【24-25プレミアリーグ戦力診断その4】
■トッテナム(昨シーズン5位)
『選手層の拡大は進まずも、新エースの獲得で悲願のタイトル奪取に挑む。』
【各セクション戦力診断】
【FW】9
【MF】8
【DF】8
【GK】8
【指揮官】8
【総合値】41(5位)
【キーマン】ソランキ
【24-25補強評価】C
絶対的エースだったケインが退団しながら、昨季は74得点とその穴を感じさせない攻撃力を維持。
ポステコグルー監督が導入したアグレッシブな攻撃サッカーに一定の手応えをつかみ、就任2年目となった今季はいよいよタイトルという目標に挑む一年となる。
そのためにクラブが打った渾身の一手がソランキの獲得。
昨季19得点を挙げたストライカーは、ポストプレーや裏抜けも得意とする万能型CF。
リシャルリソンやヴェルナーが期待に応えられず、最前線の「軸」が定まっていなかったチームにとっては待望の存在であり、120億円という莫大な移籍金にも納得だ。
一方でソランキに多額な投資を費やした分、その他の補強は寂しい結果に終わってしまった。
中盤にはベリバル、DFラインにはグレイというスター候補生を獲得したものの、いずれも10代の選手だけに高い期待は寄せづらい。
昨季は選手層の薄さが終盤の失速の大きな要因となっており、EL出場によりさらなる過密日程が見込まれる今季はもう少し戦力が欲しかったところ。
特に、ファン・デ・フェンの負傷離脱に苦しんだCBに補強ゼロという判断には不安が残る。
とはいえ「タイトル」という大願成就に重きを置くのであれば、中途半端な選手を複数獲るよりもチームの柱となれる選手の獲得を優先する判断にも納得だ。
32歳を迎えたソンにいつまでも頼り切りというわけにもいかないので、クラブの将来を考えてもこのタイミングでのソランキ獲得は決して間違った選択ではないだろう。
それだけに、あとは新エースがいかにその期待に応えられるかが全てとなる。
クラブレコードとなった移籍金は本人にとっても大きなプレッシャーとなるだろうが、そのプレッシャーを跳ね返せる存在がビッグクラブのエースと呼ばれる選手たち。
優れた仲間に囲まれる新天地で、今季はとにかく1点でも多く得点を奪うことに集中したい。
■アストン・ビラ(昨シーズン4位)
『強さは本物だが、CLとの過密日程をクリアできるかには不安が残る。』
【各セクション戦力診断】
【FW】8
【MF】8
【DF】7
【GK】8
【指揮官】9
【総合値】40(7位)
【キーマン】オナナ
【24-25補強評価】C
エメリの志向するインテンシティの高いサッカーと抱えた戦力がマッチし、昨季は4位フィニッシュと大躍進のシーズンに。
アーセナルから2勝を挙げるなど、勢いだけではない本物の強さを示してみせる一年となった。
CL出場が決まった今季は「二足の草鞋」をいかにクリアするかが最大の課題となるが、市場での動きは買いよりも売りを強いられる展開に。
ここ数年の派手な補強の影響を受け財務規定クリアのためにD・ルイスを売却せざる得ず、さらにディアビがサウジアラビアからの巨額オファーになびいてわずか25歳にして中東行きを決断した。
D・ルイスの穴埋めにはオナナという一流のタレントを獲得することに成功したが、まず彼の活躍が今季の鍵を握ることは間違いない。
195cmという恵まれた体格を活かした身体能力の高さには定評があるが、ビラの高速サッカーにフィットできるかは不安も残る。戦術理解力にやや難があるという印象も受けるだけに、エメリが彼をどのように扱うかにも注目だ。
その他のポジションは即戦力の補強も少なく、昨夏に放出したばかりのフィロジーンをもう一度完全移籍で買い戻すなど市場での動きはどこかチグハグ。
昨季リーグ戦全試合に出場したディアビの穴埋めのためには、ロジャーズやドゥランといった若手選手たちのブレイクが必須と言っていいだろう。
戦術の完成度には揺るぎがないため開幕から3試合は好スタートを切っているものの、CLがスタートする9月以降はクラブにとっても未知数の戦いが幕を開けることとなる。
大舞台での経験も豊富なエメリの存在は心強い所だが、主力選手の大半が「休みなし」の戦いを強いられることが予想されるだけに不安は強い。
後半戦での失速も懸念されるだけに、早め早めに勝ち点を積み上げておきたい所だ。
■リヴァプール(昨シーズン3位)
『補強はほぼゼロに終わるも、スロットがここまでは見事な手腕を発揮。』
【各セクション戦力診断】
【FW】9
【MF】8
【DF】9
【GK】10
【指揮官】8
【総合値】45(3位)
【キーマン】フラーフェンベルフ
【24-25補強評価】E
9年間指揮を執ったクロップがついにクラブを去り、オランダ人指揮官のアルネ・スロットのもとで再出発を切るシーズン。
クラブに多くのタイトルをもたらしたレジェンドの後任というだけでスロットへ向けられるプレッシャーは相当なものがあるが、過度な期待をかけすぎずにまずは温かい目で見守りたい。
クロップとは大きく志向が異なり、ポゼッションを重んじるのがスロット流のフットボール。
それだけに本来であればひとりでも多くの選手を補強して戦術の転換を進めたい所だったが、今夏の補強選手はまさかのキエーザのみ。
