僕達はカスミを見つけると共にアカディアをしっかり見て回ろうと思った。どんな場所かを知っておく必要があると思うからだ。人造人間の避難所、レールロード以外が作り上げ、彼等のみで運営するそれを知るのは大事だと考えたのだ。
アカディアでの挨拶回り
DiMAからファラデーとチェイスに挨拶をするようにと言われたので、最初にチェイスに挨拶しようと思った。
チェイスと呼ばれる女性の人造人間はなんとコーサーだったのだ。服装は僕が戦ったコーサーと同じ服装だったからだ。恐らく脱走したコーサーになるだろう。彼女はカスミの身を案じていた。僕はそれを確かめるために来たことを伝えると無事だから安心するようにと言われた。
ここは人造人間にとっての天国で、そのために彼等を連れて来たのだと言った。チェイスが追跡して、説き伏せた人造人間は、全員危害を加えない事を保証して来ているのだという。そして、彼等の安全をしっかり守ることが勤めのようだ。コーサーが味方なら頼もしいだろうと思った。
チェイスも以前はコーサーとしての職務を全うしていたが、人造人間の追跡中にDiMAと会い、その時に説得され、真実と自分の過ちに気付いてインスティチュートから脱走したと話してくれた。その時から人造人間の自由のために行動しているようだ。
アカディアは人造人間を救い出す毎に、守りが強固になるようだ。生き残るためには戦力も必要だから必然的にそうなるんだろうと僕は思った。
チェイスとの自己紹介の後に、ニックが不安を口にした。DiMAが本当に兄弟かどうか分からないと打ち明けたのだ。僕は「不安になるのは分かるよ、ニック。確証がないからしっかり調べてからでも遅くはないはずだよ」と言って安心させた。
ニックは、インスティチュートがプロトタイプを他にも製作したかどうかはいつも考えていたらしい。自分が失敗作なのか、計画を諦めたのか、飽きただけなのかを考え続けていたらしい。廃棄されたとばかり思っていたが、助けたいと思う仲間がいて、脱出の手助けをしていたとは思いもよらない事だったと打ち明けた。
ニックとの間に起きた出来事の証拠が何かある筈だと推理しており、何かヒントが見つかったら彼に教えよう。不安なままじゃ怖いからね。ニックの為にもはっきりとした証拠を見つけよう。
今度はファラデーと呼ばれる男性の人造人間に挨拶に行った。彼はぜひ協力してほしいと言った。彼の構想は戦うに値すると自信を持って言った。それだけ信頼しているのだろう。
ここアカディアは人造人間を抹殺しようとする勢力やインスティチュートから逃れるために、DiMAが苦心して作り上げたのだという。そのための安全の場所だと。
その為に全時間とエネルギーを投げ打って、人造人間を救おうとしているのだと僕達に話した。そのためにDiMAは自分の事は後回しに行動していると説明してくれた。そうだとすると、かなり苦労して運営していることが伺える。途方もない努力の賜物なんだと思った。
今度は霧コンデンサーについて聞いてみると、霧が酷くなる一方だと分かった時に、DiMAと彼で製作したらしい。効果的だが射程に限界があるようだ。これを提供した事で、ファー・ハーバーの人々は生存出来るようになったと言った。確かに素晴らしい発明だと思う。
今度はDiMAはかなり苦労しているようだと話したら、それは控えめに言い過ぎだと指摘された。調整することが山ほどあるらしい。DiMAはプロトタイプ故にあらゆることに考えを巡らせるように出来ていないために、元の設計の限界を超え、記憶の拡張は並大抵の事ではなかったようだ。
だが、ファラデーはこの苦難を乗り越えて、成長して他人の為に行動するDiMAは素晴らしいと力説した。確かにそう思う。これだけの事をプロトタイプの身でこなすのは大変過ぎる。確かに素晴らしいと僕は感じた。
今度は広間に行ってみた。そこでは多くの人造人間が自分らしく生活を営む姿を目にした。最初にナヴィーンと呼ばれる男性の人造人間に挨拶をした。彼はアカディアを予想とは違ったが希望があると言った。僕は「いい心がけだよ。希望があれば最悪の時も潜り抜けられるからね」と言って励ました。
脱走した時はどうすればいいか分からず、途方に暮れて怯えていたようだ。だが、チェイスとここの事についての噂を聞いて、安全な場所を目指してここに辿り着いたようだ。
ナヴィーンは自分に「死ぬよりここにいた方がマシ」だと自分に言い聞かせていると打ち明けた。確かに生き残る確率が多い方が好ましい。彼の気持ちはよく分かると思う。
今度はコールと呼ばれる男性の人造人間に挨拶した。彼はチェイスがいなかったら今頃死んでいたと言った。コモンウェルスでは人造人間だとバレると即射殺が当たり前の場所だからだ。僕は「どんな目に遭ったかと思うと同情するよ」と答えた。
それを聞いたコールは「だが、今は問題ない」と朗らかに言って、安全なアカディアを離れるつもりはないらしい。安全で過ごしやすいならその方が1番だと僕も思った。
