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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

無断録取された録音テープの証拠能力(肯定)

 

 

損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/昭和47年(ネ)第2220号

【判決日付】      昭和52年7月15日

【判示事項】      無断録取された録音テープの証拠能力(肯定)

【参照条文】      民事訴訟法257

             民事訴訟法311

【掲載誌】        東京高等裁判所判決時報民事28巻7号162頁

             判例タイムズ362号241頁

             判例時報867号60頁

 

 

民事訴訟法

(自由心証主義)

第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

 

重加算税のほかに刑罰を科することが憲法三九条に違反するとの主張を刑訴法四〇八条で処理した事例

 

 

              法人税法違反

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和55年(あ)第329号

【判決日付】      昭和55年10月23日

【判示事項】      重加算税のほかに刑罰を科することが憲法三九条に違反するとの主張を

刑訴法四〇八条で処理した事例

【参照条文】      国税通則法68

             法人税法159-1

             法人税法164-1

             憲法39

             刑事訴訟法408

【掲載誌】        最高裁判所裁判集刑事220号19頁

             税務訴訟資料119号1761頁

 

 

国税通則法

(重加算税)

第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

2 第六十六条第一項(無申告加算税)の規定に該当する場合(同項ただし書若しくは同条第七項の規定の適用がある場合又は納税申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

3 前条第一項の規定に該当する場合(同項ただし書又は同条第二項若しくは第三項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者が事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づきその国税をその法定納期限までに納付しなかつたときは、税務署長又は税関長は、当該納税者から、不納付加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る不納付加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を徴収する。

4 前三項の規定に該当する場合において、これらの規定に規定する税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されたものに基づき期限後申告書若しくは修正申告書の提出、更正若しくは第二十五条(決定)の規定による決定又は納税の告知(第三十六条第一項(納税の告知)の規定による納税の告知(同項第二号に係るものに限る。)をいう。以下この項において同じ。)若しくは納税の告知を受けることなくされた納付があつた日の前日から起算して五年前の日までの間に、その申告、更正若しくは決定又は告知若しくは納付に係る国税の属する税目について、無申告加算税等を課され、又は徴収されたことがあるときは、前三項の重加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、これらの規定に規定する基礎となるべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

 

 

法人税法

第五編 罰則

第百五十九条 偽りその他不正の行為により、第七十四条第一項第二号(確定申告)に規定する法人税の額(第六十八条(所得税額の控除)又は第六十九条(外国税額の控除)の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした法人税の額)、第八十九条第二号(退職年金等積立金に係る確定申告)(第百四十五条の五(申告及び納付)において準用する場合を含む。)に規定する法人税の額若しくは第百四十四条の六第一項第三号若しくは第四号(確定申告)に規定する法人税の額(第百四十四条(外国法人に係る所得税額の控除)において準用する第六十八条の規定又は第百四十四条の二(外国法人に係る外国税額の控除)の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同項第三号又は第四号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした法人税の額)若しくは第百四十四条の六第二項第二号に規定する法人税の額(第百四十四条において準用する第六十八条の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算を同条の規定を適用しないでした法人税の額)につき法人税を免れ、又は第八十条第十項(欠損金の繰戻しによる還付)(第百四十四条の十三第十三項(欠損金の繰戻しによる還付)において準用する場合を含む。)の規定による法人税の還付を受けた場合には、法人の代表者(人格のない社団等の管理人及び法人課税信託の受託者である個人を含む。以下第百六十二条(偽りの記載をした中間申告書を提出する等の罪)までにおいて同じ。)、代理人、使用人その他の従業者(当該法人が通算法人である場合には、他の通算法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者を含む。第百六十三条第一項(両罰規定)において同じ。)でその違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 前項の免れた法人税の額又は同項の還付を受けた法人税の額が千万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、千万円を超えその免れた法人税の額又は還付を受けた法人税の額に相当する金額以下とすることができる。

3 第一項に規定するもののほか、第七十四条第一項、第八十九条(第百四十五条の五において準用する場合を含む。)又は第百四十四条の六第一項若しくは第二項の規定による申告書をその提出期限までに提出しないことにより、第七十四条第一項第二号に規定する法人税の額(第六十八条又は第六十九条の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした法人税の額)、第八十九条第二号(第百四十五条の五において準用する場合を含む。)に規定する法人税の額又は第百四十四条の六第一項第三号若しくは第四号に規定する法人税の額(第百四十四条において準用する第六十八条の規定又は第百四十四条の二の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同項第三号又は第四号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした法人税の額)若しくは第百四十四条の六第二項第二号に規定する法人税の額(第百四十四条において準用する第六十八条の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算を同条の規定を適用しないでした法人税の額)につき法人税を免れた場合には、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

4 前項の免れた法人税の額が五百万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、五百万円を超えその免れた法人税の額に相当する金額以下とすることができる。

 

 

憲法

第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 

 

 

       主   文

 

 本件各上告を棄却する。

 

       理   由

 

 弁護人田野寿の上告趣意のうち、重加算税のほかに刑罰を科することが憲法三九条に違反するという点は、当裁判所大法廷判決(昭和二九年(オ)第二三六号同三三年四月三〇日大法廷判決・民集一二巻六号九三八頁、なお、同四三年(あ)第七一二号同四五年九月一一日第二小法廷判決・刑集二四巻一〇号一三三三頁参照。)の趣旨に照らし、その理由のないことが明らかであり、その余の点は、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

 よつて、同法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

  昭和五五年一〇月二三日

    最高裁判所第一小法廷

本件は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)2条5項に定める性風俗関連特殊営業を行う原告が、「持続化給付金給付規程(中小法人等向け)」に基づく給付金(以下「持続化給付金」という。)及び「家賃支援給付金給付規程(中小法人等向け)」に基づく給付金(以下「家賃支援給付金」といい、持続化給付金と併せて「本件各給付金」という。)について、性風俗関連特殊営業を行う事業者に給付しない旨の上記各規程の定め(以下「本件各不給付規定」という。)は憲法14条1項に違反しており無効であるなどと主張して、前記第1の各請求を行う事案である。

 

 

持続化給付金等支払請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/令和2年(行ウ)第455号

【判決日付】      令和4年6月30日

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

       主   文

 

 1 本件訴えのうち、確認請求に係る部分をいずれも却下する。

 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は原告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 1 主位的請求1

  (1) 被告国は、原告に対し、296万8000円及びこれに対する令和2年10月31日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

  (2) 被告国は、原告に対し、150万円及びこれに対する令和2年12月19日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

