2023年J1通信簿 その3 | BBGのブログ

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【2023年J1通信簿 その3】

■8位 川崎フロンターレ 14勝8分12敗 勝ち点50
『補強の不備には不満が残るも、大きな価値を伴う3年ぶりの天皇杯制覇。』

2023基本フォーメーション
【各セクション評価】
【FW】60点
【MF】80点
【DF】60点
【GK】70点
【指揮官】70点
【総合点】340点(10位)
【補強評価】D
【MVP】脇坂泰斗


無冠に終わった昨季に引き続き、今季も「過渡期」のチームはもがき苦しむ一年となった。
ダミアン、小林、そして家長とベテラン勢がコンディション維持もままならず、序盤は得点力不足で勝ちきれない試合が続出。
さらにDFラインに怪我人が続出する不測の事態も重なり、一時は15位まで順位を落とすなどあれほど強かったチームの面影はまるで感じられず。
育成と結果の両立を目指すという耳障りの良いフレーズは成果を挙げられず、懸念のCFや谷口の代役の獲得を放置したフロントの責任は重いと言えるだろう。

それでもダミアンやマルシーニョが戦列に復帰し、従来の4-3-3に回帰した終盤戦は怒涛の猛チャージで意地を見せた。
強烈なミドルシュートを次々と叩き込んだ橘田の活躍もあり、9月から始まったACLでは鮮やかな5連勝で見事首位通過。
勢いそのままに天皇杯でも決勝まで勝ち進むと、最後は熾烈なPK戦を制して見事3年ぶりの優勝を勝ち取ってみせた。

苦しいシーズンでもタイトルを勝ち取ったのは、川崎がこの数年で築き上げた「強者のメンタリティの証明」と言えるだろう。
どれだけ強いと言われてもタイトルだけが遠かった時代から、戦力的には苦しくともタイトルを獲れるチームへ変わったことは、ファンにとってもこれまで以上に感慨深い戴冠劇となったはずだ。

とはいえ、シーズン8位という結果に関してはやはり厳しい評価を与えざるを得ない。
ダミアンやシミッチの退団も決まり、今オフこそはしっかりと戦力を増強しなければいけないだろう。


■7位 アビスパ福岡 15勝6分13敗 勝ち点51
『長谷部監督の手腕に導かれ、目標を大きく上回る最高の一年に。』

2023基本フォーメーション
【各セクション評価】
【FW】80点
【MF】80点
【DF】80点
【GK】80点
【指揮官】100点
【総合点】430点(2位)
【補強評価】B
【MVP】奈良竜樹


昇格3年目にしてクラブ史上最高位を記録しただけでなく、ルヴァン杯では初のタイトル獲得にも成功。
天皇杯でもベスト8まで勝ち残るなど、最高の一年を過ごしたと言っていいだろう。

過去2年に引き続き、資金力ではリーグ最下層に位置するチームだったことは間違いない。
クルークスや志知の退団もあり戦力はむしろ昨季よりダウンという印象もあったが、蓋を開ければ序盤戦から見事な快進撃を披露。
長谷部イズムを知り尽くした選手たちが指揮官の求めるプレーを最大限の出力で遂行し、組織力や戦術の練度で多くのアップセットを起こし続けた。

また、今シーズンから導入された3バックの新布陣もチームの進化を引き出したと言っていい。
宮、奈良、グローリという屈強な3バックの前に前と井手口のボールハンターが立ちはだかるブロックの強固さは強烈そのもの。
新加入の井手口は攻撃面でも違いをもたらす存在となり、陰のMVPと言える存在だ。

一時は怪我人が多発しベンチ入りメンバーのやりくりに苦しむ時期もあったが、チーム全体への淀みない戦術の浸透は少数精鋭の陣容があってこそ。
資金力で劣る分「誰が出ても質の落ちない」チームを目指し、ソリッドなチーム作りで見事タイトル獲得をもたらした長谷部監督の手腕は最大限の評価に値する。

次なる目標の設定は難しいところだが、まずはこの結果に慢心することなく安定して上位を維持できるチームを目指したい。
山岸や井手口には移籍の噂も飛び交っているが、長谷部監督の存在があれば何も心配は要らないだろう。


