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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

発行済株式の少なくとも4分の1を有する1名の株主に対する株主総会招集通知がなされなかった事例

 

 

              株主総会決議取消等請求事件

【事件番号】      名古屋地方裁判所判決/平成3年(ワ)第3953号

【判決日付】      平成5年1月22日

【判示事項】      一 株主の内の一名にのみ招集通知がされた株主総会の決議が不存在とされた事例

             二 五名の取締役の内の一名が残りの四名の取締役に対して招集通知をせずに、不存在とされた株主総会により取締役に選任されたとする二名の者を招集してなされた取締役会決議が無効とされた事例

【参照条文】      商法252

             商法260

             商法260の2

【掲載誌】        判例タイムズ839号252頁

 

 

会社法

(株主総会の招集の決定)

第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 株主総会の日時及び場所

二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項

三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

2 取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条から第三百二条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。ただし、当該株式会社が金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社であって法務省令で定めるものである場合は、この限りでない。

3 取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「前項第二号に掲げる事項」とする。

4 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

 

(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)

第八百三十条 株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第九百三十七条第一項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。

2 株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。

 

 

 

       主   文

 

 一 被告の平成三年一〇月二二日開催の株主総会における、別紙役員目録

(一)記載の取締役・監査役を解任し、同(二)記載の者を取締役・監査役に選任する旨の各決議が存在しないことを確認する。

 二 被告の平成三年一〇月二二日開催の取締役会における、中村裕を代表取締役に選任する旨の決議が無効であることを確認する。

 三 訴訟費用は被告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第一 請求

 主文同旨

第二 事案の概要

 本件は、原告が被告に対し、株主権及び取締役の地位に基づき、左記一2(一)及び同3(一)の各決議について、それぞれ同各(ニ)の事由を原因として、その不存在ないし無効の確認を求める事案である。

パチスロ機製造業界のパテントプールに参加し,「スロットマシン」の特許権の再実施の許諾を得ている被控訴人に対し,実施許諾契約終了したとして,控訴人が保有する特許権の侵害による損害賠償を求めたが,原判決は,被控訴人製品は前記特許権の技術的範囲に属すると認定したものの実施許諾契終了との控訴人の主張を排斥したので,控訴人が控訴した事案である。

 

 

              民事訴訟事件

【事件番号】      東京高等裁判所/平成14年(ネ)第4085号

【判決日付】      平成15年6月4日

【判示事項】      1 パチスロ機製造業界のパテントプールに参加し,「スロットマシン」の特許権の再実施の許諾を得ている被控訴人に対し,実施許諾契約終了したとして,控訴人が保有する特許権の侵害による損害賠償を求めたが,原判決は,被控訴人製品は前記特許権の技術的範囲に属すると認定したものの実施許諾契終了との控訴人の主張を排斥したので,控訴人が控訴した事案である。

             2 本件実施許諾契約は自動更新され,被控訴人に再実施許諾されているものと認められるとして,控訴を棄却した。

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      金融・商事判例1192号60頁

             ジュリスト1264号124頁

             ジュリスト臨時増刊1269号247頁

 

 

パテントプール(英: patent pool、特許プール)とは、特定のテクノロジーに関連した特許のクロスライセンス契約に合意した2つ以上の企業によるコンソーシアムである。特許権所有者とライセンシーの時間と金を節約すると同時に、複雑に関連した特許群においては、その発明を実用化するのにパテントプールが唯一の妥当な方法になる場合もある。

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴を棄却する。

 2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 当事者の求めた裁判

 1 控訴人

(1)原判決を取り消す。

(2)被控訴人は,控訴人に対し,15億円及びこれに対する平成11年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(3)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

