サザエさんの怖い落ち(1)

 

お父さん、新聞くらい、お家に帰ってゆっくり読んで下さい。

 

朝日文庫版37巻〔56頁〕・昭和43年

『サザエさんのお父さんが、小さな飲食店に来ています。お父さんは、中華ソバを食べ終わり、新聞を読みたくなりました。近くでタバコをふかしているお店のご主人に、「おやじさんきょうのしんぶんある?」と尋ねました。すると、ご主人は「ヘイ」と威勢よく答えました』

『ご主人は、店の空いているテーブルの椅子に座り、椅子の足元にお盆を立てかけて、新聞を読んでいるデップリと太った店員の女の子の方に、困った顔をして近づいています』

『ご主人は、右手で女の子を指さし、左手を横に振りながら戻ってきました。そして、「うちのネーちゃんがみていますから」と言います。お父さんは、顎を指でさすりながら「いいじゃないのかりるぐらい」と不思議そうな顔をしています』

『ご主人は、お父さんが座っているテーブルに、凭れかかるようにして、体を小さく震えさせながらせながら、「求人らんを見ているんでス」と怖がっています。お父さんは、そんなご主人を、マジマジと見ています』

 

バブル景気に向かいつつあるこの時代、個人経営の小さな飲食店では、人手不足は恐怖であったようです。

折角採用しも、直ぐに辞められたら大変だ!

小さなお店で働いている娘さんでが、例え、太った不器量な娘さんでも、より良い条件を求めれば、新しい職場を探すことができる時代であったのでしょう。

 そんな人手不足の時代、雇用主は、折角、雇った店員さんが、何時、辞めたいと言い出すかもしれなかったのでしょう。

 

だから、お客さんが、新聞をみせてくれと言っても、女店員さんが見ていれば絶対に取りあげることは出来ません

 

特に、求人欄を見ている時は、お客さんが見たいと言っているからと、取りあげることは出来ないのです。

求人欄に魅力的な求人が記載されているか否か問題ではないのです。

バブルの、人手がたりない時代、少しでも条件の良さそうな職場を探し続け、絶えず、新聞紙の求人欄に注目しています。

 

そんな彼女たちが、検索している求人欄が載っている新聞紙を取り上げることは、直ちに、折角、見つけた女店員さんを失うことになります。

だから、客の少ない小さな飲食店であっても、お客さんは、ゆっくりと新聞を読ませてもらえません。

 

小さな飲食店のご主人は、折角、採用した女店員が読んでいる求人欄が載っている新聞紙を取り上げるような怖い事は出来ません。

 

お父さん、新聞くらい、お家に帰ってゆっくり読んで下さい。

サザエさんの素直な落ち(40)

 

最近の一眼レフカメラは、カメラが自動的に距離、露出、シャッター速度などを決め、撮影してくれるのでしょうか?

 

朝日文庫版37巻〔100頁〕・昭和43年

『サザエさんが、タラちゃんを連れて公園を散歩していると、写真を撮ろうとしているアベックがいました。男性が一眼レフカメラを手にしています。サザエさんは、それを見て撮って欲しそうな素振りに、直ぐ気付きました。サザエさんは、アベックの方に近づいて、「ご新婚ネ、おそろいのところとってあげるワ」と話しかけました。男性は、一眼レフカメラをサザエさんに、「スミマセン これがきょり、これがろしゅつ、レバーをまわしてこれがシャッターです」と持っているカメラの撮り方を教えています』

『サザエさんは、男性の説明か理解できなかったのか、「もういちど」と念を押しています。男性は、サザエさんに渡したカメラを指さし、「これがきょり、これがろしゅつ、これがシャッター、レバーをこうまわします」と教えています』

『再度、教えてもらったサザエさんは、まだ、理解できないのか、頭の上に?マークを乗せて、カメラを指先であれこれいとじくりまわしています』

『男性は、「アタマわりィなァ、もういいヨ」と言うと、カメラをサザエさんから取りあげ、彼女と一緒に立ち去りました。カメラを使えなかったサザエさんは、恥ずかしそうに赤面して、タラちゃんを連れて引き返していきました』

 