■6位 名古屋グランパス 14勝10分10敗 勝ち点52
『主力選手に著しく依存したツケを、マテウス退団で支払う一年に。』

2023基本フォーメーション
【各セクション評価】
【FW】80点
【MF】70点
【DF】80点
【GK】90点
【指揮官】70点
【総合点】390点(6位)
【補強評価】C
【MVP】キャスパー・ユンカー


最大の懸念要素だったCFにユンカーという実力者を加え、彼が期待通りの活躍を見せることで序盤は見事なスター度ダッシュに成功。
開幕から公式戦15試合でわずか1敗と抜群の安定感を武器に、13年ぶりのリーグ制覇期待の高まる前半戦となった。

しかし、背番号10を背負う攻撃の要であるマテウス・カストロが夏に離脱すると、その影響をモロに受けてチームは大失速。
マテウス退団後はシーズン終了まで公式戦16試合でたった2勝と、最後まで彼の穴を埋められずに6位まで順位を落とすことになった。

在籍も5年目となり手厚い待遇を与えていたマテウスが、いわゆる「サウジマネー」に引き抜かれるとはチームにとっても予想だにしない誤算だったことは間違いない。
彼の代わりとなれる選手をすぐに見つけられなかったことも致し方ない結果と言えよう。
問題があったとすれば、主力選手に著しく頼った長谷川監督のチーム作りにあったと言えるだろう。

基本フォーメーションを見ても分かる通り、今季の名古屋は年間を通して実質15人にも満たない戦力で回した一年間だった。
この戦力で天皇杯はベスト8、ルヴァン杯は準決勝まで進出したことはむしろ称賛にも値するが、やはり「少なすぎ」だった感は否めない。
もともと選手数が少なかったのならまだしも、30人以上の選手を抱えながらこの結果はコストパフォーマンスも著しく悪い選手運用だった。

タイトル獲得のためにはやはり戦力の底上げが必須となるが、今オフは丸山の退団が既に決定し、中谷には国内移籍、藤井には海外移籍の噂がつきまとっている。
DFラインはここ数年最も戦力の固定化が激しかっただけに、ここが解体となるようだとチーム全体が揺らぐ可能性も小さくないだろう。


■5位 鹿島アントラーズ 14勝10分10敗 勝ち点52
『序盤の不振から立て直すも、理念なき監督交代が続く現状には不信が募る。』

2023基本フォーメーション
【各セクション評価】
【FW】80点
【MF】70点
【DF】80点
【GK】80点
【指揮官】70点
【総合点】380点(7位)
【補強評価】D
【MVP】鈴木優磨


岩政監督がシーズン頭から指揮を執った今季は、開幕から非常に苦しい滑り出しに。
「流動性」「ビルドアップ」「堅守」など多くのテーマを掲げて臨んだものの、多くを追い求めるあまりチームは混乱。
指揮官自信が整理をつけられていなかった印象もあり、5節からの4連敗で順位は15位まで落ち込んでしまう。

それでも、5年ぶりの復帰となった植田の活躍もあり目標のひとつであった堅守の確率には成功。
4連敗明けの9節からは一転9戦無敗、その内7試合ではクリーンシートと見事なV字回復を披露した。

その後も右肩上がりのシーズンを送り、27節を終えた段階では3位まで浮上。
最終盤は調子を落としたことで5位でのフィニッシュとなったが、5月以降の成績を考えれば一定の評価に値するシーズンと言えるだろう。
それ故に、シーズン終了後に早々と岩政監督を解任したクラブの判断はいかがなものだろうか。

もちろん、昨季をひとつ下回る順位は目標に及ばない結果であったことは間違いない。
岩政監督の指導力も優れていたとは言い難く、シーズン前に掲げた理想のサッカーが展開された試合はあくまでもごく僅か。
鈴木優磨を筆頭に、選手ありきのサッカーしか出来なかったというのが率直な印象だ。

しかし、優勝という目標に相応しい戦力を与えずに毎年毎年「目標未到達」と監督を切り捨てる現在のフロントの手法には強い疑問を抱かざるを得ない。
クラブとして目指すサッカーもまるではっきりしておらず、もはや次を託せる監督候補すらが見当たらないのが現状だ。
植田や昌子、そして柴崎らのOBらを呼び戻す補強戦略も「お茶を濁しただけ」という印象は否めず、フロントの意識改革がない限りは常勝軍団の復活も夢のまた夢と言っていいだろう。