重加算税のほかに刑罰を科することが憲法三九条に違反するとの主張を刑訴法四〇八条で処理した事例
法人税法違反
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和55年(あ)第329号
【判決日付】 昭和55年10月23日
【判示事項】 重加算税のほかに刑罰を科することが憲法三九条に違反するとの主張を
刑訴法四〇八条で処理した事例
【参照条文】 国税通則法68
法人税法159-1
法人税法164-1
憲法39
刑事訴訟法408
【掲載誌】 最高裁判所裁判集刑事220号19頁
税務訴訟資料119号1761頁
国税通則法
(重加算税)
第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
2 第六十六条第一項(無申告加算税)の規定に該当する場合(同項ただし書若しくは同条第七項の規定の適用がある場合又は納税申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の四十の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
3 前条第一項の規定に該当する場合(同項ただし書又は同条第二項若しくは第三項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者が事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づきその国税をその法定納期限までに納付しなかつたときは、税務署長又は税関長は、当該納税者から、不納付加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る不納付加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を徴収する。
4 前三項の規定に該当する場合において、これらの規定に規定する税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されたものに基づき期限後申告書若しくは修正申告書の提出、更正若しくは第二十五条(決定)の規定による決定又は納税の告知(第三十六条第一項(納税の告知)の規定による納税の告知(同項第二号に係るものに限る。)をいう。以下この項において同じ。)若しくは納税の告知を受けることなくされた納付があつた日の前日から起算して五年前の日までの間に、その申告、更正若しくは決定又は告知若しくは納付に係る国税の属する税目について、無申告加算税等を課され、又は徴収されたことがあるときは、前三項の重加算税の額は、これらの規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額に、これらの規定に規定する基礎となるべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
法人税法
第五編 罰則
第百五十九条 偽りその他不正の行為により、第七十四条第一項第二号(確定申告)に規定する法人税の額(第六十八条(所得税額の控除)又は第六十九条(外国税額の控除)の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした法人税の額)、第八十九条第二号(退職年金等積立金に係る確定申告)(第百四十五条の五(申告及び納付)において準用する場合を含む。)に規定する法人税の額若しくは第百四十四条の六第一項第三号若しくは第四号(確定申告)に規定する法人税の額(第百四十四条(外国法人に係る所得税額の控除)において準用する第六十八条の規定又は第百四十四条の二(外国法人に係る外国税額の控除)の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同項第三号又は第四号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした法人税の額)若しくは第百四十四条の六第二項第二号に規定する法人税の額(第百四十四条において準用する第六十八条の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算を同条の規定を適用しないでした法人税の額)につき法人税を免れ、又は第八十条第十項(欠損金の繰戻しによる還付)(第百四十四条の十三第十三項(欠損金の繰戻しによる還付)において準用する場合を含む。)の規定による法人税の還付を受けた場合には、法人の代表者(人格のない社団等の管理人及び法人課税信託の受託者である個人を含む。以下第百六十二条(偽りの記載をした中間申告書を提出する等の罪)までにおいて同じ。)、代理人、使用人その他の従業者(当該法人が通算法人である場合には、他の通算法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者を含む。第百六十三条第一項(両罰規定)において同じ。)でその違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の免れた法人税の額又は同項の還付を受けた法人税の額が千万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、千万円を超えその免れた法人税の額又は還付を受けた法人税の額に相当する金額以下とすることができる。
3 第一項に規定するもののほか、第七十四条第一項、第八十九条(第百四十五条の五において準用する場合を含む。)又は第百四十四条の六第一項若しくは第二項の規定による申告書をその提出期限までに提出しないことにより、第七十四条第一項第二号に規定する法人税の額(第六十八条又は第六十九条の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした法人税の額)、第八十九条第二号(第百四十五条の五において準用する場合を含む。)に規定する法人税の額又は第百四十四条の六第一項第三号若しくは第四号に規定する法人税の額(第百四十四条において準用する第六十八条の規定又は第百四十四条の二の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同項第三号又は第四号の規定による計算をこれらの規定を適用しないでした法人税の額)若しくは第百四十四条の六第二項第二号に規定する法人税の額(第百四十四条において準用する第六十八条の規定により控除をされるべき金額がある場合には、同号の規定による計算を同条の規定を適用しないでした法人税の額)につき法人税を免れた場合には、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
4 前項の免れた法人税の額が五百万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、五百万円を超えその免れた法人税の額に相当する金額以下とすることができる。
憲法
第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
弁護人田野寿の上告趣意のうち、重加算税のほかに刑罰を科することが憲法三九条に違反するという点は、当裁判所大法廷判決(昭和二九年(オ)第二三六号同三三年四月三〇日大法廷判決・民集一二巻六号九三八頁、なお、同四三年(あ)第七一二号同四五年九月一一日第二小法廷判決・刑集二四巻一〇号一三三三頁参照。)の趣旨に照らし、その理由のないことが明らかであり、その余の点は、事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
よつて、同法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
昭和五五年一〇月二三日
最高裁判所第一小法廷