カメラも、いろいろ買いました。

しかし、最新の一眼レフカメラまでは、手を出しませんでした。

多分、この男性が持っていたような一眼レフカメラまでです。

 

この種、以前の一眼レフカメラの撮影は、確かに、面倒でした。

きょりろしゅつ

上手くいきません。

露出計なるものも購入しました。

また、距離も、ピントが合わず、出来上がりの写真はボケて、何時も、出来が悪いと文句を言われていました。

 

そんな中、全自動カメラが開発され、カメラを被写体に向け、シャッターを押せば、綺麗な写真が撮れるようになりました。

カメラに特に関心のない者いとって、これで十分でした。

 

今、ブログを見ていると、写真の投稿も置く、鮮明な写真が投稿されています。

多分、数十万円~百万を超えるカメラを使っておられるのだろうな、と他所ごとながら推察しています。

また、相変わらず、一眼レフカメラを肩にした人を多く見かけます。

カメラには、興味が持てませんでしたが、著名な公園に行と立派な一眼レフカメラが三脚の上に乗せられて、活躍しているようです。

 

でも、多分、カメラが、全自動で、距離、露出、シャッター速度等を決め、撮影してくれるのでしょうか?

サザエさんー判らない落ち(46)

 

ギュウを買い求める肥満の女性にブタを売るのは失礼?

 

朝日文庫版37巻〔132頁〕・昭和43年

『お肉屋さんです。カウンタの向こう側に、お店のご主人と若い店員が、います。若い店員が、細長い肉切り包丁を持って、台の上の布巾をポンと叩いて、お客様に、「ヘイ!ギュウこま三〇〇ね」と注文を受けています。隣にいた店のご主人が、お客様をジロリと見ています』

『お店には、肥満体のオバサンと、年老いたオバサンがいます。店のご主人は、肥満のオバサンを、恐ろしげに見て、「バカそちらさんはカシワだ、ヒニクみたいでわるいじゃないか」と若い店員に注意をしています。注意された若い店員はご主人に対して、「ブタならヒニクだろうけどギュウといったんですよ」と口答えをしています』

『なお、口争いをしています。お店のご主人は、肥満のオバサンが、直ぐ傍にいるのに、興奮して、若い店員に喰ってかかっています。手を挙げて、若者を抑え込もうとするかのように、指を立てた手を振り上げて、「ふとっちょの女はナ、気にしているからまずいてだ」と言っています。これに対して、若い店員は、「夕方客のメカタなんか気にしてられっかョ」と反発しています。肥満のオバサンは、頬をふくらませ、怒っているのか、いないのか良くわかりません』

『ご主人と若い店員は、まだ口争いをしています。お主人は、本当に怒っているようで、「しかしデブじゃねえかきをつけろ!!」とカンカンに怒っています。若い店員は、「デブがどうした!!」と開き直っています。肥満のオバサンは、遂にカンカンに怒ったらしく、プンプンと頬を大きく膨らませて帰っいていきました。丁度その時お肉屋の前を通りかかった、サザエさんと近所の奥様は「あれじゃかえってネエ」と言いながら通り過ぎました』

 

一体全体何事でしょう。

この口争いは、店のご主人に問題がありそうですね!

多分、お客の肥満のオバサンは、若い店員が言う通り

「ギュウこま300頂戴ね」

と言ったに相違ないと思われます。

それなのに、ご主人は何故

「バカそちらさんはカシワだ、ヒニクみたいでわるいじゃないか」

と余計なことを言ったのでしょう。

どうやら、ご主人は、お肉を買おうとしていた、もう一人の客のオバサンを見て言ったのでしょう。

もう一人の客、そのオバサンは、もう大分齢に見えます。

細くなっていて、カシワのようです。

まさに、皮肉で、このオバサンにカシワですかと言ってしましそうです。

そう思ったら、肥満のオバサンがカシワを求めていると勘違いしてしまいました。

つい、何故か判らないが

「バカそちらさんはカシワだ、ヒニクみたいでわるいじゃないか」

と言ってしまった。

 

若い店員にも問題があります。

恐らく、肥満のおばさんを見ているうちに、ブタを思い浮かべてしまつたのでしょう。

そんなに、まるでブタのように描かれたオバサンです。

ギュウとカシワしか、会話のなかに現れていないのに

そのオバサンを見たら「ブタ」と言ってしまった

もう、「ギュウ」「カシワ」も消えて、「ブタ」という「デブ」の世界になってしまった。

 

こうなれば、ご主人も

「ふとっちょの女はナ、気にしているからまずいてだ」

「しかしデブじゃねえかきをつけろ!!」

と言いだし、若い店員は

「夕方客のメカタなんか気にしてられっかョ」

「デブがどうした!!」

デブの話になり、訳が判らなくなった。

この落ちは、何が面白いのでしょう?

