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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

『実践講座 民事控訴審』日本加除出版・2023年

 

元高裁判事による実務のマイルストーン

 

 

3,960

税込

著者:佐藤陽一/著

判型:A5判

ページ数:328頁

発刊年月:2023年4月刊

 

商品情報

訴訟代理人・控訴審裁判官の双方が何をどのように考え、何を重視し、

どのような問題意識を抱きながら訴訟進行しているのかがわかる!

 

● 控訴の提起から判決までの留意点やポイントを弁護士/裁判官の視点から徹底解説。

→控訴の提起や控訴審における主張立証、和解の準備などについては、訴訟代理人である弁護士の活動の観点から、控訴審の審理、和解勧告のあり方や控訴審判決の起案などについては、裁判官の観点から解説。

→「どのように民事控訴審の手続を進めればよいのか」「どういうことに注意をして訴訟活動や期日の準備をすればよいのか」がわかる。

● 検討順序・検討方法、準備の仕方などのノウハウを多数掲載。

 

 

コメント

長文ではあるが、理解しやすい。

思ったほどの劇的エピソードはなかった。

 

 

・講師(著者)

・初めて高等裁判所で民事控訴審の審理を担当する裁判官(J)

・初めて民事控訴審の事件を担当する弁護士(A)

・何度か控訴代理人を務めたことのある弁護士(B)

を登場人物とした講義形式による解説も収録!

 

参考となる裁判例を、民事訴訟法又は民事訴訟規則の条文ごとに、判決要旨等とともに掲載!

目次

第1章 講座の進め方について

第2章 控訴(附帯控訴)の提起

第3章 控訴から控訴理由書作成まで

第4章 控訴理由書

第5章 答弁書及び控訴理由書に対する準備書面

第6章 第一回口頭弁論期日まで

第7章 控訴審第一回口頭弁論期日

第8章 控訴審続行期日

第9章 控訴審における和解

第10章 控訴審判決

第11章 上告又は上告受理申立てに伴う執行停止の申立て

番外講座1 判決の言渡し

番外講座2 口頭弁論調書の証明力について

番外講座3 釈明について

番外講座4 和解

番外講座5 経験則を学ぶ

 

第16章 契約に関する基本原則の明記

契約に関する基本原則の明記

契約に関する基本原則とは・・・

近代私法の基本原則と言われる契約自由の原則は、一般的に、以下の自由を指す。

①契約締結の自由 : 契約を締結し、または締結しない自由

②相手方選択の自由: 契約の相手方を選択する自由

③内容決定の自由 : 契約の内容を自由に決定することができること

④方式の自由 : 契約を書面で締結するか、口頭で締結するか等、契約締結の方式を自由に決定することができること

問題の所在

これらの基本原則は確立した法理として異論なく認められているが、民法に明文の規定はない。

(改正法の内容)

「法令に特別の定めがある場合を除き」、「法令の制限内において」といった文言を加えた上で、契約に関する基本原則を明文化 【新§521、 522条2項】

※ただし、これらの自由も無制限ではなく、法令上、契約の締結を義務付ける規定が設けられている場合や、特定の内容の契約が無効となる場合などがある。

(例)・水道事業者は、正当の理由がなければ給水契約の申込みを拒んではならない(水道法§15条1項)

・NHKとの受信契約締結義務(放送法§64条1項)

・30年より短い借地権の存続期間の定めは無効(借地借家法§3、9)

・保証契約は、書面でしなければ効力を生じない(民法§446条2項)

 

釣りゲーム事件・第1審被告の携帯電話機用釣りゲームにおける魚の引き寄せ画面について第1審原告の翻案権侵害の主張を排斥し,これを肯定した原判決を取り消した事例

 

              著作権侵害差止等請求控訴事件

【事件番号】      知的財産高等裁判所判決/平成24年(ネ)第10027号

【判決日付】      平成24年8月8日

【判示事項】      第1審被告の携帯電話機用釣りゲームにおける魚の引き寄せ画面について第1審原告の翻案権侵害の主張を排斥し,これを肯定した原判決を取り消した事例

【参照条文】      著作権法27

             著作権法20

             著作権法2-1

             不正競争防止法2-1

             民法709

【掲載誌】        判例タイムズ1403号271頁

             判例時報2165号42頁

 

 

判決

第2 事案の概要(略称は,特に断らない限り,原判決に従う。)

 1 事案の要旨

 本件は,第1審原告が,第1審被告らに対し,

 (1) 第1審被告らが共同で製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲーム「釣りゲータウン2」(以下「被告作品」という。)を製作し公衆に送信する行為は,第1審原告が製作し公衆に送信している携帯電話機用インターネット・ゲーム「釣り□スタ」(以下「原告作品」という。)に係る第1審原告の著作権(翻案権,著作権法28条による公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害すると主張し,①著作権法112条に基づき,原判決別紙対象目録記載の被告作品に係るゲームの影像の複製及び公衆送信の差止め,ウェブサイトからの上記影像の抹消及び記録媒体からの上記影像に係る記録の抹消,②民法709条,719条に基づき,損害賠償金の支払,③著作権法115条に基づき,謝罪広告の掲載を求め,

 (2) 第1審被告らが,原判決別紙影像目録1及び2記載の影像(以下「被告影像1」「被告影像2」という。)を第1審被告らのウェブページに掲載する行為は,不正競争防止法2条1項1号の「混同惹起行為」に当たると主張して,①同法3条に基づき,被告影像1の抹消及び第1審被告ORSOに対する被告影像2の抹消,②民法709条,719条に基づき,損害賠償金の支払,③不正競争防止法14条に基づき,謝罪広告の掲載を求め,

