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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

組合の代表者名義で振出された約束手形に対する組合員の責任の有無

 

 

約束手形金請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和32年(オ)第693号

【判決日付】      昭和36年7月31日

【判示事項】      組合の代表者名義で振出された約束手形に対する組合員の責任の有無

【判決要旨】      民法上の組合の代表者が、組合のために、その組合代表者名義で約束手形を振出した場合には、同組合の組合員は、共同振出人として、同手形について合同してその責を負うものと解するのが相当である。

             (少数意見がある。)

【参照条文】      手形法75

             手形法47

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集15巻7号1982頁

 

 

手形法

第七十五条 約束手形ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ

一 証券ノ文言中ニ其ノ証券ノ作成ニ用フル語ヲ以テ記載スル約束手形ナルコトヲ示ス文字

二 一定ノ金額ヲ支払フベキ旨ノ単純ナル約束

三 満期ノ表示

四 支払ヲ為スベキ地ノ表示

五 支払ヲ受ケ又ハ之ヲ受クル者ヲ指図スル者ノ名称

六 手形ヲ振出ス日及地ノ表示

七 手形ヲ振出ス者(振出人)ノ署名

 

第四十七条 為替手形ノ振出、引受、裏書又ハ保証ヲ為シタル者ハ所持人ニ対シ合同シテ其ノ責ニ任ズ

② 所持人ハ前項ノ債務者ニ対シ其ノ債務ヲ負ヒタル順序ニ拘ラズ各別又ハ共同ニ請求ヲ為スコトヲ得

③ 為替手形ノ署名者ニシテ之ヲ受戻シタルモノモ同一ノ権利ヲ有ス

④ 債務者ノ一人ニ対スル請求ハ他ノ債務者ニ対スル請求ヲ妨ゲズ既ニ請求ヲ受ケタル者ノ後者ニ対シテモ亦同ジ

 

 

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 被上告人らは、各自、上告人に対し、金五四四、八二二円及びこれに対する昭和三一年三月一日以降完済に至るまで年六分の割合による金員の支払をせよ。

 訴訟費用は、各審を通じ、被上告人らの連帯負担とする。

 

       理   由

 

 本件三陸定置漁業組合は、定置漁業の経営を目的とする民法上の組合であること、被上告人ら七名及び原審控訴人Aは右組合の組合員であること(組合員総数二三名)、本件約束手形二通は、いずれも、同組合が上告人から買受けた製縄代金支払のために振出されたものであること、本件各手形はAか同組合組合長理事Aの名義をもつて振出したものであること、ならびにAが同組合の組合長として組合を代表して第三者と取引する権限を有していたことは、本件において原判決の確定するところである。すなわち、本件手形は、組合の代表者が、その権限にもとずき、組合のために、その組合代表者名義をもつて振出したものである以上、同組合の組合員は、手形上、各組合員の氏名が表示された場合と同様、右手形について共同振出人として、合同してその責を負うものと解するを相当とする(大正一四年五月一二日大審院判決・民集四巻二五六頁参照)。とすれば、右法理を誤つて被上告人らについて本件手形上の責任を否定した原判決は違法であつて、本件上告は理由があり、原判決は破棄を免れないものである。

 そして、本件において、上告人が本訴請求の原因として主張する事実は、すべて、被上告人らの争わないところであり、被上告人らの抗弁の理由のないことは前段説明するところによりあきらかであるから、当裁判所は、民訴四〇七条、四〇八条により、原判決を破棄して自判すべきものとし、なお、訴訟費用の負担につき同九五条、八九条、九三条を適用の上、裁判官奥野健一、同山田作之助を除く裁判官全員の一致をもつて、主文のとおり判決する。

 裁判官奥野健一、同山田作之助の反対意見は次のとおりである。

 手形の顕名主義の原則よりして、手形行為の代理関係は証券面に明らかにされておらなければならない。従つて、商法五〇四条は手形行為の代理には適用がなく、また、旧商法(明治三二年法律第四八号)四三六条が「代理人カ本人ノ為メニスルコトヲ記載セスシテ手形ニ署名シタルトキハ本人ハ手形上ノ責任ヲ負フコトナシ」と規定していたこともこの間の理を明らかにしたものであり、改正後の手形法において、かゝる明文がなくても同一に理解しなければならない。

 法人格を有しない民法上の組合の名称を手形上に表示しても、固よりその表示が組合の構成員たる各組合員の表示とみることはできないし、また組合長、理事等組合の業務執行者の表示は各組合員の代理人の表示とみることもできない。してみれば、本件において手形振出人として「三陸定置漁業組合組合長理事A」という記載は、前述の如く各組合員の代理人の表示と認めることはできないから、これにより組合長以外の組合員に手形上の責任を負担せしめることはできない。(もつとも、右組合長は手形法八条により自ら手形の支払義務を負うけれども、右手形の振出が組合の業務執行の範囲内であり、その権限に基き為されたものである限り、その支払は組合の業務執行のため支出した費用として組合財産又は他の組合員から、これが求償を求めることができる。)

 また、多数説の如く、手形面に顕名されていないものまでが直接手形債務を負担するものとすれば、その手形が不渡となりたる場合、名が顕はれていないものに対しても所謂手形不渡処分を為し得るや等の問題を生じ手形取引の実情に適せざる結果を生ずるものと云はなくてはならない。

 右の理由により原判決は正当であつて本件上告は理由がない。

    最高裁判所第二小法廷

家屋賃借人の妻の失火と、賃借人たる夫の債務不履行上の責任

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和28年(オ)第848号

【判決日付】      昭和30年4月19日

【判示事項】      家屋賃借人の妻の失火と、賃借人たる夫の債務不履行上の責任

             履行不能による填補賠償の請求と契約解除の要否

【判決要旨】      家屋賃借人の妻の失火により、右家屋が滅失したときは、賃借人たる夫の責に帰すべき事由により、賃借物の返還義務が履行不能になつたものと認めるべきである。

             債務者の責に帰すべき事由によつて履行不能を生じたときは、賃借人は契約を解除することなくして填補賠償の請求をすることができる。

【参照条文】      民法415

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集9巻5号556頁

 

 

