Ψ(さい)のつづり -20ページ目
とねりこトンネルの
近くで
お話しましょう
そう
誘ってみたけれど
会う時間を
惜しむように
電話で用件をきかれた
がっかりもしたけれど
それは
別れを惜しんでくれることを
期待していただけ
面と向かって
お話することが
大切だと思いこんでいたけれど
そんなことをする
必要はお互いになくて
取り越し苦労だった
二度と会わなくなることが
まったく大したことで
ないかのように
事務的なトーンで
電話を終えてみれば
逆に
すっきりした
自分がいて
伝えることを
危惧していた
自分の愚かさを
笑った
だれもかれも
自分のことで
手いっぱいで
他人のことを
顧みる余裕なんて
ないんだ
だからこそ
わたしは
自由で
だれにも
気をつかわずに
自由に
飛びたてばいい
飛びたった途端に
お互いのことなんて
とおく
とおく
記憶の彼方へ
忘れ去って
しまうんだろうから
変な罪悪感なんて
いらないんだ
自分の責任は
自分でとる
だれにも
借りはないんだから

秋の
空気に
入れ替わると
心も
しっとり
ひんやり
落ち着いて
いったん
リセット
秋分からの
後半戦に
備えます
心が
落ち込んで
どうしようもない
年もあるけれど
今年は身体と
半分こ
みたいだから
少しゆっくり
過ごそう
まあるい
まあるい
おつきさまが
のぼるころ
きんもくせいが
かおるころ
新しい
一年がはじまる

ある日
森の中に
行かなくても
くまさんと
であっちゃう
そりゃあ
たまげて
イヤリングも
落とすでしょうよ
ところが
いまでは
落としものどころか
スマホで
撮影するため
人が
近寄っていく
くまさんは
ごはんを
食べながら
戸惑う
ちょっと
落ち着かないんですけど
驚かして
追っ払おうか
でも
とりあえず
食べれるだけ食べて
また
来られるように
ちょっと猫かぶっておこうか
ここの食べ物はおいしいし
ひとりだから
ぼちぼち
様子見
だけど
あんまり
勝手に
撮影しないでほしいな
くまっちゃう
動物園じゃ
あるまいし

不甲斐ないと
自分を嘆くことはない
だって
歩がいなかったら
世界は成り立たないでしょ
歩ひとりぼっちじゃ
弱々しくて
何の役にも立たないように
見えるかもしれないけれど
歩がひっくり返れば
めちゃくちゃ
強くなれるし
ひっくり返らなくても
連繋プレーで
玉将を
とれる時だって
あるでしょう
だから
歩が要るし
その他大勢じゃ
おわれない
鮮やかな
テンプロ・マヨールが
いつか
発見されたように
いまは
地に埋もれていても
必ず
飛躍のときは
訪れる
永遠に開かない
扉は
ない
要らない歩なんて
あるもんか

何度も
何度も
同じ場面を
おもい返し
反芻する
反芻の数だけ
きもちが絡まり合い
醜いかたまりになり
吞みくだせなくなる
何かが起こるとき
原因があって
結果がある
そう思うのは
3歳以上の
おそらく人間だけ
かしこい犬は
3歳くらいの
知能があるというし
ことばの種類も
いくつかは聞き分けられる
それでも
雷が鳴ったとき
あ
これは
雷だから
光っているんだ
雷だから
音がすごいんだ
でも
じきにやむよ
なんて風には
考えないから
大きい音も
すごい光も
ただ
ひたすらに
恐ろしく
しょんぼり
尻尾を巻き
耐える
でも
結局のところ
原因がわかったところで
あまり慰めには
ならないのかもしれない
大きい音と
すさまじい光は
理屈抜きで
恐ろしいから
それに
ものごとの
原因は
おそらく
ひとつじゃない
そして
その答えに
納得がいくかは
別問題
自分で原因を見つけ
それで納得できればもうけもの
納得できないなら
反芻をやめて
さっさと
忘れるが
勝ち