 

サザエさんが言うように

「あれじゃかえってネエ」

デブのオバサンのいどころがなくなった。

サザエさんの素直な落ち(39)

 

「コンニャクで一パイ」「コニャックを奢るよ」ではえらい違いでしょう。

 

朝日文庫版37巻〔109頁〕・昭和43年

『夜の街をマスオさんとノリスケさんが、二人で、さ迷っています。マスオさんがノリスケさんの肩をポンと叩いて、「どうだニクソンが勝ったろう」と誇らしげに言いました。ノリスケさんは、負けたと言わんばかりに頭を引っ掻いています』

『マスオさんは、重ねてノリスケさんに念を押しています。「かけをわすれはしまいな」と言うと、ノリスケさんは、即座に、「おぼえているよ」と答えました』

『マスオさんは、ノリスケさんの腕を、肩に担いで引きずるようにして「BAR」の店先に来ました。BARの入り口を指差して、「まけたらコニャックでいっぱいおごるといったな」と言っています』

『ところがノリスケさんは、BARの店の前に出ている屋台の方を指差して、「ききちがいだコンニャクで一パイといったよ」と言いながらマスオさんの腕を引っ張っています。マスオさんは、そうはさせじとノリスケさんの腕を「ひけようだぞノリスケ」と叫びながら、ノリスケさんをBARのお店の中に引きずり込もうとしています。そこを通りかかったアベックが何事かと見ています』

 

古い話でした、1972年のアメリカ大統領選挙の時です。

ニクソンがアメリカ大統領に当選するか否かを、マスオさんとノリスケさんが、賭けたようです。

 

マスオさんが勝ったら、ノリスケさんにおごって貰う

マスオさんは、ノリスケ君が負けたら、BARでコニャックが奢って貰うと、思い込んでいました。

 

賭けは、マスオさんが勝ち、ノリスケさんが奢ることになった。

 

マスオさんは、

「ノリスケ君、僕が勝ったぞ。約束通り、コニャックを一杯飲ましてくれ」

となった。

 

しかし、ノリスケさんは、

「僕が負けたら、コニャックで一杯奢るなんて言っていない」

と言うのです。

 

そして、ノリスケさんは

「負けたらコンニャクで一杯奢るよ」

と言ったというのです。

 

コニャックコンニャク

確かによく似た発音です。

マスオさんの早とちりでした。

 

仕方ないよマスオさん!居酒屋で「コンニャクで一杯」奢って貰って帰りましょう。

 

サザエさんの素直な落ち(38)

 

サザエさんは、タラちゃんを運転手にするつもりはありません、

 

朝日文庫版37巻〔47頁〕・昭和43年

『タラちゃんが、三輪車に乗ったまま、ハンドルの上に顔を凭れさせたまま、眠ってしまいました。そこへ、近所の太った中年のオバサンがやって来て、眠りこけているタラちゃんを見て、その可愛いさに、つい、「まあかわいい」と声をあげました』

『オバサンは、タラちゃんを抱き上げ、三輪車を右手で引きずりながら歩いています』

『オバサンは、サザエさん家の木戸口まで来ました。出てきたサザエさんは、眠りこけているタラちゃんを渡してくれるオバサンに「マアあいすみません」と言いながら、タラちゃんを受取っています』

『タラちゃんを渡したオバサンは、「うんてんしゅにはむかないわよ」と言って帰ってしまいました。サザエさんは、ぐうぐうと眠りこけているタラちゃんを抱いて、深いそうな顔をしています』

 

居眠り運転!怖いですね。

自動車事故が多発しています。それらの事故の原因の中に居眠り運転が多く含まれています。

三輪車とは言え、漕いでいる最中に眠ってしまうタラちゃんは、居眠り運転で交通事故に巻き込まれないとも限りません。

 