民法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人佐竹晴記の上告理由第一、二点について。

 本件において原審の確定した事実は、本件家屋は被上告人の所有であつたが、被上告人はこれを上告人に対し賃貸したところ、上告人の妻Aの過失により昭和二五年一月二一日全焼し滅失するに至つたというのである。ところで若しAの過失が重大なものであつたとすれば、同人は右家屋の所有者であつた被上告人に対し、所有権侵害による不法行為上の責任を負うわけであるけれども(明治三〇年法律第四〇号失火の責任に関する法律参照)、被上告人は第一審以来かゝる請求をしているものではなく、賃貸人として賃貸物の滅失により、返還義務が履行不能になつたものとして、その責任を問うているものであることその主張自体に徴し明らかである。かかる請求においては、Aは賃借人ではないのであるから、もとより被上告人に対し直接賃貸借上の義務を負担しているものではないが、賃借人たる上告人の妻として、上告人の貸借人としての義務の履行を補助する関係にあるものである。この関係は、妻は夫に従属するという観念に立脚するものではなく、たまたま本件においてはAが賃借人でなかつたからに外ならないのであるから、所論憲法の条規とは何等関係なく、以上の如き判断をしたからと云つて憲法に反するかどうかの問題とはならないのである。さて民法四一五条にいわゆる債務者の責に帰すべき事由とは、債務者の故意過失だけでなく、履行補助者の故意過失をも含むものと解すべきであるから、履行補助者であるAの過失によつて本件家屋が滅失したことは、すなわち上告人の責に帰すべき事由によつて、賃借物の返還義務が履行不能になつたものといわなければならない。原判決の措辞には、稍々不明確のところもあるが、ひつきよう上述の趣旨であること明らかであつて、論旨第一点引用の原判示には、所論の如き矛盾なく、論旨第二点もまた採用に値しないこと前説明によつて明らかであろう。

 同第三点について。

 債務者の責に帰すべき事由によつて履行不能を生じたときは、債権者の請求権は、解除を俟つことなく填補賠償請求権に変ずるものである(大審院昭和八年六月一三日判決、集一二巻一四三七頁参照)。論旨引用のその他の判例の見解は、当裁判所の採用しないところである。

 その他の論旨及び上告代理人浜口重利の上告理由は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第三小法廷

黄色点滅信号で交差点に進入した際、交差道路を暴走してきた車両と衝突し、業務上過失致死傷罪に問われた自動車運転者について、衝突の回避可能性に疑問があるとして無罪が言い渡された事例

 

 

              業務上過失致死傷被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成14年(あ)第183号

【判決日付】      平成15年1月24日

【判示事項】      黄色点滅信号で交差点に進入した際、交差道路を暴走してきた車両と衝突し、業務上過失致死傷罪に問われた自動車運転者について、衝突の回避可能性に疑問があるとして無罪が言い渡された事例

【参照条文】      刑法211

【掲載誌】        最高裁判所裁判集刑事283号241頁

 

 

事案の概要

 本判決は、交通事故に係る業務上過失致死傷被告事件について、最高裁が一、二審の有罪判決を破棄した上、無罪を言い渡したケースである。上告審における無罪の自判は、最一小判平13・1・25刑集二八〇号五頁以来となる。

 事案は、交差点で車と車が出会い頭に衝突した交通事故であり、双方の道路に優先関係はなく、信号は、被告人の進路が黄色の点滅、相手方の進路が赤色の点滅であった。また、被告人から見て、左右の交差道路の見通しは、困難な状況にあった。

 

 

刑法

(業務上過失致死傷等)

第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

 

 

 

 

       主   文

 

 原判決及び第1審判決を破棄する。

 被告人は無罪。

 

       理   由

 

 弁護人椎木緑司の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,本件と事案を異にする判例を引用するものであって,前提を欠き,その余は,単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 しかしながら,所論にかんがみ,本件における業務上過失致死傷罪の成否について,以下,職権をもって検討する。

 第1審判決が認定し,原判決が是認した犯罪事実は,起訴状記載の公訴事実と同旨である。その内容は,「被告人は,平成11年8月28日午前零時30分ころ,業務としてタクシーである普通乗用自動車を運転し,広島市南区宇品東7丁目2番18号先の交通整理の行われていない交差点を宇品御幸4丁目方面から宇品東5丁目方面に向かい直進するに当たり,同交差点は左右の見通しが利かない交差点であったことから,その手前において減速して徐行し,左右道路の交通の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,漫然時速約30ないし40キロメートルの速度で同交差点に進入した過失により,折から,左方道路より進行してきたA運転の普通乗用自動車の前部に自車左後側部を衝突させて自車を同交差点前方右角にあるブロック塀に衝突させた上,自車後部座席に同乗のB(当時44歳)を車外に放出させ,さらに自車助手席に同乗のC(当時39歳)に対し,加療約60日間を要する頭蓋骨骨折,脳挫傷等の傷害を負わせ,Bをして,同日午前1時24分ころ,同区宇品神田1丁目5番54号県立広島病院において,前記放出に基づく両側血気胸,脳挫傷により死亡するに至らせたものである。」というにある。過失の存否に関する評価の点を除き,本件における客観的な事実関係は,以上のとおりと認められる。

 また,1,2審判決の認定によれば,次の事情が認められる。すなわち,本件事故現場は,被告人運転の車両(以下「被告人車」という。)が進行する幅員約8.7メートルの車道とA運転の車両(以下「A車」という。)が進行する幅員約7.3メートルの車道が交差する交差点であり,各進路には,それぞれ対面信号機が設置されているものの,本件事故当時は,被告人車の対面信号機は,他の交通に注意して進行することができることを意味する黄色灯火の点滅を表示し,A車の対面信号機は,一時停止しなければならないことを意味する赤色灯火の点滅を表示していた。そして,いずれの道路にも,道路標識等による優先道路の指定はなく,それぞれの道路の指定最高速度は時速30キロメートルであり,被告人車の進行方向から見て,左右の交差道路の見通しは困難であった。

 このような状況の下で,左右の見通しが利かない交差点に進入するに当たり,何ら徐行することなく,時速約30ないし40キロメートルの速度で進行を続けた被告人の行為は,道路交通法42条1号所定の徐行義務を怠ったものといわざるを得ず,また,業務上過失致死傷罪の観点からも危険な走行であったとみられるのであって,取り分けタクシーの運転手として乗客の安全を確保すべき立場にある被告人が,上記のような態様で走行した点は,それ自体,非難に値するといわなければならない。

 しかしながら,他方,本件は,被告人車の左後側部にA車の前部が突っ込む形で衝突した事故であり,本件事故の発生については,A車の特異な走行状況に留意する必要がある。すなわち,1,2審判決の認定及び記録によると,Aは,酒気を帯び,指定最高速度である時速30キロメートルを大幅に超える時速約70キロメートルで,足元に落とした携帯電話を拾うため前方を注視せずに走行し,対面信号機が赤色灯火の点滅を表示しているにもかかわらず,そのまま交差点に進入してきたことが認められるのである。このようなA車の走行状況にかんがみると,被告人において,本件事故を回避することが可能であったか否かについては,慎重な検討が必要である。