 2 主位的請求2

  (1) 被告Aは、原告に対し、200万円及びこれに対する令和2年10月31日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

  (2) 被告Bは、原告に対し、96万8000円及びこれに対する令和2年10月31日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

 3 主位的請求1(1)に対する1次的予備的請求(以下「予備的請求1」という。)

  (1) 被告国は、原告が令和2年9月8日付けでした持続化給付金の給付に係る申請に対し、給付額を200万円と決定せよ。

  (2) 被告国は、原告が令和2年9月8日付けでした家賃支援給付金の給付に係る申請に対し、給付額を96万8000円と決定せよ。

 4 主位的請求1(1)に対する2次的予備的請求(以下「予備的請求2」という。)

  (1) 原告が令和2年9月8日付けでした持続化給付金の給付に係る申請に基づき、原告が、被告国との間において、持続化給付金給付規程(中小法人等向け)9条1項に定める贈与契約上の地位を有することを確認する。

  (2) 原告が令和2年9月8日付けでした家賃支援給付金の給付に係る申請に基づき、原告が、被告国との間において、家賃支援給付金給付規程(中小法人等向け)10条1項に定める贈与契約上の地位を有することを確認する。

 5 主位的請求1(1)に対する3次的予備的請求(以下「予備的請求3」という。)

  (1) 原告が令和2年9月8日付けでした持続化給付金の給付に係る申請について、原告が持続化給付金給付規程(中小法人等向け)8条1項3号により不給付とされない地位にあることを確認する。

  (2) 原告が令和2年9月8日付けでした家賃支援給付金の給付に係る申請について、原告が家賃支援給付金給付規程(中小法人等向け)9条1項3号により不給付とされない地位にあることを確認する。

第2 事案の概要

 1 本件は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)2条5項に定める性風俗関連特殊営業を行う原告が、「持続化給付金給付規程(中小法人等向け)」に基づく給付金(以下「持続化給付金」という。)及び「家賃支援給付金給付規程(中小法人等向け)」に基づく給付金(以下「家賃支援給付金」といい、持続化給付金と併せて「本件各給付金」という。)について、性風俗関連特殊営業を行う事業者に給付しない旨の上記各規程の定め(以下「本件各不給付規定」という。)は憲法14条1項に違反しており無効であるなどと主張して、前記第1の各請求を行う事案である。

   主位的請求1(1)は、原告と被告国との間には、原告がした本件各給付金の申請(以下「本件各申請」という。なお、本件各申請が適式にされたものか否かについては争いがある。)により本件各給付金の贈与契約(以下「本件各贈与契約」という。)が成立したとして、被告国に対し、本件各贈与契約に基づき、持続化給付金200万円及び家賃支援給付金96万8000円並びにこれらに対する令和2年10月31日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

   主位的請求1(2)は、被告国が本件各不給付規定を定めるなどしたことは違法であるとして、被告国に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づく損害賠償請求として、損害金150万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和2年12月19日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払を求めるもの(以下「本件国賠請求」という。)である。

   主位的請求2(1)は、原告と被告Aとの間には持続化給付金の受領委任契約が成立したとして、被告Aに対し、同契約に基づき、持続化給付金200万円及びこれに対する令和2年10月31日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

   主位的請求2(2)は、原告と被告Bとの間には家賃支援給付金の受領委任契約が成立したとして、被告Bに対し、同契約に基づき、家賃支援給付金96万8000円及びこれに対する令和2年10月31日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

   予備的請求1は、主位的請求1(1)に対する1次的予備的請求として、被告国に対し、本件各贈与契約に基づき、原告に対する持続化給付金の給付額を200万円、家賃支援給付金の給付額を96万8000円とする各決定をするよう求めるものである。

   予備的請求2は、主位的請求1(1)に対する2次的予備的請求として、被告国との間で、原告が本件各贈与契約上の地位を有することの確認を求めるものであり、予備的請求3は、主位的請求1(1)に対する3次的予備的請求として、被告国との間で、原告が本件各不給付規定により本件各給付金を不給付とされない地位にあることの確認を求めるものである(以下、予備的請求2及び3に係る訴えを「本件各確認の訴え」という。)。

 2 関係法令等

  (1) 本件各給付金について

   ア 持続化給付金は、令和2年4月7日付けで閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(甲6)において、「特に厳しい状況にある幅広い業種・事業形態の中堅・中小・小規模事業者、フリーランスを含む個人事業主に対して、万全のセーフティネットを構築すべく、事業の継続を支え、事業全般に広く使える、再起の糧とするための新たな給付金制度」として創設することとされたものである。同月20日付けで閣議決定され、同月30日付けで成立した令和2年度補正予算(第1号)(甲7)で予算措置が講じられたことを受け、中小法人等向けと個人事業者向けの2つの持続化給付金給付規程が定められた。これらの規程はその後数次にわたり改正されているところ、本件に関係する持続化給付金給付規程は、中小法人等向けで、同年8月1日付けのもの(以下「持続化給付金規程」という。)である。

   イ 家賃支援給付金は、与党賃料支援PTが令和2年5月8日付けで、新型コロナウイルス感染症による「突然の需要蒸発により売上高の急減に晒されている多くの企業・事業者の存続・継続のためには何よりも固定経費負担を減らす政策が求められている」として、「売上げが大幅に落ち込むなど特に厳しい状況にある中堅・中小企業者・小規模事業者・個人事業主のテナントに対し、持続化給付金に加え、無利子・無担保融資の元本返済にも活用できる『特別家賃支援給付金』を給付」するよう政府に求めたのを受けて(甲12)、創設することとされたものである。同月27日付けで閣議決定され、同年6月12日に成立した令和2年度補正予算(第2号)(甲13)で予算措置が講じられたことを受け、中小法人等向けと個人事業者等向けの2つの家賃支援給付金給付規程が定められた。これらの規程はその後数次にわたり改正されているところ、本件に関係する家賃支援給付金給付規程は、中小法人等向けで、同年8月26日付けのもの(以下「家賃支援給付金規程」といい、持続化給付金規程と併せて「本件各規程」という。)である。

   ウ 本件各規程の定め

     本件に関係する本件各規程の定めは別紙3-1・2記載のとおりであり(甲1、2。同別紙で使用した略語は本文においても用いる。)、本件各不給付規定は持続化給付金規程8条1項3号及び家賃支援給付金規程9条1項3号に定められている。

