『ちぎれた鎖と光の切れ端』   荒木あかね | ミステリ好き村昌の本好き通信

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『ちぎれた鎖と光の切れ端』  荒木あかね

 

 

 2022年度、江戸川乱歩賞受賞作家、荒木あかね氏の第2作である。

 受賞作『此の世の果ての殺人』も大変すばらしい作品で、「すごい新人が出てきた!」と思っていたが、この2作目を読んで、ガク然とした!

 何という才能!何と素晴らしい作品構成力!そして‥‥

 

 物語は2020年8月の天草半島徒島(あだしま)海上コテージでの、連続殺人事件からはじまる。

 徒島は無人島で、そこにある民宿【海上コテージ】に、7人の高校以来の仲間が、バカンスを楽しむために宿泊する。小さな入り江一つあるだけの、ミステリ的に言えばクローズドサークルである。

 その7人の仲間の一人樋籐(ひとう)が、視点人物になり、彼ら全員が(コテージの管理人を含む)一日に一人ずつ、殺害されていく事件の顛末が語られる。(樋籐のみ助かるが‥‥)

 第1部は事件の経過と、犯行方法、犯人の特定が描かれている。(視点人物の推理)

 

 第2部は、その事件から3年後、大阪のクリーンセンター職員横島真莉愛(よこしままりあ)が関わった連続殺人事件の経過が、真莉愛を視点人物として描かれる。

 

 1部と2部が、どこでリンクしてくるのかと思って、読み進めると、真莉愛の過去と、そして現在の彼女の置かれた状況に、第1部の連続殺人事件(樋籐事件と命名されている)に関わった誰かと、浅からぬ、いや偶然にしては、あまりにも様々な状況が、現在の真莉愛の人生に深い影響を与えていることがわかってきた。

 そして、終盤では、本作の本当の意味での主人公となって、息もつかせぬ事件解決のカギを握る人物となり、2部に登場する探偵役とも言うべき、刑事の新田如子(にったいくこ)とバディを組み(前作『此の世の果てー』イソ、ハルコンビのように)事件解決に尽力し、ラスト40ページのクライマックスを盛り上げ、事件を解決する。

 

 最初にも述べたが、何といっても作者の作品構成力がすごい!

 第1部は、あたかもクリスティの『そして誰もいなくなった』現代日本語版的スタイルで、素晴らしい緊迫感と、謎解きののスリルを読者に楽しませ、解決直前で、その結果を2部に持ち越し、2部では新しいヒロインと刑事のバディコンビを、大阪~九州まで、ダイナミックな推理で裏付け捜査をさせる。

 ラストは、大阪で、手に汗握る大アクションを盛り込んで、一気に解決にもっていく。

 そして、全450ページの総括的な謎解きと、本当の犯人を最後の最後にあかすとはー!

 

 すごい、とても2作目の新人とは思えない。宮部みゆき氏以上の衝撃的な女性作家である。

 これから、ひょっとして、【日本のクリスティ】と呼ばれるほどの作家になるかも‥‥

 

 次作がまちどおしい作家が、また一人誕生した!