 この点につき,1,2審判決は,仮に被告人車が本件交差点手前で時速10ないし15キロメートルに減速徐行して交差道路の安全を確認していれば,A車を直接確認することができ,制動の措置を講じてA車との衝突を回避することが可能であったと認定している。上記認定は,司法警察員作成の実況見分調書(第1審検第24号証)に依拠したものである。同実況見分調書は,被告人におけるA車の認識可能性及び事故回避可能性を明らかにするため本件事故現場で実施された実験結果を記録したものであるが,これによれば,①被告人車が時速20キロメートルで走行していた場合については,衝突地点から被告人車が停止するのに必要な距離に相当する6.42メートル手前の地点においては,衝突地点から28.50メートルの地点にいるはずのA車を直接視認することはできなかったこと,②被告人車が時速10キロメートルで走行していた場合については,同じく2.65メートル手前の地点において,衝突地点から22.30メートルの地点にいるはずのA車を直接視認することが可能であったこと,③被告人車が時速15キロメートルで走行していた場合については,同じく4.40メートル手前の地点において,衝突地点から26.24メートルの地点にいるはずのA車を直接視認することが可能であったこと等が示されている。しかし,対面信号機が黄色灯火の点滅を表示している際,交差道路から,一時停止も徐行もせず,時速約70キロメートルという高速で進入してくる車両があり得るとは,通常想定し難いものというべきである。しかも,当時は夜間であったから,たとえ相手方車両を視認したとしても,その速度を一瞬のうちに把握するのは困難であったと考えられる。こうした諸点にかんがみると,被告人車がA車を視認可能な地点に達したとしても,被告人において,現実にA車の存在を確認した上,衝突の危険を察知するまでには,若干の時間を要すると考えられるのであって,急制動の措置を講ずるのが遅れる可能性があることは,否定し難い。そうすると,上記②あるいは③の場合のように,被告人が時速10ないし15キロメートルに減速して交差点内に進入していたとしても,上記の急制動の措置を講ずるまでの時間を考えると,被告人車が衝突地点の手前で停止することができ,衝突を回避することができたものと断定することは,困難であるといわざるを得ない。そして,他に特段の証拠がない本件においては,被告人車が本件交差点手前で時速10ないし15キロメートルに減速して交差道路の安全を確認していれば,A車との衝突を回避することが可能であったという事実については,合理的な疑いを容れる余地があるというべきである。

 以上のとおり,本件においては,公訴事実の証明が十分でないといわざるを得ず,業務上過失致死傷罪の成立を認めて被告人を罰金40万円に処した第1審判決及びこれを維持した原判決は,事実を誤認して法令の解釈適用を誤ったものとして,いずれも破棄を免れない。

 よって,刑訴法411条1号,3号により原判決及び第1審判決を破棄し,本件事案の内容及びその証拠関係等にかんがみ,この際,当審において自判するのを相当と認め,同法413条ただし書,414条,404条,336条により被告人に対し無罪の言渡しをすることとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

第4章 社外取締役

社外役員の設置に関する事項の内容が追加されました。社外取締役を置いていない場合、社外取締役を置くことが相当でない理由等を事業報告に記載することになります。

 

(1) 社外取締役の機能の活用

取締役会の業務執行者に対する監督機能を強化するために,社外取締役をより積極的に活用すべきであるとの指摘が強くされていたことを受け,次の3つの改正がされました。

 

 大企業における社外取締役の選任を促進するため、社外取締役を選任しない企業に、株主総会でその理由を説明することを義務づけるとともに、社外取締役の要件を厳格化して、取締役の2親等以内の親族や親会社の取締役等を、その要件から除外した。

 

 

 (1) 社外取締役を置いていない場合の理由の開示

 

  事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であってその発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。(第327条の2関係)

 

 (2) 社外取締役及び社外監査役の要件の厳格化

 

  ① 社外取締役の要件(第2条第15号関係)

 

   ア 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人(業務執行取締役等)でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

 

   イ その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

 

   ウ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

 

   エ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。

 

   オ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等内の親族でないこと。

 

  ② 社外監査役の要件(第2条第16号関係)

 

   ア その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。

 

   イ その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。

 

   ウ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役、監査役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

 

   エ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。

 

   オ 当該株式会社の取締役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等内の親族でないこと。

 

 (3) 取締役及び監査役の責任の一部免除

 

  ① 代表取締役以外の取締役の最低責任限度額について、業務執行取締役等であるかどうかで区別する。(第425条第1項関係)

 

  ② 取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)又は監査役は、社外取締役又は社外監査役でないものであっても、責任限定契約を締結することができる。(第427条第1項関係)

 

国民年金法(昭和五六年改正前)八一条一項の障害福祉年金の支給について適用される同法五六条一項ただし書と憲法二五条、一四条一項

 

 

塩見訴訟

              国民年金裁定却下処分取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和60年(行ツ)第92号

【判決日付】      平成元年3月2日

【判示事項】      国民年金法(昭和五六年法律第八六号による改正前のもの)八一条一項の障害福祉年金の支給について適用される同法五六条一項ただし書と憲法二五条、一四条一項

【判決要旨】      国民年金法(昭和五六年法律第八六号による改正前のもの)八一条一項の障害福祉年金の支給について適用される同法五六条一項のただし書は、憲法二五条、一四条一項に違反しない。

【参照条文】      憲法14-1

             憲法25

             国民年金法(昭和56年法律第86号による改正前のもの)56-1

             国民年金法81-1

【掲載誌】        訟務月報35巻9号1754頁

             最高裁判所裁判集民事156号271頁

             判例タイムズ741号87頁

             金融・商事判例845号44頁

             判例時報1363号68頁

 

 

憲法

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人松本晶行、同阪本政敬、同千本忠一、同川崎裕子、同吉川実、同桂充弘、同竹下義樹の上告理由について

 一 原審の適法に確定したところによれば、本件の事実関係は次のとおりである。

 上告人は、昭和九年六月二五日大阪市で出生し、幼少のころ罹患したはしかによって失明し、昭和三四年一一月一日において昭和五六年法律第八六号による改正前の国民年金(以下「法」という。)別表に定める一級に該当する程度の廃疾の状態にあつた。上告人は、法八一条一項の障害福祉年金の受給権者であるとして、被上告人に対し右受給権の裁定を請求したところ、被上告人は、昭和四七年八月二一日同請求を棄却する旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。本件処分の理由は、上告人は昭和三四年一一月一日において日本国民でなかったから法八一条一項の障害福祉年金の受給権を有しないというものであった。

 二 法八一条一項は、昭和一四年一一月一日以前に生まれた者が、昭和三四年一一月一日以前になおった傷病により、昭和三四年一一月一日において法別表に定める一級に該当する程度の廃疾の状態にあるときは、法五六条一項本文の規定にかかわらず、その者に同条の障害福祉年金を支給する旨規定しているが、法五六条一項ただし書は廃疾認定日において日本国民でない者に対しては同条の障害福祉年金を支給しない旨規定しており、法八一条一項の障害福祉年金の支給に関しても当然に法五六条一項ただし書の規定の適用があるから、法八一条一項の障害福祉年金は、廃疾の認定日である昭和三四年一一月一日において日本国民でない者に対しては支給されないものと解すべきである。

 三 そこで、まず、法八一条一項が受ける法五六条一項ただし書の規定(以下「国籍条項」という。)及び昭和三四年一一月一日より後に帰化によって日本国籍を取得した者に対し法八一条一項の障害福祉年金の支給をしないことが、憲法二五条の規定に違反するかどうかについて判断する。

