4. 火炎土器群 の 土器編年

 

  • 縄文時代中期、約5,300~4,800年前500年間ほど(AMS法)。
 
 
  • 新旧2期に編年。古段階の I 期は大木8a式、新段階の II 期は大木8b式に並行(小林1977)。
  • ↑ポツの編年観をベースに4段階区分(小林1988)、5段階区分(寺崎19995)、6段階区分(寺崎2006)がそれぞれ公表。
  • A群土器の終焉時期や別様式の存在も課題(佐藤2006)

 

 

 

4-1. I 期古段階

  • 魚沼市清水上遺跡3号住居跡ピット・焼土出土の土器、同遺跡SI40B出土土器、長岡市山下遺跡出土土器、を標識とする。
  • 本段階は、A(火焔型・王冠型)/C(大木式)/D(縄文のみの非装飾的)群土器で構成される。(※ A/C/D群土器はII期中段階まで継続。A/B/C/D群となるのはII期新段階)
 
 

4-1-①.  I 期古段階 火炎 A 群 土器(火焔型・王冠型)

  • 器高の低い鉢状の深鉢。
  • 文様は器面全体に及ぶが、文様間に空白をもつ施文
  • 施文は隆帯や隆線で行われているが、隆線の雰囲気は前段階の新保・新崎様式の影響なのか半裁竹管文的

I 期古段階 火焔型土器(山下遺跡)、左;施文は半裁竹管文的、胴部下半部に大木式系三角交互刺突文。

 

 

 

火焔型土器 第 I 期古段階(山下遺跡@長岡市)、器形の低い鉢状の深鉢。鶏頭冠は、大木8a式の横S字文から発展。口縁文様帯に大木7~8式に多用される交互刺突文が3列施される。

 

 

 

火炎A群土器 火焔型土器 第 I 期古段階 (野首遺跡@十日町市 / 十日町市博物館). 胴部竹管沈線文の間に空白が目立つ。また、竹管沈線文に沿って竹管による連続刺突文が部分的に施される。

 

 

 

王冠型土器 第 I 期古段階(清水上遺跡3号住居跡@魚沼市); 小形の鉢。4単位の文様構成であり、口縁の外反が小さい。渦巻きを主要モチーブとし、基隆帯・ X字状橋状把手が見られ、しっかりとした4単位構成をとる。内面波状部に沿って隆帯が巡る。

 

 

第 I 期古段階 火炎A群土器 王冠型(野首遺跡@十日町市)

 

 

I 期古段階 王冠型(山下遺跡)

 

 

 

4-1-②.  I 期古段階 火炎 C 群 土器(大木式の影響)(↑編年表 4~7); 

  • 大木7b式の名残り
  • 器形はキャリパー型が主体だが、頸部が内彎して口縁部が外反する大木7b式的な器形も認められる。
  • (↑4/↓86)口縁に鶏頭冠突起の祖形を想起させるような突起も認められる。 

大木7b式深鉢;大形の士器。口縁部無文帯で4個の橋状突起。頸部には断面三角形の隆帯による楕円区画文が巡り、そこからY字状隆帯が垂下。楕円区画に沿っては連続の刺突。胴部には、前段階の大木7b式併行期からの伝統である半裁竹管の背の部分を用いた断面U字形の単沈線で施文した波状文や区画文が施される。

 

 

  • (↑5/↓95)には、胴部にクランク文が施文され、先端部は渦を巻かず解放される。 頸部に幅広の無文帯を2列もつ。胴部には、大木7a~7b段階で多用される交互刺突文。 沈線束によるクランク状の文様。口縁部は交互刺突による鋸歯文・櫛歯状沈線文等が観察される。把手は4個付されていたと考えられる。
 
 
  • 筒形の小形深鉢(↑6/↓54)が伴うことも特徴の一つ。 

 

 

 

4-2. I 期中段階

8:小千谷, 9:岩野原, 10~14:清水上
  • 魚沼市清水上遺跡16号住居跡覆土の土器、笹山遺跡A区B~E-43~45の一部土器、岩野原遺跡第1土器捨場の一部の土器を標識とする。

 

4-2-①.  I 期中段階 火炎 A 群 土器(火焔型・王冠型)

  • 鶏頭冠突起は低く横長であるが、4個が対峙して付けられるようになる。
  • 施文もいわゆる隆帯や隆線で行われるものが主流。
 
火炎A群土器 火焔型土器 第 I 期中段階 (岩野原遺跡@長岡市). 低く横に長い鶏頭冠突起は大木8a式の横S字状突起から発展したと思われる。
 
 
火炎A群土器 火焔型土器 第 I 期中段階 (岩野原遺跡@長岡市). 低く横に長い鶏頭冠突起は大木8a式の横S字状突起から発展したと思われる。
 
 

火炎A群土器 火焔型土器 第 I 期中段階 (沖ノ原遺跡@津南町). 低く横に長い鶏頭冠突起は大木8a式の横S字状突起から発展したと思われる。

 

 

火炎A群土器 火焔型土器 第 I 期中段階 (道尻手遺跡@津南町 / 津南町歴史民俗資料館).

