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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

風俗営業の名義貸しと風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する平成一〇年改正前)26条1項に基づく風俗営業の許可の取消し

 

 

営業許可取消処分取消事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成10年(行ツ)第5号

【判決日付】      平成12年3月21日

【判示事項】      風俗営業の名義貸しと風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(平成一〇年法律第五五号による改正前のもの)二六条一項に基づく風俗営業の許可の取消し

【判決要旨】      風俗営業の名義貸しは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(平成一〇年法律第五五号による改正前のもの)の立法目的を著しく害するおそれがあるとはいい難いような特段の事情のない限り、同法二六条一項にいう「著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある」場合に当たり、公安委員会は、右名義貸しをした者に対する風俗営業の許可を取り消すことができる。

【参照条文】      風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律11

             風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(平10法55号による改正前)26-1

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事197号717頁

             裁判所時報1264号198頁

             判例タイムズ1028号138頁

             判例時報1707号112頁

【評釈論文】      自治研究77巻4号114頁

 

 

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

(名義貸しの禁止)

第十一条 第三条第一項の許可を受けた者は、自己の名義をもつて、他人に風俗営業を営ませてはならない。

 

(営業の停止等)

第二十六条 公安委員会は、風俗営業者若しくはその代理人等が当該営業に関し法令若しくはこの法律に基づく条例の規定に違反した場合において著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるとき、又は風俗営業者がこの法律に基づく処分若しくは第三条第二項の規定に基づき付された条件に違反したときは、当該風俗営業者に対し、当該風俗営業の許可を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて当該風俗営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

2 公安委員会は、前項の規定により風俗営業(第二条第一項第四号及び第五号の営業を除く。以下この項において同じ。)の許可を取り消し、又は風俗営業の停止を命ずるときは、当該風俗営業を営む者に対し、当該施設を用いて営む飲食店営業について、六月(前項の規定により風俗営業の停止を命ずるときは、その停止の期間)を超えない範囲内で期間を定めて営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。

 

 

登記の欠缺を主張することができないいわゆる背信的悪意者にあたるとされた事例

 

 

              根抵当権登記抹消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和42年(オ)第353号

【判決日付】      昭和44年1月16日

【判示事項】      1、抵当権放棄の相手方

             2、登記の欠缺を主張することができないいわゆる背信的悪意者にあたるとされた事例

【判決要旨】      1、抵当権の放棄は、その当時の目的物の所有者に対する意思表示によって、その効力を生ずる。

             2、根抵当権設定者である会社の代表者甲が、目的物の譲受人乙を代理して根抵当権者丙の根抵当権放棄の意思表示を受領した場合において、その被担保債権の債務者である協同組合の代表者丁が、甲とともに丙との交渉にあたり、その際右意思表示がされた事実を知りながら、その後に丙から右根抵当権を被担保債権とともに譲り受けたときは、丁は、特段の事情がないかぎり、いわゆる背信的悪意者として、根抵当権の放棄による消滅についての登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者にあたらないものと解するのが相当である。

【参照条文】      民法2編第10章第3節

             民法177

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集23巻1号18頁

 

 

民法

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

他人に成り済まして預金口座を開設し銀行窓口係員から預金通帳の交付を受ける行為と詐欺罪の成否

 

 

              住居侵入,窃盗,有印私文書偽造,同行使,詐欺,建造物侵入被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成13年(あ)第1277号

【判決日付】      平成14年10月21日

【判示事項】      他人に成り済まして預金口座を開設し銀行窓口係員から預金通帳の交付を受ける行為と詐欺罪の成否(肯定)

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集56巻8号670頁

 

 

刑法

(詐欺)

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

 

刑事訴訟法

第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。

一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。

二 刑の量定が甚しく不当であること。

三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。

四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。

五 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 検察官の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであるから,本件に適切でなく,その余は,単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 所論にかんがみ,第1審判決判示第2の詐欺罪の成否について検討する。

 1 原判決が前提とする第1審判決の認定によれば,被告人は,不正に入手した秋山忠行名義の国民健康保険被保険者証を使用して同人名義の預金口座を開設し,これに伴って預金通帳を取得しようとの意図の下に,同人名義の「口座開設のお客さま用新規申込書」を偽造し,これが真正に成立し,かつ,自己が秋山本人であるかのように装って,上記国民健康保険被保険者証,秋山と刻した印鑑と共に銀行窓口係員に提出して行使し,同係員らをしてその旨誤信させ,同係員から貯蓄総合口座通帳1冊の交付を受けたというのである。

 2 第1審判決は,上記と同旨の事実を認定し,有印私文書偽造罪,同行使罪のほか,詐欺罪についても被告人を有罪とした。これに対し,原判決は,預金通帳は預金口座開設に伴い当然に交付される証明書類似の書類にすぎず,銀行との関係においては独立して財産的価値を問題にすべきものとはいえないところ,他人名義による預金口座開設の利益は詐欺罪の予定する利益の定型性を欠くから,それに伴う預金通帳の取得も刑法246条1項の詐欺罪を構成しないとして,第1審判決を破棄し,詐欺罪の成立を否定した。

 3 しかし,預金通帳は,それ自体として所有権の対象となり得るものであるにとどまらず,これを利用して預金の預入れ,払戻しを受けられるなどの財産的な価値を有するものと認められるから,他人名義で預金口座を開設し,それに伴って銀行から交付される場合であっても,刑法246条1項の財物に当たると解するのが相当である。そして,被告人は,上記のとおり,銀行窓口係員に対し,自己が秋山本人であるかのように装って預金口座の開設を申し込み,その旨誤信した同係員から貯蓄総合口座通帳1冊の交付を受けたのであるから,被告人に詐欺罪が成立することは明らかである。そうすると,詐欺罪の成立を否定した原判決には,刑法246条1項の解釈適用を誤った違法があるというべきである。

