カボット邸に戻ると何やら深刻な事態に直面しているようだった。無線でエドワードさんがパーソンズ州立病院でレイダーの襲撃を受けているらしい。ジャックさんは指示を出して何とか防衛しようとしたがレイダーが恐ろしく強く防衛はどうやら失敗したようである。
ロレンゾを止めろ!
ウィルヘルミーナさんは「彼」と呼ばれる人物の開放を恐れているようだ。誰だろうか?ジャックさんは話の最中に僕達に気付いて無線で起きたことのあらましを教えてくれた。状況は逼迫していると見ていいだろう。
恐らく血清の原液を使用して強化されてしまったのではないかという仮説を立てた。どういう意味かと聞くとカボット家は血清のおかげで400年以上生きていることになると告白した。そんなことがあり得るのだろうか?
だが、それには副作用がある。長寿を得る代わりに筋力強化とあらゆる物理ダメージの耐性だ。原液にはその傾向が強いようだ。
400年以上という事は第1次世界大戦の頃からという事になるのかと聞くと、僕の事も似たような経緯じゃないのかと見抜き、21世紀半ばぐらいだと言い当てた。その実態は冷凍ポッドによる冷凍睡眠であると話したら「興味深い」と言った。この手の話はしていたいが今は緊急事態なのでこれぐらいにしておくべきだろう。
以前話していたアラビアでの発掘で遺物を発見したようで、それを装着した父親、ロレンゾという名前の男性は情緒不安定になったらしいのだ。超常的な力を得たが理性を無くし暴力的な人間になってしまったようだ。よってパーソンズ州立病院を建てて監禁するしか方法が無くなってしまった。
治療の過程で遺物が血液に異変をもたらし、それは精神異常の原因となったが延命の源となる皮肉な結果となったのだ。それが逃げ出したらコモンウェルスは大惨事になる。人を容易く殺す能力と凶暴性を有しているので出さない方がいいだろうと僕は思った。
それから筋力や物理の大幅な耐性の他に念力のようなものまで使えるのだそうな。まるでSFだと思った。それの対策のために監禁室には「ダンプニングフィールド」と呼ばれるものを設置したらしい。それがレイダーに解除される前に行かなければいけない。
その後、エモジーン(今後はエモジーンさんと言うべきか?)の事について問い詰められた。妹がいないことに不信感を抱いたのだろう。僕はコミュニティのピラーから解放したことを伝えると彼は安堵した。心配でしょうがなかったのだろう。キャップでの支払いは初めてだったようで最初は戸惑っていたがまとまった額を渡してくれた。これにはケイトもご満悦だった。
パーソンズ州立病院には彼も同行するようだ。しかし、指示は従ってもらうと警告された。もしかしたらロレンゾを解放されているかもしれないからだ。対処法を知っているのはジャックさんしかいないならそうするしかないだろう。
ウィルヘルミーナさんはロレンゾの殺害はしないで欲しいと懇願した。ジャックさんは最善を尽くすと言った。エモジーンさんが帰った時は彼が帰るまで家にいるようにお願いして僕達とパーソンズ州立病院を目指した。
その道中ではロレンゾへの葛藤を聞いた。遺物が凶暴化させたことでそれを取り除くことに長い年月を費やしたことを打ち明けた。だがそれらは全て失敗してしまった。遺物はロレンゾの神経系と融合しすぎてしまっているらしいのだ。
そして、ロレンゾの血が延命治療の源になっていることに利害の衝突になっていることも理解していること、だがそれでも父親を取り戻したいと思っていると僕に言った。彼も本当は父親を殺したくないのがよく分かった。何とか手を尽くしてみよう。
パーソンズ州立病院に着くと警備隊とレイダー双方の死体が転がっていた。大規模な戦闘があったことを物語っている。エドワードさんが見えないので内部で戦闘中なのだろうか?ジャックさんの指示の下上手くいくことを願っている。だが施錠されている扉があったので迂回することになった。
迂回する時にレイダー達が話しているのが聞こえた。リーダー格のレフティなる人物が血清の情報を聞きつけて襲撃したことが分かった。パーソンズ乳製品製造所のレイダーもその一味だったのだろうか?
