Ψ(さい)のつづり -29ページ目
あおげばとうとし
いまどきは
歌われないみたいだけれど
今日は
エンドレスで
流れています
わたしの頭の中で
あなたはたぶん
14か15歳で
うちにきてから12年半になる
ひなまつりには
すでに
体調が悪かった
なぜか沈んでいられず
浮いてしまう
あなたは
すぐにでも
虹の橋を渡りそうだったけれど
持ち直して
底に沈んでいられるようになった
もう
めしいていたから
ごはんを食べるのが難しかったけれど
食欲は旺盛で
本能でごはんを狙って
突進していた
もしかしたら
もしかするかと
思い始めた矢先
あなたは文字通り
倒れてしまった
水底でひっくり返って
口を開いていたあなたは
金魚がヒレで
ぺしぺししても
何の反応もなかった
とうとう
おかくれになってしまった
と思っていたら
急に
いなくなって
別の場所にいたから
本当に
驚いて
あなたは
もしかして
不死身なのかもしれないと思った
逆さまで水底にひっくり返っているかと思えば
水槽の隅にもたれる形で
縦になって水面に口をだしたり
驚異的な生命力で
意識を失ったり
回復して場所を移動したり
繰り返しながら
半日持ち堪えた
昨日の夜
もう寝るねと
声をかけたら
底でひっくり返っていたあなたは
くねくねして返事をしてくれたけれど
もう移動する力は残っていなかった
今朝になってみたら
そのままの場所で
少し
もよもよが積もったようになっていた
底にいたまま
水面に浮かずに
おかくれになる魚を
はじめてみたから
もしかしたら
まだ
と思ったりもしたけれど
あなたは
もうかたくなっていた
さくらの近くの土に
あなたをいれたけれど
あなたは
美しいままだった
というより
死化粧を施されたみたいに
きれいだった
どんな状況でも
へこたれず
生命をまっとうするあなたは
まちがいなく
わたしに
ギフトをくれた
そして
生命を燃やし尽くした
最高に強いあなたは
天にも祝福され
きれいな姿かたちで天に召された
水槽の底に
いつもいたあなたがいないのは
こんなにも
さみしいけれど
天晴
いざ
さらば

雨はやがて
あがる
ずっとずっと
あがらなければ
ノアの箱舟
桜を元氣づけたり
土をやわらかくしたり
緑を濃くしたり
寒さを緩ませたりしながら
雨によって
季節は進んでいく
ずっと降りっぱなしだと
卒業式もままならないから
きちんと
止み間もつくりながら
春の
背中をそっと押す

毎年
毎年
必ず
今頃
咲くのは
神さまとの
約束だから
最近は
秋や冬にも
春みたいな日があって
寝坊しちゃったかと
慌てそうに
なるけれど
年度の切り替わりの節目で
新たな一年の
はじまりに
美しさと希望を伝えて
みんなを励ます役目があるから
それに
長い冬を
耐えた虫たちに
栄養を
分け与える
お母さんでもあるから
やっぱり
今の時期に
咲かないとね
ウグイスが
歌の練習を
はじめたら
わたしも本腰入れて
咲く準備を
始める
月の満ち欠けが一巡する
時をへて
ようやく
花を咲かせて
今年の成果を
披露するのよ

毎日
毎日が
新鮮で
神聖な
氣持ちで
迎えられたら
理想だけど
寝不足だったり
寒かったり
暑かったり
大雨だったり
なかなか
そうはいかない
朝もある
そんな
わたしたちのために
ありがたいことに
いろんな節目が
きちんと用意されていて
ちゃんと
季節や
新たなサイクルを
意識できる仕組みに
なっている
今日は
宇宙の新たな
一年のはじまりで
昼と夜が同じくらいの長さで
太陽が牡羊座に
入る日
それ以前に
きちんと春分の日って
名前がついていて
本格的に春になる日
だから
一見ただの曇りの日だけど
ただものじゃない
そんな
大切な
一日

古民家といえば
聞こえはいい
昭和
平成
令和と
またがって
生き延びてきた家は
どこを
どう直すというよりも
すでに
生き字引のようで
若輩者の出る幕ではございませぬ
と降参せざるを得ない
寒さ
暑さが
直球で攻め
平衡感覚も
若干試されるような
氣分で
屋根の上で眠る猫に
ただいまをいえば
カラスもおかえりと
迎えてくれて
桜も咲く
これは
もしかして
とてつもない
豊かな時間の中に
いるのではないかと
じんわり
感動していると
そんなことも
わかっていなかったの
と
うぐいすが
笑い
かぐわしい
風が
そよぐ