 ところで,本件詐欺罪の対象となった上記通帳自体の価額は少額であることに加え,本件詐欺罪は,有印私文書偽造罪,同行使罪と牽連犯の関係にあるところ,これらの罪については有罪とされており,しかも,以上は,他の9件の窃盗罪等と併合罪の関係にあるとされていることなどを考慮すると,上記法令違反をもって刑訴法411条により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。

 よって,同法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

被告人の承諾なく、職務質問に付随する所持品検査として許容される限度を超えた捜索によって発見したものであり、本件覚せい剤及びその鑑定書は、違法収集証拠として、無罪が言い渡された事例

 

              覚せい剤取締法違反被告事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成29年(う)第1845号

【判決日付】      平成30年3月2日

【判示事項】      被告人が、営利の目的で、みだりに覚せい剤粉末10.078グラムを所持したという公訴事実につき、本件覚せい剤は、警察官らが令状を得ることなく、被告人の承諾なく、職務質問に付随する所持品検査として許容される限度を超えた捜索によって発見したものであり、本件覚せい剤及びその鑑定書は、違法な捜索と密接に関連する証拠であるが、本件バッグに対するプライバシー保護の必要性は相当程度低下していたことや所持品検査の必要性、緊急性が高かったこと、また、警察官らに令状主義に関する諸規定を潜脱する意図があったとは認められないこと等を考慮すると、違法の程度は必ずしも重大であるとはいえず、本件覚せい剤等を証拠として供することが将来の違法捜査の抑制の見地から相当でないとも認められないなどとして証拠能力を肯定して公訴事実を認めた原判決が破棄され、無罪が言い渡された事例

【参照条文】      刑事訴訟法317

             刑事訴訟法336

             刑事訴訟法379

             刑事訴訟法400ただし書

             覚せい剤取締法41の2-2

             覚せい剤取締法41の2-1

【掲載誌】        東京高等裁判所判決時報刑事69巻21頁

             判例タイムズ1456号136頁

             判例時報2393・2394合併号63頁

 

 

刑事訴訟法

第三百十七条 事実の認定は、証拠による。

 

第三百三十六条 被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない。

 

第三百七十九条 前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

 

第四百条 前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、控訴裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。

 

 

 

 

所有権に基づいて不動産を占有する者と民法第162条の適用の有無

 

 

家屋明渡請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和40年(オ)第1265号

【判決日付】      昭和42年7月21日

【判示事項】      所有権に基づいて不動産を占有する者と民法第162条の適用の有無

【判決要旨】      所有権に基づいて不動産を占有する者についても、民法第162条の適用がある。

【参照条文】      民法162

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集21巻6号1643頁

 

 

事案の概要

 訴外人から競落によつて本件家屋の所有権を取得した被上告人(原告)が、所有権に基づいて、本件家屋の占有者である上告人(被告)夫婦に対し、その明渡を求めたので、上告人らが抗弁として、上告人経夫(夫)は、右訴外人から本件家屋の贈与をうけ、爾来、平穏、公然、無過失で、占有を続けたから、被上告人の右所有権取得後に、本件家屋の所有権を時効取得した旨主張した。

 

 

民法

(所有権の取得時効)

第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

 

 

 

内国法人が支配力を有していなかった外国子会社の事業年度の当期純利益から算出された適用対象金額の全額について、租税特別措置法施行令39条の16第1項、2項を適用して内国法人の所得に合算して課税したことが違法であるとされた事例

 

 

法人税更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/令和3年(行コ)第96号

【判決日付】      令和4年3月10日

【判示事項】      1 タックス・ヘイブン対策税制における内国法人に係る特定外国子会社等の留保金額の益金算入に係る利益の判定の基準時

             2 内国法人が支配力を有していなかった外国子会社の事業年度の当期純利益から算出された適用対象金額の全額について、租税特別措置法施行令39条の16第1項、2項を適用して内国法人の所得に合算して課税したことが違法であるとされた事例

【判決要旨】      1 租税特別措置法施行令(平成29年政令第114号による改正前のもの)39条の16第2項1号が剰余金の配当等の割合から請求権勘案保有株式等を計算すべき場合として定める「外国法人が請求権の内容が異なる株式等を発行している場合」に該当するか否かの判定は、特定外国子会社等の事業年度終了の時の状況によるべきである。

             2 ①優先出資証券の発行およびこれにより調達した資金を原資として劣後ローンによる資金調達のスキームが利用された経緯、目的、仕組みから、内国法人である銀行が外国子会社の当期純利益から剰余金の配当等を受け得ることが想定されていないこと、②外国子会社当期純利益を上回る金額が期中に持株SPCに配当され、事業年度全体を通じてみても、期末時点についてみても、銀行が上記当期純利益に対して支配力を有していたとは認められないこと、③上記資金調達スキームにおける処理に租税回避の目的があることも、客観的に租税回避の事態が生じていると評価すべき事情も認められないことなど判示の事情の下では、租税特別措置法施行令39条の16第1項、2項の規定を形式的に適用し、銀行が支配力を有していなかった外国子会社の同事業年度の当期純利益から算出された適用対象金額の全額を銀行の所得に合算したことは、法の趣旨ないしタックス・ヘイブン対策税制の基本的な制度趣旨や理念に反する。

