俺達はアーリエルの弓を携えてヴォルキハル城に戻った。そこでは皆が弓の所有による吸血鬼の世の到来を楽しみに待っている様子が伺えた。俺としても生き延びるためにそうしたくもあるが、それは終わらない定命の者達との戦争に他ならない。
だからこの弓はハルコン卿抹殺のために使用するのだ。だから彼等にはその事は言わなかった。その方がスムーズに終わるからだ。
妄執のハルコン卿
ハルコン卿がいるとされるモラグ・バルの祠に行くと吸血鬼の王に変身して待ち構えていた。俺達が謀反を起こすことは分かっていたというのか。いや、元々信用していなかっただけなのかもしれない。彼はセラーナに失望し、俺と組んだことを非難した。
対するセラーナは実現が出来そうにない予言で家族の絆を壊し、大勢の吸血鬼を殺したことを問い詰めた。それを聞いたハルコン卿はヴァレリカさんに似てきたと言って、憎悪の念を覗かせた。彼女は即座に否定して、自分は違うと反論した。
そして、ハルコン卿は俺がセラーナを心変わりさせたと詰め寄ってきた。忠誠心よりも野心が上回るのも時間の問題だとは分かっていたと指摘された。俺なりには忠誠を誓っていたつもりだけどね。でも、永遠の夜の世界はいただけないなぁ。
俺は「どのみち殺すつもりだったのでしょう?」と反論するとハルコン卿は一族の発展のための微々たる犠牲だと豪語していた。
それとセラーナを生贄に捧げるようなことは許せないと俺が糾弾すれば、彼は「吸血鬼は永遠の存在なので、家族の絆など良くて束の間の出来事に過ぎない」と言い放った。
流石に頭にきたので、俺は「ハルコン卿、その妄執はいい加減にしていただきたい!」と言った。それを受けてハルコン卿も殺意を露わにして決戦の火ぶたが切って落とされたのだ。
ハルコン卿は吸血魔法を何度も繰り出してきた。あまりの威力に血液の薬を何度も使用することになった。セラーナの援護もあってアーリエルの弓に太陽神の矢を使用して、ハルコン卿に命中させることに成功した。その眩い光に包まれながら体を焼かれるのでかなりの激痛だろう。
対策としてガーゴイルやスケルトンを何体も召喚して牽制し、容易に射ることが出来ないようにしてきた。その間にも吸血魔法で攻撃するので時間との勝負だった。セラーナがその露払いを行い、俺が射って攻撃する段取りにしたのだ。
そして、弱ってきたハルコン卿の心臓に太陽神の矢を射ってとどめを刺すことに成功した。彼はセラーナが親殺しをやった事を呪いながら死んでいったのだ。
俺は大丈夫かどうか聞いたら、セラーナは気丈に振る舞った。次の旅が待ち遠しいと言っており、俺はそれを了承するととても嬉しい様子だったが、無理しているなと感じた。
新たなる主、業魔誕生!
セラーナの話の最中にガランさんが祠にやって来た。ハルコン卿との決戦が起きるとは予想もしていない様子だったが、死んでもあまり悲しそうではなかった。元々信頼関係が無かったのだろう。
ガランさんはセラーナの心中を察したが、もうハルコン卿は正気では無かったと言いつつも実の父親を殺さねばならなかった苦しみを吐露した。そして、随分前に自分の父親は死んだのだと結論付けた。予言に憑りつかれた時点でそうだったのだろう。
ガランさんは「ハルコン卿亡き今、新たな城主はお前となる。誠意を以て受け入れよう」と言った。新参者の俺がなって良いのか?オースユルフさんやヴィンガルモさんが黙っていないのでは?何だが押し付けられただけの気もするが、やるしかないだろう。
城主就任祝いとして装備一式を進呈された。恐れ無き司祭という名前の礼装で、イナゴを召喚して相手を殺す魔法の本やデュナミス、正義の息吹と呼ばれる剣も一緒に進呈された。デイドラの鎧は今までの旅で消耗しているのでしばらく修理に出そうと思う。旅を終えたらまた帰って着用しよう。
そして、城主となったからには覚悟を持たねばならない。ドラゴンボーンや勇者と呼ばれもするだろうが俺自身悪人である事を忘れてはならない。人の生き血を啜る吸血鬼なのだから。そのために自分にもう1つの名前を付けることにした。
生き血を啜る行為は業が深く、悪魔(デイドラ)の如き吸血鬼の一団を束ねる立場になるので、「業魔」と自分自身のもう1つの名前として授けた。自分の生き方を戒めるためにだ。
もう1人のドラゴンボーン?
