで
偏狭で驕り昂った
過去の人間のものの見方だと
されているけれど
北極星を起点にして
天界が
巡っていくのを
わたしたちは
一晩のうちにも目にすることができ
そのさまは
まさに天動説そのもの
目に見えるものや形が
すべてを
あらわしているわけではないと
知ることは
視野を広げてくれるけれど
見えたままは
見えたままの
在り方で
十分に
意味があることを
わたしたちに
伝えてくれる
わたしたちが全宇宙の中心では
もちろんないけれど
わたしたちが
ここにいて
ここから
宇宙を眺めるさまは
やはり
どんなに未熟でも
それはそれは
愛おしく
美しいんだろう

緑の稲
黄金の麦の
季節は遠く
今年の
豊穣に
感謝をささげる
刈取り後の稲の茎が
己をさくさくとさせることで
土が乾きすぎるのを防ぎ
雀の食べ物を用意しながら
茶色の田は
来年のために
しばし休息する
すでに
麦畑は耕され
ひそかに
種まきも済んでいる
芽が出ては踏まれ
芽を出しては踏まれながら
一番寒い時期を
たくましく
過ごすのだろう
空の青さが
大地一面に広がる
寂寞を
なだめ
雲の鳥が
見守る
低い軌道を描く
太陽は
遠慮がちに
暖かさを
分け与え
主役の
月に
そそくさと
舞台を明渡し
役割を
全うする

冷え込んだ朝
ホーム横の信号で
トラックが
停まった
ぶきゃーと小さな悲鳴が上がる
小さな駅のホームは道より少し高いから
思わず振り向いた
その荷台には
ぶたさんが
ぎっしり
よろけても
転ばないくらい
ぎっしり
裸んぼうで
トラックの揺れに合わせて
押し合いへし合いしていた
寒そうだけど
ぎっしりだから
寒くないかな
丸々と太ったぶたさん
満載のトラックの
行き先は
誰に
聞かなくてもわかる
わたしは
どのぶたさんでもいい
目を合わせて
感謝を伝えようとしたが
みんな
みんな
目を閉じていた
もう
わかっているんだね
今日あなたたちの
身に起こることを
わたしたちは
みんなみんな
あなたたちの
いのちを
いただいているんだね
わたしは
ぶたさんたち全員に
愛と
平和と
感謝を
できるかぎり
念じた
通じたかどうかは
わからないけれど
信号が変わり
ぶたさんたちは
みんな行ってしまった
今日も
わたしはちゃんと
生きます
いのちを
いただいて
生贄は遠い過去の話じゃない
こうやって
毎日毎日
どこかで起こっていること
生きていくことは
いのちをいただいて
繋いでいくこと
ありがとう
ありがとう
ありがとう

秋と冬が
押し合いへし合い
つい最近までは
秋がどっしり
大きなかぼちゃのように
鎮座していて
ここ数年
秋が
なかったと
皆さん
おっしゃるから
と
太いさつまいものように
ずっしり
居座っていたけれど
はいはい
もう師走なので
さすがに
また来年きてね
と
冬に押され気味
おかげさまで
銀杏も
もみじも
とても
きれいで
長持ちしたけれど
風が
どかんと
吹き荒れて
飛ばすよ
大掃除モード
きりりと冷え込んで
年末が近いのよと
みなさんに
知らせなきゃ
さあさあ
買い物もいいけれど
断捨離
大掃除
サンタも
となかいも
年神さまも
いらっしゃる