 (3) 第1審被告らが,第1審原告に無断で原告作品に依拠して被告作品を製作し配信した行為は,第1審原告の法的保護に値する利益を違法に侵害し,不法行為に該当すると主張して,①民法709条,719条に基づき,損害賠償金の支払,②民法723条に基づき,謝罪広告の掲載を求める事案である。

 なお,第1審原告は,上記(1)②,(2)②及び(3)①の損害賠償(弁護士費用を含む。)として,被告作品の配信開始日である平成21年2月25日から平成23年7月7日までの期間の損害金合計9億4020万円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めたものである。そして,第1審原告は,上記(1)について,(Ⅰ)被告作品における「魚の引き寄せ画面」は,原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係る第1審原告の著作権及び著作者人格権を侵害し,また,(Ⅱ)被告作品における主要画面の変遷は,原告作品における主要画面の変遷に係る第1審原告の著作権及び著作者人格権を侵害する旨主張した。

 2 原判決

 原判決は,被告作品における「魚の引き寄せ画面」は,原告作品における「魚の引き寄せ画面」に係る第1審原告の著作権(翻案権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとしたが,その余の著作権及び著作者人格権侵害の主張を認めず,また,第1審被告らの行為は不正競争防止法2条1項1号にも不法行為にも当たらないとして,前記1(1)①の全部並びに(1)②のうち合計2億3460万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で,第1審原告の請求を認容し,その余の請求を全て棄却した。

 そこで,第1審原告が,これを不服として控訴するとともに,損害賠償請求を拡張し,平成23年7月8日から平成24年3月8日までの期間の損害金として,1億2865万円及びこれに対する遅延損害金の支払を請求した。また,第1審被告らも,原判決を不服として控訴した。

 

 

 

 

著作権法

(翻訳権、翻案権等)

第二十七条 著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

 

(同一性保持権)

第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。

一 第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項又は第三十四条第一項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの

二 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変

三 特定の電子計算機においては実行し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において実行し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に実行し得るようにするために必要な改変

四 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変

 

(定義)

第二条1項 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

二 著作者 著作物を創作する者をいう。

三 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。

四 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。

五 レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。

六 レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。

七 商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。

七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

八 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。

九 放送事業者 放送を業として行う者をいう。

九の二 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。

九の三 有線放送事業者 有線放送を業として行う者をいう。

九の四 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。

九の五 送信可能化 次のいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにすることをいう。

イ 公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分(以下この号において「公衆送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下同じ。)の公衆送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体として加え、若しくは情報が記録された記録媒体を当該自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に変換し、又は当該自動公衆送信装置に情報を入力すること。

ロ その公衆送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該自動公衆送信装置に情報が入力されている自動公衆送信装置について、公衆の用に供されている電気通信回線への接続(配線、自動公衆送信装置の始動、送受信用プログラムの起動その他の一連の行為により行われる場合には、当該一連の行為のうち最後のものをいう。)を行うこと。

九の六 特定入力型自動公衆送信 放送を受信して同時に、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することにより行う自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。)をいう。

九の七 放送同時配信等 放送番組又は有線放送番組の自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。以下この号において同じ。)のうち、次のイからハまでに掲げる要件を備えるもの(著作権者、出版権者若しくは著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の利益を不当に害するおそれがあるもの又は広く国民が容易に視聴することが困難なものとして文化庁長官が総務大臣と協議して定めるもの及び特定入力型自動公衆送信を除く。)をいう。

イ 放送番組の放送又は有線放送番組の有線放送が行われた日から一週間以内(当該放送番組又は有線放送番組が同一の名称の下に一定の間隔で連続して放送され、又は有線放送されるものであつてその間隔が一週間を超えるものである場合には、一月以内でその間隔に応じて文化庁長官が定める期間内)に行われるもの(当該放送又は有線放送が行われるより前に行われるものを除く。)であること。

ロ 放送番組又は有線放送番組の内容を変更しないで行われるもの(著作権者等から当該自動公衆送信に係る許諾が得られていない部分を表示しないことその他のやむを得ない事情により変更されたものを除く。)であること。

ハ 当該自動公衆送信を受信して行う放送番組又は有線放送番組のデジタル方式の複製を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定めるものが講じられているものであること。

九の八 放送同時配信等事業者 人的関係又は資本関係において文化庁長官が定める密接な関係(以下単に「密接な関係」という。)を有する放送事業者又は有線放送事業者から放送番組又は有線放送番組の供給を受けて放送同時配信等を業として行う事業者をいう。

十 映画製作者 映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。

十の二 プログラム 電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。

十の三 データベース 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。

十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。

十二 共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。

十三 録音 音を物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。

十四 録画 影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。

十五 複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。

イ 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。

ロ 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。

十六 上演 演奏(歌唱を含む。以下同じ。)以外の方法により著作物を演ずることをいう。

十七 上映 著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴つて映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする。

十八 口述 朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く。)をいう。

十九 頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。

二十 技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号及び第二十二号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号、第三十条第一項第二号、第百十三条第七項並びに第百二十条の二第一号及び第四号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(以下「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

二十一 技術的利用制限手段 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあつては、当該著作物を電子計算機において実行する行為を含む。以下この号及び第百十三条第六項において同じ。)を制限する手段(著作権者等の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

二十二 権利管理情報 第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権、出版権又は第八十九条第一項から第四項までの権利(以下この号において「著作権等」という。)に関する情報であつて、イからハまでのいずれかに該当するもののうち、電磁的方法により著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録され、又は送信されるもの(著作物等の利用状況の把握、著作物等の利用の許諾に係る事務処理その他の著作権等の管理(電子計算機によるものに限る。)に用いられていないものを除く。)をいう。

