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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

第18章 危険負担に関する見直し

危険負担に関する見直し

危険負担とは、双務契約(売買等)の一方の債務が債務者の責めに帰すべき事由によらないで履行不能となった場合に、その債務の債権者の負う反対給付債務がどのような影響を受けるのかを定める制度

問題の所在

旧法

原則 ⇒ 債務者主義(旧法§536条1項)=債権者の負う反対給付債務は消滅する。

例外 ⇒ 債権者主義(旧法§534等)=債権者の負う反対給付債務が存続する。

① 特定物に関する物権の設定または移転を目的とする双務契約等について債務者の責めに帰すべき事由によらないで目的物が滅失または損傷した場合

② 債権者の責めに帰すべき事由によって履行不能となった場合

地震で焼失

①について債権者主義を採用すると、例えば、建物の売買契約の締結直後にその建物が地震によって滅失した場合にも買主は代金を支払う義務を負うこととなるが、この結論は債権者に過大なリスクを負わせるものであって不当ではないか。

 

債権者主義とは?

このとき、 消滅しなかった他方の債務(代金の支払い債務)は消滅しない、という考え方を「債権者主義」といいます。 消滅した債務(目的物の引渡し債務)の債権者が危険を負担するという意味です。 この場合、買主は、陶器(目的物)を入手できないにもかかわらず、代金を支払わなければなりません。

 

債務者主義とは?

他方で、消滅しなかった他方の債務(代金の支払い債務)も消滅する、という考え方を「債務者主義」といいます。 消滅した債務(目的物の引渡し債務)の債務者が危険を負担するという意味です。 この場合、買主も、代金を支払う必要はありません。

 

まとめると、債権者主義と債務者主義は、それぞれ次のような意味となります。

 

債権者主義と債務者主義とは?

債権者主義

消滅しなかった他方の債務は消滅せず、債権者が危険を負担する。

 

債務者主義

消滅しなかった他方の債務も消滅し、債務者が危険を負担する。

 

改正法の内容

①    について債務者主義を採用(現§534・535を削除)

債権者主義を廃止した

 

危険負担の効果として、反対給付債務の履行拒絶権が与えられた。

代金支払債務あり?

※ 併せて、契約解除の要件に関する見直しに伴い、効果を反対給付債務の消滅から反対給付債務の履行拒絶権に改める。

【新§536】

 

(債務者の危険負担等)

第536条

1 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

2(略)

 

※ 買主が目的物の引渡しを受けた後に目的物が滅失・損傷したときは、買主は代金の支払(反対給付の履行)を拒めない。【新§567条1項】

 

今回の改正では、危険の移転時期が「引渡し時」であることが明文化されました。

 

(目的物の滅失等についての危険の移転)

第567条 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、または損傷したときは、買主は、その滅失または損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。

2(略)

 

夫婦別姓訴訟

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/平成26年(オ)第1023号

【判決日付】      平成27年12月16日

【判示事項】      1 民法750条と憲法13条

             2 民法750条と憲法14条1項

             3 民法750条と憲法24条

【判決要旨】      1 民法750条は,憲法13条に違反しない。

             2 民法750条は,憲法14条1項に違反しない。

             3 民法750条は,憲法24条に違反しない。

             (3につき補足意見,意見,反対意見がある。)

【参照条文】      憲法13

             憲法14-1

             憲法24

             民法750

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集69巻8号2586頁

 

 

事案の内容

 本件は,夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称すると定める民法750条の規定(以下「本件規定」という。)の憲法適合性が問題とされ,「夫婦別姓訴訟」等として広く報道された事件である。

 

 

民法

(夫婦の氏)

第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

 

 

憲法

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 

 

専ら財産相続を目的とする養子縁組であるから無効であるとの主張に対し、原審認定との事実関係によれば、真実養親子関係を創設すべき縁組意思があつたものと認められるとして原判決を相当とした事例

 

 

養子縁組無効確認請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和37年(オ)第1235号

【判決日付】      昭和38年12月20日

【判示事項】      専ら財産相続を目的とする養子縁組であるから無効であるとの主張に対し、原審認定との事実関係によれば、真実養親子関係を創設すべき縁組意思があつたものと認められるとして原判決を相当とした事例

【判決要旨】      他の相続人の相続分を排することを主たる目的としなされた養子縁組であつても、親子としての精神的つながりをつくる意思が認められるかぎり無効ではない。