しかし、タラちゃんは、前の日に遊びすぎて疲れていただけでしょう。

疲れて眠たかったのですが、買って貰ったばかりの三輪車に、今日も乗りたいな!と乗ったのです。

でも、やっぱり眠い!眠ってしまったら、ぐっすり眠り、ハンドルの間にうずくまってしまいました。

 

こんな状態だから、どんなオバサンでも放ってくれません。

オバサンは、親切なオバサンでした。

タラちゃんを抱っこしてお母さんのサザエさんのところまで運んでくれました。

 

しかし、ここでオバサンは、余計なことを言うのです。

「うんてんしゅにはむかないわよ」

サザエさんも多分良い気はしなかったのでしょう。

 

オバサンは、三輪車の上で眠りこけたタラちゃんを見つけて、思わず

「まあかわいい」

と心底、声を上げたのでしょう。

 

だから、オバサンは、素直にサザエさんにも

『三輪車に乗ったまま眠りこけていたわよ、とっても、可愛いかった。だけど道路で眠っていたら危ないわい。連れてきたわよ』

と言えばいいのです。

 

ところが、お節介の癖が有るんでっしょうか

「うんてんしゅにはむかないわよ」

と、つい、言ってしまいました。

サザエさんは、タラちゃんを運転手にする積りはありません、ただ、運転免許証は取らせる積りです。

 

そんなサザエさんに、オバサンは、余計な心配をしてしまい、

「うんてんしゅにはむかないわよ」

と言った。

サザエさんは、少しだけ、不快な気分になったのでしょう。

サザエさん―面白い落ち(159)

 

町内物々交換会で交換したことは、しっかり覚えておきましょう。

 

朝日文庫版45巻〔35頁〕・昭和48年

『丸々と太り、刈り上げのオジサンが、胸に英文字を大きくプリントしたカーディガンを着て、往来を歩いています。前の方から和服を着たハゲ頭の痩せ細った意地悪そうなお爺さんがやってきました。お爺さんは、オジサンが着ているカーディガンを見ると、大きく口を開け、「ア!!わしのカーディガンを着とる」と大きな声で怒鳴りました』

『お爺さんは、太ったオジサンが着ているカーディガンを掴むと、「けしからん」と叫びながら、強引に剥ぎとっています。オジサンは、お爺さんのなすがままにカーディガンを脱がされました』

『お爺さんは、奪い取ったカーディガンを丸めて持って家に帰ってきました。家に帰ると、息子の嫁が縁側に、慌てて現れ、「おじいちゃん〈町内物々交かん〉でポットとこうかんしたといったでしョ!」と叱っています。お爺さんはカーディガンを小脇にかかえ、怒った顔のまま茫然としています』

『刈り上げのオジサンは、お爺さんの家の縁側にいます。息子の嫁が大きなポットをオジサンに渡しています。オジサンは「たびたびぬがされるんだからッ!かえしますと言いながら、カーディガンと交換したポットを返してもらっています。オジサンは相当に怒っています。お爺さんは、そうだったと言わんばかりに照れ隠しに頭を引掻いています』

 

お爺さんの言い分です。

俺が大事に着ていたカーディガン、もうだいぶ長い間、愛用しているが、物が良いからまだまだ着れる

しかし、以前太っていたワシも、ここんところ、痩せて、細くなってしまった。

だから、気に入っていたこのカーディガンもブガブガになってしまい、着ていて格好が悪い。

 

着ないでタンスの引き出しのゴミにしていたら、息子の嫁が、

「お爺ちゃん、棄てるのはもったいないから、そのカーディガン着ないんだったら、今度の町内物々交換に出したら」

と言うんだ。

俺は、着ていない物をタンスの引き出しに詰め込んでいても仕方ないと、思ったもんだから

「アアいいよ」

と確かに言った。

でも、ワシも、年老いて耄碌し、物覚えが悪くなってしまっていたんだ。

カーディガンを、物々交換していたのをすっかり忘れていた

 

街を歩いていたら、あの太った奴が、俺が大事にしていた、お気に入りのカーディガンを着て歩いている。

それを見た途端、あれはおれのカーディガンだと思い出し、どうして、あの太った奴が着ているのか、と腹が立ち、

『それは俺のカーディガンだ、返せ』

と取り上げたんだ。

 

家に持って帰って、嫁に

「太っちょが俺のカーディガンを着て歩いていたので取りあげてきた」

と言ったら、嫁が

「町内の物々交換会で交換したじゃないの」

と言った。

 

思い出して、これはまずい事をしたと思っていたら、太っちょが家まで来て

「交換したカーディガンは返すから、私のポットは返してくれ」

とチャンと取りに来たぞ!

