ショーン君が亡くなって数日後、X6-88は僕に敵を行動不能にし、人類のより良き未来を守ったと言って喜んでいた。僕は自分が良い事をしたのか分からないと言った。今までの事で良い事があったかは疑問だ。インスティチュートの発展と人々の安寧は護れただろうが、地上の人々にとっては依然として脅威のままであるからだ。
X6-88は自分を疑うようであればインスティチュートの将来を考えてほしいと進言した。それは僕が守るべき遺産であり、彼を次の地点に連れて行ってくれると語った。
レールロードやB.O.Sとの全面戦争は回避出来たが、他の抵抗勢力に出会う事もあり得るとし、彼等が各々戦力の再編成するのを許しておくわけにはいかないと忠告された。
僕は「もう十分に戦ったよ。気分転換に平和を満喫したい。それはダメなのかい?」と反論した。X6-88は気持ちは分かるが、敵がそう思っているのかと言われたが勝利を味わう時間は必要として、彼自身も平和を満喫する事にしたようだ。これで休むことが出来そうだ。
たとえ血は繋がらずとも
僕はショーン君のために建てられた記念碑の前に来ていた。今後は僕が運営していく事になるが不安でいっぱいなのだ。だが、その前に今まで良くも悪くもインスティチュートをモ護ってきたショーン君の働きに敬意を表さねばならない。僕は記念碑の前で「さようなら、ショーン」と呟いた。君の両親に代わって僕が何とか護ってみせるように頑張ろうと誓った。
次にアドバンスシステム部にいる人造人間の方のショーン君の下に赴いた。彼は僕の事を待っていたと言った。急に待っていたと言われたので僕は面食らってしまった。
どうやら本物のショーン君の遺言でホロテープを渡すように言われていたらしい。だが、その内容は聞いてはいけない約束になっているらしく、内容は分からなかった。後で聞いてみよう。
人造人間の方のショーン君はファーザーこと、本物のショーン君が亡くなった事に深い悲しみを抱いているようだ。大好きで、いつも優しかったようだ。僕もいなくなって寂しいと彼に打ち明けた。僕はなんだかんだ言ってもショーン君は守るべき人間であり、同じく大好きだったことに変わりない事に気付いたからだ。
そして、人造人間の方のショーン君、いや、もうこの表現は止そう。この子もまたショーン君である事は間違いないのだから。ショーン君は責任者になった僕にお願いがあると言った。その時、僕の事を「パパ」と呼んだ。僕が?そのようにプログラミングされたのだろうか?
ショーン君は僕が地上に行く時にガラクタを探してきてほしいと言った。古い目覚まし時計がいいらしい。それを分解して何かを作ってみたいと言うのだ。僕は快く了承した。
この子が僕の事をパパと呼ぶのはプログラミングなのかもしれないけど、それを決めつけたらニックやダンス、キュリーやDiMA達を否定する事になる。だから、僕はこの子を自分の子供として受け入れた。何の縁もゆかりもないけれど、たとえ血が繋がらずともこの子を護る事を誓った。
ファーザーの死後の影響力
僕はインスティチュート内部を歩き回る内にファーザーの死を嘆き悲しむ声を沢山聞く事に気付いた。多くの人々に愛されていた事は確かだった。
ニュートンさんは僕の事は最初は信じられなかったが、今では僕が選ばれた理由が分かったと賛辞を述べた。
アラーナさんは就任のお祝いをすべきところだが、ファーザーが亡くなったので控えると言った。
エンリコさんはファーザーが僕の事を誇りに思っていたと僕に教えてくれた。
ロザリンドさんは苦しい状況であるのは承知の上だが、共に働ける事を楽しみに思っていると僕を励ましてくれた。
幹部の全てが表明したわけではないが、共通してファーザーを慕っている事が分かった。そんな彼の後を継げるに相応しい人間になれるか不安だが、頑張るしかないだろう。
人造人間解放の協力者と結託せよ!
