2023年J2通信簿 その5 | BBGのブログ

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【2023年J2通信簿 その5】

■4位 清水エスパルス 16勝13分13敗 勝ち点61
『秋葉体制で強烈な追い上げを見せるも、最後まで基盤となる戦術が欠けていた。』

2023基本フォーメーション
【各セクション評価】
【FW】80点
【MF】90点
【DF】70点
【GK】90点
【指揮官】70点
【総合点】400点(4位)
【補強評価】D
【MVP】乾貴士


リーグ最高峰の戦力を擁し、昇格候補の一番手と目されて挑んだ今シーズン。
しかし、蓋を開けると開幕直後からチームは重度の迷走に。
5試合連続でのドローを経て、6節7節で連敗を喫するとゼ・リカルド監督は早々と解任が決まった。

そもそも、昨シーズンから戦術面では見るべき点の少なかったこの指揮官を続投させた選択が誤りだっただろう。
もはや戦力の優位だけで結果を残せるほど今のJ2は甘くなく、高い理想とは裏腹にピッチ上では停滞感ただよう試合ばかりが最後まで繰り返された。

後任となった秋葉監督は、持ち前のモチベーターとしての能力を発揮しながらチームを再建。
J2を知り尽くした経験値を武器に現実的な戦術を導入し、試合を追うごとに攻守の安定感を高めることに成功した。
特に際立ったのは夏場以降の勝負強さであり、引き分けを挟みながら実に14戦負けなしと驚異的な快進撃を披露。
そして10月の静岡ダービーを見事ホームで制し、就任時に19位だったチームはいよいよ2位浮上へと成功する。

…だったのだが、40節の熊本戦でまさかの敗戦を喫すると、「勝てば昇格」だった最終節の水戸戦を取りこぼしてまさかの4位転落。
このショックが癒えなかったかプレーオフ1回戦も低調な試合内容に終わり、何とか勝ち進んだ決勝戦では終了間際に失点するなど、一転しての「勝負弱さ」で昇格を逃す結果となってしまった。

最終節、そしてPO決勝と全てで紙一重だっただけにこの結果の要因を断定することは難しい。
しかし、厳しく言うのであれば秋葉体制でもチームの長所はあくまで「戦力の優位」だけに留まっていたのもまた事実。
秋葉体制の代名詞ともなった戦術=乾というワードは「選手の特徴を生かした」とも言えるが「戦術が不足していた」とも言っていい。
苦しい時期に立ち返ることの出来るチームとしての基盤がなかったが故の、必然の降格劇だったのかもしれない。


■3位 東京ヴェルディ 21勝12分9敗 勝ち点75
『指揮官の強い信念に引っ張られ、実に16年ぶりとなる感動のJ1昇格を達成。』

2023基本フォーメーション
【各セクション評価】
【FW】60点
【MF】90点
【DF】80点
【GK】100点
【指揮官】90点
【総合点】420点(2位)
【補強評価】B
【MVP】マテウス


エースの佐藤、DFリーダーのンドカらセンターラインの戦力をごっそり引き抜かれた今オフ、開幕前に東京Vの昇格を予想する識者はほとんどいなかっただろう。
シーズン終了後に語った「見向きもされない存在だった」という城福監督の言葉は、決して卑下でも謙遜でもなかったはずだ。

しかし、そんな苦境でも一切揺らぐことのない指揮官の信念がチームを昇格へと突き動かした。

これまでのチームに欠けていたインテンシティを徹底して鍛え上げながら、戦術の改革にも着手。
ボール保持に拘りがちだった選手たちの意識を取り除き、チームにはハイライン・ハイプレスという新たな武器が加わることとなった。

シーズン最多スコアラーが途中加入の染野(6点)という結果からもわかるように攻撃面での戦力不足も明白だったが、守備強度を全面に押し出したサッカーで序盤戦から理想よりも現実を追求。
途中交代を前提とした起用法などにも選手たちが見事に応え、粘り強く勝ち点を積み上げながら連敗はわずか1度だけという「大崩れのない」チームの完成にこぎつけることに成功する。

それでも、過密日程となった夏場には苦しい試合が続き自動昇格圏からは大きく離されることに。
万事休すかとも思われた中で、救世主となったのが7月に加入した中原輝の存在だった。

加入後はフィットにやや時間を要したものの、試合を追うごとに「戦術兵器」として圧倒的な存在感を発揮。
10月以降の重要な試合では試合を決めるゴールを連発し、まさしく救世主として多くの勝ち点を呼び込む存在となった。

チーム自体も城福監督の追い求めた「相手陣内でなるべく長い時間プレーする」サッカーが完成に近づき、9月以降は12戦無敗の快進撃。
長らくJ2で燻った鬱憤を晴らすかのようなドラマチックな試合が終盤には続き、プレーオフ決勝戦では試合終了間際のPK獲得という「感動のフィナーレ」で見事16年ぶりとなるJ1昇格の切符を勝ち取ってみせた。