  (2) 風営法の定め

   ア 風営法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とするものである(1条)。

   イ 風俗営業とは、2条1項各号のいずれかに該当する営業をいい、設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業(同項1号)や、設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業(同4号)などがこれに当たるとされている。

   ウ 性風俗関連特殊営業とは、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業及び無店舗型電話異性紹介営業をいう(2条5項)。接客業務受託営業とは、専ら、2条13項各号に掲げる営業を営む者から委託を受けて当該営業の営業所において客に接する業務の一部を行うことを内容とする営業をいい(同項柱書き)、同項各号の中には、性風俗関連特殊営業のうち店舗型性風俗特殊営業が掲げられている(同項2号)。

   エ 風俗営業を営もうとする者は、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならず(3条1項)、4条にはその許可の基準が定められている。同条1項は営業の許可を受けようとする者が同項各号のいずれかに該当するときは許可をしてはならないという人的欠格事由について定め、同条2項1号は営業所の構造・設備について、風俗営業の種別に応じて国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合しないときは許可をしてはならないという物的欠格事由について定め、同項2号は営業所が、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内にあるときは許可をしてはならないという営業制限地域について定めている。

     また、12条以下では、許可を受けて風俗営業を営む者の遵守事項等について定めている。

   オ 性風俗関連特殊営業については上記エのような許可制はとられておらず、性風俗関連特殊営業を営もうとする者は、営業所ないし事務所の所在地を管轄する公安委員会に所定の届出書を提出すれば足りることとされ(27条1項、31条の2第1項、31条の7第1項、31条の12第1項、31条の17第1項)、これに対して公安委員会は届出書の提出があった旨を記載した書面を交付することとされている(27条4項、31条の2第4項、31条の7第2項、31条の12第2項、31条の17第2項)。その上で、店舗型性風俗特殊営業について、営業禁止区域(28条1項)、営業禁止地域(28条2項)、営業時間制限(28条4項)、広告宣伝規制(28条5項、8項、9項)及び禁止行為(28条11項、12項)等の各種規制が定められており、他の性風俗関連特殊営業についても、その性質に応じて上記各条項が準用されているところ(31条の3、31条の8、31条の13、31条の18)、例えば、上記営業禁止地域については、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業の受付所営業(31条の2第4項参照)及び店舗型電話異性紹介営業に関し、都道府県は、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があるときは、条例により、地域を定めて、上記各営業を営むことを禁止することができるとされている(28条2項、31条の3第2項、31条の13第1項)。

   カ 以上のとおり、性風俗関連特殊営業に対しては風俗営業と異なる規制が設けられているところ、このような規制が導入されたのは昭和59年法律第76号による改正(以下「昭和59年改正」という。)時である。

     なお、昭和59年改正時は「風俗関連営業」との名称であったのが、平成10年法律第55号による改正(以下「平成10年改正」という。)時に「性風俗特殊営業」と改められ、平成13年法律第52号による改正時に現在の「性風俗関連特殊営業」に改められたものである。

  (3) 中小企業庁設置法の定め

    本件各給付金は中小企業庁が所管するところ、中小企業庁設置法は、健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、及び発達させ、経済力の集中を防止し、かつ、企業を営もうとする者に対し、公平な事業活動の機会を確保するものであるのに鑑み、中小企業を育成し、及び発展させ、かつ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立することを目的とし(1条)、中小企業庁は、上記目的を達成することを任務とするものと定めている(3条)。

 3 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに掲記証拠〔書証は特記しない限り枝番を含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

  (1) 当事者

   ア 原告は、性風俗関連特殊営業のうち、無店舗型性風俗特殊営業である「人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの」(風営法2条7項1号)を行う株式会社である(弁論の全趣旨)。

   イ 被告Aは、令和2年9月当時、持続化給付金に係る事務局業務を受託していたものである(甲9)。

   ウ 被告Bは、令和2年9月当時、家賃支援給付金に係る事務局業務を受託していたものである(甲14)。

  (2) 本件各申請に至る経緯

   ア 令和2年5月1日、持続化給付金の申請要領、申請規程及び給付規程が公表され、同日、持続化給付金の申請受付が開始された(弁論の全趣旨)。

   イ 令和2年7月4日、家賃支援給付金の申請要領、申請規程及び給付規程が公表され、同月14日、家賃支援給付金の申請受付が開始された(弁論の全趣旨)。

   ウ 本件各給付金の申請要領(甲11、15)には、「事務局が定める方法」(持続化給付金規程6条、家賃支援給付金規程7条)として、それぞれ申請用のウェブサイト(以下「本件各ウェブサイト」という。)から申請する方法のみを定めているところ、本件各ウェブサイトでは、性風俗関連特殊営業を行う事業者に該当しないこと等の宣誓事項(持続化給付金規程7条、家賃支援給付金規程8条)にチェックをして宣誓しなければ申請の手続を完了することができない仕組みとなっていた(甲29、30)。

   エ 原告は、令和2年9月8日、持続化給付金事務局及び家賃支援給付金事務局にそれぞれ宛てて本件各給付金を申請する旨を記載した同日付けの書面(甲18の1、19の1)を中小企業庁の所在地に発送し、同月9日、これらの書面はいずれも中小企業庁に到達した(甲18の2、19の2。本件各申請)。また、原告は、同日、持続化給付金事務局及び家賃支援給付金事務局にそれぞれ宛てて本件各給付金の申請に必要な書類を中小企業庁の所在地に発送し、これらの書類は、同月10日、中小企業庁に到達した(甲20、弁論の全趣旨)。

  (3) 原告は、令和2年11月30日、本件訴えを提起した(顕著な事実)。

 4 争点及び当事者の主張

   本件の主たる争点は以下の(1)から(5)までのとおりであり、各争点に関する当事者の主張の要旨は、別紙4記載のとおりである。

  (1) 本件各不給付規定の憲法14条1項等への適合性

  (2) 本件各贈与契約に基づく請求の当否

  (3) 本件国賠請求の当否

  (4) 被告A及び被告Bに対する各請求の当否

  (5) 本件各確認の訴えの適法性

第3 当裁判所の判断

 1 争点(1)(本件各不給付規定の憲法14条1項等への適合性)について

  (1) 憲法14条1項に違反するか否かの判断枠組みについて

   ア 憲法14条1項は、法の下の平等を定めているが、同規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら同規定に違反するものではない(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁参照)。そして、このことは、法律上の取扱いか事実上の取扱いかで異なるものではなく、国が行う給付行政において、給付金等の給付基準を法令ではなく内部規則により定める場合についても、同様に当てはまるものというべきである。