迫りくるレイダーやラッドローチの群れを返り討ちにしつつロレンゾの監禁室を目指す最中にエドワードさんを発見した。彼は生存していた、無事で良かった。だが深手を負ってしまい戦闘不可能になってしまったようだ。僕達だけで何とかするしかないだろう。
ジャックさんはターミナルを見てレイダーが地下室に行っていることが分かったと言った。「アブラメリン・フィールド」なる装置がまだ機能しているらしく、それを死守すればロレンゾの開放は阻止出来るのだろう。早急に行かねば!
更に進むとにケイトは「輝きの海で遭遇したレイダーの武器で凄い奴持っているでしょ?貸してよ!」と言ってきた。その武器とはピットのレイダーが使っていた火炎放射器だった。燃料は未使用なので満タンなので思いっきり彼女はレイダーに使用した。時々「ヒャッホウ!」とか言いながらレイダーを焼き殺していたので中々に物騒な女性だと思った。これまでの穏便な交渉がストレスになっていたので今発散しているのだろうと思った。これにはジャックさんもドン引きしていた。良かった、感性が同じ人がいて...。
別棟から進むことになったがそこは経年劣化のせいか崩落しており、回り道をして進行した。その過程で遭遇するレイダーは「皆殺しにしろ」と言った。冷酷に聞こえたがそれだけ解放されたロレンゾの力は凄まじいのだろう。僕はそうならないように監禁室を目指した。
だが、監禁室に到着するとアブラメリン・フィールドは停止寸前だった。これではロレンゾは開放されてしまうだろう!それを知ってか監禁室にいるロレンゾは再開したジャックさんに挨拶をしながら自由になったら「遺物の力の素晴らしさをお前にも教えよう」と優しく言ってきた。多分出たらカボット家の人たちを殺すんだろうなと僕は思った。
ジャックさんは扉のロックを1つずつ解放するからレイダーを始末して欲しいと言った。僕はそれを了承してレイダー達と対峙した。そこには話に上がったレフティと思われる男性がそこにいた。コンバットナイフ一本で立ち向かってきたのだ。リーダー格だけあって強い上に血清の力で物理ダメージの耐性をしっかり付けているので、こちらもスティムパックを多用してしまった。だがナイフを振り終わる所で躱してショットガンを顔面に決めることで殺すことに成功した。血清も回収しておいた。これで安心だ。
レイダー達が壊滅したので後はロレンゾを止めるだけだ。アブラメリン・ジェネレーターを4つ手動オーバーライドさせればいいらしい。それらを全部起動したら致死量のゼータ放射線によりロレンゾを確実に殺せるのだそうだ。親殺しになるが致し方あるまい。1つ目のジェネレーターを手動オーバーライドさせるとロレンゾが「お願いだ。扉を開けてくれ」と懇願してきた。僕は迷ったが解放することで大勢が死ぬのは良くないと思ったのでジャックさんの味方に付いた。
その後は残り3つのジェネレーターを手動オーバーライドさせた。ロレンゾは「今までの事を思い返せ。本当に狂っているのは誰だと思う?」や「利己的な嘘」であると言ってきた。
正直どちらが狂っているのかは分からない。でも僕はジャックさんの人柄に触れて彼を信じてもいいと思ったので彼の味方に付くことにした。この選択が間違っているなら地獄でロレンゾに謝ろう。それ位の覚悟でやるしかない。
4つ全てのアブラメリン・ジェネレーターを手動オーバーライドにしたことで監禁室はゼータ放射線で満ちた。ロレンゾは「思い通りに出来たら、ここで永遠に私を餌にしただろう!」や「打ち滅ぼす力が自分にあると本当に思っているのか」と恨みつらみを言いながら絶命してしまった。ジャックさんはその後悲し気に「さようなら、父さん」と呟いた。こんな結果になって残念だ。
