『たかが殺人じゃないか』 辻 真先
作者の「昭和とわたし」をテーマにしたシリーズの2作目である。
物語は前作(第1作)『深夜の博覧会』から12年後の昭和24年。
学制改革により、戦後初めて男女共学となったその年1年間の高校生活と、主人公(風早)の身近に起こった、二つの殺人事件をリンクさせた青春ミステリである。
主人公である風早は、高校三年生のその時(昭和24年)男女共学学級に編入された。作者辻氏の分身的存在である。
彼と親友大杉、鏡子、弥生、礼子の5人の「映画推理研」メンバーは、様々な過去を抱えて、(言い換えれば、戦争の傷跡を心に秘めて)生まれて初めて男女共学の学園生活を体験する。
そんな最後の1年間の高校生活が、活き活きと、またレトロな雰囲気で、センチメンタリズム満載に描かれる。
そして、それは、昭和時代に青春を生きた人々(わたしもそうです)の甘美な思い出に、同化していく。
さて、新制高校になって、初めての夏休み。修学旅行的な一泊二日の旅で、彼らが遭遇した殺人事件。
さらに二学期、文化発表会展示作品作り(この日は「キティ台風」の上陸日)の最中に起きた猟奇殺人事件と、立て続けに「映画推理研」を襲う災厄。
不穏な空気を孕んで、彼らはいよいよ、文化発表会の当日を迎えるのである。
二つの殺人事件は、何を意味するのか?犯人は誰か。
文化祭最後の演目の混乱が、当時の日本の現実を、象徴的に表していて心が痛い。
そして、前作の主人公那珂一平が登場し、見事な推理で事件は解決する。犯人は意外や意外‥‥。
ノスタルジックで、きっちりした結末!ぜひ一読を!