 憲法二五条は、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきこと(一項)並びに社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきこと(二項)を国の責務として宣言したものであるが、同条一項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的に右のような義務を有することを規定したものではなく、同条二項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されてゆくものであると解すべきこと、そして、同条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することはできず、また、多方面にわたる複雑多様な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするから、同条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するに適しない事柄であるというべきことは、当裁判所大法廷判決(昭和二三年(れ)第二〇五号同年九月二九日判決・刑集二巻一〇号一二三五頁、昭和五一年(行ツ)第三〇号同五七年七月七日判決・民集三六巻七号一二三五頁)の判示するところである。

 そこで、本件で問題とされている国籍条項が憲法二五条の規定に違反するかどうかについて考えるに、国民年金制度は、憲法二五条二項の規定の趣旨を実現するため、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止することを目的とし、保険方式により被保険者の拠出した保険料を基として年金給付を行うことを基本として創設されたものであるが、制度発足当時において既に老齢又は一定程度の障害の状態にある者、あるいは保険料を必要期間納付することができない見込みの者等、保険原則によるときは給付を受けられない者についても同制度の保障する利益を享受させることとし、経過的又は補完的な制度として、無拠出制の福祉年金を設けている。法八一条一項の障害福祉年金も、制度発足時の経過的な救済措置の一環として設けられた全額国庫負担の無拠出制の年金であって、立法府は、その支給対象者の決定について、もともと広範な裁量権を有しているものというべきである。加うるに、社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。したがって、法八一条一項の障害福祉年金の支給対象者から在留外国人を除外することは、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきである。

 また、経過的な性格を有する右障害福祉年金の給付に関し、廃疾の認定日である制度発足時の昭和三四年一一月一日において日本国民であることを要するものと定めることは、合理性を欠くものとはいえない。昭和三四年一一月一日より後に帰化により日本国籍を取得した者に対し法八一条一項の障害福祉年金を支給するための措置として、右の者が昭和三四年一一月一日に遡り日本国民であったものとして扱うとか、あるいは国籍条項を削除した昭和五六年法律第八六号による国民年金法の改正の効果を遡及させるというような特別の救済措置を講ずるかどうかは、もとより立法府の裁量事項に属することである。

 そうすると、国籍条項及び昭和三四年一一月一日より後に帰化によって日本国籍を取得した者に対し法八一条一項の障害福祉年金の支給をしないことは、憲法二五条の規程に違反するものではないというべく、以上は当裁判所大法廷判決(昭和五一年(行ツ)第三〇号同五七年七月七日判決・民集三六巻七号一二三五頁、昭和五〇年(行ツ)第一二〇号同五三年一〇月四日判決・民集三二巻七号一二二三頁)の趣旨に徴して明らかというべきである。

 四 次に、国籍条項及び昭和三四年一一月一日より後に帰化によって日本国籍を取得した者に対し法八一条一項の障害福祉年金の支給をしないことが、憲法一四条一項の規定に違反するかどうかについて考えるに、憲法一四条一項は法の下の平等の原則を定めているが、右規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区分が合理性を有する限り、何ら右規定に違反するものではないのである(最高裁昭和三七年(あ)第九二七号同三九年一一月一八日大法廷判決・刑集一八巻九号五七九頁、同昭和三七年(オ)第一四七二号同三九年五月二七日大法廷判決・民集一八巻四号六七六頁参照)。ところで、法八一条一項の障害福祉年金の給付に関しては、廃疾の認定日に日本国籍がある者とそうでない者との間に区別が設けられているが、前示のとおり、右障害福祉年金の給付に関し、自国民を在留外国人に優先させることとして在留外国人を支給対象者から除くこと、また廃疾の認定日である制度発足時の昭和三四年一一月一日において日本国民であることを受給資格要件とすることは立法府の裁量の範囲に属する事柄というべきであるから、右取扱いの区別については、その合理性を否定することができず、これを憲法一四条一項に違反するものということはできない。

 五 さらに、国籍条項が憲法九八条二項に違反するかどうかについて判断する。

 所論の社会保障の最低基準に関する条約(昭和五一年条約第四号。いわゆるILO第一〇二号条約)六八条1の本文は「外国人居住者は、自国民居住者と同一の権利を有する。」と規定しているが、そのただし書は「専ら又は主として公の資金を財源とする給付又は給付の部分及び過渡的な制度については、外国人及び自国の領域外で生まれた自国民に関する特別な規則を国内の法令で定めることができる。」と規定しており、全額国庫負担の法八一条一項の障害福祉年金に係る国籍条項が同条約に違反しないことは明らかである。また、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和五四年条約第六号)九条は「この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。」と規定しているが、これは、締約国において、社会保障についての権利が国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、右権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって、個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことは、同規約二条1が締約国において「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」ことを求めていることからも明らかである。したがって、同規約は国籍条項を直ちに排斥する趣旨のものとはいえない。さらに、社会保障における内国民及び非内国民の均等待遇に関する条約(いわゆるILO第一一八号条約)は、わが国はいまだ批准しておらず、国際連合第三回総会の世界人権宣言、同第二六個総会の精神薄弱者の権利宣言、同第三〇回総会の障害者の権利宣言及び国際連合経済社会理事会の一九七五年五月六日の障害防止及び障害者のリハビリテーションに関する決議は、国際連合ないしその機関の考え方を表明したものであって、加盟国に対して法的拘束力を有するものではない。以上のように、所論の条約、宣言等は、わが国に対して法的拘束力を有しないか、法的拘束力を有していても国籍条項を直ちに排斥する趣旨のものではないから、国籍条項がこれらに抵触することを前提とする憲法九八条二項違反の主張は、その前提を欠くというべきである。

 六 以上と同旨の見解に立って本件処分を適法とした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。

 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

精管切断による不妊手術の不完全を理由とする賠償請求につき、信義則上の説明義務違反があるとして、夫に対する病院の責任が肯定された事例


    慰謝料請求事件
【事件番号】    横浜地方裁判所判決/昭和56年(ワ)第1214号
【判決日付】    昭和58年6月24日
【判示事項】    精管切断による不妊手術の不完全を理由とする賠償請求につき、信義則上の説明義務違反があるとして、夫に対する病院の責任が肯定された事例
【参照条文】    民法415
          民法709
          民法715
【掲載誌】     判例タイムズ507号250頁


民法
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。


 

曳船契約の法律上の性質

 

【事件番号】      松山地方裁判所判決/昭和25年(ワ)第293号

【判決日付】      昭和36年8月25日

【判示事項】      1、曳船契約の法律上の性質

             2、浚渫船のように自力航行の能力がない船舶を曳引する曳船々長の注意義務

             3、商法580条の法意

【掲載誌】        下級裁判所民事裁判例集12巻8号1966頁

             判例タイムズ123号64頁

 

