盆に叔父が来てくれたので、みんなで両親の墓参りに行きました。
しかし、墓には卒塔婆が一本も立っていません。

墓参りやらお盆やらのしきたりはわたしもよくわかっておらず、
ていうかあいつ長男だし!と弟に任せっきりです。


私「…これ卒塔婆ないけどいいの?」


寺の縁側には、卒塔婆がいくつか並んでいました。


叔父「こん中にあるんちゃうん?」

弟「探したけど、ねぇんだよ」

私「おまえ勝手に探したのか…」


わりと大事なものだと思うので、きちんと住職に聞いてほしいものです。


叔父「金払ったんか?」

弟「払ってねぇよ」


そりゃないわ…と思いつつ、それでもまぁ、弟に任せっきりというのもあって、わたしは何も言えません。


叔父「おまえあとでちゃんと聞いときや」


そこで弟のびっくり発言。


弟「え?親父に聞けばいい?」

叔父「…住職に」


他界した父にどうやって聞くつもりだったんでしょうか…
弟「俺、最近夢をよく見るんだよ」

私「そう」

弟「俺の作った時のオカリナあんじゃん?」


時のオカリナとはゼルダの伝説ではなく、弟が昔作ったオリジナル曲です。

突然わたしの前で

「時を~越えて~会いたい~」

と歌い出し、「これにコードをつけてくれ」と言うので適当にギターでつけてやったのですが、
いかんせん適当だったので、もうコードについては覚えていません。


弟「あの曲さ、バラードじゃん?あれをELTの持田香織が歌ってくれてさ、ちょっとロックバラードっぽくなっててさ、すげぇよかったんだよー」


すげぇどうでもいい話だと思いました。
女性はアラサーになるとアウトドアな趣味に走るものよ。
登山とか、ランニングとか、ゴルフとか…


という話を会社の先輩方から聞き、もうすぐ26歳になるわたしは、すっかり感化されてしまいました。

わたしもアウトドアな趣味に走りたーい!

さて、問題は何を始めるか。
もともと歩くのと泳ぐのは好きなので、そこをもとに辿り着いたのが、登山かサーフィンかボディボード。

そんなわけで、最近海に行って真っ黒になった弟に意見を求めてみました。


私「サーフィンとかボディボードとかやってみたいん…」

弟「無理無理無理無理無理!おまえ運動音痴だから無理!!!」


すべて言う前に完全否定され、わたしはちょっとむっとしました。


私「泳ぐのそこそこ得意だし!一輪車とかうまいし!」


バランス感覚のよさをアピールするために一輪車とかぬかしてしまったのは、間違いだったと思っています。


弟「俺だって竹馬すげぇ得意だし!」

私「…竹馬?」

弟「初めて乗ったのにさ、すぐ乗れたんだよ!しかも高さがバラバラでも…」


その後、弟の竹馬自慢を延々と聞かされるはめになったのでした。
わたしはアウトドアガールになりたかっただけなのに…
弟が小学生の頃のこと。


弟「なぁ、クッキー作っていい?」


弟の発言に、びっくりしたのを覚えています。
こいつクッキーなんか作れんのかーと感心しつつ、


私「いいよー」


と適当に返事をして、わたしは昼寝を始めました。

どれくらい寝たのかは覚えていません。
弟に突然叩き起こされ、そしてこう言われました。


弟「なぁ、もち焼いていい?」

私「………もち?いいけどもちなんかあったっけ?ていうかクッキーは?」

弟「クッキー作ってたら、もちができたんだよ」

私「……は?」


事情が飲み込めないまま弟とキッチンに向かうと、


魚焼き用の網の上に



もち…



というか、ピンク色で半透明の、スライムのようなものが…


私「……」

弟「クッキーって砂糖と水と粉だろ?なのにもちができたんだよ」


しばらく呆気にとられたのち、わたしはざっくりと、クッキー作りに必要な材料を教えてあげました。


後日、弟はクリーム色のどろどろした液体を焼こうとしていました。
友達の劇団の公演を観ました。
その友達は弟と同い年で、しかも偶然にも同じ名前。

そんな子が作・演出を手掛けた作品。
しっかりとしていて、「また観たい!」と思える、よいお芝居でした。

ああ、弟よ。
あなたと同い年で、しかも同じ名前の子が、こんなもの作っちゃうんだよ。
ちょっとは見習って、何かに真剣に打ち込んでくれ…

と思っていたそのとき、弟から電話が。
なんてタイミング!


私「ちょうどいいところにかけてきたねー!」

弟「おまえのメロディコール、KJに似てるな!」

私「それはいいんだけど、さっき芝居を観てきたよ」

弟「ハンバーガーハンバーガー言ってるやつ!」


ふろ家の人間はわりと自分勝手なので、会話が噛み合わないのはよくある話です。


私「ちなみにそれ、かせきさいだぁのサウンドバーガープラネットね!それはいいから!」

弟「きゃあ!恥ずかしい!」

私「え!なにが?」

弟「サウンドバーガーなのにハンバーガーとか間違えて恥ずかしい!」

私「いや!それはいいから!わたし芝居を観てきたの!」

弟「へー」


弟は明らかに興味がなさそうですが、わたしはアツく続けます。


私「おまえと同じ名前で、同い年の子が書いたお芝居なんだけどね!」

弟「うん」

私「おもしろいし、すごくしっかりしてて、きちんとお金を払って観るものって感じだったんだよ」

弟「ふーん」

私「おまえも見習ってね…」

弟「うるせぇよ!」


急に弟の口調が変わりました。
そうか…弟は弟なりに、頑張っているのかも…


弟「俺だってなぁ!」

私「うん…」

弟「俺だって詩とか書いてんだよ!!!」

私「え?詩?」


漫画家になりたいんじゃなかったの?


私「え…?なんでまた詩?」

弟「書いたんだよ!そして友達にメールしたんだよ!」

私「メールしたのか…」

弟「そしたらさ、こう返ってきたんだ…」

私「…うん」

弟「『どうしたの?』って!」

私「そりゃあ、どうしたのだよね…」


弟が結局のところ何になりたいのか、どんどんわからなくなります。