【参照条文】      民法802

【掲載誌】        家庭裁判月報16巻4号117頁

             最高裁判所裁判集民事70号425頁

             判例タイムズ166号225頁

 

 

民法

(縁組の無効)

第八百二条 縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。

二 当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百九十九条において準用する第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない。

 

電話傍受事件・平成11年法律第138号による刑訴法222条の2の追加前において検証許可状により電話傍受を行うことの適否

 

 

              覚せい剤取締法違反、詐欺、同未遂被告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/平成9年(あ)第636号

【判決日付】      平成11年12月16日

【判示事項】      平成11年法律第138号による刑訴法222条の2の追加前において検証許可状により電話傍受を行うことの適否

【判決要旨】      平成11年法律第138号による刑訴法222条の2の追加前において、捜査機関が電話の通話内容を通話当事の同意を得ずに傍受することは、重大な犯罪に係る被疑事件について、罪を犯したと疑うに足りる充分な理由があり、かつ、当該電話により被疑事実に関連する通話の行われる蓋然性があるとともに、他の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であるなどの事情が存し、犯罪の捜査上真にやむを得ないと認めらる場合に、対象の特定に資する適切な記載がある検証許可状によって実施することが許されていた。

             (反対意見がある)

【参照条文】      憲法13

             憲法21-2

             憲法31

             憲法35

             刑事訴訟法128

             刑事訴訟法129

             刑事訴訟法179-1

             刑事訴訟法218-1

             刑事訴訟法218-3

             刑事訴訟法218-5

             刑事訴訟法219-1

             刑事訴訟法222-1

             刑事訴訟法222の2

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集53巻9号1327頁

 

 

憲法

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

② 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

 

 

 

刑事訴訟法

第百二十八条 裁判所は、事実発見のため必要があるときは、検証することができる。

 

第百二十九条 検証については、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊その他必要な処分をすることができる。

 

第十四章 証拠保全

第百七十九条 被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第一回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる。

② 前項の請求を受けた裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

 

第二百十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。

② 差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

③ 身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、第一項の令状によることを要しない。

④ 第一項の令状は、検察官、検察事務官又は司法警察員の請求により、これを発する。

⑤ 検察官、検察事務官又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。

⑥ 裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。

 

第二百十九条 前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。

② 前条第二項の場合には、同条の令状に、前項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。

③ 第六十四条第二項の規定は、前条の令状についてこれを準用する。

 

第二百二十二条 第九十九条第一項、第百条、第百二条から第百五条まで、第百十条から第百十二条まで、第百十四条、第百十五条及び第百十八条から第百二十四条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条、第二百二十条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について、第百十条、第百十一条の二、第百十二条、第百十四条、第百十八条、第百二十九条、第百三十一条及び第百三十七条から第百四十条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条又は第二百二十条の規定によつてする検証についてこれを準用する。ただし、司法巡査は、第百二十二条から第百二十四条までに規定する処分をすることができない。

② 第二百二十条の規定により被疑者を捜索する場合において急速を要するときは、第百十四条第二項の規定によることを要しない。

③ 第百十六条及び第百十七条の規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条の規定によつてする差押え、記録命令付差押え又は捜索について、これを準用する。

④ 日出前、日没後には、令状に夜間でも検証をすることができる旨の記載がなければ、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第二百十八条の規定によつてする検証のため、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入ることができない。但し、第百十七条に規定する場所については、この限りでない。

⑤ 日没前検証に着手したときは、日没後でもその処分を継続することができる。

⑥ 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第二百十八条の規定により差押、捜索又は検証をするについて必要があるときは、被疑者をこれに立ち会わせることができる。

⑦ 第一項の規定により、身体の検査を拒んだ者を過料に処し、又はこれに賠償を命ずべきときは、裁判所にその処分を請求しなければならない。

 

第二百二十二条の二 通信の当事者のいずれの同意も得ないで電気通信の傍受を行う強制の処分については、別に法律で定めるところによる。

 

 

コンタクトレンズの処方のために行われる検眼及びテスト用コンタクトレンズの着脱の各行為と医師法一七条にいう「医業」の内容となる医行為

 

 

医師法違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/平成6年(あ)第1215号

【判決日付】      平成9年9月30日

【判示事項】      コンタクトレンズの処方のために行われる検眼及びテスト用コンタクトレンズの着脱の各行為と医師法一七条にいう「医業」の内容となる医行為

【判決要旨】      コンタクトレンズの処方のために行われる検眼及びテスト用コンタクトレンズの着脱の各行為は、いずれも医師法一七条にいう「医業」の内容となる医行為に当たる。