イ 著作物等、著作権等を有する者その他政令で定める事項を特定する情報

ロ 著作物等の利用を許諾する場合の利用方法及び条件に関する情報

ハ 他の情報と照合することによりイ又はロに掲げる事項を特定することができることとなる情報

二十三 著作権等管理事業者 著作権等管理事業法(平成十二年法律第百三十一号)第二条第三項に規定する著作権等管理事業者をいう。

二十四 国内 この法律の施行地をいう。

二十五 国外 この法律の施行地外の地域をいう。

 

 

不正競争防止法

(定義)

第二条1項 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。

一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

三 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

四 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(以下「営業秘密不正取得行為」という。)又は営業秘密不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(秘密を保持しつつ特定の者に示すことを含む。次号から第九号まで、第十九条第一項第六号、第二十一条及び附則第四条第一号において同じ。)

五 その営業秘密について営業秘密不正取得行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

六 その取得した後にその営業秘密について営業秘密不正取得行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

七 営業秘密を保有する事業者(以下「営業秘密保有者」という。)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為

八 その営業秘密について営業秘密不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について営業秘密不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為

九 その取得した後にその営業秘密について営業秘密不正開示行為があったこと若しくはその営業秘密について営業秘密不正開示行為が介在したことを知って、又は重大な過失により知らないでその取得した営業秘密を使用し、又は開示する行為

十 第四号から前号までに掲げる行為(技術上の秘密(営業秘密のうち、技術上の情報であるものをいう。以下同じ。)を使用する行為に限る。以下この号において「不正使用行為」という。)により生じた物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為(当該物を譲り受けた者(その譲り受けた時に当該物が不正使用行為により生じた物であることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がない者に限る。)が当該物を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為を除く。)

十一 窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により限定提供データを取得する行為(以下「限定提供データ不正取得行為」という。)又は限定提供データ不正取得行為により取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為

十二 その限定提供データについて限定提供データ不正取得行為が介在したことを知って限定提供データを取得し、又はその取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為

十三 その取得した後にその限定提供データについて限定提供データ不正取得行為が介在したことを知ってその取得した限定提供データを開示する行為

十四 限定提供データを保有する事業者(以下「限定提供データ保有者」という。)からその限定提供データを示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその限定提供データ保有者に損害を加える目的で、その限定提供データを使用する行為(その限定提供データの管理に係る任務に違反して行うものに限る。)又は開示する行為

十五 その限定提供データについて限定提供データ不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその限定提供データを開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為が介在したことを知って限定提供データを取得し、又はその取得した限定提供データを使用し、若しくは開示する行為

十六 その取得した後にその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為があったこと又はその限定提供データについて限定提供データ不正開示行為が介在したことを知ってその取得した限定提供データを開示する行為

十七 営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)に記録されたものに限る。以下この号、次号及び第八項において同じ。)の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)若しくは指令符号(電子計算機に対する指令であって、当該指令のみによって一の結果を得ることができるものをいう。次号において同じ。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為

十八 他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為

十九 不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為

二十 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

二十一 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

二十二 パリ条約(商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第四条第一項第二号に規定するパリ条約をいう。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。以下この号において単に「権利」という。)を有する者の代理人若しくは代表者又はその行為の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者が、正当な理由がないのに、その権利を有する者の承諾を得ないでその権利に係る商標と同一若しくは類似の商標をその権利に係る商品若しくは役務と同一若しくは類似の商品若しくは役務に使用し、又は当該商標を使用したその権利に係る商品と同一若しくは類似の商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくは当該商標を使用してその権利に係る役務と同一若しくは類似の役務を提供する行為

 

 

 

普通傷害保険契約の約款に基づき死亡保険金の支払を請求する場合における偶然な事故についての主張立証責任

 

 

保険金請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成12年(受)第458号

【判決日付】      平成13年4月20日

【判示事項】      普通障害保険契約の約款に基づき死亡保険金の支払を請求する場合における偶然な事故についての主張立証責任

【判決要旨】      普通傷害保険契約における死亡保険金の支払事由を急激かつ偶然な外来の事故による死亡とする約款に基づき、保険者に対して死亡保険金の支払を請求する者は、発生した事故が偶然な事故であることについて主張、立証すべき責任を負う。

             (補足意見がある。)

【参照条文】      商法第三編第一〇章保険

             民法91

             民事訴訟法第2編第3章第1節総則

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事202号161頁

             裁判所時報1290号266頁

             判例タイムズ1061号68頁

             金融・商事判例1121号14頁

             判例時報1751号171頁

 

 

保険法

(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 保険契約 保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付(生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約にあっては、金銭の支払に限る。以下「保険給付」という。)を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)を支払うことを約する契約をいう。

二 保険者 保険契約の当事者のうち、保険給付を行う義務を負う者をいう。

三 保険契約者 保険契約の当事者のうち、保険料を支払う義務を負う者をいう。

四 被保険者 次のイからハまでに掲げる保険契約の区分に応じ、当該イからハまでに定める者をいう。

イ 損害保険契約 損害保険契約によりてん補することとされる損害を受ける者

ロ 生命保険契約 その者の生存又は死亡に関し保険者が保険給付を行うこととなる者

ハ 傷害疾病定額保険契約 その者の傷害又は疾病(以下「傷害疾病」という。)に基づき保険者が保険給付を行うこととなる者

五 保険金受取人 保険給付を受ける者として生命保険契約又は傷害疾病定額保険契約で定めるものをいう。

六 損害保険契約 保険契約のうち、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約するものをいう。

七 傷害疾病損害保険契約 損害保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病によって生ずることのある損害(当該傷害疾病が生じた者が受けるものに限る。)をてん補することを約するものをいう。