アイツ!しっかりした奴だ。

サザエさん―面白い落ち(158)

 

ハデな着物は、もう合いません。

 

朝日文庫版45巻〔33頁〕・昭和48年

『マスオさんが、会社の同僚と居酒屋に来ています。カウンターの奥では、店のおかみさんが、料理を作っています。2人は、カウンターの上に置かれた酒の肴を箸で突き、頬ばっています、酒も、だいぶすすんでいるようで、2人の前には、2本の徳利が並んでいます。少しロレツが回らなくなったマスオさんが、同僚の肩をたたきながら、「みたゾみたゾ!!」と冷やかしています』

『マスオさんは、同僚の顔を指さし、ニヤニヤしながら「きのうハデな着物の女性と歩いていたナ」と言うと、同僚は、頭をかきながら、「アレみてたのか!」と言いました』

『続けて、同僚は「女房に、だまっててくれとマスオさんに向かって両手を合わせ頼んでいます。それに対して、マスオさんは「だまってるょ、ダレだい」と尋ねています。おかみさんも、ニコニコして2人のやりとりを聞いています』

『同僚は、悲しげな顔をして、お皿の中の酒の肴を突きながら、「女房だヨ!ハデになったから、晴れ着をつくってくれッてうるさいのなんの」と愚痴っています。聞いていたおかみさんは納得しているようです

 

実際にありそうな話ですね!

同僚の奥さんは、多分、若い頃、美人だった。

綺麗なハデな着物も持っていて、良く似合っていたのでしょう。

しかし今はもう、中身の方が、大分、崩れているのです。

若かりし頃の着物は、若いころは良く似合っていたけれども、今、崩れてきた容姿には、ハデすぎるのです。

 

マスオさんは、「同僚は、モテル筈はない」と思っています。

だから、同僚が、女の人を連れて歩いていると、ハデな着物の方に目が行き、「君ハデな女性を連れていたね」と言うことになるのでしょう。

 

若かりし頃、美人だった同僚の奥さんは、良くできた奥さんで、

「年老いてきた今の自分には、若い頃の着物はハデすぎて、着るは恥ずかしい、年齢に合った着物を買わないといけない」

と、いつも言っていたのでしょう。

 

そんな奥さんに逢った、マスオさんが

「昨日、○○くんと一緒だったのは奥さんだったのですか?綺麗な着物をお召しで良く似合ってましたよ!」

などと言えば、

「もうこの着物はハデだわ」

と気にしている奥さんは、

旦那である同僚に、

「もう若い頃の着物はハデすぎるのよ。早く落ち着いた着物を買って頂戴」

とせがむかもしれません。

 

だから、同僚は、マスオさんに頼むのです。

「昨日○○くんと一緒だった派手な着物を着た美人は、奥さんだったのですか? と女房に言わないでくれ」。

 

サザエさん―面白い落ち(157)

 

炊き芋の自動販売機は実存していました。

 

朝日文庫版44巻〔132頁〕・昭和48年

『サザエさんのお父さんが、スーツを着て、ソフト帽を被り、国鉄のキップ売り場に来ました。キップ売り場の窓口には、沢山の人が並んでいます。その列を見たお父さんは、「混んでるナ」と困った顔をしています』

『お父さんは、余りにも沢山の人が並んでいるので、辺りを見回し、自動はんばい機を見つけ、その自動はんばい機の方にカネを持って近づいています』

『カネをと投入しました。自動はんばい機には、やきいもと札が貼ってあります。そのはんばい機の排出口に2個の焼き芋が出てきました。お父さんは、ビックリしています』

『サザエさんのお父さんは、電車の中にいます。座れる席がなく、2個の焼き芋を右手に持って、左手でつり革を持って立っています。シートに座った乗客の皆さんが、お父さんを見つめています。お父さんは、恥かしくて顔を真っ赤にしています』

 

本当ですか?こんなことがあったんですか?

