4. 火炎土器群 の 土器編年

 

  • 縄文時代中期、約5,300~4,800年前500年間ほど(AMS法)。
 
 
  • 新旧2期に編年。古段階の I 期は大木8a式、新段階の II 期は大木8b式に並行(小林1977)。
  • ↑ポツの編年観をベースに4段階区分(小林1988)、5段階区分(寺崎19995)、6段階区分(寺崎2006)がそれぞれ公表。
  • A群土器の終焉時期や別様式の存在も課題(佐藤2006)

 

 

 

4-4. II 期古段階

24・29・31笹山, 25~28・30前田, 

 

  • 笹山遺跡D区H・I-3出土土器、前田遺跡36号住居跡床直の土器を標識とする。
 
 
 

4-4-①.  II 期古段階 火炎 A 群 土器(火焔型・王冠型)

  • 火焔型は、頸部がくびれていわゆる火焔土器に近似する形となり、I期の火焔型と明確に区別できる。
  • しかし、文様構成は頸部文様帯が横S字渦巻文・胴部文様帯が右垂下重渦巻文や右垂下渦巻文が中心で、鶏頭冠突起を中心とした完全な4単位にならない。
 

※ I期とII期の火焔型土器を比較

  1. I 期の火焔型土器は、器形が典型的なキャリパー形を示さず鶏頭冠突起は低く横長で、口唇部に付される鋸歯状の突起は小形で数が多い。主文様は、隆線+隆帯+隆線の3本一組で描かれ、中央の隆帯が両側の隆線より高くて太い。頸部や胴部上半に付けられるワラビ手状の渦巻文は長く伸びる。
  2. II期の火焔型土器は、鶏頭冠突起が著しく発達して大型化し、そのために全体のプロポーションは頭でっかちになりバランスを欠く。文様モチーフは隆線のみとなり、その高さは平均化する。
 
II 期古段階 火焔型土器(笹山遺跡)、
 
 
 
II 期古段階 火焔型土器(笹山遺跡)

 

 

 

 

 

4-4-②. II 期古段階 火炎 C 群 土器(≒大木8b式); 

  • 典型的なキャリパー器形の深鉢が主体。口縁部・頸部・胴部の文様帯に三分でき、いずれも縄文を地文にもつ。口縁部文様帯は渦巻文や検査鬼門が未調整気味の粘土紐で施文され、頸部は数条の沈線が巡るものと縄文のみのものがあり、胴部も縄文のみのものと、渦巻文や懸垂文などを沈線で施文するものがある。
(↑29) II 期古段階 火炎 C 群 土器(≒大木8b式)。キャリパー器形、胴部は縄文の地文のみ。口縁部文様帯に大木8b式の特徴である渦巻つなぎ文。
 
 
 
II 期古段階 火炎 C 群 土器(≒大木8b式)。キャリパー器形、胴部に隆線による渦巻文。
 
 
 
  • 上記キャリパー器形の深鉢に浅鉢が加わる。浅鉢は、口縁部文様帯と胴部文様帯に二分され、口縁部の文様構成や施文技法はキャリパー形深鉢に類似し、胴部は縄文施文か無文。

 

 

 

 

4-5. II 期中段階

32・34~38:森上
 
  • 十日町市森上遺跡1号住居跡覆土の土器を標識。さらには、栃倉遺跡第2号住居跡覆土の土器。

 

4-5-①.  II 期中段階 火炎 A 群 土器(火焔型・王冠型)

  • 火焔型は、鶏頭冠突起が高く上方に伸び頸部も細く引き締まって、いわゆる火焔土器のプロポーションとなる。
  • 火焔型の文様構成は、鶏頭冠突起を中心に垂下渦巻文が派生する4単位構成となり、施文も隆線のみで行われる。
  • 王冠型は、ほとんどが短冊状突起の頂部付近に抉りをもつようになり、頸部も同段階の火焔型同様に細く引き締まっている。
 
第 II 期中段階火炎A群土器 火焔型土器 (森上遺跡@十日町市). 
 
 
 
第 II 期中段階火炎A群土器 火焔型土器 (栃倉遺跡@長岡市).
 