今度はお店を見て回ろうと思い、そこを担当しているデジェンと呼ばれる男性の人造人間に挨拶した。彼はアカディアを最大限守ろうとしており、無用な危険や油断して起きる悪化した状況を未然に防ぎたいと言った。
安全な場所が無い人造人間を受け入れ、人造人間らしく生きていけるようにすると言った。だが、僕は人間なのでその条件に当てはまらず、デジェンは「不必要なリスク」と断言した。これは個人的感情ではなく、余所者との接触を最小限にしようとする現実的な判断に過ぎないと言った。なるほど、分かるような気がする。コモンウェルスでも似たような所は多いからね。
今度は物憂げなジュールと呼ばれる女性の人造人間に挨拶した。彼女は僕に向かって、記憶消去を失敗させてどんな気分なのかを確かめていると言った。よく意味が分からなかったが、記憶消去が上手くいかなかった被害者なのだろうか?一応レールロードに参加しているので無関係とは言い切れない。僕はそのことについて謝罪した。
それを聞いたジュールは謝られるとは思わなかったらしく、僕には出来なかった筈と言い、この事は忘れてほしいと言った。心に傷があるのだろうか?そっとしておくべきなのだろう。
今度はミランダと呼ばれる女性の人造人間、ではなく普通の人間に挨拶した。コモンウェルスからファー・ハーバーに来て、アカディアに入ったようだ。人間も普通に住むことが出来るなんて驚きだ。何か条件があるのだろうか?いつか帰りたいと思っており、ここで退屈しているらしい。
安全ならここがいいんじゃないかと僕が言ったら、すぐに納得した。だが、それでもワクワクする事があってもいいのではないかと言った。変わり者っぽい印象を受けた。
今度は医者をしていると思われるアスターと呼ばれる女性の人造人間に挨拶した。ファー・ハーバーはどんな場所だと思うかと聞かれたので、僕は「危険だけど素晴らしい場所」と答えた。
彼女は喜び、この島は危険と美が同居して、過去に戻してくれると言った。生態系は違うが順応しており、僕達がこの世を去った後にも順応し続けると説明し、大切なのはそれを理解する事だと彼女は説いた。そのために後に続く人達の為に知識を授けるのだと言った。素晴らしい使命感の持ち主だと思う。
そして、人体解剖学には詳しくないが医療アシスタントはしてもらえるようで、必要になったらここで診察してもらおうと思う。
その次は別の店にも顔出しする事にした。コグと呼ばれる男性の人造人間に挨拶した。彼はカスミをよく知っており、ちょっと迷っているだけだと思っているようだ。
コグは独特な人生感を持っており、「全てがどうでもよくなると、何もかもが楽になる」と言った。自分が何者で、何処の出身なのか等を手放せば、人生は楽になると持論を述べた。そういう風に考えた事はなかったと僕は思った。
斬新な考えだったのでお礼を伝えると、コグは自分と同じ考えの相手が現れるとは思わなかったようで、嬉しいと言ってくれた。こちらこそ素晴らしい考えをありがとう。
コグは最近は取引を楽しむ事に夢中らしく、商品は少ないがいつでも良い取引をしたいと思っていると言った。彼は面白い人物だと思った。冗談も面白いし。
僕は昔の話とか聞いても良いかと言ったら、特に面白い話は無く、しがみつくだけ無駄だと言った。もしかしたらあまり喋りたくないのかもしれない。そう思ったのでこれ以上は詮索しなかった。
更なる事件の入口へ
僕達は下層にて作業をしている若い女性を見つけた。彼女がカスミで間違いないだろう。僕達がどうして訪ねてきたのかを不審に思っているようだ。僕はナカノ夫妻の依頼でここに来たことを伝えた。合わせてニックは家族に言わないで来た事実を持ち出した。彼等が心配していると伝えた。
カスミは自身を人造人間と思っているので、ナカノ夫妻を赤の他人として話をしようとした。僕は「君は人間なんだよ」と説得したが、自分の存在に疑問に思っているので、人造人間なら合点がいくと意見を曲げないでいた。
言わないで出て行ったのはその方がナカノ夫妻にとって楽だと思ったからだった。本当の娘は死んでおり、すり替わった存在だと思っているようだ。僕は「困惑しているだけで、誰だって自分の存在に疑問を持つ事はあるものだよ?それも人生の一場面なんだ」と言って説得した。
それを聞いたカスミは「心からそう願っている」と自分の心情を吐露した。そうだったら問題ないのにと悲しい声で話していた。
落ち着きを取り戻したカスミは帰れない理由が他にもあると言った。真相を掴むまでは帰れないのだと...。それならば何か手伝えるかもしれないと思い、協力を申し出た。
それは行方不明の娘の事件よりも大きな事件の幕開けを意味していた。カスミは最初にDiMAと話をした場所についての話をした。あの計測器やコンピューターが沢山あった所だ。そこでは脳からデータを移しているようだ。ファラデーからの依頼でそこの修理を任されたが好奇心からDiMAの1世紀分の人生経験を覗き見したのだった。
そこで見た物は恐ろしい単語が記されており、霧のファー・ハーバー占領や島での核爆発、そして死者数だった。DiMAは何かを企んでいるのだろうか?そういう風には見えなかったが?