 

事案の概要

 本件は浚渫船を曳船して目的港外にいたつたが、荒天のため沈没させ、船長ほか1名を溺死するにいたらしめたという事件で、次の諸点を判示する。

 一、まず、曳船契約とよばれるものには、その法律上の性質が運送契約であるものと請負契約であるものとがあつて、そのいずれであるかは、曳船列の運航指揮権、被曳船に対する保管監督権の所在等によつて決せらるべきであるが、本件では被曳船が自力航行能力のない浚渫船であり、乗組員も運航の技術を知らない非船員であることなどの事実関係にもとづいて、いわゆる運送曳船であると認定された。

したがつて、曳船側の債務も、単に目的地点に到達したというだけで履行を完了したものということができず、安全に被曳船の引渡を終了することを要するものとされたのである。

 二、次に、このような自力航行能力のない船舶を曳引して、附近に避難場所のない地域に運送する債務を負担した曳船の船長は、とくに天候の変化に留意し、その悪化を知りえたときは適当な場所に避難することなどの注意義務のあることが認定されている。

 三、そして、運送契約の債務不履行による損害賠償額は、商法580条によつて法定されているのであり。

これは企業の保護のために定額にしたものであるから(西原、商行為法・法律学全集303頁参照)、実損害がそれを上廻る場合でも、法定額以上の賠償義務を負担ざせない趣旨だといつている。

この点、旧340条に関する大正9年11月25日の大審院判決(民録26輯1755頁)が、「民法ノ一般原則ニ従ハサルモノトス」といつているのと、同趣旨と思われる。

 なお、本件では、曳船の船長個人にたいしても、不法行為による損害賠償責任を科しているが、賠償額の認定方法等につき、参考に資すべき点が多い。

 

 

       主   文

 

原告株式会社宇都宮組に対し、被告日正汽船株式会社は金五〇〇万円被告山本竹一は金五、三〇万七、四五三円及び右各金額に対する昭和二五年九月二二日以降完済まで年五分の割合による金員を各自支払え。

被告等に対する同原告その余の請求を棄却する。

被告等は、各自、原告大田垣ヨシノ、同長柄文江、同後藤節子、同大田垣孝枝、同大田垣龍枝、同大田垣弘美、同大田垣昭弘、同見上大二三、同米田佐代子、同杉山圭子、同見上立美、同見上司郎に対し各金一〇万円及びこれに対する昭和二五年九月二二日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用中原告株式会社宇都宮組と被告等との間で生じた分は、これを二分しその一を同原告の負担、その余を被告等の負担とし、爾余の原告等と被告等との間で生じた分は被告等の負担とする。

 この判決は、各被告に対し、原告株式会社宇都宮組において金一〇〇万円ずつ、爾余の原告等において金二万円ずつの各担保を供するときは、各勝訴部分に限り仮りに執行することができる。

 

マンションの専用部分での住宅以外の利用を禁止しているマンション管理規約の趣旨及び目的等に照らして、専用部分を障害者グループホームとして利用することが、上記マンション管理規約の規定に違反し、区分所有法6条3項、1項の区分所有者の共同の利益を侵害する行為に該当し、かつ原告による本件の訴訟提起等が法令等の規定する不当な差別に該当しないと判断して、原告が請求していた被告による障害者グループホームとしての利用の停止及び提訴に要した弁護士費用等の支払を認めた事案

 

              共同利益背反行為の停止等請求事件

【事件番号】      大阪地方裁判所判決/平成30年(ワ)第5280号

【判決日付】      令和4年1月20日

【判示事項】      マンションの専用部分での住宅以外の利用を禁止しているマンション管理規約の趣旨及び目的等に照らして、専用部分を障害者グループホームとして利用することが、上記マンション管理規約の規定に違反し、区分所有法6条3項、1項の区分所有者の共同の利益を侵害する行為に該当し、かつ原告による本件の訴訟提起等が法令等の規定する不当な差別に該当しないと判断して、原告が請求していた被告による障害者グループホームとしての利用の停止及び提訴に要した弁護士費用等の支払を認めた事案

【判決要旨】      1 マンションの専有部分をグループホームとして使用することは、「区分所有者は、その専有部分を住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」という同マンションの管理規約に反する行為であって、区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当すると認められるから、マンションの管理組合は、同法57条1項に基づき、専有部分をグループホーム事業の用に供する行為の停止を求めることができる。

             2 マンション管理組合が被告に対して専有部分をグループホーム事業の用に供する行為の停止を求め、本訴を提起する旨の決議をしたことは、障害者差別解消法8条1項の「不当な差別的取扱い」および障害者基本法4条1項の「障害を理由」とする「差別」に該当するものとして違法無効とはならない。

【参照条文】      建物の区分所有等に関する法律6-1

             建物の区分所有等に関する法律6-3

             建物の区分所有等に関する法律57-1

             建物の区分所有等に関する法律57-4

             建物の区分所有等に関する法律26-4

             障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律8-1

             障害者基本法4-1

【掲載誌】        判例タイムズ1505号203頁

             金融・商事判例1647号32頁

             判例時報2541号14頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      銀行法務21 890号71頁

 

 

事案の概要

本件は,マンション管理組合の管理者である原告が,マンションの住戸を賃借している被告に対して,被告が当該住戸を障害者グループホームとして利用していることが,マンションの専有部分を住宅以外の用途に利用することを禁止しているマンション管理規約の規定に違反しており,これにより区分所有者の共同の利益を侵害していると主張して,①建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)57条4項,1項に基づき,当該住戸をグループホームとして利用することを停止するよう求めるとともに,②マンション管理規約に基づき,提訴に要した弁護士費用等合計85万0430円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

 

 

建物の区分所有等に関する法律

(区分所有者の権利義務等)

第六条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。

3 第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。

4 民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百六十四条の八及び第二百六十四条の十四の規定は、専有部分及び共用部分には適用しない。

 

(権限)

第二十六条 管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。

2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。

3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

5 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。

 

(共同の利益に反する行為の停止等の請求)

第五十七条 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。

2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。

3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。

4 前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。

 

 

 

       主   文

 

 1 被告は,別紙物件目録記載2及び3の専有部分の建物をいずれもグループホームとして使用してはならない。

 2 被告は,原告に対し,85万0430円及びこれに対する平成30年6月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 3 訴訟費用は被告の負担とする。

 4 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

   主文第1項及び第2項同旨

第2 事案の概要

   本件は,マンションの管理組合の管理者である原告(提訴時においてはC,口頭弁論終結時においてはA)が,社会福祉法人である被告に対し,被告が賃借したマンションの専有部分の建物をグループホームとして使用することは,区分所有者は専有部分を住宅として使用するものとし,他の用途に供してはならない旨を定めたマンションの管理規約の規定に違反し,建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)6条3項が準用する同条1項所定の区分所有者の共同の利益に反する行為に該当するとして,同法57条4項が準用する同条1項に基づき,上記専有部分の建物をグループホーム事業の用に供する行為の停止を求めるとともに,上記管理規約によって定められた違約金として,調停費用,訴訟費用等の合計85万0430円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成30年6月23日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

