遅ればせながら「火怨」を読んだ | 92のブログ

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入院中の暇つぶしのために、
病院に持ち込みました。
1999年に刊行された
「火怨 北の燿星アテルイ」(高橋克彦)
の講談社文庫版(上下巻)。

率直な感想は、
よくこの時代の話を
これだけ細かく書き上げたな、と。

文献もそんなに無い時代だから
時代考証が難しいだろうし、
詳細な現地取材を重ねたであろう綿密な地形描写。
そして、
歴史の史実の範疇を逸脱しない中での
壮大なストーリー。

NHKでドラマ化されてるらしいけど、
俺は先に原作を読めて良かったと思った。
どう考えても、映像にできない場面があるから
作者が真に伝えたかった原作の雰囲気を
先に体感できて良かった。
まあ、
原作を読んだら映像を見たいとは思わないけど(笑)
登場人物のイメージも、
先入観なしに読めたから、
自分の頭の中で徐々に出来上がっていった感じ。

単なる時代小説ではない。
ある意味、
現代にも通じる人種差別や民族紛争の問題にも
深く斬り込んでいるストーリーで、
主人公のアテルイの
虐げられる側の長く苦しく虚しい、
けど最後の最後に希望が見える抗いが
存分に描かれている。

フィクションながら、
本当にこうだったんじゃないか?
とさえ思ってしまう良い話だった。
ちなみに、
「火怨」は2000年の吉川英治文学賞作品である。

本の文字でしか情報が入って来てないから
この舞台だった東北、
とくに岩手に行きたくなりました。
著者の高橋克彦さんは岩手の出身。
地元を舞台にした壮大な歴史小説を書いて
文学賞を受賞して、
ご本人も大満足なんじゃないですかね?
こんな素晴らしいこと、ないですよ。

入院は正直、メンタル凹む出来事でしたが
この本を読めたことは、俺の人生にプラスでした。