八 生命保険契約 保険契約のうち、保険者が人の生存又は死亡に関し一定の保険給付を行うことを約するもの(傷害疾病定額保険契

 

 

民法

(任意規定と異なる意思表示)

第九十一条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

 

全司法労組事件・国家公務員法(昭和四〇年改正前)第九八条第五項、第一一〇条第一項第一七号の合憲性

 

 

              国家公務員法違反、住居侵入被告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和41年(あ)第1129号

【判決日付】      昭和44年4月2日

【判示事項】      一、国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの。以下同じ。)第九八条第五項、第一一〇条第一項第一七号の合憲性

             二、国家公務員法第一一〇条第一項第一七号、第九八条第五項のいわゆる「あおり」罪が成立するとされた事例

             三、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三五年六月二三日条約第六号、以下新安保条約という。)と司法裁判所の審査権

             四、新安保条約は明白に違憲と認められるか

【判決要旨】      一、国家公務員法九八条五項、一一〇条一項一七号は憲法二八条、前文、一一条、九七条、一八条に、国家公務員法一一〇条一項一七号は憲法二一条、三一条に違反するものではない。

             二、全司法労組仙台支部が、新安保条約に反対するため、勤務時間内にくいこむ職場大会を開催するにあたり、裁判所職員ではなく、かつまた裁判所職員の団体に関係もない第三者みずから、または裁判所職員であり、同支部執行委員長の職にあつた者がこれら第三者と共謀のうえ、同支部分会役員に対し右職場大会への参加協力を要求し、または直接裁判所職員に対し同大会への参加をしようようしたときは、国家公務員法一一〇条一項一七号、九八条五項の同盟罷業の遂行に対する「あおり」の罪が成立する。

             三、新安保条約のごとき、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係をもつ高度の政治性を有するものが違憲であるか否かの法的判断をするについては、司法裁判所は慎重であることを要し、それが憲法に違反することが明らかであると認められないかぎりは、みだりにこれを違憲無効のものと断定すべきではない。

             四、新安保条約は、憲法九条、九八条二項および前文の趣旨に反して違憲であることが明白であるとは認められない。

             (二につき、反対意見がある)。

【参照条文】      国家公務員法(昭和40年法律第69号による改正前のもの)98-5

             国家公務員法110-1

             憲法28

             憲法11

             憲法97

             憲法18

             憲法21

             憲法31

             日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和35年6月23日条約第6号)

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集23巻5号685頁

 

 

国家公務員法

(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)

第九十八条 職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

② 職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。

③ 職員で同盟罷業その他前項の規定に違反する行為をした者は、その行為の開始とともに、国に対し、法令に基いて保有する任命又は雇用上の権利をもつて、対抗することができない。

 

(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)

第九十八条 職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。

② 職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。

③ 職員で同盟罷業その他前項の規定に違反する行為をした者は、その行為の開始とともに、国に対し、法令に基いて保有する任命又は雇用上の権利をもつて、対抗することができない。

 

 

憲法

第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

 

第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

 

第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

 

第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

 

協議離婚を有効と認めた事例

 

 

              離婚無効確認請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和37年(オ)第203号

【判決日付】      昭和38年11月28日

【判示事項】      協議離婚を有効と認めた事例

【参照条文】      民法763

             民法764

             民法739

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集17巻11号1469頁

 

 

民法

(協議上の離婚)

第七百六十三条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。

 

(婚姻の規定の準用)

第七百六十四条 第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離婚について準用する。

 

(婚姻の届出)

第七百三十九条 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人木島次朗の上告理由第一点について。

 論旨は、本件協議離婚の届出は、離婚当事者の承諾なくして訴外Dによりなされたものであると主張するが、右届出が離婚当事者である上告人及びその妻Eの意思に基づいてなされたものであつて、Eの継父Dが当事者の承諾なく擅になしたものでない旨の原審の事実認定は、挙示の証拠により首肯できる。所論は、証拠の取捨判断、事実認定に関する原審の専権行使を非難するにすぎないものであるから、採用できない。

 同第二点乃至第四点について。

 原判決によれば、上告人及びその妻Eは判示方便のため離婚の届出をしたが、右は両者が法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてなしたものであり、このような場合、両者の間に離婚の意思がないとは言い得ないから、本件協議離婚を所論理由を以つて無効となすべからざることは当然である。これと同一の結論に達した原判決の判断は正当であり、その判断の過程に所論違法のかどあるを見出し得ない(所論違憲の主張は実質は単なる違法をいうに過ぎない)。所論は、原判決に副わない事実関係を想定するか或は原判決を正解しないで、これを攻撃するものであつて、採るを得ない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第一小法廷

第15章 第三者弁済

新法の内容

「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」の弁済が債務者の意思に反する場合であっても、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときには、その弁済は有効としている。 【新§474】

「弁済をするについて正当な利益を有する者以外の第三者」は、債権者の意思に反して、弁済をすることができない。【新§474】

※ 「利害関係を有しない第三者」の表現を「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」に変更。

 

弁済に関する見直し(第三者弁済)

第三者弁済(旧法)

利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない(旧法§474)。

債権者は利害関係を有しない第三者からの弁済を拒むことができない。

問題の所在

債務者の意思に反していることを知らない債権者が受けた弁済が後に無効になるおそれがある。

債権者は、見知らぬ第三者から弁済をしたい旨の申し出があっても、拒絶することができない。

 