  (1) 当事者

   ア 原告は,別紙物件目録記載1の1棟の建物(以下「本件マンション」という。)の区分所有者全員により構成される区分所有法3条前段所定の団体であるg管理組合(以下「本件管理組合」という。)の理事長であり,同法25条1項所定の管理者である。(弁論の全趣旨)

   イ 被告は,居宅介護支援事業等の公益事業を行うことにより高齢者や障害者に対する福祉サービスを提供することを目的とする社会福祉法人であり,本件マンションの専有部分である別紙物件目録記載2の建物(以下「m号室」という。)及び同目録記載3の建物(以下「n号室」といい,m号室とn号室を合わせて「本件各住戸」という。)の各区分所有者から本件各住戸を賃借して占有している。(争いのない事実,乙9)

  (2) 本件各住戸の使用状況等

   ア 本件マンションは,昭和63年9月17日に新築された地下1階,地上15階建ての区分所有建物であり,建築延面積は1万8687.18平方メートルである。1階の9戸の専有部分(延床面積567.78平方メートル)は店舗であり,2階から15階までの251戸の専有部分(延床面積1万4641.96平方メートル)は全て住戸である。(甲1の1・2,甲2,3,10,11,弁論の全趣旨)

   イ 被告は,遅くとも平成15年8月11日から現在までn号室(床面積56.11平方メートル)において,遅くとも平成17年9月2日から現在までm号室(床面積56.21平方メートル)において,それぞれ,障害者グループホーム(以下「本件グループホーム」という。)を運営し,入居者に対し,①入浴,排せつ及び食事等の介護,②整姿,整容に必要な援助及び助言,③日中生活上及び夜間生活における介護及び助言,④健康の維持増進に必要な介護及び助言,⑤日中活動の場等との連絡,調整及び移動支援,⑥余暇活動及び社会参加支援,⑦緊急時等の対応及び介護,⑧金銭管理又は財産管理等に必要な援助及び相談支援,⑨住居家事援助,⑩前各項に附帯する必要な介護及び相談支援といった福祉サービスを提供している。なお,m号室には,平成17年9月2日に2名,平成21年2月13日に1名が入居し,現在,合計3名が上記サービスを利用している。n号室には,平成15年8月11日に1名,平成18年2月27日に1名,同年7月31日に1名が入居し,現在,合計3名が上記サービスを利用している。(甲11,乙1の1~3,乙2の1~3,乙9,弁論の全趣旨)

  (3) 本件マンションの管理規約の変更等

   ア 本件管理組合が定めた管理規約(以下「本件管理規約」という。)12条1項は,「区分所有者は,その専有部分を住宅として使用するものとし,他の用途に供してはならない。」と規定している。(甲1)

   イ 本件管理組合は,平成28年,o消防署から,本件マンション内の住戸のうち福祉施設が運営されている本件各住戸には自動火災報知設備の設置が必要であるとの指摘を受けた。本件管理組合は,被告に対し,同年6月1日付け書面により,本件各住戸において福祉施設を運営することは本件管理規約12条1項に違反するとして,平成29年5月31日までに本件各住戸から退去するよう求めた。被告は,本件管理組合に対し,平成28年7月7日付け書面により,本件各住戸の使用は本件管理規約に違反しないとして,上記要求に応じない旨を通知した。(甲5,6,32)

   ウ 本件管理組合は,平成28年11月19日,通常総会を開催し,本件管理規約に専有部分を民泊に供することの禁止(本件管理規約12条の2),専有部分をシェアハウスに供することの禁止(同12条の3),専有部分をグループホームに供することの禁止(同12条の4)及び専有部分を特定防火対象物となる用途に供することの禁止(同12条の5)の各規定を追加する旨の議案の審議を行った。その結果,上記各議案は,いずれも,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成により可決された。上記改正後の本件管理規約の定め(抜粋)は,別紙管理規約のとおりである。(甲1の1・2,甲38)

   エ 本件管理組合は,被告に対し,平成29年6月21日付け書面により,本件各住戸の使用を速やかに停止するよう求めた。被告は,本件管理組合に対し,同年7月6日付け書面により,本件各住戸の使用は本件管理規約に違反しないとして,上記要求に応じない旨を通知した。(甲7,8)

  (4) 訴訟提起等に関する決議

   ア 本件管理規約68条1項は,「区分所有者または占有者が建物の保存に有害な行為その他の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合またはその行為をするおそれがある場合には,区分所有法第57条から第60条までの規定に基づき必要な措置をとることができる。」と規定し,同条2項は,「前項,法令,規約または使用細則もしくは総会の決議の違反者に対し,訴訟等の法的措置によることとした場合,その者に対して弁護士費用その他の法的措置に要する費用について実費相当額を請求することができる。」と規定している。(甲1の1・2)

   イ 本件管理組合は,平成30年4月21日,臨時総会を開催した。この臨時総会において,被告に対して本件各住戸をグループホームとして使用する行為の停止を求めて訴訟を提起すること並びに民事調停の申立てに要した下記の弁護士費用等及び本件訴訟の提起に要する下記の弁護士費用等を請求することの承認を求めることを内容とする「共同利益背反行為の停止請求訴訟に関する件」と題する議案の審議が行われた。同議案は,賛成組合員数168名,賛成議決権数182個,反対組合員数3名,反対議決権数3個,棄権組合員数4名,棄権議決権数4個となり,区分所有者及び議決権の過半数の賛成で可決された(以下「本件決議」という。)。(甲9)

    (ア) 民事調停に要した弁護士費用等

     a 着手金 16万2000円

     b 印紙代 6500円

     c 郵券代 530円

     d 登記事項証明書代 600円

    (イ) 訴訟提起に要する弁護士費用等

     a 着手金(依頼時) 21万6000円

     b 報酬金(終了時) 43万2000円

     c 実費 印紙代,郵券代等(数万円程度)

 2 争点及び争点に関する当事者の主張

(1)    争点1(被告が本件各住戸をグループホームとして使用することが本件管理規約12条1項に違反する行為であるかどうか)

第2部 コーポレートガバナンスに関する改正

第3章 監査等委員会設置会社の新設

 

(1) 監査等委員会設置会社の新設

新たな機関設計として、3名以上の取締役から成り、そのうち過半数は社外取締役である監査等委員会を置く、監査等委員会設置会社が創設されました(2条第11の2、331条第3項、第6項)。監査等委員会設置会社は、社外取締役を積極的に活用すること及び取締役会による業務執行者の監督を強化することを目的としており、定款で定めることにより、株式会社であれば設置することができます(326条第2項)。