【参照条文】      医師法17

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集51巻8号671頁

 

 

医師法

第十七条 医師でなければ、医業をなしてはならない。

 

第17章 隔地者間の契約の成立に関する見直し

第1節 申込みの撤回権の新設

【旧法】 申込みの相手方が隔地者

申込みの相手方が対話者

承諾期間の定め

相当な期間を経過するまで撤回不可(旧法§524)

規定なし

撤回不可。期間内に承諾がないと申込みの効力消滅(旧法§521)

対話者に対する契約の申込みの効力等の明記

(改正法の内容)

対話者に対して承諾の期間を定めないで行った申込みに関する有力な解釈を明文化

対話が継続している間であればいつでも申込みの撤回が可能(新§525条2項)

対話継続中に承諾がされなければ、申込みは効力を失う(新§525条3項)

※ 併せて、原則撤回不可の申込みも撤回権を留保したケースでは撤回可能等の例外的取扱いについての解釈も明文化(新§523条1項、 §525条1項、 §525条3項)

契約の申込みと撤回 :契約は、申込みがされ、それに対して承諾があれば、成立する。申込みが撤回され、またはその効力の消滅後に承諾があっても、契約は成立しない。

隔地者と対話者 :意思表示が到達するまでに時間を要する者を「隔地者」と、要しない者を「対話者」という。

空間的な距離ではなく時間が判断の基準となるため、電話の相手方は対話者となる。

・ 問題の所在

隔地者に対して承諾の期間を定めないで(~までに回答してください、と定めずに)行った申込みについては規定があるが、対話者に対して承諾の期間を定めないで行った申込みについて規定はなく、そのルールが不明瞭。

【改正法】 申込みの相手方が隔地者

申込みの相手方が対話者

承諾期間の定め

相当な期間を経過するまで撤回不可(ただし、撤回権を留保したときは可能)(新

§525条1項)

・対話継続中は撤回可能(新§525条2項)

・対話継続中に承諾がなければ申込みの効力消滅(不消滅の意思が表示されたときは不消滅)(新§525条3項)

撤回不可(ただし、撤回権を留保したときは可能)

期間内に承諾がないと申込みの効力消滅

(新§523条1項)

・ 基本的な概念

 

第2節 隔地者間の契約の成立時期の見直し

改正法

隔地者間の契約の成立時期の見直し

旧法§ 526条1項を削除

隔地者間の場合でも、承諾の意思表示が相手方に到達した時に効力が発生(旧法§97条1項が適用される。)

(改正法の内容)

申込み→承諾の意思表示を発信→承諾の意思表示が到達

時間がかかる(通信手段:未発達)

契約成立時間がかからない

(通信手段:発達)

隔地者間の契約に関しては、「発信主義」(承諾通知を発信した時に契約が成立)を採用(旧法§ 526条1項)。

※ 意思表示は相手方に到達した時に効力を生ずるとの到達主義(旧法§97条1項)の例外。取引の迅速性を考慮。承諾者が早めに履行の準備を行うことを可能にする。

(旧法)

申込み→承諾の意思表示を発信→承諾の意思表示が到達

契約成立

(問題の所在)

旧法

・ 承諾通知の発信時に契約が成立すると、申込者が知らない間に履行遅滞 に陥るおそれがあるなど、申込者が不測の損害を被るおそれがある。

・ 当事者が迅速な契約の成立を望むのであればメール等を使えばよく、迅速な通信手段のある今日では例外規定を置く必要性に乏しい。

※既にインターネット上の取引においては、発信主義ではなく、到達主義を採用(電子消費者契約法)。

 

譲渡担保を設定した債務者の目的不動産に対するいわゆる受戻権と民法167条2項の規定の適用の可否

 

 

所有権移転登記手続請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和55年(オ)第153号

【判決日付】      昭和57年1月22日

【判示事項】      譲渡担保を設定した債務者の目的不動産に対するいわゆる受戻権と民法167条2項の規定の適用の可否

【判決要旨】      譲渡担保を設定した債務者による債務の弁済と右弁済に伴う目的不動産の返還請求権とを合体し、1個の形成権たる受戻権として、これに民法167条2項の規定を適用することはできない。

【参照条文】      民法167-2

             民法369

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集36巻1号92頁

 

 

民法

(債権等の消滅時効)

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。

3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

 

(抵当権の内容)

第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

 

 

 

 