   イ 本件各給付金のような給付行政は、限られた財源の中で行われるものであるから、給付の対象者をどのように選別して、各対象者にどの程度の給付をすべきか等の給付基準の策定に当たっては、当該給付に係る政策目的の実現に向けた効果的、効率的なものとする必要があり、そのためには、潜在的な対象者の間に存する事実関係上の差異に着目することに加え、類似の目的を有する他の施策とのすみ分けや均衡についても考慮すべきものである。また、当該給付の実施が他の政策目的の実現を阻害することとならないように、他の施策との整合性についても考慮することが必要である。さらに、給付行政もまた公金の支出である以上、その制度設計に際しては、政治的中立性や政教分離の原則への配慮を要することはもちろん、当該支出について最終的に納税者の理解を得られるものとなるよう一定の配慮をすることも許されるものというべきである。

     このように、給付基準の策定に当たっては様々な政策的・政治的な考察に基づく検討を要するものといえるから、給付基準の策定は当該給付行政の実施主体たる行政庁の合理的な裁量判断に委ねられているものというべきである。特に、本件各給付金のように、その目的が中小事業者らの事業の継続を支えるという社会経済的なものである場合には、給付の費用対効果を判断するに当たっても、例えば当該事業への参入及び撤退の難易並びに廃業により生ずることが予想される国民経済上の不利益の程度といった面を考慮することも必要となるなど、その裁量の範囲は広範なものになるといわざるを得ない。

     以上によれば、本件各不給付規定が、性風俗関連特殊営業を行う事業者について他の事業者と区別して本件各給付金の給付対象から除外していることが憲法14条1項に違反するか否かについては、そのような区別をする目的に合理的な根拠があり、かつ、その区別の具体的内容が上記の目的との関連において不合理なものではなく、行政庁の合理的な裁量判断の範囲を超えるものではないと認められる場合には、当該区別は、合理的理由のない差別に当たるとはいえず、憲法14条1項に違反するということはできないものと解するのが相当である。

   ウ 以上に説示するところに対し、原告は、①本件各不給付規定は特定の職業に対する地位の格下げ・スティグマの押し付けにとどまらず、その助長・再生産という深刻な効果をもたらすこと、②本件各不給付規定の合理性を検討するに当たっては、高度の専門技術的な考察が介在する余地はなく、政府の裁量は極めて狭いこと、③本件各不給付規定は、職業の選択・遂行の自由の制約につながるもので、特に職業それ自体を否定するような規定であるから、精神的自由の場合に準じて判断する必要があること、④本件各給付金は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という緊急事態の下における中小企業の事業を営む国民一人一人の日常生活を維持するという社会保障的給付の性格を有するものであることなどを理由として、本件各不給付規定の合憲性については厳格な審査が必要であり、本件各不給付規定は、これを定めるについてやむにやまれぬ事由がない限り、合理的な根拠なく差別的取扱いをするものとして憲法14条1項に違反する旨主張する。

     しかしながら、上記①については、原告の主張するような事情の有無及び当否は、当該区別について、その目的の合理性や同目的との合理的関連性の有無を検討する際に考慮すべきであるのは格別、前記判断枠組みを左右すべき事情とまでは解することができない。上記②については、高度の専門技術的な考察の要否のみが裁量判断の範囲の広狭を決する決め手となるものではないし、本件についていえば、上記イのとおり、給付基準の策定に当たって様々な政策的・政治的な考察に基づく検討を要する以上、行政庁に広範な裁量判断が許されているものといわざるを得ない。上記③については、本件各給付金は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う売上の急減に直面する中小法人等や個人事業主に対して、その事業の継続を下支えするという目的のもと、一定の額の給付金(中小法人等に対しては、持続化給付金につき事業収入の減少分について200万円を上限とし、家賃支援給付金につき6か月分の家賃相当額の一部について600万円を上限とするもの。)を給付するものであって、本件各給付金を給付しないことが、特定の職業の選択や遂行を直接禁止するものでないことはもとより、実質的にこれと同等の効果をもたらすものということもできない。また、上記④については、本件各給付金は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けての経済対策の一環として事業の継続を下支えするために中小法人等や個人事業主に給付されるものであって、当該中小法人等に雇用されるなどした個人の生活保障を直接の目的とするものではない。確かに、事業の継続を支えることは事業者やその従業員の生活保障に資するものであるといえるが、こうした経済対策は、各種施策を総合的に実施することにより国民経済を支え、ひいては個人の生活を支えることを目的とするものであるから(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策〔関係法令等(1)ア〕においても、本件各給付金や資金繰り対策等の事業継続のための支援に加え、雇用調整助成金の助成率の引上げや対象の拡充、生活困窮世帯や子育て世帯に対する給付金の給付、社会保険料の減免等の種々の方策が実施されており〔甲6〕、これらの制度の中には性風俗関連特殊営業に係る事業者やその被用者も対象とするものがある。)、こうした経済対策の一環として個々の給付金の給付基準を策定する際における行政庁の裁量の範囲については、個人の生活保障を直接の目的とした社会保障給付における給付基準の策定の場合と比較しても、より広範なものになるといわざるを得ない。

     以上のとおり、本件各不給付規定の合憲性については厳格な審査が必要であるとする原告の上記主張は、その前提において採用することができない。

   エ よって、以下では上記の判断枠組みに従って本件各不給付規定の合理性について検討する。

  (2) 風営法上の性風俗関連特殊営業の位置付けについて

   ア 被告は、本件各不給付規定の根拠について、風営法上、性風俗関連特殊営業に対しては、それが性を売り物とする本質的に不健全な営業であることを前提に種々の規制措置が講じられていることから、性風俗関連特殊営業を行う事業者に対し、国庫からの支出により事業の継続の下支えを目的とした本件各給付金を給付することには、国民の理解を得ることが困難な点にある旨主張する。そこで、まず、風営法上の性風俗関連特殊営業の位置付けについて検討する。

   イ 風営法は、「飲酒」、「射幸」、「性」といった人間の本能的欲望に起因する歓楽性・享楽性が過度にわたるおそれのある営業を規制等の対象とするものである。これらの営業については、その歓楽性・享楽性が本能的欲望に起因するものであるがゆえに完全に禁圧することは不可能であり、また不相当でもある一方で、これを放任すれば、人間の理性を麻痺させ、歓楽性・享楽性に歯止めがきかなくなるなどして、善良の風俗や清浄な風俗環境を害し、判断能力の未熟な年少者の健全な育成が害されるなどの弊害が生じ得るために各種規制等の対象とされているものと解される。

