【ヴァランダーシリーズ・アラカルト】 補足等
①『苦悩する男』下巻26章で、バイパ・リエバが登場する。彼女は第2作『リガの犬たち』の中で、ヴァランダーが、ラトビアのリガに事件調査に行ったとき、彼に協力してくれた犯罪捜査官の妻である。
当時、妻と離婚して二年のヴァランダーは、彼女の夫がヴァランダーとの共同捜査中に殺害されたことが、きっかけとなり、同情は本物の恋愛に変わり、相思相愛の仲となる。
しかしこの恋は成就せず、二人は万感の思いを込めて別れるのだ。
そして、20年が過ぎた本作【苦悩する男】で、バイパは、不意にヴァランダーを訪ねてスウェーデンに来るのである。
この20年の歳月の重さと過ぎ去る歳月の速さ!人生の無常‥‥言うに言われぬ物悲しさが漂う。
人と人との出逢いと別れ,生きることの愛しさとはかなさ‥‥。
この章を読み味わうだけでも、本シリーズのファンは落涙するだろう。最高の名シーンである。
②『ヴァランダーシリーズ』は、あと1作、中編だが、若きヴァランダーが主人公の『手』という作品がある。『手/ヴァランダーの世界』(2021年6月発行)
このシリーズがもう一篇読めることは、ファンとして、とてもうれしいことである。