僕はリアムさんに人造人間の開放の協力を行う事を話に行った。彼はより良い未来を作ろうと思うなら、人々がお互いを思いやる未来でなければならないと言った。だが、僕の権限のみでは納得させられないと警告された。
SRBに監視されているらしく、その証拠となる自身のターミナルは全てシャットダウンし、側面から攻めるために「リアム・ビネーのチャット・モジュール」と呼ばれるホロテープを受け取った。これで秘密のやり取りを行うべきだと言われた。そして、直接会うのは止めるべきだと言った。会っても自然に振る舞うようにしなければいけないようだ。慎重に行動しなければ。
僕はモジュールをショーン君が使っていたターミナルで起動させた。ここなら安全だと思ったからだ。項目は全てで3つあった。
1つ目は何をそんなに心配しているんだ?という項目だ。
僕が新しく責任者になっても、その権限はかなり制限される事が予想されるという内容だった。ファーザーのようなトップサイエンティストとしての人気や影響力が無いため、一筋縄ではいかないと忠告された。
2つ目はただの被害妄想だと分かっていますという項目だ。
SRBに監視されている気がするという内容だった。コーサーにじっと見られている事が増えたらしい。
3つ目は伝えたい事がある方は、ぜひご連絡下さいという項目だ。
同盟者に成り得る人物と協力関係になるべきとあり、その人物はアリーさんであるという内容だった。彼女は第3世代の人造人間の平等な権利を主張している証拠を見つけたらしい。影響力が大きいので彼女から始めればいいようだ。リアムさんの父親であるアランさんも支持しているが当てにしない方がいいと書かれてあった。ファーザや長官達に盾突く勇気がないらしい。そうと分かればアリーさんに会いに行くべきだろう。
アリーさんに会いに行くと、僕に向かって大変な時であるのは承知な上だが、責任者であるので我々を導く時であると言われた。その後は彼の死を嘆き悲しんだ。やはり堪えていたのだろう。
話は変わって、ショーン君が使っていた部屋は僕の物になり、必要な物は申請書を出したら補給してくれると教えてくれた。
そして、他の部署も僕の力を必要としているだろうから様子を見に行くようにと言われた。僕としてもそのつもりだが、アリーさんに僕を信用しているかどうかを聞く事にした。彼女はどんな事でも力になると言ってくれた。リアムさんの見立ては正しかった。僕は秘密を打ち明ける事にした。
僕はレールロードと協力して人造人間を助けようとしていると話し、僕も同志である事を明かした。アリーさんは驚いたが、SRBに気取られないように慎重に行動しなければと言った。
僕は「人造人間が自由でいたいなら、そうすればいいんです。何も難しい話ではないですよ」と言って、アリーさんを説得した。彼女は味方で良かったと言って、安堵した。
この後、アリーさんの秘密のシステムを起動して、自由を願う人造人間達を解放し、テレポーテーションした。それ以外の残った人造人間達は引き続き、インスティチュートで働いてもらう事になるだろう。今度は対等な存在として。
僕はこの件は一緒にやる事を決めたが、アリーさんはメモを渡してきた。上手く解放するためのメモらしい。彼女の方は準備作業に入るので僕もそうするべきだろう。
翌朝そのメモを読んでみると、人造人間を人間と同等の権利を与える大きな政策変更は、全会一致の承認が必要であるとされ、その決定は僕の力だけでは達成出来ないという内容だった。
その提案を一方的に行政公布しようとする事は、思ったほど簡単ではなく長期的な成功は保証されないと警告された。そうすれば物事はすぐに手に負えなくなるので、1人で来るのはお勧めしないと忠告された。コーサーか他の人造人間を味方につけて来るようにとあった。
コーサーは最終的にSRBの命令を聞く事になるが、最初は責任者の命令を実行するようになっており、質問は後回しになるように調整されているらしい。最後にアランさんはこちらの味方であるため、危害を加える事は無いと付け加えられていた。護衛の準備をしてから理事会に臨むべきだろう。
護衛の準備と証拠集め
僕は最初にメモとは別に書かれていた、レールロードの協力者とされるZ1-14と呼ばれる人造人間に会いに行った。僕が責任者である事と協力者である事を明かした。彼は科学者達に堂々と立ち向かえば、もっと多くの仲間が参加してくれるかもしれないと期待するようになった。
協力するために力を貸してほしいと僕は言ったが、Z1-14は平和的解決を望んでいると言った。僕としてもそうしたいところだ。
僕はあくまで護衛として協力を要請した。Z1-14は不必要な流血は望んでおらず、自由が欲しいと言った。しかし、丸腰では話を聞かれずに殺されてしまうと言うので、僕はレーザーピストルと十分なフュージョンセルを与えて会議室に向かわせた。使わないで済むならいいんだけど。
今度はX6-88を護衛にする事にした。僕は人造人間の解放した事を打ち明けた。彼は「付き合う必要はありません。ファーザーの遺産を危険に晒しています!」と苦言を呈した。
その気持ちはよく分かりつつも、僕はインスティチュートを変革するための作戦に力を貸すように命令した。人間でも人造人間でも奴隷制度には反対だとX6-88に言った。
それでもなお、X6-88は僕が血迷った事をしないように警告してきた。僕としても流血沙汰にしたくはない。気は咎めたが、これは命令なので配置に着くように言った。彼は渋々その命令を受理した。
僕は責任者の部屋に戻り、準備しようとしていたらホロテープを2つ見つけた。
1つ目はファーザーのホロテープ#32と書かれていた。
その内容はディーンさんの診断により、エヴァンさんは認知症に罹っておりそれが悪化した事が記録されていた。アドバンスシステム部で働けなくなることは時間の問題で、プロジェクトが何年も遅れる事を危惧していた。計画通りに事を運ぶために思い切った行動を取るべきだとショーン君は呟いていた。
2つ目はファーザーのホロテープ#47と書かれていた。
その内容は今のエヴァンさんは人造人間であり、本物のエヴァンさんはとっくの昔に殺されていたという衝撃の事実が記録されていた。SRBにも伏せてあるらしい。
エヴァンさんを殺すのは流石のショーン君でも躊躇われたようだ。命乞いする様を間近で見ていたのだろう。病気による慢性的に心を失う人生に思いを馳せ、強引に自分は正しかったと納得し、エヴァンさんや未来のためにやったのだと自己弁護した。
何という事を...。まさかインスティチュート内部でもすり替えをしていたなんて思いもしなかった。だが、これは交渉材料としては効果的だろう。気は咎めたが、使えるものは何でも使わなくてはならない。
大改革!人造人間を解放せよ!
