内戦終結が確定したので、俺はしばらく1人旅をしようと思った。あの戦いはかなり殺伐とした感じだった。お互いの正義のぶつかり合いだったがそのどちらにも悪が内在していた。それを非難する権利は俺には無い。俺だって吸血鬼として業の深い事をし続けているのだから。
そのため気晴らしとしてリフト方面を散策していた。リフテンに行こうと思ったが盗賊ギルドの暗躍もあるし、気が休まらないと思ったからだ。盗賊ギルド自体が嫌いなのではない。稼いだ財産が盗まれるのが嫌なのだ。
自然の中を散歩するのは気分がいい。心が落ち着く。しかし、ホラアナグマやフロストバイト・スパイダー、オオカミ等が襲い掛かってきたので再び殺伐とした旅に戻った。スカイリムはやっぱり危険に満ちているなぁ!それでも素晴らしい所が多いから好きなんだけどな。
その後、オークの集落を通ろうとしたところで巨人が襲撃しているのを見かけた。見て見ぬふりは出来なかったので加勢してその巨人を殺し、集落を守る事に成功した。
だが、巨人を殺した後に2人の女性のオークが口論を始めた。俺に立ち去るように言ったのはユーゴという名前で、それを諫めたのはアタブという名前だった。それとここの集落はラーガシュブールというらしい。ここでは何か困りごとが起きているようだ。これも見て見ぬふりは出来ないだろう。
マラキャスを降霊せよ!
アタブはユーゴの言動を謝罪し、俺にラーガシュブールを助けて欲しいと懇願してきた。その内容は、ヤマーズという名前の男性オークが族長を務めており、かつては強く誇り高い戦士だったが呪いで弱っているらしい。族長が弱れば部族一同が弱るので巨人達がその隙を突いて攻め入ってくるようになったと嘆いた。
救いの手を差し伸べようにも当のヤマーズは拒んでいるようだ。部外者の俺ならば上手くいくかもしれないとアタブは言った。彼女自身はヤマーズの命令で外に出ることが出来ないようなのだ。
ヤマーズ族長の呪いを解くために、アタブはマラキャスに助けを求めたいと言ってきた。待て、それはデイドラ・プリンスのことか?
確かオークの守護神にして拒絶されし者、誓いの守り人であり呪いの達人とも称される神だ。オブリビオン領域は大地と大気が灰と塵で構成されたアッシュピットと呼ばれる場所だ。デイドラ殺しの武器も製造するらしいので、ダークエルフから蛇蠍の如く嫌われていると記されていた気がする。セロもよく「マラキャスに召されろ!」というセリフを敵に向けて言っていたっけ...。
マラキャスの祠で儀式を行おうにも、必要な道具がないので出来ないのだそうだ。その物とはトロールの脂肪とデイドラの心臓だそうだ。それなら持っている。トロールの脂肪は旅の最中の洞窟でトロールを殺した時に入手していたし、デイドラの心臓はメエルーンズ・デイゴンの提案を断った事で差し向けられたドレモラ達を殺した時に入手していた。それをアタブに渡すと彼女は喜び、すぐに儀式に移ると言った。
ヤマーズ族長のいる長屋にアタブさんと同行した。彼は不機嫌で、余所者の俺を連れてきたのも気に入らないし、マラキャスに助けを乞う事も嫌がった。見捨てられた事を恨んでいるようだ。それでもアタブさんは部族を守るためだと説得した。
ヤマーズ族長は渋々その思いを汲み取り、儀式を行う事を了承した。これで事態が好転すればいいのだが。
アタブさんは俺から受け取ったトロールの脂肪やデイドラの心臓を捧げ、儀式を執り行った。ヤマーズ族長はやる必要がないといった具合に不満気な態度だ。しかし、マラキャスは声のみだが降霊した。しゃがれた老人の声だった。
マラキャスは開口一番にヤマーズ族長を罵倒した。アタブさんは降霊出来た事を喜んだが、そういう雰囲気ではなかった。かのデイドラ・プリンスは怒っていたのだ。ラーガシュブールの族長の在り方が許せないのだろうか?ヤマーズ族長は困惑していた。
尚もマラキャスの罵倒は続く。オークの呼び名に値せず、弱虫で小物で、恥さらしであると。巨人達がかのデイドラ・プリンスの祠を汚すのを野放しにした事を糾弾した。その償いとして、その巨人達の親玉のハンマーを捧げものとして持って来るように命令してきた。
アタブさんはマラキャスの命令を実行するようにとヤマーズ族長に命じた。彼はかなり不機嫌だった。人数が少ないとはいえ、複数人いる面前で罵倒されてしまえば気分も悪くなるだろう。その後、俺を呼びつけた。何をお願いするのだろう?
巨人討伐で力を示せ!