【参照条文】      租税特別措置法(平成28年法律第15号による改正前のもの)66の6-1

           租税特別措置法施行令(平成29年政令第114号による改正前のもの)39の16-1

           租税特別措置法施行令(平成29年政令第114号による改正前のもの)39の16-2

【掲載誌】        金融・商事判例1649号34頁

 

 

租税特別措置法

第一款 内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例

第六十六条の六第1項 次に掲げる内国法人に係る外国関係会社のうち、特定外国関係会社又は対象外国関係会社に該当するものが、昭和五十三年四月一日以後に開始する各事業年度において適用対象金額を有する場合には、その適用対象金額のうちその内国法人が直接及び間接に有する当該特定外国関係会社又は対象外国関係会社の株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)の数又は金額につきその請求権(剰余金の配当等(法人税法第二十三条第一項第一号に規定する剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配をいう。以下この項及び次項において同じ。)を請求する権利をいう。以下この条において同じ。)の内容を勘案した数又は金額並びにその内国法人と当該特定外国関係会社又は対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して政令で定めるところにより計算した金額(次条及び第六十六条の八において「課税対象金額」という。)に相当する金額は、その内国法人の収益の額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から二月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。

一 内国法人の外国関係会社に係る次に掲げる割合のいずれかが百分の十以上である場合における当該内国法人

イ その有する外国関係会社の株式等の数又は金額(当該外国関係会社と居住者(第二条第一項第一号の二に規定する居住者をいう。以下この項及び次項において同じ。)又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有するものとして政令で定める当該外国関係会社の株式等の数又は金額の合計数又は合計額が当該外国関係会社の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式等を除く。同項、第六項及び第八項において「発行済株式等」という。)の総数又は総額のうちに占める割合

ロ その有する外国関係会社の議決権(剰余金の配当等に関する決議に係るものに限る。ロ及び次項第一号イ(2)において同じ。)の数(当該外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有するものとして政令で定める当該外国関係会社の議決権の数の合計数が当該外国関係会社の議決権の総数のうちに占める割合

ハ その有する外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額(当該外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有する当該外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額として政令で定めるものの合計額が当該外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の総額のうちに占める割合

二 外国関係会社との間に実質支配関係がある内国法人

三 外国関係会社(内国法人との間に実質支配関係があるものに限る。)の他の外国関係会社に係る第一号イからハまでに掲げる割合のいずれかが百分の十以上である場合における当該内国法人(同号に掲げる内国法人を除く。)

四 外国関係会社に係る第一号イからハまでに掲げる割合のいずれかが百分の十以上である一の同族株主グループ(外国関係会社の株式等を直接又は間接に有する者及び当該株式等を直接又は間接に有する者との間に実質支配関係がある者(当該株式等を直接又は間接に有する者を除く。)のうち、一の居住者又は内国法人、当該一の居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある者及び当該一の居住者又は内国法人と政令で定める特殊の関係のある者(外国法人を除く。)をいう。)に属する内国法人(外国関係会社に係る同号イからハまでに掲げる割合又は他の外国関係会社(内国法人との間に実質支配関係があるものに限る。)の当該外国関係会社に係る同号イからハまでに掲げる割合のいずれかが零を超えるものに限るものとし、同号及び前号に掲げる内国法人を除く。)

 

 

租税特別措置法施行令

(実質支配関係の判定)

第三十九条の十六 法第六十六条の六第二項第五号に規定する政令で定める関係は、居住者又は内国法人(以下この項において「居住者等」という。)と外国法人との間に次に掲げる事実その他これに類する事実が存在する場合(当該外国法人の行う事業から生ずる利益のおおむね全部が剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配その他の経済的な利益の給付として当該居住者等(当該居住者等と特殊の関係のある者を含む。)以外の者に対して金銭その他の資産により交付されることとなつている場合を除く。)における当該居住者等と当該外国法人との間の関係(当該関係がないものとして同条第二項第一号(イに係る部分に限る。)の規定を適用した場合に居住者及び内国法人並びに同号イに規定する特殊関係非居住者と当該外国法人との間に同号イ(1)から(3)までに掲げる割合のいずれかが百分の五十を超える関係がある場合における当該居住者等と当該外国法人との間の関係を除く。)とする。

一 居住者等が外国法人の残余財産のおおむね全部について分配を請求する権利を有していること。

二 居住者等が外国法人の財産の処分の方針のおおむね全部を決定することができる旨の契約その他の取決めが存在すること(当該外国法人につき前号に掲げる事実が存在する場合を除く。)。

2 前項に規定する特殊の関係とは、次に掲げる関係をいう。

一 一方の者と他方の者との間に当該他方の者が次に掲げるものに該当する関係がある場合における当該関係

イ 当該一方の者の親族

ロ 当該一方の者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

ハ 当該一方の者の使用人又は雇主

ニ イからハまでに掲げる者以外の者で当該一方の者から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの

ホ ロからニまでに掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

二 一方の者と他方の者との間に当該他方の者が次に掲げる法人に該当する関係がある場合における当該関係(次号及び第四号に掲げる関係に該当するものを除く。)

イ 当該一方の者(当該一方の者と前号に規定する関係のある者を含む。以下この号において同じ。)が他の法人を支配している場合における当該他の法人

ロ 当該一方の者及び当該一方の者と特殊の関係(この項(イに係る部分に限る。)に規定する特殊の関係をいう。)のある法人が他の法人を支配している場合における当該他の法人