僕は監禁室から出るとジャックさんが近づいてきた。解放されたらどうしただろうと聞いたら、「我々と家族を殺そうとしただろう」と言った。もうそうするしかなかったとはいえ、やるせないなぁ。
今の世界では怪物があふれているので今のロレンゾを止める手段を得られなかっただろうとジャックさんは言った。多分その通りだ。もうミニッツメンがいない今その抑止力は無いに等しい。B.O.Sやまだ見ぬレールロードなら可能かはまだ分からない。
この仕事は僕達の協力なしでは成功しなかったと彼は言った。報酬のキャップをくれたが最後まで味方したことでさらに報酬をくれるらしい。遺物の力を長年研究したことで何か作れるのではないかと考えているようだ。大丈夫かなそれ?うまくいけばいいけど第2のロレンゾみたいにならなければいいけど...。1週間後に立ち寄ればいいらしい。研究が実を結ぶことを祈って僕達はパーソンズ州立病院を出た。
ケイトの過去
外に出るともう夜明けだった。するとケイトは「ジャックの家庭は私のより大分マシだよ、それでも長生きしすぎだけどさ」と独り言ちながら、そろそろ自分がどんな人間か打ち明けたいと僕に言ったのだ。他人同士でいたくないのだそうだ。僕はそれをしっかり聞くことにした。
彼女の両親は、どうやら「クズ」や「奴ら」と形容する位のろくでもない親だったらしい。ケイトの全てが気に入らないらしく、日常的な虐待を受けていたのだそうだ。聞いているだけで胸が苦しくなった。それでも彼女はほんの少しでも愛することにしていたらしい。それは追い出したりしなかったからだ。だが、それには理由があり18歳になった誕生日にそれが明かされた。
それは奴隷商人に売るためだったのだ。電気ショック首輪を付けられ売られてしまったが別れを惜しむこともさよならを言うことも無かったのだと言う。得たのはポケット一杯のキャップだったのだ。聞いているだけでとても悲しくなる。世界には親になるに値しない人間がそれなりにいるとニュースで何気なく見ていたが、実体験を仲間から聞くとその深刻さを本当の意味で理解出来る。とても辛く苦しい事なのだと。
その後、5年間は奴隷商人の所で過酷な生活をしていたようだ。それも辛かったろう。何とかするために寝ている男のポケットからキャップを欲を掻きすぎないで1キャップずつ盗んでいったのだという。それを5年間続けてようやく自分で自分を買えるだけのポケット一杯のキャップを手に入れることに成功した。
それで自由を手に入れたが怒りの収まらない彼女は人生をやり直す代わりに元居た自分の家に向かった。「扉を蹴破って中に入った娘を見た両親の顔が想像出来るかい?いや、親に銃を撃った後の私の顔だろうね...。」と悲しげに言った。僕は何も言えなかった。正義だとか殺人だとか、親を殺すのか?等そんな言葉が頭に浮かんだが何となく違うと思ったので何も言わなかった。彼女は「殺人だったのかな?正義だったのかな?」と自問していた。その答えを僕は持ち合わせていなかった。
ケイトは両親を殺したことが心にずっと残っているようで、迷いが生じてズタズタになってしまうのだと言う。ろくでなしの両親だったが殺したことはトラウマだったのかもしれない。それを忘れるためにジェットに溺れていたのだろう。
彼女は「傷物の人生」と自嘲していたが僕は「この信頼関係が変わる事はない」と言って彼女を励ました。
それを聞いたケイトは肩の荷が下りたようで、「がっかりさせなくて良かった」と言った。過去を話すのが怖かったことは会話の中からそれは伝わってきた。僕はそんな彼女の事は嫌いにならないし、これからも大切な仲間として尊重する。
ケイトは照れくさそうに「ビジネスの話に戻ろう」と言ってこの会話を終えた。力になれることは出来る限り協力していきたいと僕は思い、パーソンズ州立病院を後にするのだった。