 

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

 

       理   由

 

 上告代理人青木仁子の上告理由一の(一)について

 一 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。すなわち、上告人らの先代亡A(昭和五三年三月一一日死亡)は、昭和二八年三月九日、被上告人から一〇万円を借受けて、その所有にかかる第一審判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を譲渡担保として提供し、同日、被上告人に対し売買名下に所有権移転登記を経由したところ、右債務(以下「本件債務」という。)の弁済期は遅くとも同二九年一二月末日に到来したが、その後Aは、同四七年六月二〇日に被上告人に対し、本件債務の弁済として一〇万円(元金相当額)を現実に提供し、更に、同五一年三月八日に残債務を弁済した。

 二 上告人らの本訴請求は、右事実関係のもとで、本件債務がAの弁済により消滅したため、Aにおいて、本件土地所有権を回復したか、又は被上告人に対する本件土地所有権の返還請求権を取得したところ、上告人らはAの死亡によりこれを承継したとして、被上告人に対し、本件土地の所有権移転登記手続を求めるものである。

 三 右請求についての原審の判断の概要は、次のとおりである。すなわち、(1) 譲渡担保提供者(債務者)は債務を弁済して目的物を受戻すことを請求できるが、右権利すなわち、受戻権は、いわゆる形成権であつて、民法一六七条二項により二〇年間これを行使しないときは、時効により消滅する、(2) 受戻権は、債務者が債権者に対し債務の元利金及び遅延損害金等の全額を現実に提供して、受戻の意思表示をなす方法により行使すべきもので、もとより債務の本旨に従つた弁済をなすべきものである、(3) ところで、本件債務の履行期は遅くとも昭和二九年一二月末日に到来したから、Aは翌三〇年一月一日以降は債務を弁済して本件土地の受戻を請求し得ることとなつたものというべきところ、Aは、本件債務の弁済として、昭和四七年六月二〇日被上告人に対し一〇万円(元金相当額)を現実に提供したが、同三〇年一月一日以降の民法所定年五分の割合による遅延損害金について現実の提供をしていない以上、同人のした右提供は債務の本旨に従つたものとは言い得ない、(4) Aは、その後同五一年三月八日に至つて残債務を弁済したが、本件土地の受戻権は右弁済に先立ち、二〇年の時効期間の経過によつて既に消滅しているものである。

  原審は、以上の判断により、上告人らの本訴請求を棄却すべきものとした。

 四 ところで、不動産を目的とする譲渡担保契約において、債務者が債務の履行を遅滞したときは、債権者は、目的不動産を処分する権能を取得し、この権能に基づいて、当該不動産を適正に評価された価額で自己の所有に帰せしめること、又は相当の価格で第三者に売却等をすることによつて、これを換価処分し、その評価額又は売却代金等をもつて自己の債権の弁済に充てることができるが、他方、債務者は、債務の弁済期の到来後も、債権者による換価処分が完結するに至るまでは、債務を弁済して目的物を取り戻すことができる、と解するのが相当である。そうすると、債務者によるいわゆる受戻の請求は、債務の弁済により債務者の回復した所有権に基づく物権的返還請求権ないし契約に基づく債権的返還請求権、又はこれに由来する抹消ないし移転登記請求権の行使として行われるものというべきであるから、原判示のように、債務の弁済と右弁済に伴う目的不動産の返還請求権等とを合体して、これを一個の形成権たる受戻権であるとの法律構成をする余地はなく、したがつてこれに民法一六七条二項の規定を適用することは許されないといわなければならない。

  してみれば、前掲の見解を前提として、Aのした本件債務の弁済が形成権たる受戻権の二〇年の時効期間経過後にされたものであることを理由に弁済の効力を否定した原審の判断には、譲渡担保に関する法令の解釈、適用を誤つた違法があるものといわなければならない。そして、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、本件債務について、その本旨に従つた弁済がなされたかどうか、本件土地についてAが返還請求権を取得したかどうか等につき、更に審理を尽くさせる必要があるから、これを原審に差し戻すのが相当である。

よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第二小法廷

地方公共団体の議会がする議員の資格に関する決定と不服申立権者の範囲

 

 

裁決取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和55年(行ツ)第119号

【判決日付】      昭和56年5月14日

【判示事項】      地方公共団体の議会がする議員の資格に関する決定と不服申立権者の範囲

【判決要旨】      地方公共団体の議会の議員が地方自治法92条の2の規定に該当するかどうかについて議会がする同法127条1項の規定による決定に対し同法127条4項、118条5項の規定により不服申立をすることができる者は、右決定によつてその職を失うこととなる当該議員に限られる。