ハ 当該一方の者及び当該一方の者と特殊の関係(この項(イ及びロに係る部分に限る。)に規定する特殊の関係をいう。)のある法人が他の法人を支配している場合における当該他の法人

三 二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の百分の五十を超える数又は金額の株式等を直接又は間接に有する関係

四 二の法人が同一の者(当該者が個人である場合には、当該個人及びこれと法人税法第二条第十号に規定する政令で定める特殊の関係のある個人)によつてそれぞれその発行済株式等の百分の五十を超える数又は金額の株式等を直接又は間接に保有される場合における当該二の法人の関係(前号に掲げる関係に該当するものを除く。)

3 法人税法施行令第四条第三項の規定は、前項第二号イからハまでに掲げる他の法人を支配している場合について準用する。

4 第三十九条の十二第二項及び第三項の規定は、第二項(第三号及び第四号に係る部分に限る。)の規定を適用する場合について準用する。この場合において、同条第二項及び第三項中「百分の五十以上の」とあるのは、「百分の五十を超える」と読み替えるものとする。

 

 

 

       主   文

 

 1 原判決を取り消す。

 2 Z税務署長が控訴人に対し平成29年11月7日付けでした平成27年4月1日から平成28年3月31日までの事業年度の法人税に係る更正処分(ただし、令和元年7月29日付け減額更正による一部減額後のもの)のうち所得の金額4935億1557万9742円を超える部分及び納付すべき法人税額628億8628万7000円を超える部分並びに上記更正処分に伴う過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、同日付け変更決定による一部減額後のもの)をいずれも取り消す。

 3 Z税務署長が控訴人に対し平成29年11月7日付けでした平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る更正処分(ただし、令和元年7月29日付け減額更正による一部減額後のもの)のうち課税標準法人税額1177億8873万3000円を超える部分及び納付すべき地方法人税額38億2783万9600円を超える部分並びに上記更正処分に伴う過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、同日付け変更決定による一部減額後のもの)をいずれも取り消す。

 4 本件訴えのうちZ税務署長が控訴人に対し令和3年4月26日付けでした法人税及び地方法人税に係る各更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分の取消しを求める部分を却下する。

 5 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

1 主文1項ないし3項と同旨(2項及び3項については、当審において、原判決「事実及び理由」第1の1及び2の請求から上記のとおりに請求を拡張した。)。

2 Z税務署長が控訴人に対し令和3年4月26日付けでした控訴人の平成27年4月1日から平成28年3月31日までの事業年度の法人税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す(当審における追加請求)。

3 Z税務署長が控訴人に対し令和3年4月26日付けでした控訴人の平成27年4月1日から平成28年3月31日までの課税事業年度の地方法人税に係る更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す(当審における追加請求)。

第2 事案の概要

1 事案の要旨

 本件事案の要旨は、原判決3頁22行目(本誌本号47頁右段4行目)の「本件各処分」を「本件各更正処分」と改め、同23行目末尾(同6行目)に行を改めて以下のとおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」第2の1に記載のとおりであるから、これを引用する。

 「 原審が控訴人の請求をいずれも棄却したところ、控訴人がこれを不服として控訴した。控訴人は、上記申告額を超えない部分の取消しを求めて令和3年1月27日付けで処分行政庁(Z税務署長)に対し、各更正の請求(以下「本件各更正の請求」という。)を行ったが、処分行政庁から本件各更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)を受けたため、前記「第1 控訴の趣旨」のとおり、当審において、本件各通知処分の取消しを求める訴えを追加し、また、本件各更正処分の取消請求を拡張した。」

博報堂事件・雇い止め

 

 

雇用契約上の地位確認等請求事件

【事件番号】      福岡地方裁判所判決/平成30年(ワ)第1904号

【判決日付】      令和2年3月17日

【判示事項】      1 被告Y社の事務系契約社員として1年ごとの有期雇用契約を29回にわたって更新,継続されてきた原告Xの,労働契約法に基づく無期転換ルールを契機とする雇止めにつき,契約更新に対する期待の合理性が肯定され(同法19条2号),労働契約上の地位確認請求ならびに賃金および賞与の支払請求が認容された例

             2 約30年にわたり本件雇用契約を更新してきたXにとって,Y社との有期雇用契約を終了させることは,その生活面のみならず,社会的な立場等にも大きな変化をもたらすものであり,その負担も少なくないものと考えられるから,XとY社との間で本件雇用契約を終了させる合意を認定するには慎重を期す必要があり,これを肯定するには,Xの明確な意思が認められねばならないとされた例

             3 労働契約法に基づく無期転換ルールの施行に合わせて,Y社が平成25年4月以降の雇用契約書に設けた30年4月以降の「不更新条項」を,Xが承知したうえで契約書に署名押印していたとして,雇用契約終了に合意があったとするY社の主張につき,Xにとっては,署名押印を拒否すると契約更新できなかったものであり,「署名押印をしていたからといって,直ちに,Xが雇用契約を終了させる旨の明確な意思を表明したものとみることは相当ではない」として,雇止めに当たると判示された例

             4 平成25年までは署名押印するだけの形骸化した契約更新を繰り返していたが,同年以降は,契約更新に当たり,目標管理による評価や契約更新通知書の交付,面談をするようになったことから,「本件雇用契約を全体として見渡したとき,その全体を,期間の定めのない雇用契約と社会通念上同視できるとするには,やや困難な面がある」として,労働契約法19条1号該当性が否定された例