被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付を受けたときに,これらの各社会保険給付との間で損益相殺的な調整を行うべき損害

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成20年(受)第494号、平成20年(受)第495号

【判決日付】      平成22年9月13日

【判示事項】      1 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付を受けたときに,これらの各社会保険給付との間で損益相殺的な調整を行うべき損害

             2 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,不法行為の時から相当な時間が経過した後に現実化する損害をてん補するために労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付の支給がされ,又は支給されることが確定したときに,損益相殺的な調整に当たって,損害がてん補されたと評価すべき時期

【判決要旨】      1 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付を受けたときは,これらの各社会保険給付については,これらによるてん補の対象となる特定の損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきである。

             2 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,不法行為の時から相当な時間が経過した後に現実化する損害をてん補するために労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付の支給がされ,又は支給されることが確定したときには,それぞれの制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,てん補の対象となる損害は,不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整を行うべきである。

【参照条文】      民法709

             労働者災害補償保険法22

             労働者災害補償保険法22の2

             労働者災害補償保険法22の3

             国民年金法30

             厚生年金保険法47

             民法412

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集64巻6号1626頁

 

 

事案の概要

 本件は,交通事故により傷害を受け,その後に後遺障害が残った被害者から加害者に対する損害賠償請求において,被害者が支給を受けた労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付との間で行う損益相殺的な調整の方法が問題になった事案である。

 

 

 

民法

(履行期と履行遅滞)

第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

 

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 

労働者災害補償保険法

第二十二条の二 休業給付は、労働者が通勤による負傷又は疾病に係る療養のため労働することができないために賃金を受けない場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう。

② 第十四条及び第十四条の二の規定は、休業給付について準用する。この場合において、第十四条第一項中「業務上の」とあるのは「通勤による」と、同条第二項中「別表第一第一号から第三号までに規定する場合に応じ、それぞれ同表第一号から第三号までの政令で定める率のうち傷病補償年金について定める率」とあるのは「第二十三条第二項において準用する別表第一第一号から第三号までに規定する場合に応じ、それぞれ同表第一号から第三号までの政令で定める率のうち傷病年金について定める率」と読み替えるものとする。

③ 療養給付を受ける労働者(第三十一条第二項の厚生労働省令で定める者を除く。)に支給する休業給付であつて最初に支給すべき事由の生じた日に係るものの額は、前項において準用する第十四条第一項の規定にかかわらず、同項の額から第三十一条第二項の厚生労働省令で定める額に相当する額を減じた額とする。

 

第二十二条の三 障害給付は、労働者が通勤により負傷し、又は疾病にかかり、なおつたとき身体に障害が存する場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう。

② 障害給付は、第十五条第一項の厚生労働省令で定める障害等級に応じ、障害年金又は障害一時金とする。

③ 第十五条第二項及び第十五条の二並びに別表第一(障害補償年金に係る部分に限る。)及び別表第二(障害補償一時金に係る部分に限る。)の規定は、障害給付について準用する。この場合において、これらの規定中「障害補償年金」とあるのは「障害年金」と、「障害補償一時金」とあるのは「障害一時金」と読み替えるものとする。

 

 

国民年金法

第三節 障害基礎年金

(支給要件)

第三十条 障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。)とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。

一 被保険者であること。

二 被保険者であつた者であつて、日本国内に住所を有し、かつ、六十歳以上六十五歳未満であること。

2 障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから一級及び二級とし、各級の障害の状態は、政令で定める。

 

 

 

 

 

 

 

 

生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けていた上告人らが,厚生大臣による老齢加算の段階的廃止にともなう保護基準の改定により,生活扶助の支給額減額の保護変更決定を受けたことから,同保護基準の改定は,違憲・違法なものであるとして,前記各保護変更決定の取消しを求めた事案

 

 

生活保護変更決定取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成26年(行ツ)第214号、平成26年(行ヒ)第217号

【判決日付】      平成26年10月6日

【判示事項】      生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けていた上告人らが,厚生大臣による老齢加算の段階的廃止にともなう保護基準の改定により,生活扶助の支給額減額の保護変更決定を受けたことから,同保護基準の改定は,違憲・違法なものであるとして,前記各保護変更決定の取消しを求めたところ,第1次控訴審は,前記改定は違法であるとし,前記各保護変更決定を取消したが,第1次上告審は,前記控訴審判決を破棄し,原審に差し戻した事案。

上告審は,本件改定に,裁量権の逸脱・濫用があるとはいえず,同改定に基づく本件各決定もこれを違法とすべき事情は認められない等とし,原審判断は正当として是認できるとし,上告論旨は上告事由のいずれの規定にも該当しないとして,上告を棄却した事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

憲法

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

 

生活保護法

(最低生活)

第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

 

(基準及び程度の原則)

第八条 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。

2 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。

 

(必要即応の原則)

第九条 保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

 第1 本件の事実関係等の概要

 1 本件は,北九州市内に居住して生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けていた上告人らが,同法の委任に基づいて厚生労働大臣が定めた「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)の数次の改定により,原則として70歳以上の者を対象とする生活扶助の加算(以下「老齢加算」という。)が段階的に減額されて廃止されたことに基づいて所轄の福祉事務所長らからそれぞれ生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定を受けたため,保護基準の上記改定は憲法25条1項,生活保護法3条,8条,9条等に反する違憲,違法なものであるとして,被上告人を相手に,上記各保護変更決定の取消しを求める事案である。

