今でこそグズとバカとオタクになってしまった我々3姉弟ですが、
そんなわたしたちにも、可愛かった時代があります。

クリスマスを終えて数ヶ月がたち、春を迎えようとしていた時期のこと。
母はわたしにこんな話をしました。


母「あんたさ、サンタがママとパパだって気付いてるよね?」

私「……まぁ、うすうすね」


次のクリスマスを迎える前に母は他界したので、
今思えば

「ママの代わりに、弟たちのサンタになってあげるんだよ」

という話をしたかったのでしょう。

しかし、当時のわたしは小学五年生。
純真無垢の塊で、サンタクロースの存在を信じきっていました。

当たり前のように言われたので強がってはみたものの、
正直、相当ショックでした。

そのあと母とどんな話をしたのか、覚えていません。


そして迎えたクリスマス・イヴ。

わたしたちは毎年この日が楽しみで楽しみで仕方がなく、
特にこの年は、父が「ディズニーランドに連れてったるわ!」なんて言うので、

「すげー!サンタさんも来るし、ディズニーランドにも行ける!」

と、弟たちは例年以上に沸き上がっていました。

母から衝撃の告白を受けたわたしも、心のどこかで未だにサンタクロースを信じていて、
弟たちと一緒に胸を弾ませていました。


あのころのわたしたちは、本当に可愛かった。

「今日はみんなで一緒に寝よう!」

と、わたしの部屋に3人が集い、小さなベッドできゅうきゅうにくっつきながら、
3人仲良く、眠りにつきました。

興奮しているこどもにありがちですが、途中、ひとりが目を覚まします。

みんなつられて目を覚まします。

「サンタさん来たかな?」

しかし、枕元にはプレゼントがありません。

部屋中探しても見当たりません。

リビングにもありません。

「まだ来てないんだね」

「イイコにして寝てないとね」

わたしたちはまた、小さなベッドに肩を寄せて眠ります。

またひとりが目を覚まします。

みんなつられて目を覚まします。

「サンタさん来たかな?」

しかし、枕元にはプレゼントがありません。

部屋中探しても見当たりません。

リビングにもありません。

「まだ来てないんだね」

「イイコにして寝てないとね」

わたしたちはまた、小さなベッドに肩を寄せて眠ります。

またひとりが…


…というのを数回繰り返し、ついにわたしたちは泣き出しました。


「今年はサンタさん、来てくれないんだ…!!!」


泣き声に叩き起こされた父親はびっくりです。
ディズニーランドがクリスマスプレゼントのつもりだったのですから。

泣き疲れたわたしたちは、また、小さなベッドに肩を寄せて眠りました。

しかし、またひとりが目を覚まし、みんなつられて目を覚まし…

「サンタさん…来たかなぁ…?」

枕元にはもちろん、プレゼントなんてありません。

部屋中探しても見当たりません。

リビングには………


!!!


テーブルの上に、小さな包みが3つ。


「サンタさんが来てくれた!!!」


待った分、喜びもひとしお。

わたしたちは小さなプレゼントをひとりずつ手に取り、包みをあけた…



……ら、



二千円。



と、手紙。



手紙にはこう、書き殴られていました。



『ディズニーランドのおこづかい』



「………サンタさんがお金をくれた………!!!」



わたしたちはまた、泣きました。



※そのあとのことをわたしは一切覚えていないのですが、弟曰く、

「泣いとるならどっかいけ!!!」

と父がぶちギレた、とのこと。
最近弟つまんないなー。
ていうか電話かかってこないなー。

と思っていたのですが。
どうやら弟、忙ししいらしいのです。

なんと!
サッカーのコーチを始めたそうなのです!

なんでも、自分が卒業したクラブチームから声をかけられたそうで。


弟「もう休みがねぇんだよ…あんなに暇だった俺がな!!!」


うん、まさにそのとおり。

ともあれ、職についた…
とは言いがたいものの、これは大きな進歩です。

と思いきや…


弟「マジキツいんだよ!こないだ吐いたし!」

私「え!?吐いた!?」

弟「そう!中学生と一緒に走ってたらさ、意識飛んで、草むらの方にそれちゃって、そんで気付いたらゲー!だよ!」

私「目の前でコーチが吐くとか、教えてもらう方も不安になるな…」

弟「いやー、中学生たちが『練習キツい』っつうからさ、『俺のときもっとキツかったよ!』って言ってやったんだよ!」

私「…ん?」

弟「でさ、一緒に走ってみたらこの様だよ!やっぱキツかったわ!」

私「…うわ!すげぇダサい!」

弟「ダサくねぇよ!『俺はもうサッカーやってねぇからしょうがねぇんだよ!』って言ってやったし!」

私「それ言われた中学生、腑に落ちないだろうな…」

弟「いや!みんな笑ってた!『また吐かないでくださいよ~』って!」

私「…バカにされてんじゃん…」


最高にダサいことを堂々とやってのける弟、ある意味カッコいい…
わけねぇか。
本日、墓参りのために実家に帰る予定なのですが。

家を出る前、弟から電話がかかってきました。


私「はーい」

弟「○×☆▲※…!!?(なにか叫んでいる)」

私「…なに?」

弟「○×☆▲※…!!?(なにか叫んでいる)」

私「え…なに…?」

弟「(急に低い声で)…今日何時に帰ってくんの?」


なぜ普通に電話できないのでしょうか。
わたくしごとですが、先日入籍しました。
籍を入れて一番最初に報告したのは、やはり弟たち。
取り急ぎメールで。

「無事入籍できたよー」

弟たちからどんな返事が来るかしら?
電話がかかってくるかしら?

素直に「おめでとう」と言われるかしら?
それとも、「おまえが嫁とかキモイな!」と憎まれ口を叩かれるかしら?

しかし、待てど暮らせど返事は来ません。

その夜、痺れを切らしたわたしは、弟に電話をかけました。


弟「なに?」

私「メールしたけどさ、ちゃんと入籍したよー」

弟「…そんなことより!おまえにはやるべきことがあるだろ!?」

私「やること…?え?なに?」


料理でしょうか?
わたしは料理が苦手です。

弟に電話している暇があったら、料理の腕でも磨け!
ということでしょうか。


弟「…サイン!!!」

私「…は?」

弟「○○ちゃんのサイン!!!」

私「サ、サイン…」


○○ちゃんというのは、弟が好きな、とあるアニメのキャラ。
というのも、わたしの友人がその○○ちゃん役の声優さんとちょっとつながりがあるそうで、その話を以前うっかり弟に話してしまったのです。

弟の食いつきといったら凄まじく、電話のたび「サイン頼んで!」と懇願されました。
でも、この話題は数ヶ月前に「無理だよ」で収束したはずなのに…


私「前も話したけど無理だよ。友達も声優さんも忙しいし、そもそも何年も連絡とってないって言ってたし…」

弟「無理とかじゃなくて!俺が頼んでるんだから!」

私「俺が頼んでるったって…」

弟「聞いて!俺が!頼んでるの!」

私「いや、だから…」

弟「お願いお願いお願い!!!」


このあとしばらく、弟の懇願は続きました。
入籍の話題など、微塵も触れずに…
わたし、今まさに電車で帰っている途中なんですが、
ついさきほど弟から電話がかかってきました。

電車で電話をするのはマナー違反。
電話を切って、弟にメールをしました。

「今わたし電車なんだけど、何?」

メールはすぐ返ってきました。



「なんか聞きたかったけど今の一瞬で忘れちゃった。おまえのせいだな」



わたしのせいなのでしょうか。