Ψ(さい)のつづり -11ページ目
魚は魚としてうまれ
魚として歩む
群れ
食べ
食べられ
数で勝負する
鳥は鳥としてうまれ
鳥として歩む
本分を果たし
さえずり
つがい
あるものは
捕食される
獅子は獅子としてうまれ
獅子として歩む
百獣の王として
君臨し
威厳をもって
動物界を支配する
それなのに
どうして
人間は
魚や
鳥や
獅子になりたがるんだろう
本分を超えて
泳いだり
飛んだり
世界の頂点に
昇りつめようとする
でも
それが
人間であり
創造性を発揮する
カイロス
イカロスにならず
謙虚であれば
世界を塗り替えられる
それこそ
人間の
醍醐味

木は
大地に根を張り
何があろうと
同じ場所にいて
太陽との関わりに合わせて
樹形をつくり上げていく
毎年毎年
四季を味わい
何十年
何百年と
生きていくけれど
一日一日を
決して
おろそかにしない
わたしも
日々を
ぼんやりしないで
きっぱりと生きられるよう
その木の氣を
おすそわけしていただく
そして
その木の上で唄う鳥から
美しい声を
学ぶ

読みおえて
幸せな
氣持ちに
なれる本は
稀有な輝きに
満ちていて
別れを惜しみながら
卒業していく
学生時代のように
内側に
希望の火を灯してくれる
背筋を伸ばして
新たな一歩を
わたしも
踏み出そう
いま
この美しく広い世界で

あおげばとうとし
いまどきは
歌われないみたいだけれど
今日は
エンドレスで
流れています
わたしの頭の中で
あなたはたぶん
14か15歳で
うちにきてから12年半になる
ひなまつりには
すでに
体調が悪かった
なぜか沈んでいられず
浮いてしまう
あなたは
すぐにでも
虹の橋を渡りそうだったけれど
持ち直して
底に沈んでいられるようになった
もう
めしいていたから
ごはんを食べるのが難しかったけれど
食欲は旺盛で
本能でごはんを狙って
突進していた
もしかしたら
もしかするかと
思い始めた矢先
あなたは文字通り
倒れてしまった
水底でひっくり返って
口を開いていたあなたは
金魚がヒレで
ぺしぺししても
何の反応もなかった
とうとう
おかくれになってしまった
と思っていたら
急に
いなくなって
別の場所にいたから
本当に
驚いて
あなたは
もしかして
不死身なのかもしれないと思った
逆さまで水底にひっくり返っているかと思えば
水槽の隅にもたれる形で
縦になって水面に口をだしたり
驚異的な生命力で
意識を失ったり
回復して場所を移動したり
繰り返しながら
半日持ち堪えた
昨日の夜
もう寝るねと
声をかけたら
底でひっくり返っていたあなたは
くねくねして返事をしてくれたけれど
もう移動する力は残っていなかった
今朝になってみたら
そのままの場所で
少し
もよもよが積もったようになっていた
底にいたまま
水面に浮かずに
おかくれになる魚を
はじめてみたから
もしかしたら
まだ
と思ったりもしたけれど
あなたは
もうかたくなっていた
さくらの近くの土に
あなたをいれたけれど
あなたは
美しいままだった
というより
死化粧を施されたみたいに
きれいだった
どんな状況でも
へこたれず
生命をまっとうするあなたは
まちがいなく
わたしに
ギフトをくれた
そして
生命を燃やし尽くした
最高に強いあなたは
天にも祝福され
きれいな姿かたちで天に召された
水槽の底に
いつもいたあなたがいないのは
こんなにも
さみしいけれど
天晴
いざ
さらば

雨はやがて
あがる
ずっとずっと
あがらなければ
ノアの箱舟
桜を元氣づけたり
土をやわらかくしたり
緑を濃くしたり
寒さを緩ませたりしながら
雨によって
季節は進んでいく
ずっと降りっぱなしだと
卒業式もままならないから
きちんと
止み間もつくりながら
春の
背中をそっと押す


