少し前の話ですが。
弟から夜着信が。

掛け直すと、弟はもしもしも言わずに話し出しました。


弟「聞いてくれよ!」

私「うん」

弟「聞いてくれよ!」

私「何?」

弟「お願い!聞いて!」

私「聞いてるよ!」

弟「俺、面接決まった!」

私「…え!本当!?」


弟は大学卒業前、俗に就活生と呼ばれる時代、
おそらく一度も面接まで話が進んだことがありませんでした。

なぜなら、真面目に就活をしていなかったからです。

そんな弟が、ようやく真面目に就活を始めた。
しかもこの氷河期に面接まで進んだ。

動き出すのが一年ほど遅かったような気もしますが、やはり姉としては喜ばしいことです。


私「すごいじゃん!どこ?」

弟「出版社!」

私「へー!よかったじゃん!」


弟はミーハーな漫画好き。
現役就活生だった時代に唯一真面目に受けていたのも、集○社やら講○社やら、少年たちが大好きな漫画雑誌で有名な出版社でした。


私「で、なんて会社?」

弟「ん?…秋葉原なんだけどね!」


私はちょっと不安になりました。


私「…え?会社名は?」

弟「なんとか出版てとこ!」


不安的中。

やはり出版社という名前だけで、ろくに情報収集もせず、受けようと決めたようです。


私「会社名知らないっておまえ…」

弟「いやぁさ、何気にハローワークとか行ってんのよ、俺!」

私「それは良いんだけど、会社名…」

弟「最近思うの。顔向けできねぇって!外歩くの恥ずかしいって!」

私「……ちなみにいつ面接?」

弟「わかんね!」

私「…面接決まってねぇじゃん!」

弟「でも行けるんだって!ハローワークの人が連絡してくれたから!」

私「…はぁ」

弟「でもさ、働きたいと思うところが見つかって良かっただろ?」

私「いや、そこの名前を覚えてないって…」

弟「待って!えーっと……○○出版販売、だって!」

私「…ま、とりあえず頑張って!受ける前によくHP見とくんだよ」

弟「頑張るわ!漫画も描いてるしね!」

私「……そう……」

弟「…おまえ!呆れてるけど漫画売れたらどうなる!?おじさん養ってやるよ!」

私「そうね…それがいいね…」


つづく。