古畑任三郎レビュー #19「VSクイズ王」
【ストーリー】☆☆☆
【犯人役】☆☆☆
【落とし方】☆☆☆☆
【合計評価】☆10
・あらすじ
人気クイズ番組における圧倒的チャンピオンとして世間で人気を集める千堂謙吉(唐沢寿明)だが
実際の所は番組側と結託して事前にクイズの情報を得る「やらせ」によるチャンピオンに過ぎなかった。
天狗になりすぎた千堂はある日突然番組上層部の人間からこれ以上事前に情報を与えることはできないと関係の解消を告げられてしまう。
焦った千堂は何とか情報を得る為に番組スタッフに迫って回るが……
・感想
収録開始に合わせて特定の数字が発表され、ふたりのパネラーがその数字に絡んだクイズを自ら考えて出し合うという、まず特異な形式のクイズ番組が気になる所。
この「数字」を事前に教わり、事務所で控えるスタッフにその数字にまつわる知識を片っ端から調べてもらうというのが千堂の行っていた「やらせ」である。
何とか数字を知りたい千堂は衣装部屋を訪れると、数字が書かれた番組アシスタントの衣装を発見。
制止する衣装スタッフの沼田を振り切ってこれを手に取るが、転倒した沼田は頭を打ってあえなく死亡…というここまでは比較的お約束の展開と言えるだろう(笑)
この回がここから面白いのは「誰にも見られずに犯行現場から立ち去りたい千堂が取った行動」とそのトリックにまつわる大きな「演出上の仕掛け」にある。
千堂がとった衣装部屋からの脱出方法は解決編まで明かされないが、実は「その様子が画面の片隅に写されている」という大胆な演出で古畑より先に視聴者へひとつの挑戦が提示されている。
千堂が使ったトリックはあまりに現実離れしているのだが、一方で番組側からの仕掛けはあまりにシンプル。録画を見返して恐らく多くの視聴者が思わず笑ってしまったことだろう。
こうしたシンプルかつ大胆な演出は小説や漫画では不可能な、映像作品のみだからこそ可能な手法と言えるはずだ。
また、古畑が最後に千堂を鮮やかな罠にかけて陥れる解決編もお見事。
古畑の巧みな推理と、得意の「巧妙な罠」で見事ぐうの音も出ない自白へと導き事件は綺麗に解決を見ることとなる。
この解決法も細かなヒントが劇中で提示されていながら古畑が種を明かすまで視聴者は恐らく気付くことの出来ない構成になっており
全体的に「してやられた!」という感情の残る痛快なシナリオになっていると言えるのではないだろうか。
複数回は見たい、いや間違いなく見るべき回のひとつだ。