全司法労組事件・国家公務員法(昭和四〇年改正前)第九八条第五項、第一一〇条第一項第一七号の合憲性
国家公務員法違反、住居侵入被告事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和41年(あ)第1129号
【判決日付】 昭和44年4月2日
【判示事項】 一、国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの。以下同じ。)第九八条第五項、第一一〇条第一項第一七号の合憲性
二、国家公務員法第一一〇条第一項第一七号、第九八条第五項のいわゆる「あおり」罪が成立するとされた事例
三、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三五年六月二三日条約第六号、以下新安保条約という。)と司法裁判所の審査権
四、新安保条約は明白に違憲と認められるか
【判決要旨】 一、国家公務員法九八条五項、一一〇条一項一七号は憲法二八条、前文、一一条、九七条、一八条に、国家公務員法一一〇条一項一七号は憲法二一条、三一条に違反するものではない。
二、全司法労組仙台支部が、新安保条約に反対するため、勤務時間内にくいこむ職場大会を開催するにあたり、裁判所職員ではなく、かつまた裁判所職員の団体に関係もない第三者みずから、または裁判所職員であり、同支部執行委員長の職にあつた者がこれら第三者と共謀のうえ、同支部分会役員に対し右職場大会への参加協力を要求し、または直接裁判所職員に対し同大会への参加をしようようしたときは、国家公務員法一一〇条一項一七号、九八条五項の同盟罷業の遂行に対する「あおり」の罪が成立する。
三、新安保条約のごとき、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係をもつ高度の政治性を有するものが違憲であるか否かの法的判断をするについては、司法裁判所は慎重であることを要し、それが憲法に違反することが明らかであると認められないかぎりは、みだりにこれを違憲無効のものと断定すべきではない。
四、新安保条約は、憲法九条、九八条二項および前文の趣旨に反して違憲であることが明白であるとは認められない。
(二につき、反対意見がある)。
【参照条文】 国家公務員法(昭和40年法律第69号による改正前のもの)98-5
国家公務員法110-1
憲法28
憲法11
憲法97
憲法18
憲法21
憲法31
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和35年6月23日条約第6号)
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集23巻5号685頁
国家公務員法
(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)
第九十八条 職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
② 職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。
③ 職員で同盟罷業その他前項の規定に違反する行為をした者は、その行為の開始とともに、国に対し、法令に基いて保有する任命又は雇用上の権利をもつて、対抗することができない。
(法令及び上司の命令に従う義務並びに争議行為等の禁止)
第九十八条 職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
② 職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。
③ 職員で同盟罷業その他前項の規定に違反する行為をした者は、その行為の開始とともに、国に対し、法令に基いて保有する任命又は雇用上の権利をもつて、対抗することができない。
憲法
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。