「ナンピン買い」という言葉がある。
当初買い付けた株式などが値下がりしたときに、
平均購入価格を下げる為に低い値段で同じ銘柄を買い増しすることをいう。
株式用語としては有名で、投資戦略のひとつであるらしい。
これだけ株価が下がる状況では、よく行われているのだろう。


が、この「ナンピン買い」、会計処理を考えると妙なことになる。
例えば、50%超時価が下落している銘柄がある場合、
そのままだとこれを減損処理しなければならない。
ここで、ナンピン買いをして平均単価を下げることで、
減損処理を回避することができてしまうのである。
もっと言えば、ある銘柄の一部を売却して、売却損を出して、
その銘柄を同じだけ買い足して減損処理を回避することもできる。
この場合は、売った分だけは売却損が出るが、
その銘柄の株式を大量に保有している場合などは、
少額の売却損を出すかわりに、多額の減損を回避できることになる。


当然、会計上は、ナンピン買いによる減損回避は、そう簡単には認められない。
形式基準の抜け穴だから、これは実質ベースで個別に判断するしかない。


ただ、会計用語としての「ナンピン買い」はこれだけではない。
例えば、実質価額が著しく下落している子会社があったとする。
そのままだと減損の対象になってしまう。
「よし、増資して純資産を増やしてやろう。」
となると、これはもう、ナンピン買い以外の何物でもない。


現行の日本の減損基準では、ある程度形式基準が定められているが、
だからといって、実質を見なくてよいわけではない。
「本当にそれだけの価値があるのか?」
という単純な疑問は、常に持ち続ける必要があるだろう。

「会計方針」とは何か?

財務諸表論の定義で言えば、

「財務諸表作成のために採用している会計処理の原則および手続
 並びに表示方法その他財務諸表作成のための基本となる事項」

であるが、ごく簡単に言ってしまえば、

  会計方針 = 会計処理方法 + 表示方法

ということになる。
きわめて重要なことは、会計方針には表示方法が含まれていることである。

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さて、この定義にあてはめると、「会計方針の変更」とは、
「会計処理方法もしくは表示方法の変更」ということになる。

では、表示方法を変えたからといって、そのたびにいちいち、
会計方針の変更として注記しなければならないのだろうか?

答えはNO。実務上、そんなことはやってられない。
「監査委員会報告第78号 正当な理由による会計方針の変更」より。

 1、合理的根拠又は理由に基づくもので単なる表示形式上の変更にすぎないものは、監査上会計方針の変更として取り扱わない。

 2、区分を超えることにより財務情報に重要な影響を与えて表示方法を変更するものは、監査上会計方針の変更として取り扱う。

よって、金額が大きくなって別掲する場合などは、会計方針の変更には当たらない。
有報上は、追加情報として「表示方法の変更」を開示する、ということになる。

実務上はほとんど見ない「満期保有目的の債券」。
ほとんど(というか、全く)見ないがゆえに処理方法が忘れられがち。


問い。
満期保有目的の債券を時価評価することはありうるか?


答え。
ありうる。満期保有目的の債券は、償却原価でB/S計上し、
 ①売買目的有価証券と異なり、時価評価差額をP/Lヒットさせない。
 ②その他有価証券と異なり、時価評価差額をB/Sヒットさせない。
ために、時価評価をしないような印象をもってしまいかねないが、
金融商品会計における有価証券の評価方法はシンプルで、
「時価のある有価証券」と「時価のない有価証券」しかない。
よって、満期保有目的の債券といえども、どちらかの評価方法で評価し、
それぞれの減損基準にひっかかれば、当然、減損しなければならない。
よって、減損が必要なほど時価(公正価値)が下落した場合に限り、
満期保有目的の債券についても時価(公正価値)評価することになる。

ついでに減損にかかる税効果のメモ。


減損に係る税効果は特別なものではなく、原則どおり。


  償却資産 → スケジューリング可能。

  非償却資産 → 通常、スケジューリング不能。


実務上、減損損失を計上するのは、

  ①土地・建物が、

  ②遊休状態にあるか、売却予定であるか、

というケースが多いと思われるが、

  遊休土地についてはスケジューリング不能、

  遊休建物についてはスケジューリング可能、

  売却予定土地・建物についてはスケジューリング可能、

となる。

書いたことは忘れない気がするのでブログ勉強をやってみる。


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特に当期末は株価がめちゃくちゃ下がっていたので、

その他有価証券評価差額金がマイナス(含み損)となっている会社も多いんだろう。

プラス(含み益)の場合は繰延税金負債を必ず上げなければならないので、

逆に税効果云々を考える必要がなかったのだが、マイナスの場合はどうか?

66号の繰延税金資産の回収可能性の判断をそのまま適用するのか?


と思って調べたら、監査上の取り扱いがちゃんと出ている。

委員会報告第70号の書きぶりは、


 評価差損はスケジューリング不能な将来減算一時差異である。

   ↓よって

 原則、繰延税金資産の回収可能性はないと判断する。

   ↓ただし

 その他有価証券はいつでも売れるし、いつかは売るものである。

   ↓そこで

 66号の①②の会社は税効果をみてもよいことにした。

 ③④ただし書の会社も条件付で税効果をみてよいことにした。


となっている。

条件とは、「5年内の課税所得の見積額からスケジューリング可能な一時差異の
解消額を加減した額を限度として」である。

当期は、③に落ちた会社も多いと思われるので、ここが判断の分かれ目になる。

ポイントは、一時差異自体のスケジューリングの問題ではなく、

5年間で課税所得をみて、かつ税効果をみて、それでも余ってればOK、という点。

一時差異自体はそもそもスケジューリング不能であることを頭に入れとかなくちゃいけない。