     風営法は、規制の対象とする営業として風俗営業と性風俗関連特殊営業を区分して定めているところ、風俗営業とは主として「飲酒」や「射幸」に関連するものであり、性風俗関連特殊営業は「性」に関連するものである(関係法令等(2)イ、ウ参照)。そして、風営法は、その目的規定(関係法令等(2)ア)においても明らかなとおり、風俗営業については、規制を課すことと同時にその健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることをも目的とするのに対し、性風俗関連特殊営業については、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずる対象とはされておらず、専ら規制の対象とされているものである。すなわち、風俗営業については許可制が採用され、風俗営業を営もうとする者の人的欠格事由、営業所に係る物的欠格事由及び営業制限地域等の許可の基準が定められ、同基準に適合しない場合には公安委員会は営業の許可をしてはならないこととされ、加えて、許可を受けて風俗営業を営む者について具体的な遵守事項等を定めることによって、風俗営業に求められる適正な業務等の水準が示され、その水準に誘導することによる風俗営業の健全化が図られている(関係法令等(2)エ)。これに対し、性風俗関連特殊営業については届出制が採用され、性風俗関連特殊営業を営もうとする者は公安委員会に所定の届出書を提出すれば足り、これに対して公安委員会は届出書の提出があった旨を記載した書面を交付することとされているのみであり(関係法令等(2)オ)、性風俗関連特殊営業については、風俗営業における許可の基準や遵守事項のように、その健全化を図るために当該営業に求められる適正な業務等の水準というものは示されていない。もとより、このことは、性風俗関連特殊営業に対する規制が、風俗営業に対する規制より緩和されているということを意味するものではない。性風俗関連特殊営業についても各種規制が課されているところ、例えば場所的規制についていえば、都道府県が条例で風俗営業に係る営業制限地域を定めるに当たっては政令で一定の基準が定められているのに対し、都道府県が条例で店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業の受付所営業、店舗型電話異性紹介営業の営業禁止地域を定めるに当たっては格別の基準は定められておらず、各都道府県の判断によって、より広範な地域において営業自体を禁止することが可能とされている(関係法令等(2)エ、オ)。

   ウ 以上のとおり、性風俗関連特殊営業は、風営法において風俗営業と異なる法的取扱いを受けているところ、この点について、昭和59年改正に係る法律案の国会での審議の際、当時の警察庁の担当者は「風俗関連営業というのはいわゆる性を売り物にした営業でございまして、これは公に許可をして認知をするという性格のものではないというふうに考えておるわけでございます。(中略)営業を営む人的な事由によってその内容が左右されることは比較的少ないというふうに考えられるわけでございまして、欠格事由を設けてそれによって営業の健全化を図るとか業務の適正化をやっていくというものにちょっとなじまないということでございます。そうでなくて、むしろ我々の方は、必要な規制を行いまして、それに違反をすれば厳正な措置をとっていくという方が望ましいのではないかという形で臨むことにしたものでございます。」、「風俗関連営業と申しますのは、その行為から規制をするのになかなかなじまないものではないかなという感じを持っておるわけでございます。(中略)そういう営業者なり従業員が行います行為そのものを対象にするのにはなじまないのではないか。したがいまして、構造をいろいろ考えてみましても、そこで行われます行為というものが構造を変えたためによくなると期待できるという形にはなかなかならないのではないかという感じを持っておる、そういう種類の営業ではなかろうかと考えておるわけでございます。したがいまして、(中略)こういう営業形態に対しましては、やはり厳しい遵守事項を設けまして、それに違反するという形のものに対しまして厳正に対処するということが適当ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。」と答弁し(乙2)、平成10年改正に係る法律案の国会審議の際にも「今回の改正で性風俗特殊営業につきましては、今委員御指摘のとおり、性を売り物とする本質的に不健全な営業で、(中略)業務の適正化あるいは営業の健全化というのは本来的になじまない営業であります。このような営業について、公の機関がその営業を営むことを禁止の解除という形での許可という形で公認することは不適当であると考えて、届け出制にし、実態を把握し、また風俗営業に比べて営業禁止区域等極めて厳しい規制をもって臨むという立て方をしておるものでございます。」と答弁している(乙3)。

   エ 上記イの風営法の定め及び上記ウの国会における政府答弁の内容をも踏まえれば、上記のような風営法上の性風俗関連特殊営業に対する法的取扱いは、その歓楽性・享楽性が人間の本能的欲望に起因するものであることに加え、我が国の国民の大多数が、性行為や性交類似行為は極めて親密かつ特殊な関係性の中において非公然と行われるべきであるという性的道義観念を多かれ少なかれ共有していることを前提として、客から対価を得て一時の性的好奇心を満たし、又は性的好奇心をそそるためのサービスを提供するという性風俗関連特殊営業が本来的に備える特徴自体がこうした大多数の国民が共有する性的道義観念に反するものであり、かつ、このような特徴は風営法が当該営業に対して営業所の構造・設備についての技術上の基準その他のいかなる条件を課したとしても変わりようのないものであることから、業務の適正化や営業の健全化といった目的になじまないとの考えに基づくものと解される。そして、以上のような性風俗関連特殊営業の本来的に備える特徴に照らして、国が、性風俗関連特殊営業に求められる適正な業務等の水準なるものを公的に示して当該水準に到達することを推奨したり、一定の水準に到達したものを許可という形で公的に認知したりすることは、上記のような大多数の国民が共有する性的道義観念にも反して相当ではないこと、他方で、こうした営業を一般的に禁止することもまた営業の自由を過度に制約し、あるいは国民に対し最小限度以上の性道徳を強制することにもなって相当ではないことから、性風俗関連特殊営業については、善良な風俗と清浄な風俗環境の保持及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止を目的として営業禁止地域等の厳格な規制を課した上で、違法行為が行われた場合には直ちに行政処分や刑事罰をもって臨めるようその実態を把握するための方策として届出制が採用されているものと考えられるのであって、こうした風営法上の性風俗関連特殊営業に対する区別には合理的な理由があるものというべきである。

     なお、上記のような性的道義観念は時代によって変遷し得るものである上、個々人によって差異があることも当然であるが、少なくとも、昭和59年改正や平成10年改正が成立し施行された当時において、性行為や性交類似行為は極めて親密かつ特殊な関係性の中において非公然と行われるべきであり、客から対価を得て一時の性的好奇心を満たし、又は性的好奇心をそそるためのサービスを提供するような営業が公の機関の公認の下に行われることは相当でないとの観念自体は大多数の国民に広く共有されていたものと推認されるところ、その後、そのような考えが大きく変容したというような事情も認め難いことからすれば、現時点においても、風営法上性風俗関連特殊営業に対して異なる取扱いをすることの合理的理由が失われたとはいえないものというほかはない。