 第1次控訴審は,保護基準の上記改定は生活保護法56条に反し違法であるとして,上記各保護変更決定を取り消すべきものとしたが,第1次上告審は,その判断には審理不尽の結果法令の解釈を誤った違法があるとして,当事者の死亡により訴訟が当然に終了した部分を除いて第1次控訴審判決を破棄して本件を原審に差し戻した(最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁)。

 2 保護基準のうち,生活扶助に関する基準(以下「生活扶助基準」という。)の定めは,次のとおりである。

 (1) 生活扶助基準(別表第1)は,基準生活費(第1章)と加算(第2章)とに大別されている。居宅で生活する者の基準生活費は,市町村別に1級地-1から3級地-2まで六つに区分して定められる級地(別表第9)及び年齢別に定められる第1類と,級地等及び世帯人員別に定められる第2類とに分けられ,原則として世帯ごとに,当該世帯を構成する個人ごとに算出される第1類の額(以下「第1類費」という。)を合算したものと第2類の額(以下「第2類費」という。)とを合計して算出される。第1類費は,食費,被服費等の個人単位の経費に,第2類費は,光熱水費,家具什器費等の世帯単位の経費にそれぞれ対応するものとされている。なお,北九州市は,1級地-2と定められている。

 (2) 平成16年厚生労働省告示第130号により改定される前の保護基準によれば,加算には,妊産婦加算,老齢加算,母子加算,障害者加算等があり,老齢加算に関しては,被保護者(現に生活保護法による保護を受けている者をいう。以下同じ。)のうち70歳以上の者並びに68歳及び69歳の病弱者について一定額が基準生活費に加算されて支給されていた。

 上記保護基準における生活扶助費の月額は,1級地-2の居宅で生活する70歳以上の者の第1類費が1人当たり3万1180円,第2類費が単身世帯で4万1560円,2人世帯で4万6000円であったため,原則として,基準生活費の月額は単身世帯で7万2740円,2人世帯で10万8360円であった。これに対し,上記保護基準において,1級地の居宅で生活する者の老齢加算の月額は1万7930円であった。

 3 原審が適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

 (1) 老齢加算は,昭和35年4月,70歳以上の者を対象に前年度に開始された老齢福祉年金を収入として認定することに対応して,これと同額を生活扶助に加算するものとして創設された。その際,老齢加算は,高齢者の特別な需要,例えば観劇,雑誌,通信費等の教養費,下衣,毛布,老眼鏡等の被服・身回り品費,炭,湯たんぽ,入浴料等の保健衛生費及び茶,菓子,果物等のし好品費に充てられるものとして積算されていた。

 (2) その後も,老齢加算の額は,老齢福祉年金が増額されるのに伴ってこれと同額が増額されていったが,昭和51年から,1級地における65歳以上の者に係る第1類費基準額の男女平均額の50%とすることとされた。

 厚生省(当時)の審議会である中央社会福祉審議会は,昭和58年12月,加算対象世帯と一般世帯との消費構造を比較検討した結果,高齢者の特別な需要として,加齢に伴う精神的又は身体的な機能の低下に対応する食費,光熱費,保健衛生費,社会的費用,介護関連費等の加算対象経費が認められ,その額は,おおむね現行の老齢加算の額で満たされている旨の意見等を内容とする「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(以下「昭和58年意見具申」という。)を発表した。これを踏まえ,昭和59年4月以降,老齢加算の額は,第1類費に対応する品目に係る消費者物価指数の伸び率に準拠して改定されてきた。

 (3) 一般勤労者世帯の消費支出に対する被保護勤労者世帯の消費支出の割合は昭和45年度には54.6%であったものが,同58年度には66.4%となっており,昭和58年意見具申は,生活扶助基準は一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達している旨の評価をした。上記割合は,その後はおおむね7割弱で推移していたが,平成13年度には71.9%,同14年度には73.0%に達した。

 このような状況の中で,財務省の審議会である財政制度等審議会の財政制度分科会は,平成15年6月,平成16年度予算編成に関する建議を提出し,その中で,老齢加算について,年金制度改革の議論と一体的に考えると,70歳未満受給者との公平性,高齢者の消費が加齢に伴って減少する傾向等からみて,その廃止に向けた検討が必要である旨の提言をした。同月,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」が閣議決定され,その中で,物価,賃金動向,社会経済情勢の変化,年金制度改革等との関係を踏まえ,老齢加算等の見直しが必要であるとされた。

 (4) 厚生労働省の審議会である社会保障審議会(厚生労働省設置法7条1項に定める厚生労働大臣の諮問機関)は,平成15年7月,その福祉部会内に,生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という。)を設置した。専門委員会の委員は,社会保障制度や経済学の研究者,社会福祉法人の代表者,地方公共団体の首長等によって構成されていた。

 ア 専門委員会においては,総務庁統計局が平成11年に実施した全国消費実態調査によって得られた調査票を用いて,収入階層別及び年齢階層別に単身世帯の生活扶助相当消費支出額(消費支出額の全体から,生活扶助以外の扶助に該当するもの,被保護世帯は免除されているもの及び家事使用人給料や仕送り金等の最低生活費になじまないものを控除した残額をいう。以下同じ。)等を厚生労働省が集計した結果(以下「特別集計」という。)や低所得者の生活実態に関する調査結果等が説明資料として提示された。特別集計によると,無職単身世帯の生活扶助相当消費支出額を月額で比較した場合,① 平均では,60ないし69歳が11万8209円,70歳以上が10万7664円,② 第Ⅰ-5分位(調査対象者を年間収入額順に5等分した場合に最も収入額の低いグループ。以下同じ。)では,60ないし69歳が7万6761円,70歳以上が6万5843円,③ 第Ⅰ-10分位(調査対象者を年間収入額順に10等分した場合に最も収入額の低いグループ。以下同じ。)では,60ないし69歳が7万9817円,70歳以上が6万2277円となるなど,いずれの収入階層でも70歳以上の者の需要は60ないし69歳の者のそれより少ないことが示されていた。

