第100回箱根駅伝総括 | BBGのブログ

BBGのブログ

ブログの説明を入力します。


第100回の箱根駅伝は青山学院大学の優勝という形で幕を閉じました。

まず、真っ先に謝罪しなければいけないでしょう(苦笑)
大会前には「駒澤大学の優勝は確実」と断言してしまったこと、青山学院のファンの方も含めて皆さん申し訳ありませんでした。

ただ、それだけ青山学院の優勝は予想外の結果だったと思います。
下馬評で言えば中央に次ぐ3番手の立ち位置でしたが、まさかここまで「ぶっちぎって」の優勝を果たすとは思ってもいませんでした。


青山学院の優勝の要因は、「調整の上手さ」にあったと思います。

11月下旬から12月上旬にかけてインフルエンザの集団感染というアクシデントがあった中で、大会1ヶ月前というタイミングで「大会直前の調整方法を例年と大きく変えた」という原監督の決断が全てだったでしょう。
この10年で6回優勝という実績を生み出す要因となった「確立された青山メソッド」に土壇場でメスを入れることは簡単な決断ではなかったと思います。
その決断を下した上で、ここまでベストな状態にチームを導いたのは圧巻の手腕と言えるでしょう。

また、他のチームでは中々類を見ない指導方法も優勝の大きな要因となりました。

初めての2区出走でいきなり区間賞を獲得した黒田朝日は、2年生ながら月間の走行距離は400km程度(他の部員の平均はおよそ700km程度)と下級生ながらマイペースなスタイルで一年間練習を続けてきました。
時計すらつけずにレースに臨むというのは驚きでしたが、このように選手個々の自主性を尊重しつつその上で結果を残す集団を作り上げた手腕もさすがの一言ですね。


それにしても、大会MVPとの呼び声高い太田蒼生の走りはちょっと異次元でした。
あのイェゴン・ヴィンセントが叩き出した「前代未聞の59分台」のタイムに迫る日本人選手が現れるとは。
1年時と2年時は揃って出雲と全日本を欠場しながら箱根駅伝で好走を見せた「箱根男」ですが、今年も全日本での走り(7区5位)を見ると箱根でこんな走りを見せるとは想像できませんでした。
駒澤の「駅伝男」である佐藤圭汰を「箱根男」が上回ったことが、優勝の最大の要因となったことは間違いありません。


駒澤大学にとっては、もはや「不思議」とも言える優勝逸だったのではないでしょうか。
百戦錬磨の経験を持つ大八木総監督が往路を振り返って「どの選手もよく走ったんだけど」と首を傾げたように、通常であれば駒澤大学の往路タイムは優勝に値する素晴らしい記録だったことは間違いありません。
それだけ、青山学院の内容が「出来過ぎ」だったと言っていいでしょう。

ただし、チーム状態という面で駒澤はやや青山学院に劣っていたのかなという印象も受けました。

昨季6区区間賞の伊藤蒼唯の欠場だけでなく、4区を走った山川拓馬も本調子ではないように見受けられました。
復路を走った選手たちの成績も軒並みベストとは程遠く、「箱根への調整」という面で就任1年目の藤田監督にとっても課題や反省が残る大会になったのかもしれません。
また、これはあくまで個人的な感想となるのですが、選手への声がけなどで藤田監督は「大人しすぎた」という印象がありますね。
大八木前監督との比較という面を差し引いても(笑)もう少し強い言葉で発破をかけてほしいと感じる場面が多かったです。
選手の能力を引き出すにおいて「監督の声がけ」というのも非常に大事な要素なので、ここも次回大会以降は大きな変化があることを望みたいですね。


レース全体を振り返りますと、今年は珍しく1区から大きく動きのある大会となりました。

自身のロケットスタートと重ねるように徳本監督が起用したレマイヤン(駿河台)が、1区だけでなく大会全体をかき回すキーマンとなりましたね。
彼の飛び出しに無理してついた溜池(中央)や伊地知(國學院)の遅れが両校にとっては致命傷になり、優勝争い以外の面でも1区での遅れが最後まで響く大学が多く見られました。

その中で揺さぶりに一切動じず見事区間賞を獲得した篠原(駒澤)の走りは素晴らしかったですが、個人的にはこの1区で8位に食い込んだ青山学院の荒巻の走りを強く讃えたいと思います。