  (3) 本件各不給付規定の合理性について

   ア 以上を前提に本件各不給付規定の合理性の有無について検討する。

     本件各給付金は、いずれも、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う訪日観光客(インバウンド)需要の蒸発や営業自粛等により売上の急減に直面する事業者に対して、その事業の継続を下支えすることを目的として給付されるものである(関係法令等(1))。

     そして、本件各規程は、本件各不給付規定を定め、性風俗関連特殊営業を行う事業者を給付対象者から除外しているところ、これは、上記(2)のとおり、性風俗関連特殊営業は、人間の本来的欲望に根差した享楽性・歓楽性を有する上、その本来的に備える特徴自体において、風営法上も国が許可という形で公的に認知することが相当でないものとされていることに鑑み、本件各給付金の給付対象とすること、すなわち、国庫からの支出により廃業や転業を可及的に防止して国が事業の継続を下支えする対象とすることもまた、大多数の国民が共有する性的道義観念に照らして相当でないとの理由によるものと解される。そして、前記(1)イのとおり、給付行政における給付基準の策定に当たっては、他の施策との整合性に加え、当該給付をすることについて大多数の国民の理解を得られるかどうかや給付の費用対効果その他の点について考慮することが必要であることからすると、上記のような本件各不給付規定の目的には、合理的な根拠があるものと認められる。

     また、本件各給付金の給付対象とすることが相当でないのは、性風俗関連特殊営業が一般的・類型的に有する上記のような特徴によるものであるから、性風俗関連特殊営業を行う事業者を一律に本件各給付金の給付対象から除外することは上記目的との関連において不合理なものではなく、行政庁の合理的な裁量判断の範囲を超えるものではないと認められる。

   イ 原告の主張について

    (ア) 原告は、本件各不給付規定は性風俗関連特殊営業に対し不健全であるというラベル付けをした上で、その地位の格下げを目的とするもので、憲法14条1項の要請に正面から反し許されない旨主張する。

      しかしながら、風営法自体が、大多数の国民が共有する性的道義観念を踏まえて、性風俗関連特殊営業を風俗営業と区分して、業務の適正化や営業の健全化といった目的になじまないものとして専ら規制の対象とする取扱いをしているものであり、当該区分に合理的理由があることは前記(2)のとおりであるところ、本件各不給付規定はそのような風営法上の性風俗関連特殊営業の位置付けを踏まえ、これとの整合性その他の観点から定められたものであることからして、本件各不給付規定自体が性風俗関連特殊営業の地位の格下げを目的として定められたものとは解されず、他に原告の主張を認めるに足りる証拠もない。よって、原告の上記主張は採用することができない。

    (イ) 原告は、性風俗関連特殊営業は適法な事業であるから、これを他の事業と別異に取り扱う合理的な理由はないと主張する。

      原告が、性風俗関連特殊営業一般が適法な事業であると主張するのであれば、それは、風営法上、所定の届出さえすれば営業を行うことが許されているという趣旨と解される。しかしながら、法律上禁止されていない事業であるからといって、直ちに国等の公的機関が公的資金を支出して支えることが相当な事業であるということにはならないのであって、このことは、本件各給付金の給付対象者が事業規模等によって限定されていたり(別紙3-1の(4)①、同3-2の(4)②)、本件各不給付規定以外にも不給付要件が定められたりしていること(別紙3-1の(8)、同3-2の(8))からも明らかである。また、原告は、性風俗関連特殊営業を行う事業者の中には関連法規を遵守し、誠実に確定申告をして納税をしているものもいるとも指摘する。しかしながら、仮に、当該事業者が、風営法や売春防止法、あるいは社会の健全な性道徳・性秩序を保護法益とする各種刑罰規定に違反していなかったとしても、それは法が刑罰等をもって国民に要求する最小限度の性道徳・性秩序に違反していないということを意味するものにすぎないのであって、そのような者の営む事業であっても、当該事業が一般的・類型的に有する特徴に着目して国等の公的機関が公的資金を支出して支える対象から外すことが相当性を有するということはあり得るものである。労働者保護に係る各種法令を遵守していることや納税の義務を適正に履行していることについても同様であり、そのことから直ちに、当該事業者の営む事業を国等の公的機関が公的資金を支出して支えることが相当であるということにはならない。

    (ウ) 原告は、性風俗関連特殊営業を行う事業者も他の事業者と同様に新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響を受けて苦しんでいるとも主張するが、これまでに説示するところに照らしても、それは本件各不給付規定の合理性を判断する際に多数検討すべき要素の一つではあっても、それだけで上記合理性を否定すべき事情であるとまではいえない。

      なお、これまでに説示するところは、飽くまで公的資金によって事業の継続を下支えするという本件各給付金について、限られた財源を効率的に活用する等の観点から、当該事業の特徴や内容に基づく区別が許容され得ることをいうものにすぎない。性風俗関連特殊営業を行う事業者やその従業員、あるいは同事業者から委託を受けて接客業務を行う事業者であっても個人として尊重され、法の下に平等な取扱いを受けるべきことは当然であり、こうした個人の生命や自由の保障について、当該個人の職業に基づく差別が許容されるものではないことはいうまでもない。

   ウ 以上によれば、本件各不給付規定が性風俗関連特殊営業を行う事業者について他の事業者と区別して本件各給付金の給付対象から除外していることは合理的理由のない差別に当たるとはいえず、憲法14条1項に違反するということはできない。

  (4) 適用違憲の主張について

    原告は、①営業自粛要請に応じて休業していたこと、②設立以来確定申告をして納税していること、③反社会的勢力とは一切関係していないこと、④関連法規を遵守して業務を行っていること、⑤人身取引や性的サービスの強要などの事情は皆無であること、⑥不当な労働搾取は一切行っておらず、セックスワーカーの安全・健康を守り、適切なサポートをしていることなどの事情があるため、本件各不給付規定は少なくとも原告に適用する限りにおいて憲法14条1項に違反し無効であると主張する。