(4)仮執行の宣言

2 被控訴人

 主文と同旨

第2 事案の概要

1 被控訴人補助参加人は控訴人との間で,控訴人の保有する特許権等につき,平成6年以降,毎年4月1日から翌年3月31日までの期間を1年間として,多数のパチスロ機製造業者への再実施許諾権付きで実施許諾をする旨の実施許諾契約を締結している者であるが,同契約は平成7年,同8年に更新され,平成8年の更新時に,控訴人の保有する発明の名称をスロットマシンとする特許権(昭和58年4月8日出願,平成3年11月18日出願公告,平成7年2月24日登録。特許番号第1905552号)が上記実施許諾契約の対象に加えられた。本件は,控訴人が,被控訴人補助参加人から発明の名称をスロットマシンとする上記特許権の再実施の許諾を得ている被控訴人に対し,平成8年に更新された上記実施許諾契約は平成9年3月31日をもって終了しているとした上,被控訴人の製造・販売する原判決別紙物件目録記載のパチンコ型スロットマシンは,控訴人の上記特許権の技術的範囲に属し,上記特許権を侵害すると主張して,被控訴人に対し損害賠償を求めた事件である。

原判決は,被控訴人の製造・販売する上記物件は上記特許権の技術的範囲に属すると認定したものの,上記実施許諾契約が終了しているとの控訴人の主張を排斥し,控訴人の請求を棄却したので,控訴人は,原判決を不服として,本件控訴を提起した。

ジュリスト 2023年10月号(No.1589) 【特集2】フリーランス法の検討

 

2023年09月25日 発売

定価 1,760円(本体 1,600円)

 

注目の立法・法改正をいち早くお届けするため,本号から連続して1号に2つの特集を掲載します。本号特集1では,主に第211回国会で成立したデジタル化関係の改正法を取り上げ,デジタル社会の形成と法の変容について,現状と課題を分析します。特集2は同国会で成立した特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)です。フリーランスが適切な取引・就業環境で働けるよう制定された本法について,立法担当者・競争法研究者・労働法研究者それぞれの視点から解説,検討します。注目の生成AIと法務への影響にフォーカスした「HOT issue」もお見逃しなく。

 

 

【特集2】フリーランス法の検討

◇特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の概要…渡辺正道/岡田博己/全 未来/立石祐子……46

 

◇フリーランス法の意義と特徴――独禁法・下請法に通ずる観点から…滝澤紗矢子……53

 

◇フリーランス法の内容と提示する課題――労働法の観点から…小西康之……59

 

 

コメント

新しい法理を理解することも、実務家にとって必要です。

 

第21章 原始的不能の場合の損害賠償規定の新設

(原始的不能とは・・・)

契約成立の時点で既に債務が履行不能であること

(問題の所在)

・ 原始的不能の場合に債権者が債務不履行に基づく損害賠償を請求することができるかどうかについては、明文の規定がない。

・ このような契約は無効であり、債務不履行となる余地はなく、債務不履行に基づく損害賠償請求は不可との考え方も有力である。

・ しかし、 履行不能になったのがたまたま契約の成立前というだけで、火事の原因が債務者の火の不始末である場合など債務者に帰責性がある場合でも、債務不履行に基づく損害賠償を請求することができないとするのは不当ではないか。

(改正法の内容)

・ 原始的不能の場合であっても、債務不履行に基づく損害賠償を請求することは妨げられない旨の規定を新設 【新§412条の2条2項】

 

留置物の使用が物の保存に必要な範囲を超えた場合の必要費、有益費の支出とその償還請求権に基く留置権発生の有無

 

 

              家屋明渡請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和30年(オ)第452号

【判決日付】      昭和33年1月17日

【判示事項】      留置物の使用が物の保存に必要な範囲を超えた場合の必要費、有益費の支出とその償還請求権に基く留置権発生の有無

【判決要旨】      留置権者が留置物について必要費、有益費を支出しその償還請求権を有するときは、物の保存に必要な範囲を超えた使用に基く場合であつたとしても、その償還請求権につき留置権の発生を妨げない。

【参照条文】      民法295

             民法298

             民法299

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集12巻1号55頁

             判例タイムズ79号90頁

             判例時報138号18頁

【評釈論文】      法学23巻1号103頁

             民商法雑誌38巻2号102頁

 

 

民法

(留置権の内容)

第二百九十五条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。

2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

 