 また,特別集計によると,第Ⅰ-5分位の70歳以上の単身無職者の生活扶助相当消費支出額が6万5843円であるのに対し,70歳以上の単身者の生活扶助額(老齢加算を除く。)の平均は,これより高い7万1190円となっていた。

 イ 専門委員会においては,社会情勢の変化を表すものとして,生活扶助基準の改定率,消費者物価指数,賃金等の推移を比較した資料が検討された。それによると,昭和59年度を100%とした場合の平成14年度における割合は,生活扶助基準が135.5%,消費者物価指数が116.5%,賃金が131.2%となっており,同7年度を100%とした場合の同14年度における割合は,生活扶助基準が104.3%,消費者物価指数が99.9%,賃金が98.7%となっていた。また,昭和55年と平成12年とを比較すると,一般勤労者世帯の平均並びに第Ⅰ-10分位及び被保護勤労者世帯の平均のいずれにおいても,消費支出に占める食料費の割合(エンゲル係数)は低下していた。

 ウ 専門委員会においては,被保護高齢単身世帯の家計消費の実態を表すものとして,平成11年度における被保護者生活実態調査を基にした月ごとの貯蓄純増(同調査結果にいう「預貯金」と「保険掛金」の合計から「預貯金引出」と「保険取金」の合計を差し引いたもの),平均貯蓄率(可処分所得に対する貯蓄純増の割合)及び繰越金(月末における世帯の手持金残高)を記載した資料が検討された。これらの貯蓄純増,平均貯蓄率及び繰越金につき,老齢加算のない世帯と老齢加算のある世帯との間でそれぞれ比較すると,いずれの数値も後者が前者よりも相応に高くなっていた。

 (5) 上記(4)の検討等を経て,専門委員会は,平成15年12月16日,「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(以下「中間取りまとめ」という。)を公表した。中間取りまとめのうち,老齢加算に関する部分の概要は,次のとおりであった。

 ア 単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について70歳以上の者と60ないし69歳の者との間で比較すると前者の消費支出額の方が少なく,70歳以上の高齢者について現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められないため,老齢加算そのものについては廃止の方向で見直すべきである。

 イ ただし,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要がある。

 ウ 被保護者世帯の生活水準が急に低下することのないよう,激変緩和の措置を講ずべきである。

 (6) 厚生労働大臣は,中間取りまとめを受けて,70歳以上の高齢者には老齢加算に見合う特別な需要があるとは認められないと判断して老齢加算を廃止することとし,激変緩和のための措置として3年間かけて段階的に減額と廃止を行うこととして,平成16年度以降,保護基準につき,平成16年厚生労働省告示第130号及び平成17年厚生労働省告示第193号によって老齢加算をそれぞれ減額し,平成18年厚生労働省告示第315号によって老齢加算を廃止する旨の改定をした(以下,これらの保護基準の改定を「本件改定」と総称する。)。

 本件改定に基づき,所轄の福祉事務所長らは,上告人らのうち世帯主であった者を名宛人として,それぞれ老齢加算の減額又は廃止に伴う生活扶助の支給額の減額を内容とする保護変更決定をした(以下,これらの決定を「本件各決定」と総称する。)。

 なお,専門委員会が平成16年12月に発表した報告書は,生活扶助基準の水準は基本的に妥当と評価しつつ,生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため,全国消費実態調査等を基に5年に1度の頻度で検証を行う必要があるなどと指摘しているところ,厚生労働省においては,平成19年に生活扶助基準に関する検討会が設けられるなど,生活扶助基準の水準につき定期的な検証が引き続き行われている。

 第2 上告代理人高木健康ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

 1(1) 生活保護法3条によれば,同法により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ,同法8条2項によれば,保護基準は,要保護者(生活保護法による保護を必要とする者をいう。以下同じ。)の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これを超えないものでなければならない。そうすると,仮に,老齢加算の一部又は全部についてその支給の根拠となっていた高齢者の特別な需要が認められないというのであれば,老齢加算の減額又は廃止をすることは,同項の規定に沿うところであるということができる。もっとも,これらの規定にいう最低限度の生活は,抽象的かつ相対的な概念であって,その具体的な内容は,その時々における経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり,これを保護基準において具体化するに当たっては,高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。したがって,保護基準中の老齢加算に係る部分を改定するに際し,最低限度の生活を維持する上で老齢であることに起因する特別な需要が存在するといえるか否か及び高齢者に係る改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては,厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。なお,同法9条は,保護は要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して有効かつ適切に行うものとすると規定するところ,同条は個々の要保護者又はその世帯の必要に即応した保護の決定及び実施を求めるものであって,保護基準において定めるべき内容そのものを規律するものではないが,保護基準は個々の保護が適切に行われるための基準を示すものであって,同条の趣旨からしても,加算の減額又は廃止に当たっては,上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権に基づく高齢者の特別な需要の存否に係る判断を基礎としてこれをすべきものということができる。