城主となったが、俺はドーンガードとこれ以上戦うつもりはなかった。必要以上の戦いは自信の首を絞めるだけなので、これ以上の干渉は禁止とした。城の皆は不満を口にしたが、皆を守るためとハルコン卿の二の舞を防ぐためだという理由で納得してもらった。無理矢理ではあったけど、仕方がない。生き延びるならば大々的に戦争する必要は全くないのだから。
俺は気分転換のためにホワイトランに帰って来た。勿論セラーナも同行してもらった。ルパートも最近全く召喚していなかったので呼び出すと不貞腐れていた。
俺の呼び出しが全くなかったので、ルパートは「パープリンやパッパラパーという名前に変更しよう」と言いながらいじけていたのだ。ごめん、今度からはしっかり呼ぶから...。
夕方付近に到着すると、配達人が現れた。どうやら博物館が新設されたようで、案内状を配って回っているらしい。場所はドーンスターと呼ばれる町でペイル地方の首都にあるようだ。サイラス・ヴェスイウスという名前の人物が主催しているらしい。セプティム王朝を破壊した教団をテーマにしているのだとか。
何だか胡散臭い気もするが、行って確かめる事としよう。まぁ気が向いたらだけどね。
ブリーズホームで旅の荷物を整理した後、玄関を開けると怪しげな風貌の男女1組が俺に話し掛けてきた。俺の見た目も十分に怪しいのは置いとくとして。
俺がドラゴンボーンである事を知っており、偽りの存在であると公然と否定してきたのだ。俺を殺し、ミラークという名前の人物こそがその地位に相応しいと豪語して襲い掛かってきた。だが町中で襲い掛かってきたのが良くなかった。衛兵はすぐさま対応し、俺達も戦闘態勢に入った事で多勢に無勢となり、すぐに殺されてしまったのだ。
信者の遺体から失敬して、手掛かりになりそうな物を探したら手紙を見つけた。それにはレイヴン・ロックと呼ばれる場所からウィンドヘルムの港まで行って俺を殺すように指示された内容だった。
ノーザンメイデン号という名前の船を利用したらしい。ソルスセイムと呼ばれる場所に来て欲しくないと書かれていたが、そこに何があるのだろう?行って確かめることにするか。ドーンスターの博物館はまた今度でもいいかな?
ソルスセイム島に向かえ!
ウィンドヘルムはイーストマーチ地方の大都市であり、スカイリム最古の都という説もあるらしい。イスグラモル自らが建設に携わったともされている。だが、その都はノルドによるノルド至上主義が根深く、何よりも首長がストームクロークの首領、ウルフリック・ストームクロークが務めているのだった。直に会った事は無いが、中々難儀な場所でもあるようだ。観光はまたその内行くとしようか。
俺達はウィンドヘルムには入らなかったが、港付近でヒストの声という変わった名前のアルゴニアンの男性に出会った。ノルド全てが差別主義を行っているわけではないと持論を述べており、彼とは仲良く出来そうだと思った。
その他にはアレティノという名前の少年が「闇の一党」と呼ばれる暗殺集団を呼ぶために儀式を行っていると衛兵がぼやいているのを聞いた。それなら解決しに行けよと思ったが、関わり合いになりたくないらしい。そこまで恐ろしい組織なのか?余裕が出来たら調べに行くかな。
ノーザンメイデン号が停泊している港に到着した。船長はノルドの男性のようで、グジャランド・ソルトセイジという名前らしい。
ソルスセイムはダークエルフが住むレイヴン・ロックと呼ばれる町と、ノルドが少数住むスコール村があることを教えてくれた。グジャランドはソルスセイム島に戻りたくないらしく、その理由を尋ねると仮面の男女に何かしらの術を掛けられたらしく、記憶が長い間曖昧になっているらしい。
断固拒否の姿勢を崩さなかったが、今後のための「資金」として500ゴールドを賄賂として揺さぶりをかけた。グジャランドは生計のためということで渋々納得し、ノーザンメイデン号をソルスセイム島に向けて出航させた。
レイヴン・ロックは灰に覆われた島だという印象を受けた。ノーザンメイデンが到着すると、身形の整ったダークエルフの男性がこちらにやって来た。エイドリル・アラーノという名前らしく、評議員補佐という役職におり、上司のレリル・モーヴァインという名前のダークエルフの男性に仕えていること、その上司の一族であるレドラン家が統治を行っていることを教えてくれた。
かつては帝国の領土だったが放棄されたのをレドラン家が管理するようになり、多くのダークエルフを受け入れて復興に努めているのだと言った。エイドリルはモーヴァイン評議員の補佐をすることに誇りを抱いているのが伺えた。
次にモロウィンドの首都、ブラックライトの街について尋ねてみた。商人や旅人がまだ何人かいるらしいが、かつてアルゴニアンによる侵略で何千ものダークエルフが殺されてしまったという暗い過去を持っていた。アルゴニアンがかつて奴隷にされた事の報復か領土拡大、またはその両方と考えられるが、真相は分からないらしい。
双方が真に和解できる日が来ることを願おう。アルゴニアンやダークエルフにも善人悪人はどちらにもある。難しいと思うが、俺も出来ることは手伝って改善したいとは思う。吸血鬼ではあるけどな。
その後、グジャランド船長は荷物の金額が倍かかった事をエイドリルに報告していた。そんな金額は払えないと抗議したが、取引先である東帝都社と呼ばれる政府ご用達の公式海運業者に、一方的な価格の吊り上げを行われたからのようだ。
とんでもない業者もいたものだと俺は思ったが、すぐにはどうにも出来ない。エイドリルは検討すると言って話は中断となった。何か出来る事があったら手伝うべきだろう。
気を取り直してレイヴン・ロックを少し散策することにした。
ダークエルフの信仰対象のアズラ、ボエシア、メファーラ(こちらはまだ完成していなかったが)の石像や祠、品揃え豊富な店等があり、復興の兆しがはっきり見える形になっていた。そのため幸先が良いように感じた。俺は少し休んでからミラークの事は調べようと思うのだった。