【参照条文】      地方自治法92の2

             地方自治法118-1

             地方自治法118-5

             地方自治法127-1

             地方自治法127-4

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集35巻4号717頁

 

 

地方自治法

第九十二条の二 普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負(業として行う工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物件の納入その他の取引で当該普通地方公共団体が対価の支払をすべきものをいう。以下この条、第百四十二条、第百八十条の五第六項及び第二百五十二条の二十八第三項第十二号において同じ。)をする者(各会計年度において支払を受ける当該請負の対価の総額が普通地方公共団体の議会の適正な運営の確保のための環境の整備を図る観点から政令で定める額を超えない者を除く。)及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。

 

第百十八条 法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体の議会において行う選挙については、公職選挙法第四十六条第一項及び第四項、第四十七条、第四十八条、第六十八条第一項並びに普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第九十五条の規定を準用する。その投票の効力に関し異議があるときは、議会がこれを決定する。

② 議会は、議員中に異議がないときは、前項の選挙につき指名推選の方法を用いることができる。

③ 指名推選の方法を用いる場合においては、被指名人を以て当選人と定めるべきかどうかを会議に諮り、議員の全員の同意があつた者を以て当選人とする。

④ 一の選挙を以て二人以上を選挙する場合においては、被指名人を区分して前項の規定を適用してはならない。

⑤ 第一項の規定による決定に不服がある者は、決定があつた日から二十一日以内に、都道府県にあつては総務大臣、市町村にあつては都道府県知事に審査を申し立て、その裁決に不服がある者は、裁決のあつた日から二十一日以内に裁判所に出訴することができる。

⑥ 第一項の規定による決定は、文書を以てし、その理由を附けてこれを本人に交付しなければならない。

 

第百二十七条 普通地方公共団体の議会の議員が被選挙権を有しない者であるとき、又は第九十二条の二(第二百八十七条の二第七項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に該当するときは、その職を失う。その被選挙権の有無又は第九十二条の二の規定に該当するかどうかは、議員が公職選挙法第十一条、第十一条の二若しくは第二百五十二条又は政治資金規正法第二十八条の規定に該当するため被選挙権を有しない場合を除くほか、議会がこれを決定する。この場合においては、出席議員の三分の二以上の多数によりこれを決定しなければならない。

② 前項の場合においては、議員は、第百十七条の規定にかかわらず、その会議に出席して自己の資格に関し弁明することはできるが決定に加わることができない。

③ 第百十八条第五項及び第六項の規定は、第一項の場合について準用する。

 

 

 

       主   文

 

