Ψ(さい)のつづり -4ページ目
契約は
お互いに
不自由なことも
受け入れて
相手のために
きちんと
守ることが
期待されている
それは
お互いが
大切に
扱われている
ように見せる
しかけ
ただし当事者が誠実に
守っていても
間に入る者によって
平気で
踏みにじられる
これはいらないと
はっきり
断っても
いつの間にか
いることに
なっていたり
勝手に
情報が
漏れていたりする
ゆっくりと時間をかけて
おこなう
いい加減な
伝言ゲームを
仕事と呼び
高い報酬を得る
そして
契約と一緒に
配られる
紙の中に
逃げの口実を
巧妙に隠し
堅牢な
砦に
守られているという
安心感の中で眠る
審判は
時間の問題
そのとき
明らかになる

冬至に向かう
いまの時季は
お昼を過ぎると
もう日が傾きかけている
八つ時にもなれば
家路を急ぐ
家に着けば
もうどこへも
出かけなくてよい
幸せを
噛みしめ
お八つを
いただく
そんなこんなで
日中は
なんとはなしに
気が急くけれど
暮れてしまえば
まるで
深夜のよう
それでも
時間がまだ早いことに
ほっこりしながら
あたたかくして
本を読む
たっぷり
たっぷりの
充電時間

マチュピチュに
恋焦がれる
虹のかかる
あの断崖絶壁の
街には
どうやったら
辿り着けるのだろう
コンドルになって
空から行くのが
一番
良さそうだ
ペルー文明の
神々は
崇高で
パワフルなのに
お高くとまったりはしない
その明るさは
これからの
世界に
必要な
軽やかさ
生贄の
儀式も
その前の
決闘からして
エンターテインメント
命がけで
戦った
敗者は
喜んで
聖なる
命を捧げる
そうやって
神様の
近くに行けるのなら
負けるが勝ちなのだろう
地球のほぼ裏側なのに
この親近感
まるで
もともと
知っているかのよう

夜中に
星々が奏でる音は
日中は
太陽の光に隠れて
きこえにくい
天動説
いまでは
誤りで
偏狭で驕り昂った
過去の人間のものの見方だと
されているけれど
北極星を起点にして
天界が
巡っていくのを
わたしたちは
一晩のうちにも目にすることができ
そのさまは
まさに天動説そのもの
目に見えるものや形が
すべてを
あらわしているわけではないと
知ることは
視野を広げてくれるけれど
見えたままは
見えたままの
在り方で
十分に
意味があることを
わたしたちに
伝えてくれる
わたしたちが全宇宙の中心では
もちろんないけれど
わたしたちが
ここにいて
ここから
宇宙を眺めるさまは
やはり
どんなに未熟でも
それはそれは
愛おしく
美しいんだろう

緑の稲
黄金の麦の
季節は遠く
今年の
豊穣に
感謝をささげる
刈取り後の稲の茎が
己をさくさくとさせることで
土が乾きすぎるのを防ぎ
雀の食べ物を用意しながら
茶色の田は
来年のために
しばし休息する
すでに
麦畑は耕され
ひそかに
種まきも済んでいる
芽が出ては踏まれ
芽を出しては踏まれながら
一番寒い時期を
たくましく
過ごすのだろう
空の青さが
大地一面に広がる
寂寞を
なだめ
雲の鳥が
見守る
低い軌道を描く
太陽は
遠慮がちに
暖かさを
分け与え
主役の
月に
そそくさと
舞台を明渡し
役割を
全うする