監査等委員会設置会社では、監査等委員会、取締役会及び会計監査人の設置が必須とされていますが、監査役は設置することができません(会327条第1項、第4項、第5項)。そして、監査等委員会は取締役の業務執行を監督する立場にあるため、監査等委員である取締役は業務を執行することはできません(会331条第3項)。また、監査等委員は株主総会において、取締役の選任等について意見を述べることができるとされています(342条の2第1項・第4項)。

なお、常勤の監査等委員を設置した場合には、事業報告においてその旨を記載することになります(施行規則第121条10号)。

 

上場会社における従来の主な機関設計は①監査役会設置会社及び②委員会等設置会社の2パターンでしたが、改正後の主な機関設計は、①監査役会設置会社、②指名委員会等設置会社(従来の委員会等設置会社から名称変更されました)及び③監査等委員会等設置会社の3パターンになります。

 

(2) 社外取締役等の要件の見直し

改正会社法においては、社外取締役及び社外監査役になれない者の人的な範囲を拡大(会社、子会社だけでなく、親会社や兄弟会社の業務執行者等、会社の業務執行者等の近親者を追加)する一方で、過去に取締役等であった場合の期間制限が設けられました。社外取締役等の具体的な要件は以下のとおりです。

 

① 社外取締役(2条15号)

イ          会社または子会社の業務執行取締役等(※)ではなく、就任前10年間その会社または子会社の業務執行取締役等でなかったこと

ロ          就任前10年以内にその会社または子会社の取締役、会計参与又は監査役であった者(業務執行取締役等は除く)については、その就任前10年間業務執行取締役等でなかったこと

ハ          現在親会社の取締役、使用人等でないこと

ニ          現在親会社の子会社等(兄弟会社)の業務執行取締役等でないこと

ホ          当該会社の取締役等の配偶者または2親等以内の親族でないこと

※ 業務執行取締役等とは、(ⅰ) 代表取締役、(ⅱ)代表取締役以外の取締役であり取締役会の決議によって選定された取締役会設置会社の業務を執行する取締役、(ⅲ)当該株式会社の業務を執行したその他の取締役、をいいます。

 

② 社外監査役(会2条16号)

イ          就任前10年間その会社または子会社の取締役等でなかったこと

ロ          就任前10年以内にその会社または子会社の監査役であった者については、その就任前10年間業務執行取締役等でなかったこと

ハ          現在親会社の取締役、監査役等でないこと

ニ          現在親会社の子会社等(兄弟会社)の業務執行取締役等でないこと

ホ          当該会社の取締役等の配偶者または2親等以内の親族でないこと

(3) 社外取締役を置くことが相当でない理由の開示

社外取締役の設置はコーポレート・ガバナンスを強化するという観点からも重視されている事項です。改正会社法では、社外取締役を置いていない場合、定時株主総会において「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならないとされており(327条の2)、具体的には事業報告に「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載することになります(施行規則124条第2項)。また、社外取締役の候補者を含まない取締役の選任議案を株主総会に提出するときは、株主総会参考資料に「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載することになります(施行規則74条の2第1項)。

 

(4) 会計監査人の独立性の強化

従来、会計監査人の選解任等の議案は取締役又は取締役会が提出するものとされていましたが、会計監査人の独立性をより強化するという観点から、監査役等が議案を提出するものとされました(会344条第1項)。ただし、会計監査人の報酬等については引き続き取締役または取締役会が決定します。

 

会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定権を有する機関を,取締役又は取締役会から監査役又は監査役会に変更することとして,会計監査人の独立性を強化しています。

 

 株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役又は監査役会が決定する。(第344条関係)

 

 

改正による変更点は以下のとおりです。

 

 

改正前  

改正後

会計監査人の報酬等の決定

取締役または取締役会

(監査役は同意権を有する)

 

取締役または取締役会

(従来とおり監査役は同意権を有する)

会計監査人の選任・解任・不再任の決定

取締役または取締役会

監査役(監査役会)

監査委員会

監査等委員会

 

 

 

なお、改正に伴い、監査役等が会計監査人の候補者とした理由について、株主参考書類に記載することになりました(施行規則77条第3号)。

 

監査等委員会設置会社

 

 (1) 監査等委員会の設置

 

  ① 株式会社は、定款の定めによって、監査等委員会を置くことができる。(第326条第2項関係)

 

  ② 監査等委員会設置会社には、取締役会及び会計監査人を置かなければならない。監査等委員会設置会社は、監査役を置いてはならない。指名委員会等設置会社は、監査等委員会を置いてはならない。(第327条第1項第3号・第4項~第6項関係)

 

 (2) 監査等委員である取締役の選任等

 

  ① 監査等委員である取締役は、それ以外の取締役とは区別して、株主総会の決議によって選任しなければならない。(第309条第2項第7号、第329条第2項、第342条の2第1項~第3項、第344条の2関係)

 

  ② 監査等委員である取締役は、3人以上で、その過半数は、社外取締役でなければならない。監査等委員は、監査等委員会設置会社又はその子会社の業務執行者等を兼ねることができない。(第331条第3項・第6項関係)

 

  ③ 監査等委員会設置会社においては、取締役の任期は、監査等委員である取締役については選任後2年以内に、それ以外の取締役については選任後1年以内にそれぞれ終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。(第332条第3項・第4項関係)

 

 (3) 監査等委員会の権限等

 

  ① 監査等委員会は、次に掲げる職務を行う。(第399条の2関係)

 

   ア 取締役及び会計参与の職務の執行の監査及び監査報告の作成

 

   イ 株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容の決定

 

  ② 監査等委員会が選定する監査等委員は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対し、その職務の執行に関する事項の報告を求め、又は監査等委員会設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。(第399条の3関係)

 

  ③ 監査等委員は、取締役による法令違反等があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役会に報告しなければならない。(第399条の4関係)

 

  ④ 監査等委員は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものについて法令違反等があると認めるときは、その旨を株主総会に報告しなければならない。(第399条の5関係)

 

  ⑤ 監査等委員は、取締役が法令違反等の行為をする場合等において、当該行為によって当該監査等委員会設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。(第399条の6関係)

 

  ⑥ 監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の選解任等について監査等委員会の意見を述べることができる。(第342条の2第4項関係)

 

  ⑦ 監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。(第361条第6項関係)

 

  ⑧ 取締役(監査等委員であるものを除く。)との間の利益相反取引について、監査等委員会の承認を受けたときは、取締役の任務懈怠の推定規定は適用しない。(第423条第4項関係)

 

 (4) 監査等委員会の運営

 

  招集権者、招集手続等の監査等委員会の運営について、指名委員会等設置会社の監査委員会の運営に関する規定に相当する規定を置く。(第399条の8~第399条の12関係)

 

 (5) 監査等委員会設置会社の取締役会の権限等

 

  ① 監査等委員会設置会社の取締役会は、次に掲げる職務を行う。(第399条の13第1項~第3項関係)

 

   ア 経営の基本方針その他監査等委員会設置会社の業務執行の決定

 