 原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

 被上告人の請求を棄却する。

 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人芳田勝己の上告理由について

 地方自治法(以下「法」という。)一二七条四項は、普通地方公共団体の議会の議員が法九二条の二の規定に該当するかどうかについて法一二七条一項に基づき議会のした決定に関し、法一一八条五項の規定を準用し、右決定に不服がある者は審査の申立及び出訴をすることができるものとしている。しかしながら、法一二七条四項が、右のように前記議会の決定に関する不服申立について法一一八条五項の規定を準用するという形をとつていることから直ちに、法はこの両者の不服申立を完全に同一視し、後者の争訟に適用される法規及び法理のすべてを前者にも適用すべきことを定めたものと解することは相当でない。元来法一一八条五項の規定は、普通地方公共団体の議会の行う選挙における投票の効力に関する異議について議会のする決定に不服がある場合にこれを争う方法及び手続を定めたものであるが、この場合における審査申立及び出訴による争訟の制度は、一般の公職選挙法に基づく選挙に関する争訟の制度と同様に、専ら議会における選挙の適正な執行を担保する趣旨に出たもので、個人の権利救済を目的とするものではなく、法の適正な執行の確保を目的とする民衆争訟の性格を有するものと考えられる。しかるに、前記法一二七条一項の決定は、特定の議員について右条項の掲げる失職事由が存在するかどうかを判定する行為で、積極的な判定がされた場合には当該議員につき議員の職の喪失という法律上の不利益を生ぜしめる点において一般に個人の権利を制限し又はこれに義務を課する行政処分と同視せられるべきものであつて、議会の選挙における投票の効力に関する決定とは著しくその性格を異にしており、違法な決定によつて右のような不利益を受けた当該議員に対し、同種の行政処分による被害者に対すると同様の権利救済手段としての不服申立を認める必要や理由はたやすく肯定することができても、後者の決定におけるように選挙の適正な執行の担保という公益上の目的からこれに対する民衆争訟的な不服手続を設けるべきものとされた趣旨がこの場合にも当然に妥当するということはできないのである。もつとも、議員につき客観的に失職事由が存在するのに消極的な決定がされた場合に、かかる議員をその職にとどまらしめるべきではないとする公益上の要請から民衆争訟的な不服手続を設けてその議員の排除を可能ならしめる必要も皆無とはいえないけれども、その必要性が格別大きいとはとうてい考えられず、法がそのような特段の意図を有していたと認めるべき根拠は薄弱であるといわなければならない(法一四三条は、普通地方公共団体の長につき議会の議員の場合における法一二七条の規定に相当する定めをしているが、右一四三条三項は、同条一項の規定による選挙管理委員会の決定に対する不服申立権者については、単に「第一項の規定による決定に不服がある者」と規定するにとどまつている。そして同条三項の規定は、普通地方公共団体の出納長、収入役及び法第三筋第一款に掲げる各種委員会の委員につき同様の失職事由があるかどうかについて当該地方公共団体の長等がする決定に対する不服についても準用されている。一般に、法律が民衆争訟手続を設ける場合には、争訟提起権者の範囲を明確にするか、あるいは少なくともこれを識別しうるような規定を設けるのが通例であることに照らして考えると、前記法一四三条三項が不服申立権者につき右のような漠然とした抽象的な規定を設けるにとどめ、それ以上争訟提起権者の範囲を識別すべきなんらの基準をも示していないのは、法が右の場合に民衆争訟的な不服手続を設ける意図を有していないためであると推認せざるをえない。そうだとすると、議会の議員の場合に限つて特に、民衆争訟的な不服手続を設けるべき積極的な理由が見出だせない以上、法一二七条の場合についても同様に解すべきものと思われる。)。

 このように見てくると、法一二七条四項が同条一項の決定につき法一一八条五項の規定を準用しているのは、単に、右決定に対し不服申立が可能なこと、及びその方法、手続は右一一八条五項のそれと同様であることを定めたにとどまり、後者の不服と同様の民衆争訟的な不服手続をこの場合にも採用したわけのものではなく、不服申立をすることができる者の範囲は、一般の行政処分の場合と同様にその適否を争う個人的な法律上の利益を有する者に限定されることを当然に予定したもの、すなわち、この場合についていえば、専ら決定によつてその職を失うこととなつた当該議員に対して前記の方法による不服申立の権利を付与したものにすぎないと解するのが相当である。

 そうすると、長崎県福江市議会が同議会議員である訴外Aは法九二条の二の規定に該当しないとした本件決定については、同議会の議員として右訴外人が右規定に該当するとの決定を求めたというにすぎない被上告人が、法一二七条四項、一一八条五項に基づく審査の申立権を有しないことは明らかであるから、同決定に対する被上告人の審査申立を申立権のないものとして却下した上告人の本件裁決は適法である。右と異なる見解に立つて本件裁決を違法であるとしこれを取り消すべきものとした原判決は、法令の解釈適用を誤つた違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由がある。したがつて、原判決は破棄を免れず、更にこれと同旨の第一審判決は取消を免れない。そして、被上告人の請求はこれを棄却すべきである。

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官藤崎萬里の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 裁判官藤崎萬里の反対意見は、次のとおりである。

 私は、多数意見と異なり、本件議会の決定につき被上告人は地方自治法(以下「法」という。)一二七条四項、一一八条五項に基づき上告人に対し審査の申立をすることができるとの見解をとるものであるが、その理由は、これと同旨の見解に立つ本件の一、二審の判決及びその他の裁判例に示されているところと大体同様であるから、詳細はこれらに譲ることとし、ここでは多数意見がその論拠とするところを中心に特に重要と思われる諸点について私見を述べることとしたい。

 (一) 多数意見は、失職事由が存在するのに議員をその職にとどまらせるような決定が行われた場合にこれを排除する途を開いておく必要も皆無とはいえないが、格別大きいとはとうてい考えられないとする。私は、それは公益上強く要請されるところであると思う。地方公共団体等と請負関係のある私企業から議員を隔離することは、地方行政の公正を期する上で肝要なことであると思われるが、この隔離が確実に行われるためには、右のように違法にその職にとどまつている議員を排除する途が開かれていることがどうしても必要であるはずである。なお、特定の議員に失職事由があつてこれを排除しようとする場合そのための議案には三分の二以上の多数の賛成が得られることが必要であるが、このことは他面三分の一の反対票を集めることができれば右の議案を否決することができることを意味するから、議会の決定によつて特定の議員が違法に排除される可能性よりも違法に職にとどめられる可能性の方が実際問題としてはるかに大きいことも、この関連で忘れてはならないことであろう。