    しかしながら、本件各不給付規定は、前記(3)のとおり、性風俗関連特殊営業が本来的に備える特徴に照らし、一般的かつ類型的に国庫からの支出により国が事業の継続を下支えする対象とするのは相当でないとの判断の下に定められたものであり、そのことが憲法14条1項に違反するものではないことはこれまでに説示したとおりである。そうすると、仮に、原告に上記各事情が存在したとしても、性風俗関連特殊営業を行う事業者である以上、原告を本件各給付金の対象としなかったことが直ちに憲法14条1項に違反するものとはいえないから、原告の上記主張もまた採用することができないものというほかはない。

  (5) 原告が主張するその余の無効事由について

   ア 原告は、本件各不給付規定は、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の禁止や平等原則等の行政法上の一般原則に違反し、無効であると主張する。

     しかしながら、本件各不給付規定による取扱いが行政庁の合理的な裁量判断の範囲を超えるものではなく、憲法14条1項に違反しないことは前記(3)のとおりであり、原告の上記主張は採用することができない。

   イ 原告は、本件各不給付規定は中小企業庁設置法の目的との間に合理的な関連性を欠くものであると主張するが、中小企業庁も国の行政機関の一つである以上、中小企業庁が実施する施策について、国の他の施策との整合性を考慮することも当然にあり得ることであって、本件各不給付規定を定めるに当たって風営法上の性風俗関連特殊営業の位置付けを考慮したことが直ちに、本件各不給付規定を無効ならしめる事情となるものではない。

  (6) 小括

    以上のとおりであるから、本件各不給付規定は、憲法14条1項や行政法上の一般原則に違反するものとはいえない。そして、他に、本件各不給付規定の有効性を否定すべきような事情もない。

 2 争点(2)(本件各贈与契約に基づく請求の当否)について

   上記1のとおり、本件各不給付規定は有効であり、その下では、性風俗関連特殊営業を行う事業者である原告は、本件各給付金の給付対象者ではないといわざるを得ないから、原告と被告国との間に本件各贈与契約が成立したとは認められない。

   そうすると、本件各贈与契約の成立を前提とする原告の被告国に対する主位的請求1(1)及び予備的請求1は、いずれも理由がない。

 3 争点(3)(本件国賠請求の当否)について

   上記1のとおり、本件各不給付規定を定めたことが違憲・違法であるとは認められず、原告が本件各給付金の給付対象とされなかったことも違憲・違法であるとは認められないから、本件各不給付規定を定めたこと又は本件各不給付規定に基づき原告に対して本件各給付金の給付をしないことに、国賠法1条1項所定の違法があるとは認められない。したがって、本件国賠請求(主位的請求1(2))は理由がない。

 4 争点(4)(被告A及び被告Bに対する各請求の当否)について

   被告A及び被告Bに対する各請求は、原告が本件各贈与契約に基づき本件各給付金を受領できる地位にあることを前提とするものであるところ、原告と被告国との間に本件各贈与契約が成立したとは認められないことは前記2のとおりであるから、被告A及び被告Bに対する各請求はいずれも理由がない。

 5 争点(5)(本件各確認の訴えの適法性)について

   本件においては、原告は、被告国に対して、本件各贈与契約に基づく本件各給付金の給付の訴えを提起することができ、現にこれを提起しているのであり、それとは別に又は当該訴えが棄却された場合に備えて、本件各贈与契約上の地位を有することや本件各不給付規定により不給付とされない地位にあることの確認を求めることが原告と被告国との間の紛争の解決にとって有効・適切であるというべき事情は見当たらないから、本件各確認の訴えは、その確認の利益を欠き不適法である。

 6 結論

   以上によれば、本件訴えのうち、本件各確認の訴えは不適法であるからいずれも却下すべきであり、原告のその余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきである。

   よって、主文のとおり判決する。

    東京地方裁判所民事第51部

        裁判長裁判官  岡田幸人

           裁判官  溝渕章展

 裁判官釜村健太は、異動のため署名押印することができない。

        裁判長裁判官  岡田幸人

 

代表取締役の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分がされた場合にその本案訴訟において会社を代表すべき者

 

 

訴訟代理人解任無効確認請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和57年(オ)第1419号

【判決日付】      昭和59年9月28日

【判示事項】      代表取締役の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分がされた場合にその本案訴訟において会社を代表すべき者

【判決要旨】      株主総会における取締役選任決議の無効確認請求訴訟を本案とする代表取締役の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分がされた場合に、本案訴訟において会社を代表すべき者は、職務の執行を停止された代表取締役ではなく、代表取締役職務代行者である。

【参照条文】      商法270-1

             商法271-1

             民事訴訟法58

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集38巻9号1121頁

 

 

民事保全法

(仮処分命令の必要性等)

第二十三条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。

3 第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。

4 第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

 

自殺させて保険金を取得する目的で被害者に命令して岸壁上から自動車ごと海中に転落させた行為が殺人未遂罪に当たるとされた事例

 

 

              公正証書原本不実記載,同行使,殺人未遂被告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/平成14年(あ)第973号

【判決日付】      平成16年1月20日

【判示事項】      自殺させて保険金を取得する目的で被害者に命令して岸壁上から自動車ごと海中に転落させた行為が殺人未遂罪に当たるとされた事例

【判決要旨】      自動車の転落事故を装い被害者を自殺させて保険金を取得する目的で,極度に畏怖して服従していた被害者に対し,暴行,脅迫を交えつつ,岸壁上から車ごと海中に転落して自殺することを執ように要求し,被害者をして,命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせていたなど判示の事実関係の下においては,被害者に命令して岸壁上から車ごと海中に転落させた行為は,被害者において,命令に応じて自殺する気持ちがなく,水没前に車内から脱出して死亡を免れた場合でも,殺人未遂罪に当たる。

【参照条文】      刑法38

             刑法199

             刑法202

             刑法203

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集58巻1号1頁

 

 

刑法

(故意)

第三十八条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

2 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。

3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

 

(殺人)

第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

 

(自殺関与及び同意殺人)

第二百二条 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

(未遂罪)

第二百三条 第百九十九条及び前条の罪の未遂は、罰する。

 

建物賃貸借契約において特約により賃借人に課された付随的義務の不履行が賃借人に対する信頼関係を破壊するとして無催告の解除が許容された事例

 

 