 

 

 

 

火炎A群土器 王冠型土器 第 I 期中段階(清水上遺跡16号住居跡 魚沼市)。突起部は小さく、扶りを有する王冠型士器とは大きく異なる。主要モチーフは 基隆帯によっている。胴下半部は逆U字状の文様構成であるが無文部を多く残している。頸部 には橋状の把手が付されるが、それを無文帯がつないでいる。底部は網代底。

 

 

 

 I 期中段階 火炎A群土器 王冠型(清水上遺跡@魚沼市)、隆線文間に空白あり。

 

 

 

4-2-②.  I 期中段階 火炎 C 群 土器(大木8a式、上山田・天神山式類系)

  • 引き続きクランク文が多用されるが、その先端部は渦巻文となる。 

I 期中段階 C群 大木8a式系深鉢(清水上遺跡16号住居跡の覆土@魚沼市). 胴部にやや膨らみをもつ深鉢。このように胴部に緩い膨らみをもつ深鉢は、県内ではあまり見られず、会津方面の器形。口縁部に比べて胴部の比率の大きい士器。胴部は背竹管による太い沈線でクランク状又は渦巻(末端部はまわらない)文が配される。口縁部は下半部が貼り付け隆帯による渦巻文様で、その隆帯に沿って背竹管文の押し引きが見られる。口縁部上半の細い連続刺突は半載竹管の爪形文の端部によるもの。口縁部上端には竹管工具による刺突が巡っている。把手は2個一対に付されている。

 

 

 

I 期中段階 C群 大木8a式系深鉢(清水上遺跡16号住居跡の覆土@魚沼市). 東北系の器形、大形の深鉢。口縁部の把手部を欠損する。頸部には隆帯及び交互刺突による波状文が巡る。胴部は2本1組の貼り付け隆帯によるクランク及ぴ渦巻きを組み合せた文様である。口縁部は蕨手状の文様である。上部には交互刺突による隆帯が巡る。クランク状の横帯区画の端部が渦巻を描くようになる。

 

 

 

  • 清水上遺跡16号住居跡では北陸地方の上山田・天神山土器様式や焼町系土器と目される小型深鉢(↑14/↓319)がともなうことから、少なくとも当段階及び前後は上山田・天神山土器様式や焼町系土器と併行するものと考えられる。

I 期中段階 C群 北陸系小型深鉢(清水上遺跡16号住居跡の覆土@魚沼市).  頸部に文様帯の区切りがなく、口縁部から斜めに垂下する渦巻と 胴部には逆U字状のモチーフをとる。主要モチーフは基隆帯によっており、矢羽根状の細いキザミが付される。その他に玉抱き三叉文や三叉文、円形に近い刺突等がモチーフとして用いられる。北陸系の上山田古式類似の土器。

 

 

 

 

4-3. I 期新段階

  • 笹山遺跡D区F~K-2・3出土土器を標識とする。

15~23:笹山

 

 

4-3-①.  I 期新段階 火炎 A 群 土器(火焔型・王冠型)

  • 火焔型と王冠型の存在がはっきり認識できるようになる。
  • 法量においても大中小とバラエティーに富む。
  • 文様は、渦巻文を中心で頸部に連結する横S字渦巻文や胴部に垂下する渦巻文などが配され、鶏頭冠突起を中心とした4単位の文様構成に近づきつつある(↑17/↓)。
  • 施文は隆帯や隆線で行われ、空白部を残さずに器面全体に密に施文される。

I 期新段階 火炎A群土器 火焔型(↑16)(笹山遺跡@十日町市)

 

 

I 期新段階 火炎A群土器 火焔型(↑17)(笹山遺跡@十日町市)

 

 

I 期新段階 火炎A群土器 火焔型(岩野原遺跡@長岡市)

 

 

I 期新段階 火炎A群土器 火焔型(道尻手遺跡@津南町)

 

 

 

I 期新段階 火炎A群土器 火焔型(馬高遺跡@長岡市)

 

 

 

I 期新段階 火炎A群土器 王冠型(岩野原遺跡@長岡市)。 

 

 

 

I 期新段階 火炎A群土器 王冠型(岩野原遺跡@長岡市)。 ↑16に類似。

 

 

 

4-3-②.  I 期新段階 火炎 C 群 土器()

  • 典型的なキャリパー形の器形が目立つようになる。
  • 文様は、胴部を中心に横方向を意識した割付で、施文は縄文地上に3本一組の平行沈線や粘土紐の貼付で描出する渦巻文や波状文が主体。

I 期新段階 火炎C群土器(笹山遺跡@十日町市)

 

 

I 期新段階 火炎C群土器(笹山遺跡@十日町市)

 

 

 

関連Links

火炎土器 1/3(General)

火炎土器 3/3( II 期古・中・新段階 ≒ 大木8b式)

 

大木8a/8b式