 (二) 多数意見は、法が民衆争訟的な手続により議員の排除を可能ならしめる特段の意図を有していたと認めるべき根拠は薄弱であるという。

 これに対して、まず指摘したいのは、法一二七条一項の場合に準用される法一一八条五項の規定は民衆争訟的なものを含む不服手続を定めていると解するのが最も自然な解釈ではなかろうかということである。多数意見は、法一一八条五項が同条一項の場合に適用されるときは「第一項の規定による決定に不服がある者」という文言をそのとおり別段の限定なく解しながら、それが法一二七条一項の場合に準用される段になると、その決定によつて職を失うことになつた議員に限られると解するわけであるが、準用に際してこのようないわば解釈の差替をすることは、準用に伴い必要とされる読替その他の修正の範囲内であるということはできないであろう。こうして、右の「第一項の規定による決定に不服がある者」という文言を「準用」の場合も「適用」の場合と同じ意味に解することにすると、その当然の帰結として、法一一八条五項の規定は、それが法一二七条一項の場合に準用されるときは、民衆争訟的なものを含む意味合いをもつてくるわけである。

 次に、多数意見のいわゆる法の意図についてであるが、私は、法の趣意は、その制定に携つた者の意図のいかんにかかわらず、第一次的には、法律の各条の規定そのものから汲み取られるべきものであろうと考える。そして、このように規定に即して解釈した結果がいかにも不合理であるというような場合にはじめて、法の趣意はそのようなところにはないはずであるということで、これとは違つた解釈の仕方をするように工夫することにもなるわけであろう。しかし、この場合は、そのような工夫をする必要性は認められない。民衆争訟的な不服手続を設けることに合理性、合目的性があるからである。

 議員の場合に限つて特に民衆争訟的な不服手続を設けるべき積極的な理由がないことは多数意見のいうとおりであるが、問題は、それにもかかわらず、法が議員の場合に限つて他と違つた規定の仕方をしているところから来ているわけであつて、規定の仕方が違えばそのもつ意味合いも違つてくるのが通常であろう。私のように解すると普通地方公共団体の長その他との横並びがよくないことはたしかであるが、民衆争訟的な手続を設けることのメリツトを重視する立場からすれば、議員の場合だけでも望ましい形になつている方がそれだけましであるということになるであろう。

 (三) 最後に私の方から特に指摘したい点は、特定の議員について法九二条の二に該当する事実があるかどうかの判断は、本質的に法律的な判断であり、あるいはそうであるべきであるということである。それは、本来、議会における表決において賛成・反対のどちらが多数を得たかによつて政治的に決着をつけられることが適当なような問題でもなければ、まして、そうするほかないような政策問題でもない。事実を客観的に確定してそれが法律の禁止するところにあたるかどうかを判断するわけであるから、司法手続に最もよくなじむ問題である。一般に、このような問題については、司法手続への途が広く開かれていることが望ましいことは、いうまでもあるまい。それは、裁判所がこの種の問題の解決に最も適しているばかりではなく、そこへの途が開かれていることが前置されている諸手続の適正を担保するゆえんとなるからである。こういうことは、本件のように、法律の規定の解釈上、ある事項が司法審査の範囲内に取り入れられているかどうかについて疑義があるような場合には、当然考慮に入れられてよいことであろうと思う。

 以上のような次第で、私は本件上告を棄却すべきであると考える。

    最高裁判所第一小法廷

 

 

訪問販売等に関する法律六条一項一号にいう「第五条の書面」に該当しないためクーリング・オフの期間が進行しないとされた事例

 

 

              契約金返還請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成4年(ワ)第19268号

【判決日付】      平成5年8月30日

【判示事項】      一 訪問販売等に関する法律六条一項一号にいう「第五条の書面」に該当しないためクーリング・オフの期間が進行しないとされた事例

             二 アルミサイディングの取付工事附帯売買契約においてクーリング・オフ権の行使による解除が認められた事例

【参照条文】      訪問販売等に関する法律4

             訪問販売等に関する法律5-1

             訪問販売等に関する法律6-1

             訪問販売等に関する法律施行規則3

【掲載誌】        判例タイムズ844号252頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト135号6頁