   イ 取締役の職務の執行の監督

 

   ウ 代表取締役の選定及び解職

 

  ② 監査等委員会設置会社の取締役会は、原則として、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。取締役の過半数が社外取締役である場合又は定款の定めがある場合には、一定の事項を除き、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができる。(第399条の13第4項~第6項関係)

 

  ③ 取締役会の招集権者の定めがある場合であっても、監査等委員会が選定する監査等委員は、取締役会を招集することができる。(第399条の14関係)

 

 (6) その他の規定の整備

 

  監査等委員会設置会社制度の創設に伴い、改正前の「委員会設置会社」の呼称を「指名委員会等設置会社」とする。(第2条第12号等関係)

 

 

訴訟行為の無効を主張し得ない事例

 

 

建物贈与無効確認等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和26年(オ)第518号

【判決日付】      昭和34年3月26日

【判示事項】      訴訟行為の無効を主張し得ない事例

【判決要旨】      訴訟手続が必要的共同訴訟人の一人の死亡により中断した場合に、右死亡者について受継手続をなすべき者が他の共同訴訟人の中に在りながら何らその手続をとらないままに控訴申立を始め控訴審における一切の訴訟行為をなした場合においては、共同訴訟人らは上告審においてその訴訟行為の無効を主張することは許されない。

【参照条文】      民事訴訟法6

             民事訴訟法208

             民事訴訟法222

             民事訴訟法1編(総則)第4章(訴訟手続)1節(口頭弁論)

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集13巻4号493頁

 

 

民事訴訟法

(共同訴訟の要件)

第三十八条 訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。

(共同訴訟人の地位)

第三十九条 共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。

(必要的共同訴訟)

第四十条 訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。

2 前項に規定する場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる。

3 第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる。

4 第三十二条第一項の規定は、第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人が提起した上訴について他の共同訴訟人である被保佐人若しくは被補助人又は他の共同訴訟人の後見人その他の法定代理人のすべき訴訟行為について準用する。

 

(訴訟手続の中断及び受継)

第百二十四条 次の各号に掲げる事由があるときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、それぞれ当該各号に定める者は、訴訟手続を受け継がなければならない。

一 当事者の死亡 相続人、相続財産の管理人、相続財産の清算人その他法令により訴訟を続行すべき者

二 当事者である法人の合併による消滅 合併によって設立された法人又は合併後存続する法人

三 当事者の訴訟能力の喪失又は法定代理人の死亡若しくは代理権の消滅 法定代理人又は訴訟能力を有するに至った当事者

四 次のイからハまでに掲げる者の信託に関する任務の終了 当該イからハまでに定める者

イ 当事者である受託者 新たな受託者又は信託財産管理者若しくは信託財産法人管理人

ロ 当事者である信託財産管理者又は信託財産法人管理人 新たな受託者又は新たな信託財産管理者若しくは新たな信託財産法人管理人

ハ 当事者である信託管理人 受益者又は新たな信託管理人

五 一定の資格を有する者で自己の名で他人のために訴訟の当事者となるものの死亡その他の事由による資格の喪失 同一の資格を有する者

六 選定当事者の全員の死亡その他の事由による資格の喪失 選定者の全員又は新たな選定当事者

2 前項の規定は、訴訟代理人がある間は、適用しない。

3 第一項第一号に掲げる事由がある場合においても、相続人は、相続の放棄をすることができる間は、訴訟手続を受け継ぐことができない。

4 第一項第二号の規定は、合併をもって相手方に対抗することができない場合には、適用しない。

5 第一項第三号の法定代理人が保佐人又は補助人である場合にあっては、同号の規定は、次に掲げるときには、適用しない。

一 被保佐人又は被補助人が訴訟行為をすることについて保佐人又は補助人の同意を得ることを要しないとき。

二 被保佐人又は被補助人が前号に規定する同意を得ることを要する場合において、その同意を得ているとき。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人弁護士三原道也の上告理由第一点について。

 上告人Aを除くその余の上告人ら及び第一審被告B、以上六名が共有者であるとの主張の下に本件不動産につきなされた原判示贈与契約の無効確認を求める本訴請求は、右共有者全員に対し合一にのみ確定すべき必要的共同訴訟と解するを相当とするところ、右Bは第一審訴訟の進行中である昭和二四年一二月五日死亡し、その訴訟代理人であつた弁護士坪池隆の代理権は第一審限りであつた為め第一審判決正本が右代理人に送達されるとともに訴訟手続は中断となり、この中断は右共有者全員についてその効力を生じたものと解すべきことは、所論のとおりであり、また、右Bには夫であるC及び実母であるD(本件上告人の一人)の両名の相続人のあること、右両者又はその他の者から右中断後何ら受継の為めの手続がとられていないこと、また、右中断中に上告人らは弁護士坪池隆に対する訴訟委任状(前示Bも委任者の一人として記載されている)とともに本件控訴状を提出の上原審における一切の訴訟行為をなし、かくして控訴棄却の判決をうけ本件上告申立に及んだものであることは本件記録に徴し明らかである。論旨は原審に提出された右委任状中Bとある部分は死者名義のものに係りそれ自体無効のものであるばかりでなく、本件控訴は右訴訟手続の中断中に右相続人らから何ら受継の手続がとられないままに提起されたものであるから無効であり、その後の原審における上告人らの訴訟行為もすべて同断であると主張するのである。

 思うに訴訟手続が必要的共同訴訟人の一人の死亡により中断となつた本件のような場合に、その中断中に他の共同訴訟人によつてなされた控訴申立その他の訴訟行為が無効に帰すべきことは所論のとおりである。しかしながら右死亡者について受継手続をなすべき者が他の共同訴訟人の中に在りながら何ら受継についての手続をとらないままに控訴申立を始め控訴審における一切の訴訟行為をなした前示のような場合においては、共同訴訟人らは上告審において自ら控訴審における自分らの訴訟行為の無効を主張することは訴訟経済上からもまた訴訟信義の上からも許されないところと解するを相当とする(大審院、昭和一四年九月一四日第一民事部判決、民集一八巻一〇九一頁以下、参照)。そしてこのことは所論委任状の中に死者の名義が記入されていたからといつて結論を異にするものではない。

 所論縷述の要旨は叙上と相容れない見解に立脚するものであつて、採るを得ない。

 なお、本訴は叙上上告人らと上告人Aとの間に合一にのみ確定することを必要とする訴訟とは解し難いから前示Bが死亡しこれに基いて訴訟手続の中断を生じても、その効力は上告人Eに及ぶ筋合ではないから、同上告人に関する限り所論は叙上と別箇の理由において採用できない。

 同第二点について。

 論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断及びこれに基いてなされた自由な事実認定を非難するだけのものであつて、結局「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号) 一号ないし三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法律の解釈に関する重要な主張を含む」ものとも認められない。

 よつて、民訴三九六条、三八四条一項、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第一小法廷