約30年前の日能研偏差値表 -新設校とその競合校- | 2022中学受験(息子)と2027中学受験(姪) -A stitch in time saves nine-

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約30年前の日能研偏差値表」

「約30年前の日能研偏差値表-女子編」

「約30年前の日能研偏差値表-大きな改革を経た学校」

 

の続編。

 

今回はこの30年の新設校にスポットライトを当てたい。30年前の偏差値表には当然影も形もないので、今回は比較という形にはならない。しかし、新設校なわけだから、どこかからシェアを奪っているはずである。その奪った先の競合相手を合わせて考えてみたい。

 

1 新設校

主要な学校のみ。それでも合計800人である。この数の供給があるので、競合する既存の学校にはかなり影響はあるだろう。


慶應SF(男子64、女子67)(120人)

渋渋(男子66、女子67)(200人)

栄東(男子58、女子58)(240人)

開智(男子54、女子54)(240人)

浦和明の星(女子64)(160人)

(いずれも日能研偏差値、募集人数)


慶應SFの競合先は次の項目の大学附属でまとめて考える。

 

さて、渋渋がシェアを奪ったのはどこだろうか。渋渋の特徴としては、①現代的な教育、②共学、③都心立地、というあたりが挙げられる。まず大きな流れとして、別学→共学への志向の変化はあるだろう。かつて男子校、女子校の難関校志望だった層から流れた生徒は一定数いると思う。近くにある学校でいえば、男子は30年前と比べて偏差値が下がっている駒場東邦あたりからシェアを奪ったのかもしれない。また、共学という意味では、近年偏差値が低下している学大附属からの動きも考えられる。また、青学は大学附属なので受験層はあまり重ならないかもしれないが、共学で同じ渋谷区立地、ということでは、かつてであれば青学を受験していた(特に)女子が流れたということもありうる。

 

埼玉の三校については、これは完全にフロンティアを開拓した、ということだと思う。30年前の偏差値表を見ると、埼玉はもともと公立の天下で、私立の難関進学校、特に中高一貫校はほぼなかった。つまり、かつて埼玉の優秀児は東京の難関校に通うか、高校受験で県立浦和をはじめとするトップ県立高か、慶應志木、(ちょっと遠いが)早稲田本庄あたりにいくしかなかったのである。栄東、開智、浦明は、難関校受験者の1月の前受け需要をうまく取り込みつつ、埼玉の中学受験市場を開拓し、進学校として成長したと言えると思う。

 

2 大学附属高校が附属中学を新設

早稲田高等(男子61)(120人)

中大附属(男子54、女子54)(150人)

 

早稲田高等学院、中大附属はかつて高校のみだったのが、中学を新設したパターンだ。

 

高校のみしかなかった学校が付属の中学を新設するのは、首都圏においては中学受験がかなり加熱しているため、その段階で優秀な子を囲い込みたいという思惑もあるのだろう。

 

では慶應SFを含め、シェアを奪った先はどこだろうか。


大学附属校の志望層は、やはり第一には大学附属校の中から志望校を選択するだろうと思う。それはサピが公開している併願パターンでも明らかだ。

 

慶應SFは立地が藤沢なので、慶應普通部と受験者層は重なると思う(実際併願も多い)。また、大学附属校ではないが、立地と偏差値帯、同じ受験日であることから、栄光とも多少は競合しそうだ。栄光・慶應普通部とも30年前と比して偏差値が低下しているのは、慶應SFが開設されたことと多少なりとも関係があるように思われる。女子については、若干立地は離れているものの、横浜女子御三家(特に偏差値帯が重なるフェリス)の偏差値低下にはかなり影響があるように思う。

 

早稲田高等学院は立地が練馬区の男子校である。早実とはちょっと離れているが、早稲田中学とは志望層はある程度重なりそうだ。ただ、早稲田中は毎年多数の東大合格者を出すなど独自路線を取っているので、それほど影響がないかも知れない。あとはいまは学芸大国際となる前の学大大泉とは競合していただろう。

 

中大附属は小金井にある共学校だ。そうすると、競合は大学附属ではないものの学芸大小金井だろうか。学芸大小金井の大幅な偏差値低下に多少なりとも寄与しているのかもしれない。女子についてみると、例えば女子大学附属校→共学大学附属校の流れで、早実や明中八王子、法政などとともに、多摩地域の大学付属校狙いの女子のシェアを獲得しているということもありそうな気がする。

 

3 公立中高一貫校

東京都(11校・1406人)

小石川(男子67・女子67)(160人)

武蔵(男子61・女子63)(120人)

両国(男子61・女子61)(120人)

桜修館(男子59・女子59)(80人)

白鴎(男子58・女子58)(136人)

三鷹(男子58・女子58)(160人)

南多摩(男子58・女子58)(160人)

区立九段(男子57・女子57)(160人)

大泉(男子57・女子57)(120人)

立川国際(男子55・女子55)(130人)

富士(男子52・女子52)(60人)

 

神奈川県(5校・680人)

相模原(男子60・女子60)(160人)

横浜サイエンスフロンティア(男子59・女子59)(80人)

市立南(男子58・女子58)(160人)

県立平塚(男子55・女子55)(160人)

市立川崎(男子50・女子50)(120人)

 

千葉県(3校・240人)

県立千葉(男子64・女子65)(80人)

県立東葛飾(男子60・女子60)(80人)

市立稲毛(男子53・女子53)(80人)

 

埼玉県(2校・160人)

市立浦和(男子57・女子57)(80人)

県立伊奈(男子50・女子50)(80人)

 

入試方式が特殊なこともあり、我が家は公立中高一貫は全く考えてこなかったので、今回改めてリストアップしてその数に驚いた。

 

見落としているものもあるかもしれないが、ざっとみたところ1都3県だけでもこれだけの公立中高一貫校が新設されている。各校毎の募集人員はそれほど多くないが、それでも全て合わせると合計は2486人。1都3県の私立中学受験定員合計が40000人程度なので、5%以上である。データが手元にないので推測だが、偏差値50以上の学校に限れば十数%にはなりそうだ。試験問題の内容などが特殊なので、一般的な私立・国立受験生と完全に被るわけではないだろうが、これだけの募集人員が新たに参入してきたわけだから、競合する学校の偏差値が下がるのは致し方ないと思う。民業圧迫とも言えてしまいそうだ。

 

公立中高一貫の競合校はどこか。もちろん別学→共学という大きな流れにより、かつてであれば難関男子校・女子校を志していた層が公立中高一貫に流れることは多いだろう。

 

また、同じように①学費が安い、②共学、③2月3日が受験日、という特徴を持つ学芸大附属中学の3校は、学大竹早は都立小石川と、学大小金井は都立立川国際と都立武蔵と、学大世田谷は都立桜修館と競合するので、偏差値低下はその影響もかなりあると思う。学芸大附属は高校受験があるので、それであれば新設校でも都立中高一貫の方がいいのではないか、となるのは自然である。

 

以上はあまりデータなどに基づかないかなり雑駁なものになってしまった。もし異論などあればコメントでご意見頂ければ。