 
 
火焔土器 (馬高遺跡@長岡市). 第 II 期中段階火炎A群土器。 
 
 
 
第 II 期中段階火炎A群土器 火焔型土器 (左右;馬高遺跡, 中;徳昌寺).
 
 
 
第 II 期中段階火炎A群土器 火焔型土器(野首遺跡@十日町市)
 
 
 
第 II 期中段階火焔A群 王冠型土器 (馬高遺跡@長岡市). 
 
 

 

第 II 期中段階火焔A群 王冠型土器 (野首遺跡@十日町市). 

 

 

 

 

4-5-②.  II 期中段階 火炎 C 群 土器(大木8b式、上山田・天神山式類系)

  • 器種・器形・文様構成は前段階と同じ。
  • しかし、キャリパー形深鉢の口縁部文様に用いられていた粘土紐は完全な調整隆帯になることやその文様の空白部分に従位細沈線が充填されるようになる(35)点が異なり、頸部が無文帯となるものが主体で、口縁部に1~2単位の大形突起をもつもの(34)が目につく。

II 期中段階 火炎 C 群 土器;口縁に2単位の大形突起がつく。大木8b式土器の特徴である渦巻つなぎ文が口縁部に施文される。

 

 

 

II 期中段階 火炎 C 群 土器 大木8b式系統 (沖ノ原遺跡);胴部に大型の渦巻文。

 

 

  • 魚沼地域や上越地方を中心に加曽利E様式の浅鉢(39)がともなうことも珍しくない。 
 

 

 

4-6. II 期新段階

  • 万條寺林遺跡4号住居跡炉跡内および炉跡外周の土器を標識とする。ほか原遺跡第11号住居跡の土器。

40:中道, 41・46・50:原,  42:川内,  43~45・47・48:万條寺林,   49:徳昌寺, 

 

 

 

4-6-①.  II 期新段階 火炎 A 群 土器(火焔型・王冠型)

  • 火焔型土器は、鶏頭冠突起がさらに大形化し、口唇部を巡る鋸歯状の突起も大形となり、頸部もさらに引き締められるとともに胴部も細身で不安定なプロポーションとなる。
  • 文様構成や施文は前段階を踏襲するが、渦巻文が形骸化するため、文様全体は流麗さを欠いて直線的になる。
  • 火焔型は、この段階には存在していないといった見解あり(佐藤2006)が、少なくとも信濃川中流域の長岡市とその周辺には存在していた(羽黒遺跡中道遺跡)。

 

II 期新段階 火炎A群土器 火焔型(沖ノ原遺跡@津南町)

 

 

 

II 期新段階 火炎A群土器 火焔型(中道遺跡@長岡市)

 

 

 

II 期新段階 火炎A群土器 火焔型(中道遺跡@長岡市)

 

 

II 期新段階 火炎A群土器 王冠型(馬高遺跡@長岡市)

 

 

 

4-6-②.  II 期新段階 火炎 B 群 土器

  • 在地で発達した矢羽状の沈線文が特徴的なタイプ。

II 期新段階 火炎 B 群 土器 (栃倉類型)(馬高遺跡@長岡市)

 

 

 

II 期新段階 火炎 B 群 土器 (野首遺跡@十日町市) 胴部に矢羽根状沈線。口唇部に玉抱三又文。

 

 

 

II 期新段階 火炎 B 群 土器  栃倉類型 (沖ノ原遺跡@津南町) 胴部に矢羽根状沈線と大木8b式の影響を示唆する縦方向の渦巻つなぎ文。

 

 

 

II 期新段階 火炎 B 群 土器  栃倉類型 (遺跡不明、津南町なじょもん館の資料室にて@津南町)。 胴部に矢羽根状沈線と大木8b式の影響を示唆する縦方向の渦巻つなぎ文。

 

 

4-6-③.  II 期新段階 火炎 C 群 土器(大木8b式の影響)

  • C群は伴ってもわずか。

II 期新段階 火炎 C 群 土器 大木8b類型? (麻畑原B遺跡@十日町市)

 

 

関連Links

火炎土器 1/3( General)

火炎土器 2/3( I 期古・中・新段階 ≒ 大木8a式)

 

大木8a/8b式