あれから一月ほどかけてヴォルキハル城の改築を行った。おかげで城内は清潔になり(それでも血や骨は散乱気味だが)、栄華を誇れるだけの気品さを醸し出すまでに改築出来たことは素晴らしかった。
改築された城内を探索し終わった後にガランさんが僕に大事な話があると言った。何だろうと思い聞いてみると、アーリエルの弓を手に入れたことでドーンガードが邪魔な存在になると言ってきた。向こうが占領を整える前にこちらから幹部を皆殺しにしなければならないと言う。
全面戦争を避けるためにやるしかないと忠告された。最初しか交流はなかったが殺したい相手ではない。しかし、ヴォルキハル城を守るためにはもう避けては通れないようだ。
これまでは戦力を削いだり、濡れ衣を着せたりと陰で暗躍しながら戦ったが本拠地で戦うことになるだろう。覚悟を決めて決戦に備えよう!
ドーンガードメンバーを殲滅せよ!
初めて来たときはシセロの介助でドーンガード砦まで来た。かなりの荘厳な砦だ。歴史の重みを実感する。だが実際に一人で来てみたら何とも言えない後ろめたさがあった。
ここに来る時に同行したアグミル君はあれからドーンガードに入ったのだろうか?彼は真面目だから出世しているかもしれない。厳格だが筋の通ったイスランさんやデュラックさんは健在なのだろうか?だがそう思うのは今の僕には許されない。なぜなら僕ら裏切り者で定命の者の敵でしかないのだから...。
道中は吸血鬼被害による難民キャンプがあった。彼らは何の因縁もないのでスルーした。彼らは僕達吸血鬼の被害者なのだから。これ以上苦しめるのは筋が通らない。
そして正門付近に行くと、ドーンガードメンバーの女性が僕を見るなり攻撃して来た。襲撃は予測済みという訳か!僕は回避を取りつつデス・ライトニングを使って彼女の体を生きたまま焼きながら空高く吹き飛ばして墜落死させた。戦士らしく戦えなかったのは無念だろうが、僕もヴォルキハル城を守る立場にあるので手段を選んだ戦い方は出来ない。そして正門から入りドーンガード砦に侵入した。
砦内部に侵入すると、ドーンガードメンバーが殺気立って攻撃を開始して来た。まぁ裏切り者で吸血鬼の王になった僕を見れば憎悪しても仕方がないよね。
そこで斬撃とデス・ライトニングのコンボでメンバーを次々と仕留めていく。しかし、彼らの猛攻もあり苦しくなったので久しぶりに死霊術でメンバーの死体を操り互いに殺し合わせるようにした。悪質極まりないが勝つために仕方がない。
戦闘の最中、アグミル君と再会した。無論敵同士としてだが。彼は立派にメンバーになっていたようだ。父親の斧を武器に僕に迫ってくる。一欠片の情もなく怒りのままに僕に攻撃してくる。
仕方がない、僕が裏切って吸血鬼になったのは紛れもない事実なのだから。憎悪されても仕方がない。しかし、僕にも負けられない事情がある!だから覚悟を決めて君を殺そう!
斬撃はこちらが得意なのでラッシュを浴びせてからデス・ライトニングで動きを封じて焼き殺した。定命のままなら友人関係を築けただろうか?もう後の祭りだからどうしようもないが本当に申し訳ない。
デュラックさんはリバーウッドに初めて来た時にドーンガードへの勧誘を受けた。それだけにドーンガードでは身近な存在だったが彼からも憎悪の念を感じ取った。今の僕の立場を考えれば当然だし、彼の境遇からしても吸血鬼は滅ぼすべき敵でしかない。こちらも覚悟を決めて殺すしかないだろう。
彼のボウガンの戦闘技術は脅威だ。何度も受けて僕の体は傷だらけだ。癒すのにはしばらくかかるだろう。ボウガンの矢を装填する隙をついてデス・ライトニングを放った。装填する時間を与えずに隙間に追いやって尚も浴びせ続けて焼き殺した。彼の人生を奪った罪は決して消えないだろう。
最後に残ったリーダーのイスランさんが最も恐ろしい相手だ。戦槌の攻撃も恐ろしいが周囲を覆っていエクスプロージョン系の魔法で近づくもの全てを灰にする鉄壁さだ。なので斬撃は控えてデス・ライトニングを主力で仕掛けた。
遠距離による強力な破壊魔法の連発により彼の目は失明寸前までダメージを受けたようだ。僕が受けた失明の恐怖をデキソンさん以外にイスランさんにもしてしまうのは業が深すぎると言わざるを得ない。だがここで手を緩めればドーンガードが立て直されてしまう。
僕も引けないので最大出力のデス・ライトニングを放ってイスランさんを吹き飛ばした。
イスランさんは吹き飛ばされたことにより墜落死した。彼の吸血鬼から人々を守る矜持は僕の手によって踏みにじられてしまった。
そう、僕はドーンガードの全てを踏みにじったのだ。命も願いも、これまでの道程や未来、その何もかもをだ...。帰ろう、もうドーンガード砦には来ないだろう。ここにいるのは辛い。
ガランさんに報告したら全面戦争回避にとても喜んでいた。しかし、末端の構成員の生き残りがいた場合、それらが脅威になるので注意を怠らない方がいいと忠告された。それは気を付けるとしよう。僕も闇の一党としてペニトゥス・オクラトゥスをルシエンさんと2人だけで壊滅させたことがあるのでそれは重々承知しておく必要がある。
進化?もしくは変質?業魔狂皇誕生!
僕はモラグ・バルの祠に来ていた。今までのヴォルキハル城での働きを思い返していた。自分は眼を見えるようにするために吸血鬼になることを受け入れたがその影響か血生臭く後ろめたい仕事も多くこなすようになった。闇の一党でもそれを行ってきたが輪をかけて多くなった印象がある。これはモラグ・バルの思惑通りなのだろうか?
そう祠で考えていたら突然胸が苦しくなった。今までこんな兆候なかったのに!どうしたことか!か、体が熱い。苦しい!抑えられない!
そして僕は血まみれになりながら自分の体を見た。吸血鬼の王の姿ではない。禍々しい、デイドラのような姿だ。こんなことはなかった。王の姿はコウモリを擬人化したような姿だったはずだ!変身回数は少なかったがそんなことは忘れるはずがない。
原因は何だろうか?思い付くのは僕が日ごろの行いが悪い(暗殺や吸血鬼の仕事のどこが悪くないと言うのか?)ことでエイドラから罰を受けたのかと思ったがだとしたらここまで禍々しくする必要があるか?
もしくは吸血し過ぎとか?でもハルコン卿程吸っていないけどこうなるのか?モラグ・バルの力で?でも支配するのにこんな姿にせずに扱いやすい姿にするはずだ。分からない。
最後に考えられるのは僕の内にあるドラゴンソウルと吸血鬼の血が混じり合ってこの身が変質してしまった可能性だ。改めて体を見るとドラゴンのような皮膚をしている。禍々しさはそれらを融合によるものだろうか?もうこれしか思いつかない。
この姿を見た定命の者達は恐怖するだろう。もう治すことは叶わない。変じてしまった以上は下手に治すと今度こそ死んでしまうかもしれない。受け入れるしかない。
故に吸血鬼の王としての名前も改名しようと思う。血に「狂」った吸血鬼の王、いや闇の一党として「皇」帝を暗殺したから「業魔狂皇」としよう。闇に生きる業の化身には相応しい名前だろう。末路はろくでもないことになるのだろうが。

































