30時間のバスの長旅が始まり、車内一泊明けの翌朝、バスはパタゴニア平原にある、小さな町に到着。

朝の休憩は思ったより時間が長い。売店でコーヒーを飲み、ストレッチ。
それでもまだ出発する気配がないので、トイレで用を済ませ、洗顔フォームで顔を洗う。
はぁぁぁ! スッキリ!!!
と思って戻ると、バスがない。
「*○▽◆@::::\$%&"・・・・・ん?????」
一瞬、混乱。でも、動き始めたバスがバスターミナルから出始めた。
ヤヴァイ!オイテカレタ!
必死に追いかける。
右手に洗顔フォーム、左手にハンカチとトイレットペーパー。
運転手のミラーに見えるように右後方、左後方を走り、手を振ってみる。
「まってぇぇぇぇぇぇぇ~~、こんな知らない町においていかないでぇぇぇぇぇぇ~~~」
しかし、バスは停まらず。
道路のど真ん中を意味不明の言語を叫びながら走る東洋人を、アルゼンチンの人々は奇怪な目で見る。でも、そんな人たちにも助けてもらえる可能性を信じ、スペイン語で
「カラファテ行きのバス!!!! 私もカラファテに行くの!!!私のバス!!!」と叫んでみる。
バスは無情にも加速する。
「ほんま、こんなところ置いていかれたらシャレにならへん。っていうか、なんでこんな所で、ワタシ、マラソンしてるん??っていうか、昔マラソン走っててよかったぁ~。さっき、ストレッチやっててヨカッタ。」
とか、一人ブツブツ言いながら走るも、バスとの勝負ではどうやっても私の負け。
が、神様は見放さなかった。
バスが曲がり、何か倉庫のような所に停まった。
おお!!と息をゼーゼー言いながら走り続ける。
給水と給油の様子だ。
幸運にも追いついたワタシは、バスの隣に立っていた運転手に、汗まみれで真っ赤な顔をして「なんで置いていくねん」と言ってみるも「おお~、おまえさん、朝飯でも食ってたのか?」というジェスチャーしか帰ってこない。っていうか、点呼してヨ。乗客の人数、確認してヨ。でも、やっぱり、これも自己責任なのね。ガックリ。
自分に腹を立てても、運転手に腹を立てても、近くに座っている旅行者に腹を立てても仕方がないので、フーフーいいながら席につく。
これまでの旅経験で初めてバスに置いていかれた。
いいネタだけど、正直、泣きそうだった。