最大のターゲットとされたスピメンディの獲得には失敗し、キエーザの補強も移籍期限の前日に飛びついた「パニック・バイ」と言わざるを得ない。
ここ数年長らく課題とされてきたボランチの補強にことごとく失敗している点はフロントの責任が大きく問われると言っていいだろう。
これでは出遅れ必至かと思われたが、周囲の不安をよそに開幕戦から3連勝と好スタートに成功。
試合内容も上々であり、ユナイテッド戦ではこれまでのリヴァプールでは見たことのない鮮やかなパスワークからゴールを奪うなど、早くも「新生リヴァプール」のスタイルを確立しつつある。
スロット自身も決して自らのサッカーに拘りすぎず、クロップの積み上げたスタイルを尊重している様子が伺える点も好印象だ。
「ヘビーメタルフットボール」とも評された過激なサッカーに上手いこと手を加えながら、攻守のバランスを巧みに整える素晴らしい手腕をここまでは発揮している。
彼の就任によって同郷のガクポやフラーフェンベルフは昨季から見違えるほどのパフォーマンスを披露しており、特に中盤で圧倒的な存在感を見せつけている後者は今季目が離せない選手になるだろう。
■アーセナル(昨シーズン2位)
『完成を見たチームを巧みにテコ入れし、昨季を上回る万全の陣容が完成。』
【各セクション戦力診断】
【FW】9
【MF】9
【DF】9
【GK】9
【指揮官】10
【総合値】47(2位)
【キーマン】カラフィオーリ
【24-25補強評価】A
2年続けてシティとの熾烈な優勝争いに敗れる悔しい結果に終わったが、昨季積み上げた勝ち点89という成績はクラブの歴史でも2番目となる好成績。
アルテタが率いる現在のチームの完成度は極限まで高まっており、世界一と評されるプレミアリーグの中でも抜きん出た存在となりつつある。
今季も継続路線に一切のブレはなく、指揮官のもとで「三度目の正直」を実現させるべくすべての主力選手がチームに残留。
その上で余剰戦力となりつつあったスミス・ロウ、エンケティアといったアカデミー出身の選手を強い覚悟で放出し、その資金を元手に彼らに代わる質の高いバックアッパーの獲得に成功した。
特に期待されるのはEURO2024で出色の活躍を見せたカラフィオーリの存在であり、SBとCBを遜色なくこなせるマルチロールの加入で守備の運用はかなり楽になったと言えるだろう。
昨季はリーグ最少失点という記録を達成したものの、DFラインは選手層が薄く例年怪我人の対処に悩まされただけに補強効果は絶大だ。
中盤に加わったメリーノもEUROで大きく飛躍した選手のひとりであり、高い技術と献身性をあわせもつ現在のアーセナルにうってつけの存在。
さらに移籍期間最終日にはチェルシーを戦力外となっていたスターリングをローンにて獲得し、代役不在となっていたサカのバックアッパーも確保した。
このように、完成しつつあったチームに上手いことメスを入れ、昨季をさらに凌ぐ万全の陣容を完成させることに成功。
今季も繰り広げられるであろうシティとの激しい一騎打ちは、さらにレベルを増した極上の戦いとなるだろう。
■マンチェスター・シティ(昨シーズン1位)
『チームに常に刺激を与え続ける世界一の監督のもと、5連覇へと挑戦する。』
【各セクション戦力診断】
【FW】10
【MF】10
【DF】9
【GK】9
【指揮官】10
【総合値】48(1位)
【キーマン】ハーランド
【24-25補強評価】D
圧倒的な資金力と世界一の指揮官を武器に、昨季は前人未到のプレミアリーグ4連覇を達成。
決して独走状態というわけではなく、長らく首位をアーセナルに明け渡しながらの「大逆転優勝」にて改めて異次元の強さを周囲へと知らしめた。
就任9年目を迎えたグアルディオラ監督はもはや補強よりも戦術のアップデートに執心している節があり、引き続き莫大な資金を擁しながらも今夏の選手補強はサビーニョのみに留まった。
バルセロナで冷遇を受けたギュンドアンがまさかの「電撃復帰」となったのは指揮官にとってもサプライズだったようだが、陣容は昨季とほぼ変わりなしと言っていい。
戦い方に関しては昨季と大きな変化は見られず、今季も保持時には3-2-5にシフトする可変システムを継続。
毎年選手補強が続くWGのポジションのみは指揮官もタレント力を重要視している節があり、サビーニョの獲得で攻撃の破壊力は更に増したと言っていい。
2年目を迎えたドクのさらなるフィットや、好調時のパフォーマンスを取り戻しつつあるグリーリッシュの存在など、現有戦力がもたらすプラスアルファに期待できる点も心強い。
こうした強大な戦力を操るグアルディオラ監督のマネージメント力も年々際立っており、今季はフォーデン、デ・ブルイネといったアンタッチャブルな存在がベンチを温める試合も増えつつある。
常にチーム内に激しい競争をもたらしながら、誰がピッチに立ってもパフォーマンスを落とさないチームを作り上げるその手腕は圧巻の一言だ。
アルバレスが退団しハーランドのみが代えの効かない存在となりつつあるが、おそらく彼が離脱したとしても揺るがぬ強さを見せてくれることだろう。
このように、優勝という結果はもちろんのことその過程でファンを魅了するのがペップ・シティ。
今季も我々には到底思いつかないであろう驚きの采配の数々を楽しみにしたい。