 

 

特定商取引に関する法律

(訪問販売における書面の交付)

第四条 販売業者又は役務提供事業者は、営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたとき又は営業所等において特定顧客から商品若しくは特定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたときは、直ちに、主務省令で定めるところにより、次の事項についてその申込みの内容を記載した書面をその申込みをした者に交付しなければならない。ただし、その申込みを受けた際その売買契約又は役務提供契約を締結した場合においては、この限りでない。

一 商品若しくは権利又は役務の種類

二 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価

三 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法

四 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期

五 第九条第一項の規定による売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又は売買契約若しくは役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項から第七項までの規定に関する事項(第二十六条第二項、第四項又は第五項の規定の適用がある場合にあつては、当該各項の規定に関する事項を含む。)を含む。)

六 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項

2 販売業者又は役務提供事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該申込みをした者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて主務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により提供することができる。この場合において、当該販売業者又は当該役務提供事業者は、当該書面を交付したものとみなす。

3 前項前段の規定による書面に記載すべき事項の電磁的方法(主務省令で定める方法を除く。)による提供は、当該申込みをした者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該申込みをした者に到達したものとみなす。

 

第五条 販売業者又は役務提供事業者は、次の各号のいずれかに該当するときは、次項に規定する場合を除き、遅滞なく(前条第一項ただし書に規定する場合に該当するときは、直ちに)、主務省令で定めるところにより、同条第一項各号の事項(同項第五号の事項については、売買契約又は役務提供契約の解除に関する事項に限る。)についてその売買契約又は役務提供契約の内容を明らかにする書面を購入者又は役務の提供を受ける者に交付しなければならない。

一 営業所等以外の場所において、商品若しくは特定権利につき売買契約を締結したとき又は役務につき役務提供契約を締結したとき(営業所等において特定顧客以外の顧客から申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約又は役務提供契約を締結したときを除く。)。

二 営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利又は役務につき売買契約又は役務提供契約の申込みを受け、営業所等においてその売買契約又は役務提供契約を締結したとき。

三 営業所等において、特定顧客と商品若しくは特定権利につき売買契約を締結したとき又は役務につき役務提供契約を締結したとき。

2 販売業者又は役務提供事業者は、前項各号のいずれかに該当する場合において、その売買契約又は役務提供契約を締結した際に、商品を引き渡し、若しくは特定権利を移転し、又は役務を提供し、かつ、商品若しくは特定権利の代金又は役務の対価の全部を受領したときは、直ちに、主務省令で定めるところにより、前条第一項第一号及び第二号の事項並びに同項第五号の事項のうち売買契約又は役務提供契約の解除に関する事項その他主務省令で定める事項を記載した書面を購入者又は役務の提供を受ける者に交付しなければならない。

3 前条第二項及び第三項の規定は、前二項の規定による書面の交付について準用する。この場合において、同条第二項及び第三項中「申込みをした者」とあるのは、「購入者又は役務の提供を受ける者」と読み替えるものとする。

 

(禁止行為)

第六条 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。

一 商品の種類及びその性能若しくは品質又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容その他これらに類するものとして主務省令で定める事項

二 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価

三 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法

四 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期

五 当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回又は当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項(第九条第一項から第七項までの規定に関する事項(第二十六条第二項、第四項又は第五項の規定の適用がある場合にあつては、当該各項の規定に関する事項を含む。)を含む。)

六 顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項

七 前各号に掲げるもののほか、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの

2 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、前項第一号から第五号までに掲げる事項につき、故意に事実を告げない行為をしてはならない。

3 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約を締結させ、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。

4 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所等以外の場所において呼び止めて同行させることその他政令で定める方法により誘引した者に対し、公衆の出入りする場所以外の場所において、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。

 

 

胸部打撲痛と身体傷害

 

 

傷害被告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷/昭和30年(あ)第803号

【判決日付】      昭和32年4月23日

【判示事項】      胸部打撲痛と身体傷害

【判決要旨】      他人の身体に対する暴行により、その胸部に疼痛を生ぜしめたときは、たとい、外見的には皮下溢血、腫脹または肋骨骨折等の打撲痕は認められないにしても、身体傷害にあたるものと解すべきである。

【参照条文】      刑法204

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集11巻4号1393頁

 

 

刑法

(傷害)

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。