 (2) また,老齢加算の全部についてその支給の根拠となる上記の特別な需要が認められない場合であっても,老齢加算の廃止は,これが支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者に関しては,保護基準によって具体化されていたその期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ないところである。そうすると,上記のような場合においても,厚生労働大臣は,老齢加算の支給を受けていない者との公平や国の財政事情といった見地に基づく加算の廃止の必要性を踏まえつつ,被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮するため,その廃止の具体的な方法等について,激変緩和措置の要否などを含め,上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているものというべきである。

 (3) そして,老齢加算の減額又は廃止の要否の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価や被保護者の期待的利益についての可及的な配慮は,前記(1)及び(2)のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であって,老齢加算の支給根拠及びその額等については,それまでも各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて高齢者の特別な需要に係る推計や加算対象世帯と一般世帯との消費構造の比較検討がされてきたところである。これらの経緯等に鑑みると,老齢加算の廃止を内容とする保護基準の改定は,① 当該改定の時点において70歳以上の高齢者には老齢加算に見合う特別な需要が認められず,高齢者に係る当該改定後の生活扶助基準の内容が高齢者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に,最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤,欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合,あるいは,② 老齢加算の廃止に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に,被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に,生活保護法3条,8条2項の規定に違反し,違法となるものというべきである(最高裁平成22年(行ツ)第392号,同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁,前記第二小法廷判決参照)。

 2(1) 前記事実関係等によれば,専門委員会が中間取りまとめにおいて示した意見は,特別集計等の統計や資料等に基づき,① 無職単身世帯の生活扶助相当消費支出額を比較した場合,いずれの収入階層でも70歳以上の者の需要は60ないし69歳の者のそれより少ないことが示されていたこと,② 70歳以上の単身者の生活扶助額(老齢加算を除く。)の平均は,第Ⅰ-5分位の同じく70歳以上の単身無職者の生活扶助相当消費支出額を上回っていたこと,③ 昭和59年度から平成14年度までにおける生活扶助基準の改定率は,消費者物価指数及び賃金の各伸び率を上回っており,特に同7年度以降の比較では後二者がマイナスで推移しているにもかかわらずプラスとなっていたこと,④ 昭和58年度以降,被保護勤労者世帯の消費支出の割合は一般勤労者世帯の消費支出の7割前後で推移していたこと,⑤ 昭和55年と平成12年とを比較すると第Ⅰ-10分位及び被保護勤労者世帯の平均のいずれにおいても消費支出に占める食料費の割合(エンゲル係数)が低下していることなどが勘案されたものであって,統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはない。そして,70歳以上の高齢者に老齢加算に見合う特別な需要が認められず,高齢者に係る本件改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持するに足りない程度にまで低下するものではないとした厚生労働大臣の判断は,専門委員会のこのような検討等を経た前記第1の3(5)アの意見に沿って行われたものであり,その判断の過程及び手続に過誤,欠落があると解すべき事情はうかがわれない。

 (2) また,前記事実関係等によれば,本件改定が老齢加算を3年間かけて段階的に減額して廃止したことも,専門委員会の前記第1の3(5)ウの意見に沿ったものであるところ,平成11年度における老齢加算のある被保護者世帯の貯蓄純増は老齢加算のない被保護者世帯の貯蓄純増よりも相応に高い金額になっていたことなども考慮すると,3年間かけて段階的に老齢加算を減額して廃止することによって被保護者世帯に対する影響は相当程度緩和されたものと評価することができる上,厚生労働省による生活扶助基準の水準の定期的な検証も前記第1の3(5)イの意見を踏まえて生活水準の急激な低下を防止すべく配慮したものということができ,その他本件に現れた一切の事情を勘案しても,本件改定に基づく生活扶助額の減額が被保護者世帯の期待的利益の喪失を通じてその生活に看過し難い影響を及ぼしたものとまで評価することはできないというべきである。

 (3) 以上によれば,本件改定については,前記1(3)①及び②のいずれの観点からも裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。

 したがって,本件改定は,生活保護法3条又は8条2項の規定に違反するものではないと解するのが担当である。そして,本件改定に基づいてされた本件各決定にも,これを違法と解すべき事情は認められない。原審の判断は,正当として是認することができ,論旨は採用することができない。

 第3 上告代理人高木健康ほかの上告理由について

 1 上告理由第3及び第6について

 生活保護法は,健康で文化的な最低限度の生活の保障という憲法25条の趣旨を具体化した法律の規定として,3条において,生活保護法による保護において健康で文化的な生活水準を維持することができる最低限度の生活が保障されるべき旨を定めており,8条2項において,保護の基準がこのような最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであるべき旨を定めているところ,前記第2の2において説示したとおり,厚生労働大臣が老齢加算を数次の減額を経て廃止する保護基準の改定として行った本件改定は,このように憲法25条の趣旨を具体化した生活保護法3条又は8条2項の規定に違反するものではない以上,これと同様に憲法25条に違反するものでもないと解するのが相当であり,このことは,前記大法廷判決の趣旨に徴して明らかというべきである(前記第三小法廷判決参照)。これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができ,論旨は採用することができない。

 2 その余の上告理由について

 論旨は,違憲及び理由の食違いをいうが,その実質は事実誤認又は単なる法令違反をいうものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

    最高裁判所第一小法廷

不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額の算定方法

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成11年(受)第94号

【判決日付】      平成12年9月7日

【判示事項】      不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額の算定方法

【判決要旨】      不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額は、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続すべき期間などの具体的事情に応じて算定すべきである。

【参照条文】      民法709

             民法416

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事199号477頁

             裁判所時報1275号422頁

             判例タイムズ1045号120頁

             金融・商事判例1107号15頁

             判例時報1728号29頁

 

 

民法

(損害賠償の範囲)

第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

 

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。