護衛のX6-88とZ1-14を理事会に出席させ、臨戦態勢にする事で有無を言わせない状況を作り上げた。独裁政治や恐怖政治のような気がしないでもないが、押し通らせるためなのでこのまま開こうと思う。そして、僕がストラジデー・スーツを着込んだまま理事会に参加したので、俄かにざわつきが見られた。
アリーさんは「インスティチュートの新しい時代の夜明け」と言い、理事会の開始を宣言した。僕は単刀直入に、人造人間達を自由にして、解放する時だと皆に宣言した。
それを聞いた理事会は紛糾した。ジャスティンさんやは僕の正気を疑い、マジソンさんは人類の再定義を「女性の再定義」のに変更したらどうかと皮肉り、アラーナさんは人造人間は人間と違うと指摘し、アイザックさんは呆れていた。事前に忠告されたメモの内容通り、僕の味方をする人はほとんどいないらしい。
クレイトンさんは、最新世代の人造人間は驚異的だとしつつも、重大な決定になるので急いで決めなくてもいいだろうと僕を懐柔して来た。
そこでアランさんが助け舟を出した。人造人間が夢を見るなら何故魂を持っていないと言えるのかと疑問をクレイトンさんにぶつけた。魂があるならあらゆる基準から考えて、人間でしかないと持論を述べた。クレイトンさんは「やれやれ」と言って呆れるだけだった。
僕は強引だが会議を進める事にした。アリーさんに確認すると、特に問題がないので彼女は同意した。アランさんに確認すると、第3世代の人造人間は社会、または家族とさえ絆を築ける程に高性能だと信じており、我々が測ることが出来るあらゆる基準においても、生きている人間とだと語り、同意を表明した。
SRBとの交渉
僕はジャスティンさんから説得を開始した。彼は頑なに拒み、洗練されたインスティチュートの技術が悪の手に渡るのは許されないと反論したのだ。その悪には僕達も含まれるんだけどね。
人造人間には望みなどなく、外見は人間かもしれないが機械に過ぎないとジャスティンさんは否定した。
僕は何とか説得するために「ならば、不良人造人間が発生した場合や誘拐された人造人間の悪用を想定してSRBの存続を認可し、コーサーも同じく残す事にしましょう。それならば大丈夫ですよね?暴走の危険と技術の流出という名前の不安の種を摘みたいのですから」と言って僕は折衷案を持ち出した。これを聞いたジャスティンさんは文句を言いながらも渋々納得した。
次いでアラーナさんに人造人間の解放を持ち掛けたら、まだ早いと否定したり、最初に言ったように人造人間は人間と違うと頑なだった。
僕は「なにも全ての人造人間を解放しようとは言っておりません。ここに残る人造人間は引き続き従来の仕事を全うしてもらう事にすれば問題ないでしょう?スカベンジャー部隊の運営や不良人造人間の監視は続行させる形としたら満足ですか?」と答え、アラーナさんを納得させた。渋々ではあったけど仕方がない。
バイオサイエンス部との交渉
今度は強かなクレイトンさんだ。彼は露骨に人造人間の解放に否定的だった。
地上ではインスティチュートを目標にする反抗勢力がいる事、その滅びゆく過去の名残はいつ攻めてきてもおかしくなく、更に悪化するだろうと脅してきた。
その後、僕の事を良い所長になると付け足したがこの議題を有耶無耶にする気満々だと分かった。その点について、僕は人造人間に知性と自意識があるならば、自由意志を持つ権利もあるはずだと反論した。
クレイトンさんは第3世代の人造人間は生き生きしているようにも見えるとしながらも、あくまで否定の立場を取るようだった。
僕は「人造人間を作ったのはインスティチュートですが、人権や心を否定する権利はないのです。それをし続ければ我々が存続するのも危うくなります。脅威を作っていたのは我々だったのだから、これ以上それを助長すべきではありません」と答えた。