途中までレマイヤンと篠原に着いていったのは彼の実力を考えるとかなりリスクのある決断でしたが、優勝するためにはどうしても駒澤を逃してはならなかっただけに納得の決断でもありました。
その上で、一度は遅れを取りながらもしっかりと8位で纏めた走りには拍手。
原監督の名付けた「負けてたまるか大作戦」を最も体現したのがこの荒巻の走りだったでしょう。


青山学院の優勝の「決定打」となったのは太田蒼生でしたが、優勝を「引き寄せる」存在となった黒田朝日の走りも改めて素晴らしかったです。
起伏の激しいコースを跳ぶように駆け抜けた走りは、結果以上に特大のインパクトがありました。
恐らく5区を走ってもとんでもない記録を打ち立てるのではないでしょうか。まだ2年生ということで、今後2大会が見逃せない新星の誕生となりましたね。

また、黒田の激走の影に隠れて今大会は2区で好記録がたくさん生まれる大会となりました。
鈴木芽吹(駒澤)と平林清澄(國學院)は言わずもがな、黒田と同じく2年生ながら日本人歴代9位となるタイムで走った山口(早稲田)や、1区から順位を8つも押し上げた梅崎(東洋)の走りも素晴らしかった。
1時間6分台で走る選手が6人も生まれるとは、こちらもいい意味での予想外となりました。


特に、改めて東洋大学の梅崎蓮の走りには賛辞を送りたいですね。
出雲、全日本では揃ってエース区間では起用されながらも苦しい結果に終わっていましたが、箱根でここまでの走りを見せてくれるとは。
梅崎に限らず東洋大学は全ての選手が素晴らしい走りを見せてくれて、大会一のサプライズを提供する結果になったと言っていいでしょう。
「ワープ(TV画面にあまり抜かれることなく順位を大幅に押し上げること)」を今大会も見せてくれた4区の松山和希を含め、今シーズンは苦しんでいた各選手がこの大舞台で見事な好走を見せてくれたことは非常に嬉しかったです。
同時に、東洋大学にも「箱根駅伝で結果を出すためのメソッド」が息づいているんだなと実感させられる結果となりましたね。


エースとして2区を走れなかった葛藤に最後は涙も見せた松山のインタビューにはグッとくるものがありましたが、同じく1年時には「エース」として期待されながら近年は苦しんでいた佐藤一世の走りも個人的には今大会の大きな感動ポイントでした。
湯浅(中央)や山中(城西)と、各大学の4年生がそれぞれ力走を見せた4区は今大会の中でも特に印象深い区間となりましたね。


また、近年の箱根では珍しく往路で天候が崩れ「18年ぶりの雨」となった5区も印象深い区間となりました。
区間賞の有力候補だった吉田響(創価)が寒さと悪天候に苦しんだ中、雨を苦にすることなく3位の選手とは1分半、4位以降の選手とは実に2分以上の差をつけた山本唯翔の成績は圧巻。
淡々とした様子で山を登りきる姿は過去のスペシャリストとまた一線を画すものがあり、今大会で卒業となってしまったものの久々に「山の神」の形容詞がふさわしい選手だったように思います。
それだけに、この5区で山本に僅か18秒差と迫るタイムで走りきった若林の走りもお見事でした。
黒田や太田の陰に隠れがちではありますが、彼の走りも優勝の大きな要因となりましたね。

彼ら両名以外にも、「山の大東」の異名を久々に取り戻す走りを見せてくれた菊地駿介や、来季以降への強い期待感を感じさせてくれた1年生の工藤(早稲田)、2年生の倉島(駿河台)の走りも素晴らしかった。
特に「山の名探偵」の異名で話題を呼んだ工藤慎作は、早稲田にとって長らくの課題だった「山問題」を解決に導く非常に重要な存在となりそうですね。

一方で6区の北村が体調不良により欠場し今季は下りがブレーキ区間となってしまったのは残念でしたが、山口や工藤などの台頭があり早稲田大学も収穫の多い大会となったのではないでしょうか。
総合7位という結果は望んだ成績ではなかったかもしれませんが、フィニッシュ地点でアンカーの菅野を各選手が笑顔で迎えている姿が非常に印象的でした。