              家屋明渡請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和49年(オ)第904号

【判決日付】      昭和50年2月20日

【判示事項】      建物賃貸借契約において特約により賃借人に課された付随的義務の不履行が賃借人に対する信頼関係を破壊するとして無催告の解除が許容された事例

【判決要旨】      賃貸人が、シヨツピングセンターとするために一棟の建物を区分してこれを青物商、果物商等の店舗として各賃貸するにあたり、シヨツピングセンターの正常な経営維持のため賃貸借契約に特約を付し、賃借人が、粗暴な言動を用いたり、濫りに他人と抗争したり、あるいは他人を煽動してシヨッピングセンターの秩序をしたりすること等を禁止している場合において、賃借人が右禁止に違反して他の賃借人と争い、そのため賃貸人が、他の賃借人から苦情をいわれて困却し、そのことにつき賃借人に注意をしても、賃借人がかえつて暴言を吐き賃貸人に暴行を加える等判示のような事情があるときは、賃貸借契約の基礎である信頼関係は破壊され、賃貸人は右契約を無催告で解除することができる。

【参照条文】      民法541

             借家法6

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集29巻2号99頁

 

 

民法

(催告による解除)

第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

 

 

無能力者であることを黙秘することと民法20条にいう詐術

 

 

土地所有権移転登記抹消登記手続請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和42年(オ)第607号

【判決日付】      昭和44年2月13日

【判示事項】      無能力者であることを黙秘することと民法20条にいう詐術

【判決要旨】      無能力者であることを黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まつて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときには、民法20条にいう「詐術」にあたるが、黙秘することのみでは右詐術にあたらない。

【参照条文】      民法20

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集23巻2号291頁

 

 

民法

(制限行為能力者の詐術)

第二十一条 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

 

代表取締役の会社に対する商法二六六条一項五号に基づく損害賠償責任につき、会社の実質的な経営者に関する事情などを考慮し、過失相殺の法理の類推により責任額の減額を認めた事例

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      横浜地方裁判所判決/平成8年(ワ)第3458号

【判決日付】      平成10年7月31日

【判示事項】      代表取締役の会社に対する商法二六六条一項五号に基づく損害賠償責任につき、会社の実質的な経営者に関する事情などを考慮し、過失相殺の法理の類推により責任額の減額を認めた事例

【参照条文】      商法266-1

             民法418

【掲載誌】        判例タイムズ1014号253頁

【評釈論文】      ジュリスト1210号211頁

 

 

会社法

(役員等の第三者に対する損害賠償責任)

第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。

一 取締役及び執行役 次に掲げる行為

イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録

ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録

ハ 虚偽の登記

ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)

二 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録

三 監査役、監査等委員及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録

四 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録

 

 

民法

(過失相殺)

第四百十八条 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

 

 

自家用自動車総合保険契約の約款に基づき車両の水没が保険事故に該当するとして車両保険金の支払を請求する場合における事故の偶発性についての主張立証責任

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成17年(受)第1206号

【判決日付】      平成18年6月1日

【判示事項】      「衝突,接触……その他偶然な事故」を保険事故とする自家用自動車総合保険契約の約款に基づき車両の水没が保険事故に該当するとして車両保険金の支払を請求する場合における事故の偶発性についての主張立証責任

【判決要旨】      「衝突,接触……その他偶然な事故」を保険事故とする自家用自動車総合保険契約の約款に基づき,車両の水没が保険事故に該当するとして,保険者に対して車両保険金の支払を請求する者は,事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて主張,立証すべき責任を負わない。

【参照条文】      商法629

             商法641

             民法91

             民事訴訟法2編4章1節総則

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集60巻5号1887頁

 

 

保険法

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 保険契約 保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付(生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約にあっては、金銭の支払に限る。以下「保険給付」という。)を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)を支払うことを約する契約をいう。

二 保険者 保険契約の当事者のうち、保険給付を行う義務を負う者をいう。

三 保険契約者 保険契約の当事者のうち、保険料を支払う義務を負う者をいう。

四 被保険者 次のイからハまでに掲げる保険契約の区分に応じ、当該イからハまでに定める者をいう。

イ 損害保険契約 損害保険契約によりてん補することとされる損害を受ける者

ロ 生命保険契約 その者の生存又は死亡に関し保険者が保険給付を行うこととなる者

ハ 傷害疾病定額保険契約 その者の傷害又は疾病(以下「傷害疾病」という。)に基づき保険者が保険給付を行うこととなる者

五 保険金受取人 保険給付を受ける者として生命保険契約又は傷害疾病定額保険契約で定めるものをいう。

六 損害保険契約 保険契約のうち、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約するものをいう。

七 傷害疾病損害保険契約 損害保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病によって生ずることのある損害(当該傷害疾病が生じた者が受けるものに限る。)をてん補することを約するものをいう。

八 生命保険契約 保険契約のうち、保険者が人の生存又は死亡に関し一定の保険給付を行うことを約するもの(傷害疾病定額保険契約に該当するものを除く。)をいう。

九 傷害疾病定額保険契約 保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病に基づき一定の保険給付を行うことを約するものをいう。

 

(保険給付の履行期)

第二十一条 保険給付を行う期限を定めた場合であっても、当該期限が、保険事故、てん補損害額、保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認をすることが損害保険契約上必要とされる事項の確認をするための相当の期間を経過する日後の日であるときは、当該期間を経過する日をもって保険給付を行う期限とする。

2 保険給付を行う期限を定めなかったときは、保険者は、保険給付の請求があった後、当該請求に係る保険事故及びてん補損害額の確認をするために必要な期間を経過するまでは、遅滞の責任を負わない。

3 保険者が前二項に規定する確認をするために必要な調査を行うに当たり、保険契約者又は被保険者が正当な理由なく当該調査を妨げ、又はこれに応じなかった場合には、保険者は、これにより保険給付を遅延した期間について、遅滞の責任を負わない。

 

 

ビジネス法務2023年8月号【特集2】メタバースビジネス参入の実践法務

 

中央経済社

定価:1,800円(税込)

 

発行日:2023/06/21

 

 

【特集2】

メタバースビジネス参入の実践法務

 

Facebook社のMeta社への改名に象徴されるように,メタバースのビジネス利用の可能性が注目されており,わが国においても官民双方で,メタバース上の法規制・メタバース特有の法的問題について検討・議論が進められている。

 

このような状況をふまえて,本特集では,メタバースをビジネス利用しようという事業者の実務を念頭に,①知的財産権との接点,特に,他者の権利侵害回避,②逆に,自身の保有する知的財産権の利活用(知財戦略),③プレイヤーごとの視点に立った契約実務上の留意点,④他人の提供するメタバース上にビジネスを展開する事業者の留意点,⑤メタバースとともに検討する機会の多い周辺問題(NFT,DAO等)を検討する。

 

 

コメント

メタバース法の概要がわかりました。