             5 形骸化した契約更新を繰り返してきていた平成25年の時点で,「Xの契約更新に対する期待は相当に高いものがあった」として,労働契約法19条2号により保護されるべきと判示したうえで,Y社が主張する人件費削減の必要性等の「一般的な理由」では本件雇止めの合理性肯定には不十分だとして,本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められず,Y社が従前の有期雇用契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされると判断された例

【参照条文】      労契法19

【掲載誌】        判例時報2455号75頁

             労働判例1226号23頁

 

 

 

労働契約法

(有期労働契約の更新等)

第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 

 

 

倒産の現実的危険性のある会社の再建と株主利益最大化義務

 

 

損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/令和3年(ネ)第977号

【判決日付】      令和3年11月18日

【判示事項】      1 倒産の現実的危険性のある会社の再建と株主利益最大化義務

             2 代表取締役に100%無償減資後の出資が認められ、留任したことと他の株主の100%無償減資との間に実質的な利益相反関係はないとされた事例

             3 自主再建のための基本協定書に係る合意の締結と「重要ナル業務執行」

             4 名目的監査役に対する取締役会の招集通知の欠けつと代表取締役の任務懈怠等

【判決要旨】      1 (代表)取締役は、倒産の現実的危険性のあった会社を自主再建することを優先すべきであって、これに反してまで株主の利益を最大化するよう配慮し、行動すべき義務を負わない。

             2 代表取締役に自主再建後の会社に対する再出資が認められ、その代表取締役の地位にとどまったことと他の旧株主についてはその保有株式を100%無償減資としたこととの間に実質的な利益相反関係があるとはいえないとされた事例

             3 自主再建のための基本協定書に係る合意の締結は、「重要ナル業務執行」には当たらず、取締役会の決議を要しないとされた事例

             4 名目的監査役に対する取締役会の招集通知の欠けつが代表取締役の任務懈怠行為および不法行為に当たらないとされた事例

【参照条文】      商法(平成17年法律第87号による改正前)266の3-1

             民法709

             民法(平成18年法律第50号による改正前)44-1(商法(平成17年法律第87号による改正前)261-3、商法(平成17年法律第87号による改正前)78-2による準用)

             民法719-1前段

【掲載誌】        金融・商事判例1643号6頁

 

 

会社法

(株式会社と役員等との関係)

第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

 

(役員等の第三者に対する損害賠償責任)

第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。

一 取締役及び執行役 次に掲げる行為

イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録

ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録

ハ 虚偽の登記

ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)

二 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録

三 監査役、監査等委員及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録

四 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録

 

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

(共同不法行為者の責任)

第七百十九条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

2 行為者を教唆した者及び幇ほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

 

被告人が,他会社が著作権を有するアダルトビデオの女優の顔に芸能人らの顔を合成加工したディープフェイク動画を作成して自ら運営するインターネットサイトに掲載した名誉毀損及び著作権法違反の事案。

 

 

              名誉毀損,著作権法違反被告事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/令和2年(特わ)第2564号

【判決日付】      令和3年9月2日

【判示事項】      被告人が,他会社が著作権を有するアダルトビデオの女優の顔に芸能人らの顔を合成加工したディープフェイク動画を作成して自ら運営するインターネットサイトに掲載した名誉毀損及び著作権法違反の事案。

裁判所は,各動画は,全体として,本件芸能人らが出演した動画として違和感を生じさせないもので,その精巧さから,本物と誤信するおそれは否定できず,芸能人らがアダルトビデオに出演した旨の社会的評価を害するに足りる事実を摘示したといえるとして,各犯罪の成立を認め,アダルトビデオの制作者の努力にただ乗りして利益を得ようとしたなど犯行態様の悪質さを指摘し,大学退学など一定の社会的制裁を受けていることなど酌むべき事情も考慮し,懲役2年及び罰金100万円,懲役刑につき,3年間執行猶予に処した事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

刑法

(名誉毀き損)

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

 

 

著作権法

第八章 罰則

第百十九条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項、第三項若しくは第六項から第八項までの規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権(同項の規定による場合にあつては、同条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第五号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第十項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第六号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(第百十三条第八項の規定により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)

二 営利を目的として、第三十条第一項第一号に規定する自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者

三 第百十三条第一項の規定により著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

四 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行つた者(当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等と侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等以外の相当数のウェブサイト等(第百十三条第四項に規定するウェブサイト等をいう。以下この号及び次号において同じ。)とを包括しているウェブサイト等において、単に当該公衆への提示の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)

五 侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等を行つた者(当該公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等とそれ以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等又は当該侵害著作物等利用容易化プログラム及び侵害著作物等利用容易化プログラム以外の相当数のプログラムの公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等において、単に当該侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)

六 第百十三条第五項の規定により著作権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者

3 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)又は著作隣接権を侵害する送信可能化(国外で行われる送信可能化であつて、国内で行われたとしたならば著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)に係る自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者

二 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為(当該著作物の種類及び用途並びに当該有償著作物特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)を継続的に又は反復して行つた者

4 前項第一号に掲げる者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

5 第三項第二号に掲げる者には、有償著作物特定侵害複製を、自ら有償著作物特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 

 

 

 

       主   文

 

 被告人を懲役2年及び罰金100万円に処する。

 その罰金を完納することができないときは,1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

 この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。

 

       理   由

 

(罪となるべき事実)