疑問①:ヤキイモの自動販売機と言うのは実存するのでしょうか?

疑問②:キップを買う人が窓口に沢山の人が並んでいます。キップの自動販売機があれば、その前にも並ぶ筈ですが、その自動販売機には誰もいません。そんな自動販売機に、お父さんは、キップを買おうとカネを入れたのでしょうか?

疑問③:勘違いでヤキイモが出てきたとしても、手に持って電車に乗るのでしょうか?

 

かなり無理のある、お笑いを誘う絵でした。

ヤキイモの自動販売機は見たことがありません。実存するのか検索してみました。

「ありました」

2011/06/04加賀伝統野菜の一つ、サツマイモ「五郎島金時」の焼き芋を扱う自動販売機が産地である金沢市粟崎町の金沢市ものづくり会館にお目見えし、人気を集めている。(金沢新聞)》

だそうです。写真を見ると、立派な、通常見られる、自動販売機と同じような自動販売機です。

多分、焼き芋を、パックし、自動販売機に仕込むのでしょう。

 

スーパに行くと、焼き芋を紙袋に入れ、赤外線ヒータで加熱して売っています。

このように焼いたヤキイモをプラ容器にパックし、自動販売機に仕込めば、自動はんばい機で売れます。疑問①は解消しました。

 

次は、窓口が混んでいると、焼き芋の自動販売機と気付かない自動販売機にお金を入れる人がいるでしょうか?

サザエさんのお父さんならあり得るのでしょうか?

それほど耄碌しているのならば疑問②も解消です。

 

最後のヤキイモが裸で出てくる。これはないでしょう。ヤキイモが売り物にならないと思います。

ホカホカに焼いた良い香りのするヤキイモをパックし自動販売機に仕込み売っている筈ですから、ハダカで出てくることはない筈です。

ハダカの焼き芋を手にして電車に乗り込んだのは何故でしょう。

棄てるのはもったいない。スーツのポケットに突っ込めば良かったのに!

お父さんは、電車に乗っている女の人達に、焼き芋の素敵な香りをサービスするつもりだった。

判りました疑問③も解消です。

 

しかし、大変でしたね、お父さん!

サザエさん―面白い落ち(156)

 

芸は身を助くと言うのがありますが、才能は身をおとしめることもあります。ご用心!

 

朝日文庫版44巻〔124頁〕・昭和48年

『星も出ている真夜中です。制服制帽の警察官が、店頭に置いてある公衆電話の受話器を握り、「ホシがあがりましたいま連行しまス」と報告しています。かたわらには、逮捕した横縞模様のセータを着て、無精髭を生やした角刈りの男が立っています。丁度そこへ、サザエさんのお父さんが通りかかり、その模様を見て、つい、「名月をホシ(星)もあおぐや虫の声」と余計な一句捻り出し、詠み上げています』

『それを聞いた警察官が、また才能のある男で「オヤ!やりますネ「名月にやじ馬いななく夜長かな」と返しました。ホシと言われた男はポカーンと立っています。サザエさんのお父さんは、やるなと言わんばかりの顔をしています』

『サザエさんのお父さんと警察官のやりとりを聞いていたホシと言われた男は、突然、「返句「名月や交番までを大(お)まわり」」と詠み、ニコリとしました。それを聞いた警察官は思わず「うまい!!」と感心しています。サザエさんのお父さんも、ニッコリと微笑んでいます』

『警察官は、受話器を持って、悲壮で悲しげな顔をし、冷や汗を流しながら、「名月や取り逃がしたる・・・・」と詠んで報告すると、受話器の奥から「バカきん急たいほせよ!!」と大声の雷が落ち、指令が帰ってきました。ホシと言われた男の姿はなく、サザエさんのお父さんもいなくなりました』

 

サザエさんのお父さんは、余計なことをやってしまいました。

時たま、下手な俳句を詠んでいましたが、その俳句が、警察官にとんでもない迷惑をかけたのです。

 

警察官と逮捕したホシとの間に入って来て、下手な俳句のような5・7・5の文句を

「名月をホシ(星)もあおぐや虫の声」

と並べるものだから、少し俳句の才能があった警察官は、「このオジサン俳句を詠んでいる」と思ったのでしょうか?

