京王線デハ6438と並ぶクハ3719
京王れーるランドの保存車シリーズ第4弾は、井の頭線唯一の保存車3000系のクハ3719号車です。
渋谷駅~吉祥寺駅間を結ぶ井の頭線は、小田急系列の帝都電鉄が開業させた路線です。
小田急系列ということもあって、線路規格は当初より地方鉄道の規格で、軌間は1067㎜、架線電圧は当初より直流1500Vです。そんなこともあって、1948年の大東急解体による京王帝都電鉄設立の際に京王線系統と同じ会社となるものの、1960年代半ばの京王線系統昇圧後の一時期を除いて車両の融通はありません(部品単位での融通はあります)。
3000系はそんな井の頭線に1962年に登場した電車で、編成単位では1988年まで5両編成(1969年導入分までは4両編成で導入され、1971年~1974年に中間車1両ずつ追加し5両編成化)29編成145両が導入されました。更にその後、1991年に事故廃車の代替での追加新造がありましたので、実際の製造両数は29年間に146両ということになります。
車体は東急初代7000系、南海6000系に続く東急車輛製のオールステンレス車体で、これらの車両とディスクブレーキを採用したパイオニア台 車や屋上の通風器の形状に共通点がありました。
製造が長期に亘るだけに、導入時期によって車体幅や側扉および側面配置や車体長、走行機器の違いや冷房装置の有無(1969年導入分から冷房装備、既存車も1970年~1974年に冷房改造)と機種の違いなど、数多くの変更点があります。
前面上部にはFRP製の仮面を被せ、その仮面を編成ごとに違う色に着色したことから同じオールステンレス車の東急7000系・南海6000系を押し退け(?)、1963年度鉄道友の会ローレル賞に輝いています。ちなみに、翌1964年度のローレル賞は京王線5000系が受賞しています。
1984年の初代1000系全廃後は井の頭線全車が3000系に統一されましたが、混雑緩和のための車両大型化に際し、1996年から順次20m片側4扉の2代目1000系に代替されていくことになり、2011年を以て全車が引退しています。
京王での廃車後は、18m級の車体で冷房付き、更には塗装要らず腐食の心配要らずのオールステンレス車体ということもあって、5000系同様地方私鉄への譲渡も多数ありましたが、残念ながら譲渡から漏れた車両は解体処分となっています。
京王れーるランドに展示されているクハ3719号車は、1979年に導入された車両で、井の頭線で初めて電動方向幕を採用し、側面にも電動方向幕が設置されました。
3000系といえば、前述のとおり編成ごとに7色ある前面カラーですが、この編成はラベンダーに着色されています。
1995年以降、1000系導入後も当面残る編成(1975年以降導入の編成)を対象に、1000系に近づけたイメージにリニューアルされることになり、この車両も1996年に実施されています。リニューアルにより前面窓は側面に回りこんだパノラミックウインドウとなり、“仮面”は普通鋼製に変更、内装も1000系に準じたものに改められました。
京王線・井の頭線全線ATC化により、ATC化に対応できない3000系は全廃されることになり、リニューアル車も2008年以降1000系に代替されていくことになりました。クハ3719号車を含む編成は2009年に廃車となり、このクハ3719号車は廃車後も保存を前提に解体を逃れ富士見ヶ丘検車区で保管されていました。
残念ながらこの車両とデハ6438号車は車内に入れませんので、車内の画像はありません。
伊予鉄道3000系クハ3504(京王時代クハ3723)車内 伊予鉄道高浜線高浜駅にて2010年7月22日撮影
車椅子スペース設置以外はほぼクハ3719号車と同様です。