■2位 ジュビロ磐田 21勝12分9敗 勝ち点75
『横内監督の丁寧なチーム作りのもと、結果と積み上げの両方を掴み取る一年に。』

2023基本フォーメーション
【各セクション評価】
【FW】70点
【MF】90点
【DF】100点
【GK】70点
【指揮官】90点
【総合点】420点(2位)
【補強評価】-
【MVP】リカルド・グラッサ


3度目のJ2となった今シーズンは、前年に獲得したファビアン・ゴンザレスの二重契約が発覚しFIFAから補強禁止処分を受けるという、予想だにしない不測の事態からのスタートに。
手薄だったFW陣の補強を一切進められず、周囲からは厳しい戦績を予想する声も多かった。

序盤戦はそうした不安がそのまま結果になって表れ、4月を終えた段階で11位と苦しい滑り出し。
しかし、5月6月の公式戦13試合でわずか1敗と夏場を前に調子を上げると、7月末の2位浮上からは長らく自動昇格圏を走り続けた。

こうしたV字回復の要因は、今季から就任した横内監督の丁寧なチーム作りにあると言えるだろう。

選手との対話を重視し、時に選手の意見を戦術に組み込むなどチーム内の和を重んじつつも、開幕戦で岡山相手に3失点で敗れると即座に大幅な方向転換を決断。
これまでの磐田にはなかった重心の低いスタイルを導入し、技術よりもインテンシティを重視する選手選考で中心選手だった遠藤も容赦なくベンチへと追いやった。

こうしてチームに不足していた強度が徐々に高まると、段階を追って戦術面でのテコ入れも敢行。
まさしく1段1段と階段を登るかのようにチーム全体の成長を引き出したことが、夏場以降の快進撃に繋がることとなった。

10月の静岡ダービーでは痛恨の敗戦を喫し一度は4位まで転落するも、この苦境では山田や上原といった長らく在籍するクラブ愛を持った選手たちが力を発揮。
上原は39節からの4試合で3得点を挙げる見事な活躍を見せ、山田大記はピッチ内外でリーダーシップを発揮してチームを見事まとめ上げた。

結果的に最終節でライバル清水の取りこぼしに救われて自動昇格が決まったものの、フロント・監督・そして選手が三位一体となった「必然の昇格劇」と言えるのではないだろうか。
補強禁止処分が結果的には功を奏し、大きな積み上げが見られる素晴らしいシーズンを過ごした。


■1位 FC町田ゼルビア 26勝9分7敗 勝ち点87
『異端の新監督を堅実なチーム作りが支え、ぶっちぎりでのリーグ優勝を達成。』

2023基本フォーメーション
【各セクション評価】
【FW】100点
【MF】90点
【DF】90点
【GK】70点
【指揮官】90点
【総合点】440点(1位)
【補強評価】A
【MVP】エリキ


高校の指導者からJリーグの監督に転身するという黒田新監督の招聘には疑問の声も多く聞かれたが、結果的には2位に10以上もの勝ち点差をつけるぶっちぎりの優勝を達成。
79得点はリーグ最多、35失点もリーグ2位の成績と、文句なしの完璧な優勝だったと言えるだろう。

最大のストロングポイントとなった「エリキ&デューク」の最強2トップを筆頭に、優勝の要因はど派手な選手補強にあったことは間違いない。
シーズン中にも川崎から松井、C大阪から藤尾、そしてFC東京から鈴木と、J1級の選手を次々と獲得する余念のない投資で戦力を増強。
この結果、終盤でのエリキの離脱にも屈することなく4節から首位を走り続けることに成功した。

その一方で、黒田監督も卓越した指導力を発揮したことは間違いない。
強力なFWの才能に依存した守備的戦術、そして時にはなりふり構わぬ時間稼ぎなどを厭わない姿勢には批判の声も集まったものの、まさに「勝てば官軍」とばかりにブレることなく黒田流を貫徹。
戦力が膨れ上がった中でもチームは最後まで一体感を維持し、サイバーエージェントの代表も兼務する藤田社長からもそのマネージメント能力には絶賛の声が寄せられた。

参謀を担った金明輝ヘッドコーチの存在など、黒田体制を支えるべく結成された首脳陣の編成もお見事。
資金力があったからと言えば簡単に聞こえるが、現場のスタイルに適したラインナップを完成させた原強化部長の手腕も素晴らしかったと言っていい。
ネームバリューには決して頼らない「名より実」な補強方針のもと、今季獲得した選手たちはそのほとんどが優勝における貴重な戦力となってみせた。

このように、「異端」と「堅実」の両方を併せ持つバランスの良さこそが優勝の原動力。
色物ではない明確なクラブとしての実力を示しただけに、初となるJ1での挑戦にも高い期待が寄せられている。