(留置権者による留置物の保管等)

第二百九十八条 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。

2 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。

3 留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。

 

(留置権者による費用の償還請求)

第二百九十九条 留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。

2 留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

 

 

 

数学的課題の解法ないし数学的な計算手順(アルゴリズム)を既存の演算装置を用いて演算することを内容とする発明について、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に当たらないとして、特許法二条一項、同法二九条一項柱書の定める「発明」該当性が否定された事例

 

 

審決取消請求事件

【事件番号】      知的財産高等裁判所判決/平成19年(行ケ)第10239号

【判決日付】      平成20年2月29日

【判示事項】      数学的課題の解法ないし数学的な計算手順(アルゴリズム)を既存の演算装置を用いて演算することを内容とする発明について、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に当たらないとして、特許法二条一項、同法二九条一項柱書の定める「発明」該当性が否定された事例

【参照条文】      特許法2-1

             特許法29-1

【掲載誌】        判例時報2012号97頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      発明106巻4号46頁

             パテント62巻3号24頁

 

 

特許法

(定義)

第二条 この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

2 この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。

3 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。

一 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為

二 方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為

三 物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

4 この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。

 

(特許の要件)

第二十九条 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。

一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明

二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明

三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明

2 特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

 

不動産共有者の一人のみによる登記簿上の所有名義人に対する登記抹消請求の許否

 

 

不動産所有権移転登記請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和29年(オ)第4号

【判決日付】      昭和31年5月10日

【判示事項】      不動産共有者の一人のみによる登記簿上の所有名義人に対する登記抹消請求の許否

【判決要旨】      不動産共有者の一人はその持分権に基き、単独で当該不動産につき登記簿上所有名義を有する者に対しその登記の抹消を請求することができる。

【参照条文】      民法252

             民事訴訟法62

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集10巻5号487頁

             判例タイムズ60号48頁

【評釈論文】      法学協会雑誌74巻3号135頁

             民商法雑誌34巻6号117頁

 

 

民法

(共有物の管理)

第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

4 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年

二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年

三 建物の賃借権等 三年

四 動産の賃借権等 六箇月

5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

 

 

民事訴訟法

(共同訴訟の要件)

第三十八条 訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。

 

(必要的共同訴訟)

第四十条 訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。

2 前項に規定する場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる。

3 第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる。

4 第三十二条第一項の規定は、第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人が提起した上訴について他の共同訴訟人である被保佐人若しくは被補助人又は他の共同訴訟人の後見人その他の法定代理人のすべき訴訟行為について準用する。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人弁護士桑江常善の上告理由第一点について。

 本件におけるがごとくある不動産の共有権者の一人がその持分に基ずき当該不動産につき登記簿上所有名義者たるものに対してその登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求に外ならずいわゆる保存行為に属するものというべく、従つて、共同相続人の一人が単独で本件不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めうる旨の原判示は正当であると認められるから、論旨は採ることができない。

 同第二点について。

 原判決挙示の証拠によれば、Aが実弟たる控訴人(上告人)名義に仮装して本件登記をなしたとの原判示認定を肯認することができるし、また、原判決は、第一審判決とは異つて被上告人等が共同相続をしたとの被上告人の主張事実を是認したものであるから、所論の審理不尽は認められない。なお、不法原因給付であるとの主張は、原審で主張しなかつたところであるから、原判決が民法七〇八条の解釈を誤つたとの主張は採用することができない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第一小法廷

環境アセスメントが不十分であることを理由に、ごみ処理施設の操業差止めを命じた仮処分判決に対し、公益上回復することのできない損害を生ぜしめるおそれがあるとして、右判決の執行停止申立てを認めた事例

 

 

仮処分執行停止申立事件

【事件番号】      名古屋高等裁判所決定/昭和59年(ウ)第131号

【判決日付】      昭和59年8月31日

【判示事項】      環境アセスメントが不十分であることを理由に、ごみ処理施設の操業差止めを命じた仮処分判決に対し、公益上回復することのできない損害を生ぜしめるおそれがあるとして、右判決の執行停止申立てを認めた事例