巨人と戦う事になってしまったので自分を護衛するようにとヤマーズ族長は言った。場所はファロウストーン洞窟と呼ばれるようだ。そこがマラキャスの祠が奉っている所でもあるようだ。内部に入っても親玉に辿り着くのさえ困難なので、露払いを行って力を温存したいと言ってきた。
それが達成されればヤマーズ族長は部族を取り戻し、俺は報酬を得てこの問題から解放されるだろうという提案だった。何だか釈然としないが引き受けるしかなさそうだ。
長い道のりを経てファロウストーン砦に到着した。入る前に休憩がてら呪いについて尋ねた。長い間満足に寝ておらず、余所者と協力せねばならない事への怒りを露わにした。俺としても問題を拗らせたくはない。ヤマーズ族長へはこれ以上何かを言うと癇癪を起すかもしれないのでこの辺で止める事にした。
ファロウストーン洞窟内部に入ると、巨人達が暖を取ったり休んだりしていた。俺としては特に恨みはないが仕事なので殺す事にした。一般人の括りではないから大丈夫なはず...。巨体故に厄介なので死の稲妻を駆使しつつ、ドラゴンベインで斬り殺していった。2体いたが親玉はいなかったので最深部にいるのだろう。その他にもホラアナグマが2頭いたので併せて殺した。これでヤマーズ族長も行動しやすくなっただろう。
しかし、最深部に到着するとヤマーズ族長は驚くべきことを言い出した。巨人の親玉を殺してハンマーを奪った後に、そのやった事実を自分がやった事にしてほしいと言ってきたのだ。とんでもない話だと思ったが引く様子もない。報酬も弾むと言うので仕方なく了承した。
最深部であるマラキャスの祠がある場所に巨人の親玉が待ち構えていた。今までより強かったので棍棒を避けつつ、死の稲妻を駆使して隙を作ってドラゴンベインで斬り殺した。その親玉の懐を失敬してハンマーを取った。シャグロルのハンマーと呼ばれる物らしい。ここで殺されたオークの誰かの物だろうか?
持ち帰ろうとヤマーズ族長に報告したが、ここで俺を殺してその成果を奪う事を宣言したのだ!なにも殺し合わなくてもいいだろうに!
オークの部族を救え!
ヤマーズ族長はオークの片手斧を巧みに操って殺しに掛かったが、俺としてもここで死ぬつもりはない。俺もドラゴンベインで巧みに防御しつつ、ヤマーズ族長に斬りかかった。死の稲妻を使おうとも考えたが、彼との一騎討ちなのでやらなかった。この場合己が実力で打ち負かす方が良いと思ったのだ。
しかし、ヤマーズ族長は負けを認めず死に物狂いで攻撃してきたので最終的に殺す事になった。彼が息絶えた後にマラキャスが俺の頭の中に話し掛けてきた。
ヤマーズ族長は愚か者で、責任逃れをしようと下らない計画をいつも立てていたと言い、それを俺が巨人退治と併せて殺したので一石二鳥だったとマラキャスは言った。その後、シャグロルのハンマーをラーガシュブールに持ち帰るように命じ、部族を鍛えていくと言った。何だかんだ言ってもオークの守護神なのは本当のようだった。
俺はラーガシュブールに戻り、アタブさんにシャグロルのハンマーを渡した。上手くいったのを喜んだのも束の間、ヤマーズ族長は見当たらない事を怪しんだ。死んだ事を悟ったが安らかに逝ったのかと尋ねてきた。
俺は嘘を吐こうかと考えたが、マラキャスが随時監視している状況なので本当の事を話すことにした。俺まで呪いを掛けられたくもないし、ラーガシュブールが抱える困難をこれ以上悪くしたくなかったのだ。
ヤマーズ族長に巨人殺しを依頼された後に俺も殺そうとした事実をアタブさんに話した。彼女は驚きどうしてそうなったのかを聞こうとしたが、それはマラキャスが代わりに話す事になった。彼が臆病者で弱虫であり、彼の誤魔化しのせいで部族全体が多大な被害を被ったのだと言い放った。かのデイドラ・プリンスは余程腹に据えかねたらしいな。
マラキャスはラーガシュブールが強いオークの部族である事を証明するための機会として、グラーゾフというオークの男性を次の指導者に任命した。前よりもマシであるといいなとぼやきながら、シャグロルのハンマーを捧げるように命令された。
俺はそれを捧げ終わると、グラーゾフに挨拶をした。彼は族長に任命された事を光栄に思いつつも、その人選に見合う程の経験は積んでいないと言った。マラキャスが戦いの中で培わせようとしているのだろうと思った。困難が待っているだろうが彼の武運を祈った。
その後、シャグロルのハンマーはマラキャスの力で変化していた。その名もヴォレンドラング。アタブさんにこれは何かと尋ねると、かつてはドワーフがかつて生み出した巨大な戦槌らしい。ハンマーフェルの由来にもなった歴史深いアーティファクトのようだ。
変化したというよりも入れ替えたのかもしれない。かなり重かったが威力はありそうなので、活かせる場面を見て使用しようと思うのだった。