先日、弟が熱く語り始めました。

弟「俺の話聞いて!」

私「何?」

弟「俺、好きな子できた!」

私「へー!」


弟からこういう話を聞くのは久しぶり。

弟は顔と愛想だけはそこそこ良いのでそこそこモテるようなのですが、
そういえば彼女は長いこといなかったような。


私「どんな子?」

弟「その子彼氏がいるんだけどね」

私「あら」

弟「でも、それはまぁいいじゃん?」


さすが顔と愛想だけはそこそこ良い男。
余裕があります。


弟「で、俺は言ったの。何年でも待ちますって。悩みがあればなんでも言ってって」

私「おー、めずらしく誠実なこと言ったね」

弟「で、悩みを聞いてって言われたの。で、聞くじゃん?彼氏の悩みでさ」

私「ほう。それはチャンスだね」

弟「彼氏さ…仕事しないんだって…」

私「あれ…?」

弟「ニートなんだって…」

私「…………」

弟「俺もニートじゃん!?」

私「自覚はあるんだね…」

弟「だからね、とりあえず『それは良くないな』って言ったんだよ」

私「うん、そうね…良くないよね…」

弟「そしたら『そういえば、仕事何してるの?』って聞かれたからさ」

私「…なんて言ったの?」

弟「『俺内定遅かったから9月からなんだ』って言っといた!」

私「…ちなみになんの仕事するって言ったの?」

弟「出版社だって言った!でも本当に、出版社は4月か9月からなんだって!」

私「まぁ、内定取れればね…」

弟「だってさー!彼氏仕事しない以外は完璧なんだって!」

私「それは勝ち目ないねぇ…」

弟「そうなの!俺彼氏でもないし、その子俺の性格知らないし、バレたら口聞いてくれなくなる!」

私「そうだろうねぇ…」

弟「だから嘘ついちゃった!」

私「そうですか…」

弟「でも俺就活頑張るから!」


弟の恋と就活の行方が今後も気になるところです。
わたしは今、エンタメ系の会社に勤めています。
なので社内で芸能人を見かけることもしばしば。

先日も仕事中、ちょっと席を立ったときに、廊下で某芸人さんとすれ違いました。
弟も好きな芸人さんなので、ちょっと自慢を…


私「今日会社で○○さんを見かけたよ」

弟「え!マジで!?いいなぁ!!!」


弟の目がらんらんと輝いています。
なかなか気分が良いものです。


弟「なんで!?」

私「さぁ…打合せとかかな?」

弟「いいなぁ!!!サインもらってきてよ!!!」

私「…えっ?いや、もう過ぎたことだし…」

弟「じゃあ今度会ったら!」

私「無理だよ!ばったり会ったとしても仕事中だし…」

弟「じゃあ、人事になって俺を雇ってよ!」

私「…『じゃあ』じゃねぇよ!」

弟「お願い!お願い!」

私「無理だって!わたし経理だし、そもそも契約社員だし…」

弟「この役立たず!!!もう口聞かねぇからな!!!」


なぜキレられたのかよくわかりませんが、弟はそのあとも普通にしゃべりまくるのでした。
電話を切ったあと、わたしは弟が受けるという出版社をネットで検索してみました。

会社はすぐに見つかりました。
怪しい会社ではないようです。

しかし…

わたしは弟に電話をかけ直しました。


弟「なに?」

私「おまえホームページ見た?」

弟「ん?見てねぇ!」

私「見てみ…そこ扱ってるの、ビジネス書だよ」

弟「へ?」

私「出版社とは言っても漫画とかではなくて、人事とか経理とかのお堅い本を扱ってるの」

弟「マジで!?それ100%な情報?」

私「いや、ホームページ出てたから…」

弟「マジかよー…」

私「いやね、あんた見てないと思って、調べてみたのよ」

弟「おまえ意地悪だなー!」

私「意地悪じゃないよ!どんな会社受けるか事前に知っとくのが普通!」

弟「…まぁ、最初は誰でも初めてなんだし?大丈夫!だろ?」

私「うーん…」

弟「みんな入って勉強していくんだろ?」

私「まぁ、そうっちゃそうだけど…」

弟「そして出版社に入ったら、集英社に入れる可能性だって高くなるだろ?」

私「…ん?いや、それはどうだか…」

弟「俺、頑張るわ!」

私「…まぁ、頑張ってみなよ」
少し前の話ですが。
弟から夜着信が。

掛け直すと、弟はもしもしも言わずに話し出しました。


弟「聞いてくれよ!」

私「うん」

弟「聞いてくれよ!」

私「何?」

弟「お願い!聞いて!」

私「聞いてるよ!」

弟「俺、面接決まった!」

私「…え!本当!?」


弟は大学卒業前、俗に就活生と呼ばれる時代、
おそらく一度も面接まで話が進んだことがありませんでした。

なぜなら、真面目に就活をしていなかったからです。

そんな弟が、ようやく真面目に就活を始めた。
しかもこの氷河期に面接まで進んだ。

動き出すのが一年ほど遅かったような気もしますが、やはり姉としては喜ばしいことです。


私「すごいじゃん!どこ?」

弟「出版社!」

私「へー!よかったじゃん!」


弟はミーハーな漫画好き。
現役就活生だった時代に唯一真面目に受けていたのも、集○社やら講○社やら、少年たちが大好きな漫画雑誌で有名な出版社でした。


私「で、なんて会社?」

弟「ん?…秋葉原なんだけどね!」


私はちょっと不安になりました。


私「…え?会社名は?」

弟「なんとか出版てとこ!」


不安的中。

やはり出版社という名前だけで、ろくに情報収集もせず、受けようと決めたようです。


私「会社名知らないっておまえ…」

弟「いやぁさ、何気にハローワークとか行ってんのよ、俺!」

私「それは良いんだけど、会社名…」

弟「最近思うの。顔向けできねぇって!外歩くの恥ずかしいって!」

私「……ちなみにいつ面接?」

弟「わかんね!」

私「…面接決まってねぇじゃん!」

弟「でも行けるんだって!ハローワークの人が連絡してくれたから!」

私「…はぁ」

弟「でもさ、働きたいと思うところが見つかって良かっただろ?」

私「いや、そこの名前を覚えてないって…」

弟「待って!えーっと……○○出版販売、だって!」

私「…ま、とりあえず頑張って!受ける前によくHP見とくんだよ」

弟「頑張るわ!漫画も描いてるしね!」

私「……そう……」

弟「…おまえ!呆れてるけど漫画売れたらどうなる!?おじさん養ってやるよ!」

私「そうね…それがいいね…」


つづく。
小学校の校歌の一部を突然思い出したわたし。
しかし、もう十数年前のことなので、全部は思い出せず…

こうなると気になって仕方がないものです。
そんなわけで、弟にメール。

「小学校の校歌覚えてる?」

翌日、弟から電話が。


弟「小学校の校歌ってあれだろ?♪此処ー○○中学校ー♪」

私「…それ中学じゃん」