【参照条文】      民事訴訟法512

             民事訴訟法760

             民法709

【掲載誌】        訟務月報31巻4号783頁

             判例タイムズ535号321頁

             判例時報1126号15頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト126号28頁

             別冊ジュリスト240号14頁

 

 

事案の概要

 1 Xは地方自治法284条1項に基づき、ごみ焼却場の設置および維持管理を共同処理するために設立された一部事務組合であるが、昭和57年2月ころから愛知県小牧市内にごみ処理施設の建設工事を開始したところ、Yら近隣住民により工事および操業禁止の仮処分が申請された。

第一審の名古屋地裁は、Xの実施したアセスメントには現地調査を殆どしていないなどの欠陥があり、現状のままで操業を開始するとYらが公害によって健康上の被害を蒙る蓋然性が大であるとし、建築が95パーセント完成していることを考慮して、工事の差止申立てを却下したが、操業の差止申立ては認容した(名古屋地判昭59・4・6判タ525号87頁、判時1115号27頁)。

 2 右判決に対し、Xは控訴するとともに、右施設の操業禁止によりXに回復し難い損害が発生するとして、右判決の執行停止を求めた。

 本決定は、本件ごみ処理施設の建設・操業開始と同時に廃止されることが予定されていた旧焼却場が老朽化し、防災上憂慮すべき状態にあり、保健所から再三にわたり改善勧告を受けていたこと、本件ごみ処理施設の維持管理費用、地方債の利子、固定資産減価償却額が多額であること、他方、本件ごみ処理施設の公害防止装置は排出基準を下回る値が確保されることを保証されていること、環境モニタリング・システムも設置され、通年にわたる周辺の気象調査も着手されたこと、X組合では「小牧岩倉衛生組合環境センターの公害の防止に関する条例」が制定され、これに基づいて公害防止計画が策定されたこと等の事実を認定し、原判決の効力を維持するとXには回復することのできない公益上の損害が生じるおそれがあり、他方、本件ごみ処理施設の操業を始めてもYらに対し公害発生による受忍限度を越える健康被害をもたらす蓋然性は少ないとして、執行停止申立てを認容した。

 

 

 

民事保全法

(仮処分命令の必要性等)

第二十三条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。

3 第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。

4 第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

 

(保全執行の停止の裁判等)

第二十七条 保全異議の申立てがあった場合において、保全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申立てについての決定において第三項の規定による裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全執行の停止又は既にした執行処分の取消しを命ずることができる。

2 抗告裁判所が保全命令を発した場合において、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、前項の規定による裁判をすることができる。

3 裁判所は、保全異議の申立てについての決定において、既にした第一項の規定による裁判を取り消し、変更し、又は認可しなければならない。

4 第一項及び前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

5 第十五条の規定は、第一項の規定による裁判について準用する。

 

       主   文

 

 名古屋地方裁判所が同庁昭和五七年(ヨ)第二五七号建設工事禁止仮処分申請事件について昭和五九年四月六日言渡した判決主文第一項は、同事件の控訴審の判決言渡までその執行を停止する。

 

ビジネス法務2023年11月号【特集3】「いつか出会う」に備える不動産事件簿

 

 

中央経済社

定価(紙 版):1,800円(税込)

発行日:2023/09/21

 

【特集3】

「いつか出会う」に備える

不動産事件簿

 

筆者らは,依頼者が所有,管理または賃借する不動産に係る相談や裁判への対応を日々行い,これまで数多くの「事件」と出会いました。その一部を,基本的な事項の解説も加えながら「事件簿」としてご紹介します。

 

 

コメント

一般民事では周知0の論点。

知識の整理として役立つ。

 

第20章 契約不適合責任に関する改正点

第1節  はじめに

契約不適合責任とは、民法改正により、従来の瑕疵担保責任が廃止され、新たに登場した売主または請負人の責任です。

これに伴い、買主が行使できる権利が増えたり、行使期間が延長されたりします。

 