続けて食糧の品種改良の実験の禁止を命じた。僕は「これ以上地上での実験は必要ないでしょう。地上にも優れた品種の農作物があるし、それを研究しつつインスティチュートで独自に発展させた物を作るように模索してはどうですか?いたずらに犠牲者を出す必要は今後ありません」と言って強引に進めた。
クレイトンさんは「好きにおっしゃる...。貴方は単なる雇われ所長でしょうに」と不貞腐れながらもこれ以上の言及はしなかった。
次いでアイザックさんとの交渉に入ったが、彼は怒り心頭だった。インスティチュートの今までの苦心を台無しにする行為を行ったので責任を取れを言うのだ。ここで将来を築くつもりなら、ここの仕事に真剣に取り組んでほしいと怒りを露わにしたのだ。
僕は人造人間の自由でいたいと思うならば解放するだけでいいと反論したが、科学にエゴが入り込む余地はないと否定された。
僕は落ち着くように促したが、アイザックさんは人間不信らしく、これ以上失望したくないと頑なだった。更に僕の事を「人間凶器」と罵声を浴びせられ、ケロッグの同類だと非難された。まぁ、多分そうかもしれない。彼に同情したのだから同類と思われても仕方がない。
だけど、僕は頭が悪いなりにインスティチュートの事も考えているし、地上の人々の事も考えているのは確かだと毅然として反論した。その態度に僕が怒っていると勘違いしたアイザックさんは「謝れば怒りが収まるのならそうする」と言って弱腰になった。
そして、畳みかけるように、ワーウィック農園での暗躍した1件を持ち出した。
僕は「人類の再定義のために、あの家族が犠牲になるのは確か他のスタッフから聞いた話では否定的でしたし、同情的でしたよね?なのにこれ以上地上でワーウィック農園以外の犠牲者を増やしたいんですか?」と言ってアイザックさんを非難した。彼は折れて、彼等が人間であることに変わりはなく、しかも苦しんでいる事に少なくても気の毒に感じていると自身の心情を吐露した。
最後に人造人間を解放しましょうと持ち掛けると、項垂れながら肯定した。頭の中は方程式でいっぱいなので、この議題を終えたら研究室に戻るつもりだと言って彼との交渉は終わった。
アドバンスシステム部との交渉
今度はマジソンさんにここにいて満足かどうか聞いてみた。正攻法は難しいと思ったからだ。彼女は満足しており、最先端の実験設備と、複数の歴史上もっとも偉大な知性に囲まれているかららしい。唯一の問題は風通しの悪さであり、ここで起きている物事の全体像を掴めている人間はいないのではと考えているようだ。
マジソンさんはこの時に以前の同僚の話をし始めた。名前はブライアン・バージル。何カ月前のラボでの事故で命を落としたと言った。彼女はまだ知らないのだ。バージルさんが生きている事を。
調査を手伝うつもりだったが、ファーザーが汚染の危険があると言ってラボを封鎖させたとマジソンさんは言った。全く腑に落ちず、質問すればする程はぐらかされていたようだ。話を逸らしているのは明白だったようだ。
僕は以前入手したバージルさんのホロテープを差し出した。マジソンさんは時間の無駄でなければいいと言ったが、これは聞く価値があると思う。
僕はバージルさんのホロテープを再生させた。これは彼の最後の記録である。
FEVプログラムの中止を求めたが何度も却下され10年間行った研究成果は何も得られなかった事、それでも続けようとするファーザーに対して自分で止める事を決意した事、バージルさん自身は誰も傷付けたくなかった事実を理解してほしいという事、プログラムを永久に止められないまでも数年は止めるように仕向けた事等が記録されており、周囲を騒然とさせた。
更に僕は続ける。バージルさんは裏切りだと分かっているがだからこそ出ていく事を決めた事、安全でコーサーに見つからない場所に身を隠す事、インスティチュートがしてきた事や奪ってきた命に対して神がいるならば我々全員に慈悲を与えてくれることを願うと記録されていたのをこの場で暴露した。
SRBではバージルさんの脱走について把握していたようで、ジャスティンさんは青ざめていた。