カスミはアカディアに人造人間を呼び込むのは島を抹消するための計画をしているのではないかと疑っていた。
それを聞いたニックは真相を突き止めるべきだと言った。DiMAが芝居を打っているのならその理由を知る必要があると言った。僕もそうするべきだと思う。
カスミはDiMAとファラデーとチェイスが広間の反対側にある研究所に入り、出てくる時はいつも言い争いをしているように見えたと言った。そこで何かを計画しているのだろうか?彼女はその横に収納スペースがあり、盗み聞きするには丁度良い事を教えてくれたが鍵がかかっているらしい。それはコグが管理しているので彼から借りるか盗むかしないといけないようだ。
ターミナルからハッキングしようとしたがセキュリティーが厳しかったようだ。それなら直接話した方が楽だと思い、DiMAに正直に話すように説得するつもりだとカスミに言った。ニックは「次から次に事件か...。楽じゃないな?」と独り言ちた。
DiMAの隠し事、そして島の一大事へ
僕は直接DiMAに確認することにした。ファー・ハーバーと島の中心において、想定される死についてカスミが見た事をだ。彼はカスミは自分と新しい生活の事を考えるべきと言った。外界の問題は背負わなくていいのだと。これは自分と顧問の間で解決すると言った。やはり隠そうとしているようだ。
あの計画は「何も手を打たなかった場合の損害を理解するためのもの」だったと答えた。ニックはそれを信用せず「便利な引用だな?」と皮肉を言った。兄弟かもしれない相手が隠し事をするのが許せないという雰囲気だった。僕は島全体に関わる事なら協力すると持ち掛けた。
その申し出にDiMAは感謝しており、今の状況の説明を始めた。アカディアを築いた直後から、ファー・ハーバーとチルドレン・オブ・アトムの間で抗争が起きていた事を教えてくれた。チェイスは「互いに殺し合いたくて、両者から手助けを求められている」と言い、ファラデーは「中立を保とうとしたが、霧のせいで島の滅亡の危機に陥ったので霧コンデンサーを作り、提供した」と言った。
チルドレン・オブ・アトムの前任の「聴罪司祭」と呼ばれる役職に就いていたマーティンという名前の男性とは友人だったらしく、ニュークリアスとされている潜水艦基地本部をあげるほどの仲だったらしい。だが、チェイスが言うには次の聴罪司祭のテクタスという名前の男性は過激でイカれているらしい。そのため、どちらに付くか脅迫されているらしい。
潜水艦基地にはDiMAに関する大事なものが残されており、ファラデーがいうにはDiMAの初期の記憶が基地内のメモリーバンクに保管されているのだとか。これは戦前のセキュリティーシステムとマーティン聴罪司祭の善意で守られる筈だったとのこと。テクタスはそれを狙っているようだ。
それを持ち帰れば、血を流さずに紛争解決に近づくかもしれないらしい。なるべくならそうしたいのでこのまま協力することにした。チェイスは僕達がまだ島に来たばかりだから信者を装えると言った。そうすれば入り込めるだろう。そして、ファラデーとDiMAが協力して作ったプログラムを使って、基地のセキュリティーシステムを抜けて記憶を回収しよう。だが、そこはセキュリティーシステムが働いているので注意して進む必要がある。
そして、DiMAはあからさまにチルドレン・オブ・アトムを攻撃しないようにしてほしいと言った。最終的な目標は和平なので、そうする事で外部世界の戦争と考えられてしまうことを防ぐためだ。ニックはやはりまだDiMAを信用しておらず、怪しい何かを見つけたら戻ってくると警告した。僕としては穏便に進めたいがそれは難しいかもしれないと思うのだった。