旧民法における「瑕疵担保責任」が、債務不履行とは異なる特別の法定責任だと解釈されていたのに対して、改正後の民法における「契約不適合責任」は、債務不履行責任の一種だとされています。

 

瑕疵担保責任が廃止された理由

旧民法では、「売買の目的物に隠れた瑕疵があったとき」に、売主は担保責任を負うものとされていました(旧民法570条、566条)。いわゆる瑕疵担保責任と呼ばれていたものです。 今回の改正では、旧民法で「瑕疵」「瑕疵担保責任」と呼ばれていた用語を廃止し、「契約不適合」「契約不適合責任」に改めました。

 

そもそも、なぜ瑕疵担保責任という制度が契約不適合責任という制度に改正されたのでしょうか? 旧民法の瑕疵担保責任の性質については、学説上の対立がありました。

 

法定責任説

伝統的な通説では、特定物の売買においては、売主は、契約で定められたその特定のものを引渡せばよい、と考えられていました。そのため、契約で定めたものが、いくらボロボロのものであっても、売主は引渡しさえすれば、あとは責任を負わなくてよいものと理解されていたのです。

 

しかしながら、目的物がボロボロの状態であれば、買主にとっては不利益です。そこで、このようなケースにおいて、買主を保護するため、「瑕疵担保責任」という法律上特別な売主の責任を作ることで、損害賠償請求権と解除権を買主に付与した、と考えたのです(法定責任説)。

 

このような立場にたつと、瑕疵担保責任で買主に与えられる権利は、法律が特に定めた損害賠償請求権や解除権だけであり、一般の債務不履行において認められる追完請求権や代金減額請求権は含まれないことになります。

 

契約責任説

しかし、実際の取引実務では、目的物が「特定物」であるかどうかは必ずしも明らかではありません。 また、「特定物」の取引でも、不具合があれば、売主としては、部品の交換や代替物の納品で済ませることが少なくありませんでした。 そのため、有力な学説では、「瑕疵担保責任は、債務不履行責任としてとらえるべきだ」という考え方も根強くありました(契約責任説)。

 

このような議論を背景に、今回の改正では、契約責任説にたつに至りました。 そのため、改正された民法の「契約不適合責任」は、「特定物」であるかどうかを問わず適用されます。 また、旧民法の「瑕疵担保責任」では認められていなかった、「追完請求権」や「代金減額請求権」も認められるようになったのです(民法562条、563条)。

 

契約不適合責任で買主が請求できる権利

「契約不適合責任」のルールが新設されたことにより、買主は、目的物に契約内容と異なる点があることを発見したときは、売主に対して、契約不適合責任として、次の対応を売主に請求することができます(民法562条)。

 

契約不適合責任で買主が請求できる権利

①履行の追完(目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡し)

②代金減額

①    損害賠償 ※売主に帰責性(責任)がある場合に限る

①    解除

 

第2節 買主の権利

売主の瑕疵担保責任に関する見直し①

買主の権利

・ 特定物か不特定物かを区別することなく、売主は売買契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務を負い、修補等の履行の追完をすることができることとするのが適切

・ 損害賠償や解除は特別の法定責任とは位置付けず、債務不履行の一般則に従ってすることができることを明示するのが適切(加えて、損害賠償の範囲は「信頼利益」に限定されず、要件を満たせば「履行利益」まで可能となる)

・ 商品に欠陥がある場合に代金の減額で処理される事案も多いことから、買主に代金減額請求権を認めるのが適切

「隠れた瑕疵」の用語

判例は、「瑕疵」は「契約の内容に適合していないこと」を意味するものと理解 → 判例の明文化

※「隠れた」とは、契約時における瑕疵についての買主の善意無過失をいうと解されているが、上記改正法の考え方の下では、当事者の合意した契約の内容に適合しているか否かが問題であるため、「隠れた」の要件は不要。

 

問題の所在①(瑕疵担保責任の全般的な見直し)

基本的な改正の方向性

買主の権利

商品の種類を問わず、引き渡された商品に欠陥があった場合に買主がどのような救済を受けることができるのか(修補等の請求をすることができるのか等)について、国民に分かりやすく合理的なルールを明示するべきではないか。