 被告人は

第1 令和元年12月21日頃,熊本市(以下略)被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,不特定多数の者が閲覧可能な「C」と題するインターネットサイト内に,女性が男性の体を弄ぶなどの内容のアダルトビデオの出演女優の顔部分に別紙1記載のAの顔を合成加工し,あたかも同人がアダルトビデオに出演したように見える動画(前記パーソナルコンピュータ内に保存されていた「私のビデオ15.mp4」と題するファイル)を掲載して,不特定多数の者が同動画を閲覧することが可能な状態にし,もって公然と事実を摘示し,Aの名誉を毀損し,

第2 法定の除外事由がなく,かつ,著作権者の許諾を受けないで,別紙2記載のとおり,令和2年1月2日頃から同年2月16日頃までの間,3回にわたり,前記被告人方において,株式会社Dほか2社が著作権を有する映画の著作物である「E」等を,前記パーソナルコンピュータを用いて出演女優の顔に別人の女性の顔を合成加工して翻案した動画を作成した上,その頃,前記被告人方において,前記パーソナルコンピュータを使用してインターネットを介し,前記株式会社Dほか2社が著作権を有する前記翻案された各動画の情報を,インターネットに接続された自動公衆送信装置であるF株式会社が首都圏内において管理するサーバコンピュータの記憶装置に記録保存して,同サーバコンピュータに接続してきた不特定多数の者に前記各動画の情報を自動公衆送信し得る状態にし,もって前記株式会社Dほか2社の著作権を侵害し

第3 法定の除外事由がなく,かつ,著作権者の許諾を受けないで,令和2年1月19日頃,前記被告人方において,株式会社Gが著作権を有する映画の著作物である「H」を,前記パーソナルコンピュータを用いて男性と性交等している出演女優の顔に別紙1記載のBの顔を合成加工して翻案した動画(前記パーソナルコンピュータ内に保存されていた「私のビデオ140.mp4」と題するファイル)を作成した上,その頃,前記被告人方において,前記パーソナルコンピュータを使用してインターネットを介し,前記株式会社Gが著作権を有する前記翻案された動画の情報を,インターネットに接続された自動公衆送信装置である前記F株式会社が首都圏内において管理する前記サーバコンピュータの記憶装置に記録保存して,同サーバコンピュータに接続してきた不特定多数の者にあたかもBがアダルトビデオに出演したように見える前記動画の情報を自動公衆送信し得る状態にし,もって前記株式会社Gの著作権を侵害するとともに,公然と事実を摘示し,Bの名誉を毀損した。

(証拠の標目)略

(事実認定の補足説明)

1 争点

 本件の争点は,名誉毀損に関し,判示第1及び第3の動画の掲載により,A及びBがアダルトビデオに出演した旨の社会的評価を害するに足りる事実を摘示したといえるかである。当裁判所はこれを認めたため,以下補足して説明する。

2 前提事実

 関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。

(1)被告人は,動画に登場する人物の顔を他の動画に登場する人物の顔に合成加工するソフトを用いて,アダルトビデオ及び芸能人の動画をAIに機械学習させ,アダルトビデオの女優の顔を芸能人の顔に合成した動画を作成し,さらに動画編集ソフトを使用して顔の部分がぼやけているシーンや無駄なシーンを取り除く加工をした動画(以下「ディープフェイク動画」という。)を作成した。

 そして,それらの中でも出来が良いと判断したものを,被告人が管理・運営する「C」と題するインターネットサイト(以下「本件サイト」という。)に掲載していた。本件サイトに月額300円で会員登録をした者は,掲載されたディープフェイク動画を閲覧することができた。

(2)判示第1及び第3に係る動画(以下,判示第1に係る動画を「動画A」と,判示第3に係る動画を「動画B」といい,これらの動画を併せて「本件各動画」という。)は,それぞれ性交等の猥褻な場面が露骨に撮影されたアダルトビデオの女優の顔をA及びBの顔に合成加工したものである。

 本件各動画には映像上に「N」というロゴタイプが付されていた。また,本件各動画から顔が映った場面を静止画で切り出したサムネイルの横には見出しが付されており,動画Aの見出しは,Aの氏名の一部を○と伏せ字で表記したものに続く「O」というもの,動画Bの見出しは,「P」というものであった。

 本件各動画のサンプル動画は無料で閲覧することができるが,本件各動画は有料で会員登録をした者のみが閲覧することができた。

3 当裁判所の判断

(1)ア 本件各動画は,アダルトビデオの女優の顔にA及びBの顔が合成されたものであるところ,顔と輪郭部分とのつながり,顔の向き,表情の変化などはいずれも自然であり,本件各動画は精巧に作成されたものと評価できる。

 イ 弁護人は,本件各動画の内容自体に関し,口元等がぼやけている部分があることや,音声が途切れたり,口の動きと整合しなかったりする部分があることなどを指摘して,本件各動画は動画自体の精巧さの点でA及びBがアダルトビデオに出演したと誤信させるものではないと主張する。

 しかし,口元等がぼやけている部分はごく一部であり,しかも短時間のものにすぎない。音声と動きの不整合についても,動画Bについては若干のずれにすぎず,大枠においてほぼ一致しているといえるし,動画Aがその後半になって無音となることについても,Aが出演した動画を編集等した際に生じたものと視聴者が認識することはあり得ると考えられる。したがって,弁護人の指摘を踏まえても,本件各動画は,全体としてみれば,A及びBが出演した動画として違和感を生じさせない精巧なものと評価できる。

