京王れーるランドの保存車たち③クハ5723 | ヘタレ車掌の戯言

ヘタレ車掌の戯言

毎日惰性だけで生きているヘタレ車掌の日常です。

   
ここ最近、職場内で“ただの人”になるためにいろいろと準備やら引継ぎなどがあって忙しないです。

京王れーるランドの保存車シリーズ第3弾は、“名車”といわれた5000系のクハ5723号車です。

※例によって、京王研修センター時代の画像も使いまわしていますので、現在は撮影できないものもあります。
5100系デハ5121の新宿行き普通 千歳烏山~仙川間にて1994年2月撮影 

5000系は、1963年の京王線架線電圧昇圧(直流600V→1500V)とともに登場し、それまで路面電車の延長線上にあった京王線のイメージを、スマートなイメージに転換した立役者でした。
4両編成の5000系と2・3両編成の増結用5100系(登場時は5070系)があり、両者合わせて1969年までに155両が導入されました。
ちょうど今から50年前の1963年は、京王線新宿駅地下化に始まり昇圧と5000系登場、特急運転・6両運転開始、東八王子駅を移転した京王八王子駅開業と、京王帝都電鉄が大きく飛躍した年でした。その後も、1964年に動物公園線(現・動物園線)開業と京王線多摩川橋梁複線化(それまで中河原駅~聖蹟桜ヶ丘駅間は単線運転でした)、1967年に休止していた御陵線の一部を活かして高尾線開業、1968年に5000系冷房車導入と7両運転開始と続き、5000系の導入が終了したあとも1970年に京王線北野駅~京王八王子駅間複線化、1971年に相模原線京王多摩川駅~京王よみうりランド駅間開業と新宿副都心に京王プラザホテル開業と、発展していく京王線のさまざまな場面において5000系は主役でした。
そんな5000系も、華やかだった時代は意外と短く、1972年以降に導入された20m車体の大型車6000系に徐々に主役の座を追われ、1980年代半ばにはほぼ普通専用車と化していました。
“名車”も車両大型化の波には勝てず、1986年に非冷房・ツリカケ駆動の5100系初期車から廃車が始まり、1996年を以て営業車として引退、1995年から工事列車用電動貨車となっていた5100系3両も6000系改造車に追われる形で2004年に引退しています。
幸いなことに、車体寸法が地方私鉄で手頃なサイズであることや、系列の京王重機整備のセールスもあって、先頭車ばかりながらも全国の多くの地方私鉄に譲渡され、活躍しています。

・・・と、5000系のことをあれこれ書いてしまうと1冊の本ができるぐらいになってしまいますし、今なお熱烈なファンの方も多数いらっしゃいますので、ここでは保存されているクハ5723号車に特化したいと思います。
京王研修センター時代のクハ5723 2012年4月 8日撮影
 
クハ5723は、5000系最終増備車として1969年に導入されました。
5000・5100系は前年度から冷房車が登場し、供試を兼ねてさまざまな種類の冷房装置を搭載していましたが、翌1969年の導入分では、前年導入分の車両での実績を反映し、量産仕様として導入されています。このクハ5723を含む編成では、比較的小型のクーラーユニットが6基搭載されています。この他にも大型のクーラーユニットを1基搭載した集中型の冷房車も存在していました。
前年度の車両では、天井に連続してラインデリア(天井埋込みの送風機)を設置していましたが、この年の増備車ではラインデリアが省略されています。


車内は2010系の2次車を基本としつつも、より一層の無塗装化が図られ、近代的なものとなっています。また、このクハ5723号車では、2010系と比較して車体幅が200㎜拡大されていますので、車内も広々とした感じに見えますね。
こちらはデハ2015号車の車内。

5000系が登場した頃は、極力無塗装化した車内が近代的なイメージとされていました。
最近では、ステンレスむき出しの扉なんか安っぽくしか感じられないのですが・・・
 
通勤通学で京王線を使っていた方なら、この大きな1枚の扉にいろんな思い出があるのでは?

こちらもデハ2015号車同様、貫通路の部分に床置きのクーラーユニットが設置されています。
右側の座席は優先席です。

天井のクーラーユニットの裏にあたる部分にある冷房の吹出口です。
ただし、このクハ5723では、前寄り4基分のクーラーユニット本体が外され、換気扇がこの吹出口 の中に仕込まれています。屋根のクーラーユニットのカバーは残っていますが、換気扇とのクリアランス確保のため、前寄り4基分のみ若干カバーの取付位置が高くなっています。

ここを“指定席”としていたアナタ、手を挙げて 
 
京王研修センターで保存されていた頃は、原則非公開でしたが、毎年4月に開催される日野市の平山季重 まつりの日曜日に京王資料館の一般公開があり 、保存車も撮影したりクハ5723号車のみ車内に入ることができました。
2010年の平山季重 まつりではクハ5723号車の乗務員室にも入ることができました。
クハ5723の運転台
左手の主幹制御器(マスターコントローラー…自動車のアクセルにあたるもの)は、オリジナルのものではないようです。オリジナルのものは、おそらく譲渡車両に提供しているのかと思われます。
5000・5100系は、乗務員室内についても無塗装化が進められ、内張りは乗務員室扉も含めて化粧板張り、計器盤はステンレス無塗装でした。この、無塗装の計器盤、5000系を特徴付ける部分のひとつなのですが、朝日や夕日が反射して眩しかったそうです。
 運転席上部のスイッチ類
扇 風機は本来、2010系同様、旧社章入りだったのですが、新社章移行後に撤去されてしまったようです。

車掌さんになった気分で♪
車掌台の放送アンプ
左側に掛けてある金属製のマイクが懐かしい・・・ 
 
 車掌台上部のノンフューズブレーカー盤 

こんなところもこだわりのデザイン?
何やら撤去したような痕跡があるのは、晩年設置されていた列車無線操作器の跡ですね。
かつては、架線柱に張ってある誘導線を用いる誘導無線が使われていましたが、1990年代に入ってから誘導線を使わない空間波無線に移行することとなり、余命僅かな5000系も、先頭車として使うことのない車両を除いて改造しています。 
 
  
 客室スピーカーにはおなじみのKTR 
 
懐かしいと思ったアナタ、今度の休みに京王れーるランドへ5000系に会いにいってはいかがでしょうか