『馬鹿みたいな話!』(昭和36年のミステリ) 辻 真先 | ミステリ好き村昌の本好き通信

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『馬鹿みたいな話!』(昭和36年のミステリ)

 

 

 作者がこだわりを持って、作品化している『昭和のミステリシリーズ』の第3作である。

 

 昭和36年‥‥私は小学1~2年生であったと思うが、その頃の世の中のことは、何となく覚えている。

 テレビ、冷蔵庫、洗濯機が【3種の神器】と言われ、戦後16年が過ぎて、日本は高度成長経済の波に乗って、日本という国を、再び全世界に印象づけようとしていた時代が舞台である。

 ※①前作の登場人物(昭和ミステリシリーズの2作目の)風早は、売れないミステリ作家となり、大杉はTV局のディレクターとなった。

 風早の脚本、大杉の演出で、風早のミステリ小説をTVドラマ化することになり、そのドラマの制作過程と、そのドラマの放映日の出来事(当時のドラマ放映は、現在の舞台中継のように、リアルタイムで放映していたものもあり、本作のTVドラマもこのスタイルという設定になっている)

 

 ドラマの放映実況中に、主演女優が殺害される事件が起こり、【誰が、何の目的で】という、ストーリーが展開する。

 

 テレビスタジオの解説から、出演者、スタッフの人間関係、なじみの店(今でいえば、バーやスナックか)での、スタッフキャスト達の交流や交歓など‥‥

 自分の心の片隅にある、昔の思い出が時々甦ってきて、懐かしさと、もはや遠い過去になってしまったそれらに対する郷愁が、心にわいてくる。

 

 ストーリーそのものは、戦争が関係している殺人事件の顛末なのだが、時代や当時の文化、風俗、時代背景の描写に心が動き、謎解きになかなか気持ちを集中させることができなかった。

 事件はTVスタジオで起こっているので、スタジオの見取りが図添付されてあった。が、読み手である自分の欠点だと思うが、今一歩位置関係をつかみきれず、サスペンス的な要素を楽しみきれなかったように感じる。(自分の責任)

 ミステリの面白さより、時代としての昭和を楽しめる作品であると感じた。

 

 

注※① 風早、大杉は(昭和のミステリシリーズ第2作)「たかが殺人じゃないか」の中心人物

    である。また、本作の探偵役も那珂一平である。