(2)ア 弁護人は,①本件各動画の掲載態様に関し,本件各動画には「N」というロゴタイプが付され,サムネイルには「ディープフェイク」や「激似」との見出しも付されていること,②本件各動画の掲載方法に関し,合成した芸能人の顔画像のみが異なる,共通のアダルトビデオを重複して利用した多数の類似の動画と共に掲載する方法が採られていることを踏まえれば,ディープフェイク動画であることが明瞭であるから,視聴者においてA及びBがアダルトビデオに出演したと誤信する余地はないと主張する。

 しかし,前述のような本件各動画の精巧さからすれば,①視聴者が,ディープフェイク動画である旨の見出し等の記載を信用せず,本当はA及びBがアダルトビデオに出演したものであると誤信するおそれは否定できない。また,②視聴者において,本件各動画が,多数の類似のディープフェイク動画の基となるアダルトビデオそのものであると誤信するおそれも否定できない。

 イ なお,弁護人は,第三者が,本件各動画のロゴタイプやサムネイルの見出しを消したり,他の類似の動画と切り離したりして転載することについてまで被告人に責めを負わせることになるから,処罰範囲が不当に広がるものであり許されない旨主張する。しかし,本物であると誤信し得る精巧な動画を転載が特に困難な事情も認められない状態でインターネット上のサイトに掲載したという被告人の行為自体が,A及びBの社会的評価を低下させる危険があるといえるから,第三者の刑責を被告人に負わせるものではなく,不当な処罰範囲の拡大という弁護人の主張は当を得ない。

 ウ 弁護人は,本件各動画の視聴者について,ディープフェイク動画であることを認識せずにインターネット上で本件各動画を発見して視聴する者は限られる旨主張する。しかし,ディープフェイク動画の視聴を意図せずに,サンプル動画を閲覧するなどして会員登録をし,本件各動画を視聴する者がいる可能性はある上,ディープフェイク動画の視聴を意図していた者であっても,本件各動画の精巧さを踏まえれば,本物であると誤信するおそれは否定できない。

 エ 弁護人は,著名な芸能人であるA及びBがアダルトビデオに出演するということ自体が信じ難い内容である旨主張するが,本件各動画の精巧さを踏まえれば,A及びBに関する知識が豊富ではない視聴者がA及びBがアダルトビデオに出演したと誤信する可能性があることはもとより,A及びBについて豊富な知識を有する視聴者においても誤信するおそれがないとはいえない。

(3)以上によれば,本件各動画の掲載は,A及びBがアダルトビデオに出演した旨の社会的評価を害するに足りる事実を摘示したといえ,名誉毀損罪が成立する。

(法令の適用)

罰条

 判示第1の行為    刑法230条1項

 判示第2の各行為   別紙2記載の番号ごとに,著作物の翻案権の侵害及び公衆送信権の侵害を包括して,著作権法119条1項,23条1項,27条,28条

 判示第3の行為のうち,

  著作権法違反の点  著作物の翻案権の侵害及び公衆送信権の侵害を包括して,著作権法119条1項,23条1項,27条,28条

  名誉毀損の点    刑法230条1項

科刑上一罪の処理(判示第3)

 刑法54条1項前段,10条(1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,1罪として重い著作権法違反の罪の刑で処断)

刑種の選択

 判示第1       懲役刑を選択

 判示第2ないし3   懲役刑及び罰金刑を選択

併合罪の処理      刑法45条前段

 懲役刑について    刑法47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重)

 罰金刑について    刑法48条2項(判示第2及び第3の各罪所定の罰金の多額を合計)

労役場留置       刑法18条

刑の執行猶予      刑法25条1項(懲役刑を猶予)

訴訟費用        刑訴法181条1項ただし書(不負担)

(量刑の理由)

 本件は,被告人が,アダルトビデオの女優の顔に芸能人らの顔を合成加工したディープフェイク動画を作成して自ら運営するインターネットサイトに掲載したという名誉毀損及び著作権法違反の事案である。

 被告人は,本件サイトの会員から会費を徴収しようと考え,ディープフェイク動画を作成して掲載することを繰り返し,その一環として本件各犯行に及んだものである。常習的かつ職業的犯行であり,利欲的な動機にも酌量の余地はない。

 本件犯行は,アダルトビデオの制作者の努力にただ乗りして利益を得ようとしたものであり,著作権者に対し経済的な損害を生じさせ得るものである上,顔の画像を使用された芸能人に対し芸能活動において極めて重要であるイメージを傷つけるものであって,精神的苦痛を与えたほか,経済的な損害をも生じさせかねないものといえる。一度インターネット上に掲載されると際限なく拡散されるおそれがあることをも考慮すれば,犯行態様の悪質さは明らかである。

 以上を踏まえると,被告人の刑事責任は軽視できず,被告人に対しては,懲役刑を科した上で,本件が利得目的の犯行であることにも照らし罰金刑を併科するのが相当である。

 他方で,被告人が事実関係については認めて,反省文をしたためるなど反省の態度を示していること,被告人の父が出廷し今後の監督を誓約したこと,前科がないこと,本件により大学を退学するなど一定の社会的制裁を受けていることなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。

 そうすると,被告人に対しては主文のとおりの懲役刑及び罰金刑を科した上で,懲役刑についてはその執行を猶予するのが相当であると判断した。

(求刑-懲役2年及び罰金100万円)