往路で良い流れに乗った青山学院大学が復路も独走となったわけですが、同じように6区で武田和馬が区間賞を取った流れに法政大学も上手く乗りましたね。
7区以降は目立った成績を挙げる選手はいなかったですが、矢原や清水といった下級生たちが繋ぎの区間で好走するなど来季以降へも大きな期待感を感じさせてくれる結果となりました。
目標に掲げた6位という結果には届かずとも、戦国駅伝と呼ばれる現在の箱根駅伝で「8位→6位」という結果はお見事。
監督就任10年目を迎えた坪田監督のもと、チームが良いサイクルに入っていることを改めて結果で示してくれました。

また、戦力的には苦しい立場かと思われていた帝京大学のシード権獲得も称賛の一言です。
復路で追い上げてシードを獲得する「中野帝京ここにあり」という走りを今大会も選手たちが実践してくれました。
今大会を持って神奈川大学の大後監督も退任が決定するなど、ここ数年で各大学監督交代が目まぐるしいですが、60歳を迎えてもなお「育成力」に衰えの見られない中野監督の手腕には改めて感服ですね。

法政や帝京の影に隠れてはいますが、復路で忘れてはならないのは大東文化大学の頑張りでしょう。
8区でワンジルの大ブレーキがあったせいで復路総合では目立たない数字に終わっていますが、ワンジル以外の全選手が区間一桁順位でまとめる素晴らしい走りを披露してくれました。
8区でも区間一桁順位で走れていれば復路成績で恐らく3位くらいには食い込んでいたはずです。
前回に続いて2大会連続区間記録最下位となってしまったワンジルの「ビックリ箱」っぷりには苦笑いするしかないですが、就任2年で予選会落ちのチームをここまで押し上げた真名子監督の手腕も特筆すべきものがありますね。


すべての大学にコメントをつけているとキリが無くなってしまうので(笑)以上で大まかな総括を終えたいと思います。
最後に少しだけ触れるのであれば、これまでは最下位付近が定位置だった国士舘大学の頑張りも素晴らしいサプライズでした。
山で順位を4つ押し上げた山本雷我の魂の走りを、復路の選手がよく頑張ってつなぎましたね。

・・・最後に、今大会について語る上でどうしても避けても通れない話題として「体調不良者の続出」が起きたのは本当に残念でした。

優勝した青山学院大学でインフルエンザの集団発生が起きていたことは冒頭でも触れましたが、12月に入ってからも多くの大学でインフルエンザが流行。
中央大学に至ってはエントリーメンバーの確定後に部内で体調不良者が続出し(インフルエンザではなかった模様)優勝候補の一角と目されていたにも関わらずシード権すら獲得できない結果に終わりました。


「棄権も考えた」という藤原監督が、勝負の大会と位置づけていたこの大会に一体どのような思いで選手を送り出したか。そしてどのような思いで藻掻き苦しみながらも20kmを走り抜いた選手たちの姿を後ろから見ていたのか。
このことを考えるとまさに胸が張り裂けそうな思いですし、最後の箱根駅伝がこのような形で終わってしまった吉居大和や中野翔太の気持ちを考えると悲痛な気持ちでいっぱいです。

同じく優勝候補と目されていた國學院大学も大会直前のインフルエンザ集団感染により100%とは程遠い結果に終わるなど、第100回という記念すべき大会がこのような形で水をさされてしまったのは本当に残念。
もちろん各大学細心の注意を払っていることは間違いないでしょうが、次回大会以降は青山学院に限らず各大学「大会前の調整方法」の変更が大きく求められることになるでしょう。


そういう意味でも、青山学院大学が素晴らしい走りを見せてくれたことである種「救われた」大会だったのではないでしょうか。
シューズの進化や積極的な設備投資が進んでいるとは言え、今大会で青山学院が残した10時間41分25秒という成績は今後しばらくは破られないであろう空前絶後の大記録だと思います。
このような記録が第100回という大会で打ち立てられたことは、30年近くこの大会を見続けている一駅伝ファンとして嬉しく思いますね。


・・・というわけで、今回はこの辺で失礼させていただきます。
ちなみに順位予想の結果は5位國學院、7位早稲田、19位中央学院、23位山梨学院の4校的中と、近年では久々に好成績となりました(苦笑)
まぁ出場校が23校だったことを考えるとあまり誇れる結果でもないので(笑)来季はまず上位校を当てられるように努力したいと思います(笑)

それでは駅伝ファンの皆様は、また年末の更新でお会いしましょう!!!