「隠れた瑕疵」の用語

「隠れた瑕疵」という用語も、その内容に応じて、分かりやすいものとすべきではないか。

 

第3節 買主の権利の期間制限

売主の瑕疵担保責任に関する見直し②

瑕疵担保責任の追及は、買主が瑕疵を知ってから1年以内の権利行使が必要(履行済みと考えている売主の保護)とされているが、買主の負担が重すぎるのではないか。【旧法§570、566】

 

問題の所在②(買主の権利の期間制限

旧法:権利行使

改正法:不適合の通知

※「権利行使」の意味

判例は、「裁判上の権利行使をする必要はないが、少なくとも売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある。」としている。

買主は、契約に適合しないことを知ってから1年以内にその旨の通知が必要。【新§566】

※「通知」としては、不適合の種類やおおよその範囲を通知することを想定

※別途、消滅時効に関する規律の適用があることに注意が必要。

改正法の内容

買主の権利 【新§562~564】

買主は、売主に、①修補や代替物引渡しなどの履行の追完の請求、②損害賠償請求、③契約の解除、④代金減額請求ができることを明記。

「隠れた瑕疵」の用語 【新§562】

「隠れた瑕疵」があるという要件を、目的物の種類、品質等に関して「契約の内容に適合しない」ものに改める。

改正法の内容

買主の救済方法

買主に帰責事由

双方帰責事由なし

売主に帰責事由

損害賠償

不可

不可

可能

解除

不可

可能

可能

追完請求

不可

可能

可能

代金減額

不可

可能

可能

 

第4節 買主が請求できる権利が増える

買主が請求できる権利が増える

契約不適合責任では、すでに見たように瑕疵担保責任と比べて買主の請求できる権利が増えています。瑕疵担保責任では、契約解除、損害賠償請求の2つにとどまっていましたが、契約不適合責任では「契約解除」「損害賠償請求」の他に、「追完請求」「代金減額請求」「無催告解除」「催告解除」が可能です。

 

以下、それぞれの権利について解説します。

 

第5節 履行の追完請求権

履行の追完請求権とは?

「追完」について、法律辞典(有斐閣)には次のように記載があります。

民法上、法律上必要な要件を備えていないため、一定の効果を生じない行為が後に要件を備えて効果を生じることをいう。

契約の内容に適合しないときに買い主が請求します。建物に不具合があったのに、契約内容にその旨の記載がなければ、買い主は契約後に売り主に不具合を補修請求ができるようになります。以前の瑕疵担保責任では、不具合を知っていたかどうかが争点になっていましたが、今後は契約の内容に記載がなければ、直ぐに請求できることになります。

 

すなわち、納品したときには、不完全な状態であったため、後から、完全なモノを改めて納品することをいいます。

 

具体的には、買主は、契約不適合責任として、履行の追完を請求するときは、「修補」「代替物の引渡し」「不足分の引渡し」のいずれかを請求することができます(民法562条)。 つまり、「直してください」「代わりの物を納品してください」「不足している分を納品してください」といった請求ができるようになったのです。

 

このとき、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法で追完してもかまいません(民法562条1項但書)。たとえば、買主が「直してください」といったとしても、売主としては、買主に不相当な負担を課するものでなければ「代わりの物を納品します」と言えるのです。 もっとも、「不相当な負担を課するものでないとき」の基準は、不明確ですので今後の裁判例などを注意する必要はあります。

 

また、契約不適合について、買主に帰責性(責任)がある場合には、履行の追完を請求できません(民法562条2項)

 

第6節 代金の減額請求権

代金の減額請求権とは?