多分このやじ馬やろうと思いながら、ならば、俺も俳句で返してやろう。

こんな非常時に、詠まなくてもよい5.7.5を

「名月にやじ馬いななく夜長かな」

と並べたのです。

 

下手の横好きと言いますか、上には上があるもので、

ホシと言われた男も、俳句の才能があったのでしょう、スラスラと

「名月や交番までを大(お)まわり」」

と5.7.5を並べました。

上手いものですね!たぶん長い道のりを連行されて来たのでしょう。

その長い道のりの大回りをお巡りさんのおまわりとかけ、笑店の木久翁さんのような余り上手くないダジャレを入れた一句を即座に詠んでしまったのです。

警察官は、その一句に

「うまい!!」

と気を許した隙に、ホシを逃がしてしまったようです。

 

下手な俳句を持ち込んだ、野次馬のオジサンも何処かへ消えてしまった。

 

そんな成り行きを本署に報告しても

「バカ野郎、直ぐに逮捕しろ」

と叱られるのは当然です。

 

芸は身を助く、と言いますが、下手な才能は身をおとしめることもあります。ご用心!

サザエさん―面白い落ち(155)

 

混んでいる電車の中で、コドモは大変です。

 

朝日文庫版43巻〔104頁〕・昭和47年

『カツオ君とサザエさんは、酷電に乗り込みまさした。丁度、ラッシュ時だったのでしょうか、大変な混み様です。2人は、人混みの中、離れ離れになり、カツオ君は、見上げるような大人達の真っただ中に押し込まれ、ギュウギュウと、顔も歪んでしまっています。お姉さんは、離れたところにいて、カツオ君には何処にいるか判りません』

『カツオ君は、まだまだギュウギュウに押しこまれ、顔も押しつぶされたように、泣きそうな顔をして、もうお手上げで、両手を上に挙げ、周りの大人達に身をゆだねています』

『やっと、周りの大人達が動き出し、カツオ君の周りにも余裕ができました。カツオ君は、空いたシートを見つけ、思わず凭れ込み「ふわ~やっとすわれた!!」と思いっきり背伸びをしています』

『カツオくんが座り込んだシートは、ホームに置いてある椅子でした。カツオ君は、周りにいた大人達と一緒にホームに押しだされ、ホームの椅子に凭れ込んでいたのです。サザエさんも、電車を降り、凭れ込んでいるカツオ君を見つけると、「なにしてんのもうホームよ」と電車のシートでないことを教えています』

 

昔の国鉄の通勤電車は、良く混んでいたと記憶しています。しかし、カツオ君のように、人混みの中で身動きできないほど混んでいたという記憶は、それほどありません。

京浜東北線の「磯子から新橋まで」の通勤では、それほど混まなかったのでしょうか?

矢張り、一番の酷電は山手線でしょうか?毎日、大変混雑しているのでしょう。

 

カツオ君のような小学生が混み合う電車の中で、押しつぶされて苦しんでいた記憶はあります。

矢張り、必死な表情を見ていると可哀そうでした。

それは、夏休みのことだったと思います。

儀妹の家族が広島から遊びに来ました。

後楽園球場に巨人の野球試合を見に行くと言うので一緒に出かけました。

小学生の甥がいました。

 

皆で乗った電車は、不思議と酷電状態でした。

私鉄ではなく、国鉄だったと思います。

甥は、まるで、カツオ君のような年ごろの小学生でした。

酷く込む電車の中で座ることもできず、人混みに押され立っていました。

甥は、大人達の間に押し混まれ、苦しそうに、顔をゆがめ、下から見上げるのです。

彼には、そんな経験は全くなかったのでしょう、驚いたような表情で見上げる彼が、可哀そうでもどうすることもできませんでした。

暫くの間、辛抱させるしかありません、よく耐えてくれました。

もう成人し、根性のある社会人になっています。

苦しんでいるカツオ君を見て、甥のことを思い出してしまいました。