この本を読んで理解できたのは、毛沢東主席が文化大革命による混乱を終了させるため、紅衛兵運動で不要となった若者たちを強制的に農村に追いやったのではないということでした。
中国は建国当初、つまり1950年代の初頭から都市の人口増に悩んでいました。
解放後、都市の産業発展はまだまだ未熟なのに、年を追うごとに学卒者が増加するため、就職できる仕事の数は不足し、仕事にあぶれる若者が出てくるのは自明の理でした。
解放直後から、都市経済が大幅に成長しなければ、当時の都市人口の増大を吸収できないことは明らかだったのですが、建国直後の段階では都市には貧弱な工業体制しかありませんでした。
結果、1950年代の初頭から中国政府は計画的に都市近郊の国営農場や農村に若者を分配する(移住させる)作業を進めていました。
しかし、その活動が急拡大したのが、いわゆる“老三届”(ちょうど文革期に当たる1966年、1967年、1968年の高校卒業生)の下放でした。
この本では筆者による意見の記述や分析はほとんどなく、知識青年の下放に関する事実が淡々と述べられています。
中国人にはその点が物足りないと考える人も多いようですが、外国人の私には、当時の実情を概括的にありのまま理解するのにとても役に立ちました。
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書 籍 名:《知识青年上山下乡运动纪实》
著 者 名: 周亚平
出版社名: 东方出版社
出 版 日: 2014年 5月 第1版
2014年 5月 第1次印刷
自己評価: ★★★
文 字 数: 110千字/計25,428千字
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