買主は、履行の追完を請求したにもかかわらず、売主が対応してくれないときは、代金の減額を請求することができます(民法563条)。

代金減額請求とは、契約の内容に適合していないとき、追完請求を求めることができない場合に行使できるものです。そのため、はじめに追完請求を行い、無理な場合は減額請求などをするという流れです。

 

旧民法では、権利の一部が他人に属する場合の担保責任(旧民法563条)、権利の一部が他人に属する場合の担保責任(旧民法565条)のみ、代金の減額請求が認められていましたが、改正により、広く請求できるようになりました。

 

もっとも、履行の追完が不能である場合などを除き、履行の追完を請求せずに、いきなり代金の減額を請求することはできませんので注意が必要です(民法563条1項2項)。また、契約不適合について、買主に帰責性(責任)がある場合には、代金の減額を請求できません(民法563条3項)。

 

第7節 解除権・損害賠償請求権

解除権・損害賠償請求権とは?

今回の改正では、契約不適合責任は、債務不履行責任として考えられるようになりました。 そのため、買主は、売主に対して、 債務不履行の一般ルールに従って、解除・損害賠償を請求することもできます(民法564条)。 旧民法では、解除は、瑕疵によって「契約をした目的を達することができない場合」(旧民法570条)に限られていましたが、本条にそのような制限はありません。

 

無催告解除

契約の内容に適合しないことで、契約の目的を達成できないときは無催告解除ができます。こちらは、目的を達成できないときに限り行使される権利になるため、多少の不具合で補修できる場合は認められないものになります。

 

催告解除

追完請求をしたにもかかわらず、売り主側が応じないときに行使できる権利です。減額請求では買い主が納得できないなどのときに、契約自体をなかったものとすることができます。

 

契約の内容に適合しない場合、「追完請求(補修請求)」「無催告解除」「損害賠償請求」が認められます。さらに追完されない場合は、「代金減額請求」「催告解除」が請求できることになります。

 

第8節 目的物が契約不適合である場合の権利行使の期間制限

目的物が契約不適合である場合の権利行使の期間制限

旧民法では、瑕疵担保責任に基づく損害賠償・解除について、買主が瑕疵の存在を知った時から1年以内に権利行使をしなければならない、という期間制限が定められていました(旧民法564条、566条3項、570条)。

 

しかしながら、このような期間制限は、買主の権利を大きく制限することになるのではないか、という意見がありました。他方で、いかなるケースであっても、買主に長期の権利行使期間を認めたのでは、売主としては、長期間、関係証拠を保存しなければならず、大きな負担となります。

 

そこで、今回の改正では、買主の権利と売主の負担のバランスを図り、次のようなルールとなりました。

 

第9節 目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合

目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合

 

買主は、その旨を 1年以内に通知しなければ、権利行使(追完請求・代金の減額請求・損害賠償請求・解除)できない。

 

第10節 目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合

目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合

 

買主は、 期間の制限なく、権利行使(追完請求・代金の減額請求・損害賠償請求・解除)できる

 

第11節 説明

以下、目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合と、数量・権利が契約の内容に適合しない場合について解説します。

 

①目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合

 

従来は、1年以内に権利行使する必要がありましたが、今回の改正では、 1年以内に通知をすれば足りるので、買主の権利行使期間が延長されたというものです。 買主としては、1年以内に「目的物の種類が、契約で取り決めた内容と違いました」と通知すれば、その後、いつどのように請求をするのかは自由となります。

 

②目的物の数量・権利が契約の内容に適合しない場合

 

売主としては、数量が不足していることや、目的物に担保物件などが付着していることは、 外見上明らかであるので、いつ請求されてもそこまで不利益にはなりません。そのため、期間制限は撤廃されました。

 

商法上の権利行使期間

もっとも、商法には、民法と異なる権利行使の期間が定められています。 商人間の売買では、買主は、目的物を受け取った後、 遅滞なく検査し、契約不適合を発見したときは直ちに売主に通知しなければ、 契約不適合責任を追及できません(商法526条1項2)。 また、検査で直ちに発見できない契約不適合については引渡し後6か月以内に発見して直ちに通知しなければ責任追及できません(商法526条2項)。 数量が契約に適合していない場合、これは直ちに発見できないものではないので検査時に発見して通知しなければ、 契約不適合責任は追及できません(商法526条2項)。