  令和3年9月2日

    東京地方裁判所刑事第15部

        裁判長裁判官  楡井英夫

           裁判官  赤松亨太

           裁判官  竹田美波

同族会社において支配権をめぐる争いがあるなか、すべての株主7名(発行済株式総数8100株)のうち、1名(持株数2100株、約26%)の株主に対して、株主総会の開催通知がなされず、その出席もないままに、株主総会が開かれ、新株発行が無効とされた事例

 

 

 

              株主総会決議無効確認等請求事件

【事件番号】      大分地方裁判所判決/昭和45年(ワ)第634号

【判決日付】      昭和47年3月30日

【判示事項】      代表取締役が有効な取締役会決議に基づかないでした新株発行を無効と解すべき特別の事情があるとされた事例

【参照条文】      商法280の15

【掲載誌】        判例時報665号90頁

【評釈論文】      ジュリスト585号145頁

             法学研究(慶応大)49巻12号98頁

 

 

会社法

第八節 募集株式の発行等

第一款 募集事項の決定等

(募集事項の決定)

第百九十九条 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。

一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)

二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法

三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額

四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間

五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項

2 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。

3 第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。

4 種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。

5 募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。

 

(公開会社における募集事項の決定の特則)

第二百一条 第百九十九条第三項に規定する場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。

2 前項の規定により読み替えて適用する第百九十九条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定める場合において、市場価格のある株式を引き受ける者の募集をするときは、同条第一項第二号に掲げる事項に代えて、公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法を定めることができる。

3 公開会社は、第一項の規定により読み替えて適用する第百九十九条第二項の取締役会の決議によって募集事項を定めたときは、同条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の二週間前までに、株主に対し、当該募集事項(前項の規定により払込金額の決定の方法を定めた場合にあっては、その方法を含む。以下この節において同じ。)を通知しなければならない。

4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

5 第三項の規定は、株式会社が募集事項について同項に規定する期日の二週間前までに金融商品取引法第四条第一項から第三項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。

 

(株主総会の決議)

第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。

一 第百四十条第二項及び第五項の株主総会

二 第百五十六条第一項の株主総会(第百六十条第一項の特定の株主を定める場合に限る。)

三 第百七十一条第一項及び第百七十五条第一項の株主総会

四 第百八十条第二項の株主総会

五 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会

後略

 

(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)

第八百三十条 株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第九百三十七条第一項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。

2 株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。

 

 

 

       主   文

 

 1 被告が昭和四四年一〇月一五日定時株主総会においてなした梅野朋子、後藤実および梅野保を取締役に、山田淳子を監査役に選任する旨の株主総会の決議は無効であることを確認する。

 2 被告が昭和四五年五月五日になした二、九〇〇株の新株発行は無効であることを確認する。

 3 訴訟費用は被告の負担とする。

 

       事   実

 

 (原告の求める判決)

 主文同旨

 (被告の求める判決)

  1 原告の請求を棄却する。

  2 訴訟費用は原告の負担とする。

 (原告の請求原因)

 一、被告は昭和三五年一一月一五日設立され一般乗用旅客自動車運送を業とする株式会社である。

 二、原告適格

  1イ 後藤実は、右の会社設立時に、被告の発行した株式五〇〇株を引受けた。

   ロ 同人は同三六年八月一〇日これを原告に譲渡した。

  2 原告は、同四四年九月一二日被告の発行した株式二一〇〇株を引受けた。

  3 原告は、同四二年一〇月三一日、梅野朋子および梅野藤太とともに被告の取締役に、梅野朋子と共に代表取締役に選任された。右取締役の任期は定款で二年と定められている。

 三、株主総会決議の外形

 被告は、同四四年一〇月一五日定時株主総会を開き、主文一項の取締役および監査役選任の決議をなし、その決議にそった登記がなされた。

 四、株主総会決議無効事由

  1 右の株主総会の開催の通知は原告に対してはなされなかった。

  2 右総会当時の被告の発行済株式は八一〇〇株であった。

  3 右総会当時の株主およびその株式数はつぎのとおりである。

   イ、梅野藤太   二〇〇〇株

   ロ、梅野 保    五〇〇株

   ハ、梅野真語    三〇〇株

   ニ、山田淳子    二〇〇株

   ホ、原告     二六〇〇株

   (この取得原因は二12のとおり)

   ヘ、梅野朋子   二五〇〇株

  4 よって、発行済株式数八一〇〇株、株主六名のうち二六〇〇株を有する株主一名に通知なく開催された総会は無効である。

 五、新株発行

 被告は、同四五年五月五日主文二項のとおり新株二九〇〇株を発行した。

 六、新株発行無効事由

  1 梅野朋子、後藤実および梅野保は、同四五年四月一五日、被告の取締役会を開き新株二九〇〇株を発行する旨決議し、この決議にもとづき、被告は主文二項のとおり新株を発行した。

  2 しかし、梅野朋子、後藤実および梅野保を取締役に選任した前記三の決議は、前記四のとおり無効である。

  1 したがって右1の取締役会決議は取締役でないものがなしたもので不存在であるから、これにもとづいてなされた本件新株発行も無効である。

 (請求原因に対する被告の認否)

 一、請求原因一の事実は認める。

 二、同二1イ、2および3の事実は認める。二1ロの事実は否認する。

 三、同三の事実は認める。

  四、同四1、2ならびに3イないしニおよびヘの事実は認める。3ホの事実は否認する。すなわち原告の持株数は二六〇〇株でなく二一〇〇株であり、その余の五〇〇株は後藤実の所有である。

 五、同五の事実は認める。

 六、同六1の事実は認める。六2は争う。